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【*】
しおりを挟むグレイルは嬉しさと遣る瀬無さと苛立ちを抑えながら、校庭から校舎の二階の窓を睨んでいた。そこには、先程笑顔を零したリリアの姿がある。しかし腹立たしいのは、彼女の笑顔を引き出したのが自分ではない事であるし、その笑顔が第三者の男に向かっている事だ。
「怖い、怖い怖い!」
エドワードが声をかけると、グレイルがギュッと目を閉じた。
――告白すらしていないのだし、自分より先にリリアに相手が出来てしまう可能性は当然ある。
「グレイル、落ち着け」
「俺は落ち着いている」
「どの辺がだ?」
「どうやって告白するかを落ち着いて検討している」
「諦めないところ、本当に前向きだよな、うん」
諦める事など考えてみた事もないので、ゆっくりと目を開けてからグレイルは首を傾げた。
「ところで隣のあの男は誰だ?」
「近衛騎士補佐もしてる、高等部のリュース伯爵子息だ。近衛騎士団長に紹介された事がある。頼むから揉めてくれるなよ。彼は、将来有望な俺の派閥の近衛の一人だ」
「……」
「返事!」
「……」
「グレイル。いいか? いつも冷静なお前に言うのもなんだが、恋の一つや二つで、同じ派閥内の相手と揉めるというのは――」
「一つや二つ? 一つきりだ。俺はリリアが好きなんだ」
「あ、う、うん……えっと、だから――」
「婚約者殿がいるのに、何名ものご令嬢とお茶をなさる殿下とは違うんだ!」
「待ってくれ、お前が一途なのは自由だ。あのな、俺だって、側妃選定もしていかないとならない立場で、だ、だから――俺だってユイレ一筋だよ! 惚れてるよ!」
二人がそんなやり取りをしていると、後ろからクスクスと笑う声が聞こえた。
二人がそろって振り返ると、そこには笑顔のユイレが立っていた。エドワードの許婚である彼女は、穏やかに扇で風を送っている。
「嬉しいですわ、エドワード様」
「き、聞いていたのか……」
瞬間的にエドワードが赤面した。その場に甘ったるい空気が漂い出したため、グレイルの気も削がれたのだった。
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