ミリしらな乙女ゲームに転生しました。

猫宮乾

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「グレイル、少し良いか?」

 帰宅したグレイルは、宰相である父に声をかけられて、顔をあげた。

「何かご用ですか、父上」
「ああ、視察先の資料を作っておいて欲しいのと、外遊予定の隣国の情勢についてを頼みたくてな」
「いつまでに?」
「お前ならば、明日の朝には完成させた状態で、私の前に提示してくれると信じている」
「……」

 今夜は寝る事が出来ないなと、グレイルは思った。その場合、学業よりも宰相補佐の仕事が優先となるので、明日は学園を休むことになる。休んだら、リリアに会えない。それは嫌だ。つまり、なるべく早く父の仕事を終わらせて、寝る。これに尽きる。

「分かりました」
「代わりといってはなんだが、ある噂を聞いた」
「父上、俺は今すぐにでも仕事に取り掛かりたいんだ。それは有益な情報でしょうか?」
「私にとってはあまり価値はない。だがグレイルは、幼少時に婚約したいとして名前を上げたクリソコーラ侯爵家のご令嬢を好いているのでは?」
「早急に教えて下さい、父上。どんな噂ですか?」
「なんでも、近衛騎士団長が休暇と被る夜会を探していたのだとか。彼の姪のリリア嬢は、まだ夜会にデビューしていないそうだ」
「!」
「グレイル、明日の朝までに、お前の部屋に置いてきた明後日までに片付けて欲しい仕事も、今宵の内に完了させてくれるならば、その宰相補佐官としての腕は賞賛に値すると私も感じるだろう。まだグレイルは、宰相補佐官となった祝いの夜会を開いていなかったな。夜会の多くは十八歳前後でデビューするものだが、招待主とその家族に限ってその限りではない。グレイル次第では、お前を宰相補佐官としてお披露目するという名目で、このエルディアス侯爵家で夜会を催しても構わない。その日時は、偶然にも、近衛騎士団長に都合の良い日取りとなるだろう。しかし彼には、同伴できない急用が生まれる上、自力でグレイルは同伴者を探す権利がある」

 つらつらと語った父を見て、グレイルは大きく何度も頷いた。

「必ず仕事は片づけておきます。宜しくお願いいたします、父上」
「――しかし、クリソコーラ侯爵家の者か。順調なのか?」
「最近やっと日常会話が可能になった段階です」
「仕事が遅いな」

 グレイルは反論せず、そのまま一礼してから、自室へと早足で向かった。リリアの夜会デビューの際、隣には当然自分が立ちたい。その一心だった。

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