イケニエヒーロー青井くん

トマトふぁ之助

文字の大きさ
54 / 117
金継ぎの青 下:ブルー編

避難先にて

しおりを挟む
 じゅるりと舐め上げられて皮膚が粟立つ。怖気に跳ね上がった青井はその意識を浮上させた。
 「んああ!!?な、わー……なんだ……ズールか……」
 「ギャアアア!!何しくさってんだこのスライム!?」
 金色がかった超巨大スライムが青井の体に覆い被さっているのを見て慌てたのはギレオである。必死に引き剥がそうとするが粘体ゆえに掴み所が無い。妙に落ち着いている青井に喝を入れる。
 「落ち着いてんじゃねえ!食われるぞ!」
 「だいじょうぶ、ズールは俺の駄目になった皮膚を食うのが好きなんです」
 「大丈夫に聞こえねえんだけど!?」
 「まえ、寝てるときにやられて……でも古い皮膚とってくれるし……。しっとりしてむしろありがたくて……。たまにびっくりするけど痛くはないから……」
 首から下を服ごとスライムに飲み込まれた青井は船をこぎ始めている。どう見ても捕食シーンにしか見えず、ギレオは限りなく引きを保ってその光景を注視した。おまえついてこれたのか良かったなあ、譫言のようにこぼされる寝言に理解が追いつかない。知性がないとされるモンスター……魔族としてカウントされないスライムを飼うこと自体信じられなかったが、これは俺が間違っているのだろうか。
 スライムは勝手知ったる様子で青井のパーカーをめくり、食事を行っている。ぱんぱんに膨れた腹部を中心として、人間特有の生白い皮膚が徐々に再生しているらしい。縫合痕の黒ずみや盛り上がって潰れたかさぶたもどきが、端から浮いていかにも痒そうだ。見ればなるほど、ゆっくりと古い皮がめくりあげられてはスライムの粘体に取り込まれ、透けた臓物に移動していくのが窺えた。
 「うえええ……」
 正直引く。青井は腹から肩にかけてほとんど取り込まれた餌になりながら、とろんとした寝ぼけ眼をしばたかせている。危機感が無いどころではない。こいつが精神的に負っている外傷は、実はかなり深いのではなかろうか。
 「アオイ、お前それ、かなりヤバイぞ。きっと体のサイズ測ってんだよ。最後にゃ呑まれるぞ」
 「んん、だいじょう、ぶ……。ばるどにも……いってあるし……」
 「ハア~~~……?ガチで無理……なに……?俺がおかしいん……?」
 ぐむぐむと皮を食む超巨大スライムのズールは、張り出して裂けそうになる乾燥した腹を湿していく。スライムが保湿にいいなんて初耳だ。
 「……ぎれお、さん……ごめん……ねむい……。」
 「あーいいぞ、仕方ねえ……このシェルターは今度こそ安全だ。起きる頃にはボスも帰ってきてるだろ。ゆっくり寝ろ」
 「ありが……、ぅ」
 首からがくんと垂れて微動だにしなくなる。がっつり食ってしっかり寝る、いいことだ。ギレオはクラシックなオーク材の寝台に腰掛け、スライムつきの青井からあたりに視線を移した。
 (……オッサンにしてはやたら趣味の良い部屋だな)
 緊急避難用のシェルターについては、事前にその入り方だけを伝えられていた。
 中に入れば一切の侵入者を拒む作りになっていること、数ヶ月ぶんの食料は勿論衣食住の環境が整っていること。知っているのはこの辺りの知識だけだ。てっきり悪趣味な金色家具の部屋なのだろうと踏んでいたが、意外にも品の良いアンティーク家具が揃えられた家庭的な間取り。柔らかなスプリングが弾む巨大な寝台に落とされたばかりで、ギレオ自身もこのシェルターの広さを把握していない。
 一応確認にまわるか、と腰をあげかけた彼に知らぬ声がかけられる。
 「あら~、ギレオちゃん?大きくなったわねえ」
 ギレオもいっぱしの魔王軍隊員だ。背後からの声に、振り向きざま懐のククリナイフを突きつけようとした。だが後ろには誰もいない。眠りこける青井を背に庇いながら周囲を伺うが、部屋には鼠一匹いやしない。
 「……誰だ!!魔王軍幹部の正妻に楯突いて、只で済むと思ってねえだろうな」
 「あらまあ」
 今度は丁度鼻先から声が聞こえた。甘い吐息すらかかる距離におののいた隙を突いて、ギレオは寝台に押し倒された。ナイフは見えない力で部屋の隅まではじき飛ばされ、仰向けに倒れた若オーガの腹へ馬乗りになった美女が現れる。
 「あ、あ、あんた!オッサン行きつけのクラブでママやってる……!?」
 「うふふ、そうよぉ。リリスです♡夢魔やってます♡」
 バルドの名だたる愛人軍団の最古参と言って差し支えない夢魔である。豊かなブロンドを靡かせた美貌の女は、色香のしたたる手つきでギレオの服を剥いでいく。
 「な、待て!!待って下さい!!いったいどういう……」
 「やだ。聞いてないの?この応接間は私の別宅みたいなものなのよ♡こっちの可愛い子を保護してあげる代わりに、ごはんも一緒に頂戴♡ってお願いしてあるの」
 ギレオの目の前が真っ暗になった。あの野郎、自分の嫁の保護をあろうことか元愛人に頼みやがったのか!!
 リリスは夢魔だ。ごはんとは推して知るべき行為のことであろう。夢のような美女に押し倒されて生け贄が悲鳴をあげる。
 「あ、あの糞爺ぃいい!!いやそりゃ、でもその俺、情緒とか大事にしたい派で……ギャアアア!!」
 「かぁわいい♡大丈夫、大丈夫よ……♡骨抜きにしてあげましょうね……!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...