58 / 117
金継ぎの青 下:ブルー編
魔力汚染
しおりを挟む
———鬼に魅入られた男がしなやかな内腿を痙攣させる。
「ひっ……♡うぁあ……っ♡」
「んん~?ハハァ……すっかり俺様の色に染まったなぁア♡」
具合を確かめるように青年を抱え直せば、尻たぶから濃厚な魔族のザーメンを垂らしたままにボテ腹揺らして擦り寄ってくる。涎にまみれた小さな口へ指を突っ込むと抵抗なく舌を絡めて甘えすらした。上あごをくすぐられて恍惚の表情を浮かべる姿からは、すっかり挫けた心が見て取れる。サファイアの瞳にはくっきりとした金冠の虹彩が宿った後だった。注ぎ入れられた継ぎの色に大鬼は大満足である。
……瞳、毛髪、四肢に胴体、もう全身どこをとってもバルドのものだ。
憎悪していた元ヒーローは、惚けた顔でベッドにしどけなく身を委ねている。無防備な首筋に吸い痕を残すだけで喉を鳴らして悦がる様は、この上なくバルドの欲を満たしてくれた。こんなに執着することになるなどと誰が予想できたであろうか。
「特定の相手の体液を摂取し続けるとよ!!そいつの子分にされちまうんだぜ。わかったかァ?———ハハ、もう……聞こえてねえな」
バルドが利用したのは俗に魔力汚染と呼ばれる現象であった。魔族は種族ごと波長の違う魔力を持って生まれる。魔族同士で番い合う場合、それぞれの魔力が拮抗し合うため本来魔力汚染が起こることは無いが……青井清一は半人半魔である。素体となる人間の体には魔力の収まる余地が全くと言って良いほど無い。
サキュバスは吸精行為に伴う魔力汚染に耐性がある生き物だが、後天的に淫魔にされた青井にはその耐性さえも与えられていない。ベースが人間である青年に対してバルドは継続的に魔力を注ぎ続けてきた。
魔力汚染に挙げられる症状としては———朦朧状態、酩酊感、危機意識の喪失に加えて相手への従属意識の芽生え等が存在する。上位の魔族が下級魔族を手籠めにする際、よく使われる古典的な犯罪手段であった。
……ようやく完全に支配下に置くことができた。青井の関心は、全て番いであるバルドに向けられるべきだ。少なくともこのオーガはそう考えていて、蛇の如き嫉妬深さをこの時ようやく一心地つかせたところだった。……この青年には、何分心配事が多過ぎる。
「あらまあ、随分ご執心なのねえ」
大きなベッドひとつが空間の殆どを占めるクラシックルームに、淑やかな女の声が響いた。赤子も同然になってしまった青井を改めて堪能しようとしていたバルドは顔を歪めて舌打ちを返す。
振り返らずとも化け猫じみた笑みを浮かべる女の存在が察知できた。魔界の繁華街で総元締めをしている女傑は、優雅なレッドドレスをはためかせてにまにまとこちらを見下ろしている。
「リリスか。いきなり出てくんじゃねえ!それにな、話が違うぞ」
「何よお。ちゃんと夢で引き逢わせてあげたわよ?フフッ!あなたのお義母さんと♡」
「そっちじゃねえよ。髪だ髪!ばっさり持っていきやがって!!」
「この子短髪のほうが似合うじゃない。凜々しくて、健康的でしょ?折角親子の再会なのに陰気に見えちゃうわよ」
「俺様は気に入ってた!」
「アナタって子は好みがわかりやすいわねえ……。憂鬱そうな美人ばっかり狙うの、懲りないんだから……。無理させて、ギレオちゃんに怒られるんだからね」
「ほっとけ。栄養補給も兼ねてんだよ」
リリスがそう不服でもなさそうにバルドを諫める。
今更遠慮する間柄でもないが、青井の泥濘む後孔をゆるゆる犯していたバルドも腰を止めて聞き返した。
「レオの野郎はどうだ。まさか潰してねえだろうな」
「いやねえ野蛮よ!!ちょっと搾り取っただけじゃない!!……今は寝てるから、あと一週間ほど休ませてあげればいいと思うわ」
この口ぶりでは二週間は使い物にならないだろうとバルドは踏んでいた。リリスの性豪ぶりは魔界でも伝説になるレベルだ。見ただけでは年齢不詳の美女でしかないが、実際誰も年を割り出せないほど長く生きている魔族である。夢魔であり、淫魔であり、魔女の顔も持つ彼女は魔界でも妖怪扱いされていた。
まあギレオもオーガの端くれだ。若いのだから死にはしなかろう。
バルドは溜め息を溢して夢見心地の番いに視線を戻し、要望だけ己の古馴染みに伝える。
「この部屋もう暫く取れるか?屋敷を修復中でな。ヤサが要るんだが」
「子兎相手に焼きが回ったわねえ……。いいわよ、どうせここは娼館だもの。ホテル代わりにでも、そのままの用途でも、好きにお使いなさいな」
「悪いな。ギレオの奴は目を覚まし次第屋敷の修繕に向かわせてくれ。」
了承すると同時に、部屋から女主人の姿は消えていた。元愛人の魔女たちが徒党を組んで屋敷を襲撃したことは、人間界からの帰還を果たしたバルドの耳へ一番に届けられていた。非常に手間がかかるが結界を一から張り直さなくてはならない。安全が確保できるまでは青井を戻すことはできないだろう……まさか魔女たちも、リリス直営の高級娼館に妊夫を匿うとは思うまい。
バルドは首を掻いて部屋中を見回した。
シックな骨董家具ばかりで揃えた地味な部屋だが、プレイ用のバスタブにルームサービスの呼び鈴、頼めば着替えだろうがシャンパンタワーだろうが用意できないものはない。生活するに困ることは無さそうだ。
———思案するバルドの指を、小さく引く者がいる。
「……おう、ほっといて悪かったなア。もう眠るか?」
ヒーローと怪人として出会った頃を思い出させる髪の短さだ。意思の強そうな怒り眉と生意気な口ぶりが懐かしい。目の前にいるブルーはもうまともに喋ることも叶わず、腹奥から丹念に躾けられ、どっぷりと淫欲に浸されている。
頬を撫でる掌をとって、無意識のうちに指先を舌でくるむ。舌に受ける爪の感触すら慰めになり、飴代わりに無心の愛撫を施していく。垂れた眉に潤んだ瞳だけは、もの言いたげにバルドの瞳へと向けられていた。
ちゅう♡ちゅ、れり♡ちゅるる♡
「ん、……ふぅう……っ♡♡こきゅ、ん、んちゅっ……♡」
「…………フゥーッ……♡堪らねえキレ方しちまったなあ……♡」
人間界での記憶を殆ど切り取られた結果、青井に残ったのはバルドと過ごした蜜月の記憶だけだった。矜恃にかけて恥じらいを捨てきれなかった今までとは違い、色惚けた頭は夫とのセックスに溺れたがっている。「魔族」であるならば誰に申し訳なさを感じることも無い、これからはより行為に集中させられるだろう。
凜々しい眉をハの字に下げて、元ヒーローが言外に交尾の続きを強請っていた。重く熱い呼吸を人外の咥内へと飲み込まれ、無言のうちに次の試合へとなだれ込む。
その後長時間にわたって娼館の一室に、ベッドの軋みが響き続けた。危険を察知できなくなった獲物に大鬼の毒牙が丹念に突き込まれていく。ぐちゃぐちゃに溶けた脳みそを書き換えるような囁きと、甘く擦れた喘ぎの時間が青臭い空気に折り重なって淫らに花開く。窓に叩きつけられる強酸の雨粒や止むことの無い嵐の轟音が、やがてその全てを覆い隠してしまう。
「ひっ……ヒィ……ッ♡あっ♡ア、うあぁ……ッ♡♡♡」
「吸え、食らえっ!!クク、絶やさず注いでやるからなぁ……ッ♡!!」
突き上げに呼応して青年の下腹に這う淫紋が淡く輝きを増していく。
———腹の子どもが生まれる日は、魔女たちの襲来と共にもうすぐそこまでやってきていた。
「ひっ……♡うぁあ……っ♡」
「んん~?ハハァ……すっかり俺様の色に染まったなぁア♡」
具合を確かめるように青年を抱え直せば、尻たぶから濃厚な魔族のザーメンを垂らしたままにボテ腹揺らして擦り寄ってくる。涎にまみれた小さな口へ指を突っ込むと抵抗なく舌を絡めて甘えすらした。上あごをくすぐられて恍惚の表情を浮かべる姿からは、すっかり挫けた心が見て取れる。サファイアの瞳にはくっきりとした金冠の虹彩が宿った後だった。注ぎ入れられた継ぎの色に大鬼は大満足である。
……瞳、毛髪、四肢に胴体、もう全身どこをとってもバルドのものだ。
憎悪していた元ヒーローは、惚けた顔でベッドにしどけなく身を委ねている。無防備な首筋に吸い痕を残すだけで喉を鳴らして悦がる様は、この上なくバルドの欲を満たしてくれた。こんなに執着することになるなどと誰が予想できたであろうか。
「特定の相手の体液を摂取し続けるとよ!!そいつの子分にされちまうんだぜ。わかったかァ?———ハハ、もう……聞こえてねえな」
バルドが利用したのは俗に魔力汚染と呼ばれる現象であった。魔族は種族ごと波長の違う魔力を持って生まれる。魔族同士で番い合う場合、それぞれの魔力が拮抗し合うため本来魔力汚染が起こることは無いが……青井清一は半人半魔である。素体となる人間の体には魔力の収まる余地が全くと言って良いほど無い。
サキュバスは吸精行為に伴う魔力汚染に耐性がある生き物だが、後天的に淫魔にされた青井にはその耐性さえも与えられていない。ベースが人間である青年に対してバルドは継続的に魔力を注ぎ続けてきた。
魔力汚染に挙げられる症状としては———朦朧状態、酩酊感、危機意識の喪失に加えて相手への従属意識の芽生え等が存在する。上位の魔族が下級魔族を手籠めにする際、よく使われる古典的な犯罪手段であった。
……ようやく完全に支配下に置くことができた。青井の関心は、全て番いであるバルドに向けられるべきだ。少なくともこのオーガはそう考えていて、蛇の如き嫉妬深さをこの時ようやく一心地つかせたところだった。……この青年には、何分心配事が多過ぎる。
「あらまあ、随分ご執心なのねえ」
大きなベッドひとつが空間の殆どを占めるクラシックルームに、淑やかな女の声が響いた。赤子も同然になってしまった青井を改めて堪能しようとしていたバルドは顔を歪めて舌打ちを返す。
振り返らずとも化け猫じみた笑みを浮かべる女の存在が察知できた。魔界の繁華街で総元締めをしている女傑は、優雅なレッドドレスをはためかせてにまにまとこちらを見下ろしている。
「リリスか。いきなり出てくんじゃねえ!それにな、話が違うぞ」
「何よお。ちゃんと夢で引き逢わせてあげたわよ?フフッ!あなたのお義母さんと♡」
「そっちじゃねえよ。髪だ髪!ばっさり持っていきやがって!!」
「この子短髪のほうが似合うじゃない。凜々しくて、健康的でしょ?折角親子の再会なのに陰気に見えちゃうわよ」
「俺様は気に入ってた!」
「アナタって子は好みがわかりやすいわねえ……。憂鬱そうな美人ばっかり狙うの、懲りないんだから……。無理させて、ギレオちゃんに怒られるんだからね」
「ほっとけ。栄養補給も兼ねてんだよ」
リリスがそう不服でもなさそうにバルドを諫める。
今更遠慮する間柄でもないが、青井の泥濘む後孔をゆるゆる犯していたバルドも腰を止めて聞き返した。
「レオの野郎はどうだ。まさか潰してねえだろうな」
「いやねえ野蛮よ!!ちょっと搾り取っただけじゃない!!……今は寝てるから、あと一週間ほど休ませてあげればいいと思うわ」
この口ぶりでは二週間は使い物にならないだろうとバルドは踏んでいた。リリスの性豪ぶりは魔界でも伝説になるレベルだ。見ただけでは年齢不詳の美女でしかないが、実際誰も年を割り出せないほど長く生きている魔族である。夢魔であり、淫魔であり、魔女の顔も持つ彼女は魔界でも妖怪扱いされていた。
まあギレオもオーガの端くれだ。若いのだから死にはしなかろう。
バルドは溜め息を溢して夢見心地の番いに視線を戻し、要望だけ己の古馴染みに伝える。
「この部屋もう暫く取れるか?屋敷を修復中でな。ヤサが要るんだが」
「子兎相手に焼きが回ったわねえ……。いいわよ、どうせここは娼館だもの。ホテル代わりにでも、そのままの用途でも、好きにお使いなさいな」
「悪いな。ギレオの奴は目を覚まし次第屋敷の修繕に向かわせてくれ。」
了承すると同時に、部屋から女主人の姿は消えていた。元愛人の魔女たちが徒党を組んで屋敷を襲撃したことは、人間界からの帰還を果たしたバルドの耳へ一番に届けられていた。非常に手間がかかるが結界を一から張り直さなくてはならない。安全が確保できるまでは青井を戻すことはできないだろう……まさか魔女たちも、リリス直営の高級娼館に妊夫を匿うとは思うまい。
バルドは首を掻いて部屋中を見回した。
シックな骨董家具ばかりで揃えた地味な部屋だが、プレイ用のバスタブにルームサービスの呼び鈴、頼めば着替えだろうがシャンパンタワーだろうが用意できないものはない。生活するに困ることは無さそうだ。
———思案するバルドの指を、小さく引く者がいる。
「……おう、ほっといて悪かったなア。もう眠るか?」
ヒーローと怪人として出会った頃を思い出させる髪の短さだ。意思の強そうな怒り眉と生意気な口ぶりが懐かしい。目の前にいるブルーはもうまともに喋ることも叶わず、腹奥から丹念に躾けられ、どっぷりと淫欲に浸されている。
頬を撫でる掌をとって、無意識のうちに指先を舌でくるむ。舌に受ける爪の感触すら慰めになり、飴代わりに無心の愛撫を施していく。垂れた眉に潤んだ瞳だけは、もの言いたげにバルドの瞳へと向けられていた。
ちゅう♡ちゅ、れり♡ちゅるる♡
「ん、……ふぅう……っ♡♡こきゅ、ん、んちゅっ……♡」
「…………フゥーッ……♡堪らねえキレ方しちまったなあ……♡」
人間界での記憶を殆ど切り取られた結果、青井に残ったのはバルドと過ごした蜜月の記憶だけだった。矜恃にかけて恥じらいを捨てきれなかった今までとは違い、色惚けた頭は夫とのセックスに溺れたがっている。「魔族」であるならば誰に申し訳なさを感じることも無い、これからはより行為に集中させられるだろう。
凜々しい眉をハの字に下げて、元ヒーローが言外に交尾の続きを強請っていた。重く熱い呼吸を人外の咥内へと飲み込まれ、無言のうちに次の試合へとなだれ込む。
その後長時間にわたって娼館の一室に、ベッドの軋みが響き続けた。危険を察知できなくなった獲物に大鬼の毒牙が丹念に突き込まれていく。ぐちゃぐちゃに溶けた脳みそを書き換えるような囁きと、甘く擦れた喘ぎの時間が青臭い空気に折り重なって淫らに花開く。窓に叩きつけられる強酸の雨粒や止むことの無い嵐の轟音が、やがてその全てを覆い隠してしまう。
「ひっ……ヒィ……ッ♡あっ♡ア、うあぁ……ッ♡♡♡」
「吸え、食らえっ!!クク、絶やさず注いでやるからなぁ……ッ♡!!」
突き上げに呼応して青年の下腹に這う淫紋が淡く輝きを増していく。
———腹の子どもが生まれる日は、魔女たちの襲来と共にもうすぐそこまでやってきていた。
20
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる