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翡翠挽回 上:グリーン編
罅割れを埋めるもの
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――この年で説教受けることになるとは思わなかった。
350歳オーバーのバルドは呆然と己の膝頭を見つめる。かれこれ一時間は触っていなかった家庭のあれそれを糾弾されている。初めは言い返していたバルドも、徐々に答えに窮していき、喉奥から唸りを絞り出すだけの生き物になってきた。ベッドに腰掛けていたのにいつの間にか腰に手を当てて見下ろす妻と正座する夫の構図になっている。
多く妻を娶った知り合いに聞いてはいたが、指示されたわけではないのにどうしてこうなった。空間にワームホールができたとしか思えない。
「……だからさ。俺は下準備とか、催事の手配だけして自分は参加しないって癖だけは直してほしいんだ。家族なんだぞ。たまには仕方ないよ。でもバルドはいつもだろう」
「あぁ……」
「夕飯とか、最後に一緒に食べたのいつ?俺たちが飯食ったのを確認するだけでお前はろくろく食べないまま仕事行っちゃうだろ。言っておいてくれれば弁当とかさ……現場で配給されてるのかもしれないけど、そういうのだって心配しないと思ってる?ハウスキーパーのメンバーもいつ飯食ってるかわからないって言ってたし」
「うん……」
既婚の幼馴染みを段取りの下手な奴だと馬鹿にしていたバルドは猛省した。血判書の誓約違反を憂慮してか面頬を付けたままの清一はとうとうとまくし立てる。
「……俺に話せないこと、沢山あるのはわかってる。忘れさせた記憶を、思い出させないようにしてるだろ」
「あ、ああ!?ち、ちっげえよ!!」
「片眉上がった。嘘つくときの癖だぞ。……現役時代の後半辺りか?停戦協定が締結される前日にかけて、記憶がかなり曖昧なんだよな。……この記憶喪失は恐らく永続的なものじゃない。直接その対象と接触するか、人づてにでも噂を聞くだけでも、記憶が甦るようになっているんじゃないか」
嘉名が良い例だ。清一は同期のヒーロー達の名前は思い出せても、その容姿や性格など詳細をぼんやりと思い出せなかった。彼が目の前にやってきて、初めて鮮明に彼との思い出が蘇ってきたのである。魔王の下でアイドル活動に励むピンクや主人の金で遊蕩の限りを尽くすイエローなど、魔界側に来てからの彼らのほうが清一は親しみを覚える。単純に、過去の彼らについての情報が少なすぎるのだ。
かつての仲間がどういう人柄だったか、思い出すのは必ず誰かしらに質問をされてから。外部から対象に関しての刺激を得た直後。
「それで考えたんだけど、俺、リーダーのこと全然思い出せないんだ。――屋敷の人もバルドも、あの人の名前だけは絶対話題にしなかった」
捕虜に降ってすぐの頃、引き渡し先を聞いたっきりだ。仲良くしていた男の話など聞きたくはないと、バルド自身も刷り込みのように口に出していた。
「憶測に過ぎないね。それによ、それが今何の関係がある」
「気づいてないかもしれないけどさ。バルド、外出云々の話題になると途端に饒舌になるだろ。どんなに疲れて、口数少なくなっていたって」
「…………」
「最近そうやって、すごく上手に建前を並べることが増えた。わかるぜ、アンタ、本音で話すとき態度が雑になるから――だからさ。ここ何ヶ月かバルドが輪をかけて忙しいのって、リーダーが関わってるんじゃないかと……俺はそう思ってる」
清一は回復している。包むように守ってくれていたバルドの庇護を窮屈に感じるほどに。……疲弊し傷つききった身体は十分以上の療養を経て、以前より遙かに清一の思う通りに動き、考えることを助けてくれる。
「……俺が元気になれたのはバルドのおかげだ。他にもダグと……ギレオさんやルイゼ先生、店長に、サキュバスの皆がよくしてくれるから、またこうして剣を握れる。でも、こうも思うんだ……俺が食わせて貰ってる飯も、着てる服も、与えられた何もかもを贖ってくれてるのはバルドの稼ぎで、オーガ族の汗水垂らして働いた成果だと。寝食削って領土を守ってるバルドの番いだから、皆は魔族の仇が安穏と暮らすのを許してくれているんだ。……その温情に胡座をかいて、できることもしない恥知らずにはなりたくない。少なくともアンタの負担を増やして守られているなんて、絶対に御免被る」
護衛が増えた。屋敷に出入りするオーガ衆が剣呑な雰囲気で日々の異常を探している。それには清一には知らされていない理由があるはずだ。
「教えてくれよ。俺が戦力にならなくても、せめて相談してほしい。――隣にいる夫と子供くらいは、命に替えても守ってみせるから」
正座するバルドの前に片膝をつき、丸く見開かれた目と高さを合わせる。岩盤じみた彼の手をとった。炭鉱を周り、時に槌を振るって仲間の禄を賄うまめとたこだらけのささくれだった指。羊皮紙に脂を吸われてかさついた皮膚にインクが染みついている。この手が好きだ。誰かのために拵えた傷が堆積してできたその右手へと、青年は額ずいた。それは願いを通り越して誓いの様相を呈している。
金冠の青がこちらを真っ直ぐに貫いて、二人は瞬間、永遠を覗き込んだ。
数秒の間呆気にとられていたオーガの頭領が半開きの口をぎちぎちと曲げた。勿体なくて手を振り払うことが躊躇われる。案の定引っ込められかけた人間の小さな手を、逃げられないよう捕まえる。
「……命に替えられちゃ困んだよ!!クソ!!」
「そ、それは……言葉のアヤで……うん」
「今更ぶってんじゃねえ!!照れるくらいなら叙任式ごっこなんざやる必要なかったろ!!」
「俺が知ってる中じゃこれが一番礼を尽くしたやり方なんだよ!」
面頬の下、シャツのカラーに至るまでヒトの薄い皮膚が真っ赤に火照っている。握り込んだ五指が汗ばみだす。顔を背けて目を合わせてくれないことをバルドは内心惜しく思った。徐々に気恥ずかしくなってきたと見えて、清一がぎこちなく口角を上げる。
「…………俺はそう、そんなことを、……思っているので。なるべくはやく話す気になってほしい、なー……。じゃ。そろそろ、ダグのお迎えに行こうか……アッ!?」
清一の身体が不意に宙へ持ち上がった。抱え上げた本人は非常に不本意そうに、苦虫を噛みつぶしたような表情で、大鬼は一息に隠匿していた事実を告げる。
「――レッドが脱走した。赤端ジュンロク、本名イリエタツキはここ数ヶ月、魔界各所に現れては魔族を無差別に殺しまくってる」
神出鬼没で魔族の根城に現れては、その土地の長老格を殺して去って行く。犯行予告も、凶行の後の声明もない。殺害犯がレッドである証は何一つ存在せず、しかし現場には必ず真新しいスコップが置き捨てられていた。血糊のべっとりとついた大ぶりの市販品。人間界ではお馴染み、武器の使い捨てを好むレッド愛用の品だ。
「ガイシャの配下から城に訴状が届いた。目撃者はいない。見た奴は全員こまぎれにされた。……引受人のバロンに問い合わせたが奴はしらを切ってる、わざわざアカハナ野郎を引き受けた管理責任者はあいつだからな。レッドに自営賭博場のディーラーをさせて脱走説を否定してるが、……十中八九レッドに化けさせた別人だろう。あとは、そうだな――」
バルドは言い淀んだ。
「奴はヒーローを狙っている可能性がある。二ヶ月前魔王んとこのピンク小僧がライブ会場で襲撃された。公にはされてねえ。見つからずに無事だったそうだが護衛がやられた。次はイエロー、飲みいった店でミンチにされた。一ヶ月前のことだ。不死の身体で助かった。……続いて、今度はあれだ。クソグリーンのクソクソヘッドハンティング」
海を統べる海洋魔族の王が斃され、嘉名は捕虜から一躍その頂点に返り咲いた。レッドの出奔と関わっている可能性は大いにある。
「レッドを捕まえるまでお前らを表に出したくなかったんだよ。それがドクソミドリもだろ、嫌になっちまう」
「……な、なんで言ってくれなかったんだ。俺だって知ってたら……」
「するわけねえ。……お前レッドに懸想してただろうが」
「は、はっ……はぁ!?」
「気づかないとでも思ったか?ブルーくんの身辺調査は終えてますゥ。ガキの頃から憧れのヒーローだもんな?あんなにお手紙いっぱい書いちゃってよ。レッドに出せなかったファンレター、宿舎の机から出てきたぜ」
「そ、それは訓練生だったころの話だ!捨てるタイミングがわからなくて……人のプライバシーをなんだと思ってる!!ひ、卑劣なことを……ッ!!」
「うるせえなあどうせ卑劣漢だよ!――……だけどな、それだってあんな屑ッ!!ちょっとでも思い出させたくなかったんだ!!」
自然と、腕が動いた。腰を支えて持ち上げられた青年の手が、大鬼の首に回され、面頬を挟んでそっと額同士を引き合わせる。
「……ほんとに……昔のことだよ」
「どうかなァ」
「尊敬してた。好きとかさあ、そんなんじゃなくて」
「わかんねえだろ。思い出したら……」
清一が、顔半分を覆う『隠し』を外す。後頭部に結わえられた留め紐を緩めて、すぐ傍の寝台に放る。バルドは襲い来るはずの白焔に目を眇めたが、契約違反を犯した際の嫌な衝撃はなく――角の中腹に柔らかく唇がふれる感触があった。
「……実は昨日。バルドが帰ったあと、契約書は先生が破っちゃったんだ」
眉尻を下げて清一が告げる。人間の薄い手がバルドの首筋を撫で、頭を抱え込むよう後ろへまわった。久しぶりのキスは深く、甘い。
350歳オーバーのバルドは呆然と己の膝頭を見つめる。かれこれ一時間は触っていなかった家庭のあれそれを糾弾されている。初めは言い返していたバルドも、徐々に答えに窮していき、喉奥から唸りを絞り出すだけの生き物になってきた。ベッドに腰掛けていたのにいつの間にか腰に手を当てて見下ろす妻と正座する夫の構図になっている。
多く妻を娶った知り合いに聞いてはいたが、指示されたわけではないのにどうしてこうなった。空間にワームホールができたとしか思えない。
「……だからさ。俺は下準備とか、催事の手配だけして自分は参加しないって癖だけは直してほしいんだ。家族なんだぞ。たまには仕方ないよ。でもバルドはいつもだろう」
「あぁ……」
「夕飯とか、最後に一緒に食べたのいつ?俺たちが飯食ったのを確認するだけでお前はろくろく食べないまま仕事行っちゃうだろ。言っておいてくれれば弁当とかさ……現場で配給されてるのかもしれないけど、そういうのだって心配しないと思ってる?ハウスキーパーのメンバーもいつ飯食ってるかわからないって言ってたし」
「うん……」
既婚の幼馴染みを段取りの下手な奴だと馬鹿にしていたバルドは猛省した。血判書の誓約違反を憂慮してか面頬を付けたままの清一はとうとうとまくし立てる。
「……俺に話せないこと、沢山あるのはわかってる。忘れさせた記憶を、思い出させないようにしてるだろ」
「あ、ああ!?ち、ちっげえよ!!」
「片眉上がった。嘘つくときの癖だぞ。……現役時代の後半辺りか?停戦協定が締結される前日にかけて、記憶がかなり曖昧なんだよな。……この記憶喪失は恐らく永続的なものじゃない。直接その対象と接触するか、人づてにでも噂を聞くだけでも、記憶が甦るようになっているんじゃないか」
嘉名が良い例だ。清一は同期のヒーロー達の名前は思い出せても、その容姿や性格など詳細をぼんやりと思い出せなかった。彼が目の前にやってきて、初めて鮮明に彼との思い出が蘇ってきたのである。魔王の下でアイドル活動に励むピンクや主人の金で遊蕩の限りを尽くすイエローなど、魔界側に来てからの彼らのほうが清一は親しみを覚える。単純に、過去の彼らについての情報が少なすぎるのだ。
かつての仲間がどういう人柄だったか、思い出すのは必ず誰かしらに質問をされてから。外部から対象に関しての刺激を得た直後。
「それで考えたんだけど、俺、リーダーのこと全然思い出せないんだ。――屋敷の人もバルドも、あの人の名前だけは絶対話題にしなかった」
捕虜に降ってすぐの頃、引き渡し先を聞いたっきりだ。仲良くしていた男の話など聞きたくはないと、バルド自身も刷り込みのように口に出していた。
「憶測に過ぎないね。それによ、それが今何の関係がある」
「気づいてないかもしれないけどさ。バルド、外出云々の話題になると途端に饒舌になるだろ。どんなに疲れて、口数少なくなっていたって」
「…………」
「最近そうやって、すごく上手に建前を並べることが増えた。わかるぜ、アンタ、本音で話すとき態度が雑になるから――だからさ。ここ何ヶ月かバルドが輪をかけて忙しいのって、リーダーが関わってるんじゃないかと……俺はそう思ってる」
清一は回復している。包むように守ってくれていたバルドの庇護を窮屈に感じるほどに。……疲弊し傷つききった身体は十分以上の療養を経て、以前より遙かに清一の思う通りに動き、考えることを助けてくれる。
「……俺が元気になれたのはバルドのおかげだ。他にもダグと……ギレオさんやルイゼ先生、店長に、サキュバスの皆がよくしてくれるから、またこうして剣を握れる。でも、こうも思うんだ……俺が食わせて貰ってる飯も、着てる服も、与えられた何もかもを贖ってくれてるのはバルドの稼ぎで、オーガ族の汗水垂らして働いた成果だと。寝食削って領土を守ってるバルドの番いだから、皆は魔族の仇が安穏と暮らすのを許してくれているんだ。……その温情に胡座をかいて、できることもしない恥知らずにはなりたくない。少なくともアンタの負担を増やして守られているなんて、絶対に御免被る」
護衛が増えた。屋敷に出入りするオーガ衆が剣呑な雰囲気で日々の異常を探している。それには清一には知らされていない理由があるはずだ。
「教えてくれよ。俺が戦力にならなくても、せめて相談してほしい。――隣にいる夫と子供くらいは、命に替えても守ってみせるから」
正座するバルドの前に片膝をつき、丸く見開かれた目と高さを合わせる。岩盤じみた彼の手をとった。炭鉱を周り、時に槌を振るって仲間の禄を賄うまめとたこだらけのささくれだった指。羊皮紙に脂を吸われてかさついた皮膚にインクが染みついている。この手が好きだ。誰かのために拵えた傷が堆積してできたその右手へと、青年は額ずいた。それは願いを通り越して誓いの様相を呈している。
金冠の青がこちらを真っ直ぐに貫いて、二人は瞬間、永遠を覗き込んだ。
数秒の間呆気にとられていたオーガの頭領が半開きの口をぎちぎちと曲げた。勿体なくて手を振り払うことが躊躇われる。案の定引っ込められかけた人間の小さな手を、逃げられないよう捕まえる。
「……命に替えられちゃ困んだよ!!クソ!!」
「そ、それは……言葉のアヤで……うん」
「今更ぶってんじゃねえ!!照れるくらいなら叙任式ごっこなんざやる必要なかったろ!!」
「俺が知ってる中じゃこれが一番礼を尽くしたやり方なんだよ!」
面頬の下、シャツのカラーに至るまでヒトの薄い皮膚が真っ赤に火照っている。握り込んだ五指が汗ばみだす。顔を背けて目を合わせてくれないことをバルドは内心惜しく思った。徐々に気恥ずかしくなってきたと見えて、清一がぎこちなく口角を上げる。
「…………俺はそう、そんなことを、……思っているので。なるべくはやく話す気になってほしい、なー……。じゃ。そろそろ、ダグのお迎えに行こうか……アッ!?」
清一の身体が不意に宙へ持ち上がった。抱え上げた本人は非常に不本意そうに、苦虫を噛みつぶしたような表情で、大鬼は一息に隠匿していた事実を告げる。
「――レッドが脱走した。赤端ジュンロク、本名イリエタツキはここ数ヶ月、魔界各所に現れては魔族を無差別に殺しまくってる」
神出鬼没で魔族の根城に現れては、その土地の長老格を殺して去って行く。犯行予告も、凶行の後の声明もない。殺害犯がレッドである証は何一つ存在せず、しかし現場には必ず真新しいスコップが置き捨てられていた。血糊のべっとりとついた大ぶりの市販品。人間界ではお馴染み、武器の使い捨てを好むレッド愛用の品だ。
「ガイシャの配下から城に訴状が届いた。目撃者はいない。見た奴は全員こまぎれにされた。……引受人のバロンに問い合わせたが奴はしらを切ってる、わざわざアカハナ野郎を引き受けた管理責任者はあいつだからな。レッドに自営賭博場のディーラーをさせて脱走説を否定してるが、……十中八九レッドに化けさせた別人だろう。あとは、そうだな――」
バルドは言い淀んだ。
「奴はヒーローを狙っている可能性がある。二ヶ月前魔王んとこのピンク小僧がライブ会場で襲撃された。公にはされてねえ。見つからずに無事だったそうだが護衛がやられた。次はイエロー、飲みいった店でミンチにされた。一ヶ月前のことだ。不死の身体で助かった。……続いて、今度はあれだ。クソグリーンのクソクソヘッドハンティング」
海を統べる海洋魔族の王が斃され、嘉名は捕虜から一躍その頂点に返り咲いた。レッドの出奔と関わっている可能性は大いにある。
「レッドを捕まえるまでお前らを表に出したくなかったんだよ。それがドクソミドリもだろ、嫌になっちまう」
「……な、なんで言ってくれなかったんだ。俺だって知ってたら……」
「するわけねえ。……お前レッドに懸想してただろうが」
「は、はっ……はぁ!?」
「気づかないとでも思ったか?ブルーくんの身辺調査は終えてますゥ。ガキの頃から憧れのヒーローだもんな?あんなにお手紙いっぱい書いちゃってよ。レッドに出せなかったファンレター、宿舎の机から出てきたぜ」
「そ、それは訓練生だったころの話だ!捨てるタイミングがわからなくて……人のプライバシーをなんだと思ってる!!ひ、卑劣なことを……ッ!!」
「うるせえなあどうせ卑劣漢だよ!――……だけどな、それだってあんな屑ッ!!ちょっとでも思い出させたくなかったんだ!!」
自然と、腕が動いた。腰を支えて持ち上げられた青年の手が、大鬼の首に回され、面頬を挟んでそっと額同士を引き合わせる。
「……ほんとに……昔のことだよ」
「どうかなァ」
「尊敬してた。好きとかさあ、そんなんじゃなくて」
「わかんねえだろ。思い出したら……」
清一が、顔半分を覆う『隠し』を外す。後頭部に結わえられた留め紐を緩めて、すぐ傍の寝台に放る。バルドは襲い来るはずの白焔に目を眇めたが、契約違反を犯した際の嫌な衝撃はなく――角の中腹に柔らかく唇がふれる感触があった。
「……実は昨日。バルドが帰ったあと、契約書は先生が破っちゃったんだ」
眉尻を下げて清一が告げる。人間の薄い手がバルドの首筋を撫で、頭を抱え込むよう後ろへまわった。久しぶりのキスは深く、甘い。
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