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第389話 な、なんでこうなるのぉ??
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「――はっ?」
会見を終え、事務所で一息付いていた時、突如として流れてきた訃報。
BGM代わりにニュースを付けた奥村は目を剥いて驚く。
「――え? は? 丸井が……死んだ??」
丸井議員とはほんの四時間前まで話をしていた。
その丸井議員が死んだ??
意味が分からない。どう言う事だ??
まさか、情報漏洩の事を暴露した私が原因じゃないだろうな……
ニュースで死因を確認すると、自殺とある。
笑えない冗談だ。四時間前まで話をしていた人物が自殺?
――何で? 何で、何で、何で、何で、何で??
だって、情報漏洩したのは純然たる事実じゃないか。
それを公表されて自殺ってどういう事? 他の罪もまとめて被って貰ったのがいけなかったのか??
もしそうだとすれば、余りに精神が脆弱過ぎる。
情報漏洩なんて議員辞職クラスの不祥事。今更一つや二つ罪が増えた所で別にいいじゃないか。いや、そんな事よりも!
重要なのは全国放送で報道されたニュースの内容だ。
「……丸井の奴に情報漏洩の責任全てを押し付けたばかりなのに、何故、その事が発覚する!?」
しかも、議員全員が情報漏洩に関わり合いがあったとか、私の知らない情報まで!
議員全員が情報漏洩に関わり合いがあると知っていれば対応も違ってきたというのに、これは……。流石にこれは拙い。拙い。拙い。拙い。拙い!
百条委員会の情報漏洩が明らかになった。
その責任を他の罪ごと丸井議員に全部押し付けたら、丸井議員が自殺してしまい、挙句、情報漏洩は百条委員会のメンバー全員からされたものである事が報道されてしまったとなれば百条委員会が一人の議員に全責任を負わせようとしたようにしか見えないではないか!
「……」
事実そうなのだが、この流れは拙い。非常に拙い。
しかも、流出した内容は丸井の創作という事になっている。
にも拘らず、すべての議員から同一の情報漏洩があったとなれば、このストーリー自体が創作である事がバレてしまう。
いや、既にバレていると言っても過言ではない。
プルルルルルルッ
プルルルルルルッ
不意に鳴り出す電話。
プルルルルルルッ
プルルルルルルッ!
プルルルルルルッ!!
プルルルルルルッ!!!
プルルルルルルッ!!!!
室内に鳴り響く電話の音を聞き奥村は思わず後退る。
普段、鳴る事のない電話。
おそらくは、他人事にも関わらず義憤に駆られ電話をかけてきたキレやすい暇人達が罵詈雑言を言う事でスッキリする為に掛かってきているであろう電話が電話音のカルテットを奏でる。
――拙い。これは非常に拙い。
あの報道がされた事で、社会に、殴っても反撃される事のないサンドバッグ認定されてしまった様だ。
電話に出れば、当然の如く罵詈雑言と、自尊心を抉るような言葉を吐き捨てる様に言われるのだろう。
人を傷付けるつもりで掛けてくる害悪の塊の様な電話。こんな事で電話を掛けてくるとは……おそらく、日頃からストレスを溜め発散する為の捌け口を探していたのだろう。
「く、くそぉぉぉぉ!!」
ブチブチブチッ!
雑にコードに引っ張ると電話機が床に落ちる。
それでも鳴り続ける電話を忌々し気に眺めると、奥村は感情ここに在らずといった表情を浮かべ蹲った。
◆◆◆
「――せ、先生! 仁海先生っ!」
翌日。仁海が事務所でコーヒーを飲んでいると、血相を変えた第一秘書が部屋に駆け込んできた。
「何だ。そんなに慌ててどうした? 君が慌てるなんて珍しいじゃないか」
第一秘書はコーヒーカップ片手に新聞を読む仁海の前に立つと、タブレットをデスクの上に置く。
「大変な事が……非公開で行われた百条委員会の資料データが流出しました」
「うん? 百条委員会の資料データが流出? それはいかんな……」
情報管理があまりに杜撰だ。
非公開で行われたという事は、公開できない理由があるという事に他ならない。
「それで? 内容は?」
第一秘書の慌てようから、相当拙いデータが流出したのだろう。
タブレットを覗き込んだ仁海はその内容を見て絶句する。
そこには、衝撃的な内容が書かれていた。
都政転覆計画とその実行計画案。
都知事のパワハラの噂話や今回の発端となった告発文書の発信騒ぎのシナリオ。
その内容は既に、一部のマスコミが入手しており、今行われている選挙に影響を与えない為、恣意的に報道を自粛していた事が書かれていた。
「な、なんだ、これは……誰が……誰が情報を漏洩した……」
「し、信じられない事ですが、全員です。百条委員会の構成員全員のパソコンから流出した様で……情報漏洩の罪を一人の議員に擦り付けようとした結果、その議員は自殺……大変な事になっています」
「な、なんだと……?」
情報漏洩の罪を一人の議員に押し付けた所、その議員が自殺。その後、百条委員会の構成員全員のパソコンから情報漏洩した事を暴露……最悪。それも最悪中の最悪だ。
「……業者に言って今すぐ消させろ。今すぐだ」
「い、今すぐにですか!?」
「当たり前だっ! 今すぐこれを消せっ!」
くだらない陰謀論だと思いたいが、この文章には妙な説得力がある。しかも、百条委員会すべての構成員から同一の文章が出たという事は恐らく事実。
もしこの論調のまま選挙当日を迎えれば大変な事になる。
池谷を都知事の座から追い落とす為にパワハラにおねだり疑惑をでっち上げた事が都民に知られてしまう。
そうなれば、世論がひっくり返る。
セイヤに東京都知事の座を渡す事も、セイヤ自身を手駒にする事もできなくなってしまう。
だからこそ、仁海は必死になって言う。
「業者がダメなら圧力だ。今すぐマスコミに圧力をかけろ!」
「む、無理です! 今、下手に動けば、こちらまで被害を受ける可能性があります!」
「な、何ぃ!? では、どうしろと言うんだ!」
「……静観するしかありません」
「せ、静観だとぉ? ふざけるな! この私に指を咥えて見ていろとでも言うつもりか!」
あるだろ。この状況を打開する為の策が、一つくらいあるだろ!
肝心な時、役に立たない秘書を見て仁海は歯を食いしばる。
「……ならば、得票率を下げる方策を打て! 組織票で確実に勝つ為には得票率を下げる他ない! 芸能人でもインフルエンサーでも誰でもいい! 投票に行こうなんて可哀想だとか、投票に行かない権利がなんとかと適当な言葉を並べさせ、投票に行く者を一人でも少なくするんだ!」
万が一があれば、私の計画が狂う。
こんな事で計画を潰させてなるものか!
「わ、わかりました! すぐに手配します!」
そう言って部屋を出ていく第一秘書の背中を見て仁海は力一杯拳を握る。
そして、その拳を振り上げると、勢いを付けテーブルに叩き付けた。
◆◆◆
港区にあるとある公園広場。
そこには、多くの人々が集まっていた。
集まった人々は、拍手で元東京都知事である池谷芹子が車両の上に立ち演説をするのを今か今かと待ち構えている。
『――港区の皆さん。こんばんは、池谷芹子。池谷芹子でございます』
池谷がそう声を上げると共に、大きな拍手が巻き起こる。
その様子は、まるで都民の多くが池谷の東京都知事再選を願っている様だった。
『多くの皆さんにお集まり頂き、改めて心から御礼申し上げたいと思います。選挙戦が始まってから一週間。大変厳しい選挙戦でございます。私は組織や政党の支援がない中での選挙戦となっております。大変厳しい戦いでございます。だからこそ、皆様お一人お一人の御力をぜひ私に与えて頂きたい。貸して頂きたい。これは本当に池谷芹子の切なる願いでございます』
選挙運動開始から一週間。たった一週間で、池谷のおかれた状況は激変した。
当人ですら「……どうなってるの? これ?」と困惑する程の都民による手のひら返し。
高橋翔が応援についてから信じられない出来事が立て続けに起こっている。
その最たる例が、百条委員会の構成員すべてのパソコンからの情報漏洩。
その責任を一人の議員に背負わせようとした結果、その議員は自殺。
その後、各議員の汚職とも取れる情報と共に情報漏洩が百条委員会すべての構成員の持つパソコンから流出した事が匿名で暴露された。
ファクトチェック機関が必至になって、擁護しているが、汚職情報と共に暴露された事で、百条委員会の構成員全てに対する批判の声が上がり、池谷を都知事の座から引き摺り下ろしたのは、池谷の存在が他の議員達が汚職に励むのに邪魔だったからではないか。責任を取り一度、都知事の座から辞した事から禊は終えた。池谷がんばれ!池谷を都知事に再選させようとの機運が高まっている。
――いや、何でこうなるの?
まったく以って理解不能だ。
私の不祥事をより大きな不祥事を以って塗り潰す。
高橋翔が裏で手を引いているのだろうが、信じられない事をする男だ。
しかし、これで都知事選の結果が分からなくなった事もまた事実。
少なくとも私にとって良い方向に向いている。
池谷は笑顔で不安を塗り潰すと、応援に駆けつけてくれた都民達に対して、とりあえず、手を振った。
会見を終え、事務所で一息付いていた時、突如として流れてきた訃報。
BGM代わりにニュースを付けた奥村は目を剥いて驚く。
「――え? は? 丸井が……死んだ??」
丸井議員とはほんの四時間前まで話をしていた。
その丸井議員が死んだ??
意味が分からない。どう言う事だ??
まさか、情報漏洩の事を暴露した私が原因じゃないだろうな……
ニュースで死因を確認すると、自殺とある。
笑えない冗談だ。四時間前まで話をしていた人物が自殺?
――何で? 何で、何で、何で、何で、何で??
だって、情報漏洩したのは純然たる事実じゃないか。
それを公表されて自殺ってどういう事? 他の罪もまとめて被って貰ったのがいけなかったのか??
もしそうだとすれば、余りに精神が脆弱過ぎる。
情報漏洩なんて議員辞職クラスの不祥事。今更一つや二つ罪が増えた所で別にいいじゃないか。いや、そんな事よりも!
重要なのは全国放送で報道されたニュースの内容だ。
「……丸井の奴に情報漏洩の責任全てを押し付けたばかりなのに、何故、その事が発覚する!?」
しかも、議員全員が情報漏洩に関わり合いがあったとか、私の知らない情報まで!
議員全員が情報漏洩に関わり合いがあると知っていれば対応も違ってきたというのに、これは……。流石にこれは拙い。拙い。拙い。拙い。拙い!
百条委員会の情報漏洩が明らかになった。
その責任を他の罪ごと丸井議員に全部押し付けたら、丸井議員が自殺してしまい、挙句、情報漏洩は百条委員会のメンバー全員からされたものである事が報道されてしまったとなれば百条委員会が一人の議員に全責任を負わせようとしたようにしか見えないではないか!
「……」
事実そうなのだが、この流れは拙い。非常に拙い。
しかも、流出した内容は丸井の創作という事になっている。
にも拘らず、すべての議員から同一の情報漏洩があったとなれば、このストーリー自体が創作である事がバレてしまう。
いや、既にバレていると言っても過言ではない。
プルルルルルルッ
プルルルルルルッ
不意に鳴り出す電話。
プルルルルルルッ
プルルルルルルッ!
プルルルルルルッ!!
プルルルルルルッ!!!
プルルルルルルッ!!!!
室内に鳴り響く電話の音を聞き奥村は思わず後退る。
普段、鳴る事のない電話。
おそらくは、他人事にも関わらず義憤に駆られ電話をかけてきたキレやすい暇人達が罵詈雑言を言う事でスッキリする為に掛かってきているであろう電話が電話音のカルテットを奏でる。
――拙い。これは非常に拙い。
あの報道がされた事で、社会に、殴っても反撃される事のないサンドバッグ認定されてしまった様だ。
電話に出れば、当然の如く罵詈雑言と、自尊心を抉るような言葉を吐き捨てる様に言われるのだろう。
人を傷付けるつもりで掛けてくる害悪の塊の様な電話。こんな事で電話を掛けてくるとは……おそらく、日頃からストレスを溜め発散する為の捌け口を探していたのだろう。
「く、くそぉぉぉぉ!!」
ブチブチブチッ!
雑にコードに引っ張ると電話機が床に落ちる。
それでも鳴り続ける電話を忌々し気に眺めると、奥村は感情ここに在らずといった表情を浮かべ蹲った。
◆◆◆
「――せ、先生! 仁海先生っ!」
翌日。仁海が事務所でコーヒーを飲んでいると、血相を変えた第一秘書が部屋に駆け込んできた。
「何だ。そんなに慌ててどうした? 君が慌てるなんて珍しいじゃないか」
第一秘書はコーヒーカップ片手に新聞を読む仁海の前に立つと、タブレットをデスクの上に置く。
「大変な事が……非公開で行われた百条委員会の資料データが流出しました」
「うん? 百条委員会の資料データが流出? それはいかんな……」
情報管理があまりに杜撰だ。
非公開で行われたという事は、公開できない理由があるという事に他ならない。
「それで? 内容は?」
第一秘書の慌てようから、相当拙いデータが流出したのだろう。
タブレットを覗き込んだ仁海はその内容を見て絶句する。
そこには、衝撃的な内容が書かれていた。
都政転覆計画とその実行計画案。
都知事のパワハラの噂話や今回の発端となった告発文書の発信騒ぎのシナリオ。
その内容は既に、一部のマスコミが入手しており、今行われている選挙に影響を与えない為、恣意的に報道を自粛していた事が書かれていた。
「な、なんだ、これは……誰が……誰が情報を漏洩した……」
「し、信じられない事ですが、全員です。百条委員会の構成員全員のパソコンから流出した様で……情報漏洩の罪を一人の議員に擦り付けようとした結果、その議員は自殺……大変な事になっています」
「な、なんだと……?」
情報漏洩の罪を一人の議員に押し付けた所、その議員が自殺。その後、百条委員会の構成員全員のパソコンから情報漏洩した事を暴露……最悪。それも最悪中の最悪だ。
「……業者に言って今すぐ消させろ。今すぐだ」
「い、今すぐにですか!?」
「当たり前だっ! 今すぐこれを消せっ!」
くだらない陰謀論だと思いたいが、この文章には妙な説得力がある。しかも、百条委員会すべての構成員から同一の文章が出たという事は恐らく事実。
もしこの論調のまま選挙当日を迎えれば大変な事になる。
池谷を都知事の座から追い落とす為にパワハラにおねだり疑惑をでっち上げた事が都民に知られてしまう。
そうなれば、世論がひっくり返る。
セイヤに東京都知事の座を渡す事も、セイヤ自身を手駒にする事もできなくなってしまう。
だからこそ、仁海は必死になって言う。
「業者がダメなら圧力だ。今すぐマスコミに圧力をかけろ!」
「む、無理です! 今、下手に動けば、こちらまで被害を受ける可能性があります!」
「な、何ぃ!? では、どうしろと言うんだ!」
「……静観するしかありません」
「せ、静観だとぉ? ふざけるな! この私に指を咥えて見ていろとでも言うつもりか!」
あるだろ。この状況を打開する為の策が、一つくらいあるだろ!
肝心な時、役に立たない秘書を見て仁海は歯を食いしばる。
「……ならば、得票率を下げる方策を打て! 組織票で確実に勝つ為には得票率を下げる他ない! 芸能人でもインフルエンサーでも誰でもいい! 投票に行こうなんて可哀想だとか、投票に行かない権利がなんとかと適当な言葉を並べさせ、投票に行く者を一人でも少なくするんだ!」
万が一があれば、私の計画が狂う。
こんな事で計画を潰させてなるものか!
「わ、わかりました! すぐに手配します!」
そう言って部屋を出ていく第一秘書の背中を見て仁海は力一杯拳を握る。
そして、その拳を振り上げると、勢いを付けテーブルに叩き付けた。
◆◆◆
港区にあるとある公園広場。
そこには、多くの人々が集まっていた。
集まった人々は、拍手で元東京都知事である池谷芹子が車両の上に立ち演説をするのを今か今かと待ち構えている。
『――港区の皆さん。こんばんは、池谷芹子。池谷芹子でございます』
池谷がそう声を上げると共に、大きな拍手が巻き起こる。
その様子は、まるで都民の多くが池谷の東京都知事再選を願っている様だった。
『多くの皆さんにお集まり頂き、改めて心から御礼申し上げたいと思います。選挙戦が始まってから一週間。大変厳しい選挙戦でございます。私は組織や政党の支援がない中での選挙戦となっております。大変厳しい戦いでございます。だからこそ、皆様お一人お一人の御力をぜひ私に与えて頂きたい。貸して頂きたい。これは本当に池谷芹子の切なる願いでございます』
選挙運動開始から一週間。たった一週間で、池谷のおかれた状況は激変した。
当人ですら「……どうなってるの? これ?」と困惑する程の都民による手のひら返し。
高橋翔が応援についてから信じられない出来事が立て続けに起こっている。
その最たる例が、百条委員会の構成員すべてのパソコンからの情報漏洩。
その責任を一人の議員に背負わせようとした結果、その議員は自殺。
その後、各議員の汚職とも取れる情報と共に情報漏洩が百条委員会すべての構成員の持つパソコンから流出した事が匿名で暴露された。
ファクトチェック機関が必至になって、擁護しているが、汚職情報と共に暴露された事で、百条委員会の構成員全てに対する批判の声が上がり、池谷を都知事の座から引き摺り下ろしたのは、池谷の存在が他の議員達が汚職に励むのに邪魔だったからではないか。責任を取り一度、都知事の座から辞した事から禊は終えた。池谷がんばれ!池谷を都知事に再選させようとの機運が高まっている。
――いや、何でこうなるの?
まったく以って理解不能だ。
私の不祥事をより大きな不祥事を以って塗り潰す。
高橋翔が裏で手を引いているのだろうが、信じられない事をする男だ。
しかし、これで都知事選の結果が分からなくなった事もまた事実。
少なくとも私にとって良い方向に向いている。
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