女性恐怖症の高校生

こじらせた処女

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 その日から綾瀬の外出は増えた。とは言っても毎週金曜日の夜、休日もたまにってぐらいだけど。

「つきあう、ことになった…」
予想はしていた。だって、最近ずっとソワソワしていたし、メールを見ながらニヤニヤしていたし。
 いつからだろうか。ラインで今から帰る、という文言にひどく安心してしまうようになったのは。その先輩と会う日程を言われると萎えるようになったのは。いつから俺はこんなみみっちい性格になったのだろう。
「良かったじゃん」
その一言を絞り出すのが精一杯だった。何だかその日は疲れていたらしい。その話を聞いた時からイライラが止まらない。どうせ上手くいかない、どうせまた泣いて傷ついて、俺が慰めて。
(あれ…こんなの…)
こんなのまるで綾瀬の失敗を願っているみたいじゃないか。考えないようにしよう、そう思っていても頭の片隅でチラついてしまう。
(もう、寝よう…)
きっと疲れているからネガティブになっているだけだ。早く寝てしまおう。

 その次の金曜日、綾瀬は帰って来なかった。どうだった?なんて話題に出せなかった。出したくなかった。その話で嬉しそうにする綾瀬を見たくなくて、気づいたら一緒にご飯を食べるのも避けるようになってしまった。

 相変わらず毎週金曜日は帰ってこないから、上手く行っているのだろう。ここを出て行く日もそう遠くないのかもしれない。

 冷蔵庫から綾瀬の作り置きのブリ大根を取って温める。今頃その先輩とやらは綾瀬と温かいご飯を食べているのだろうか。もしかしたら家で一緒に作って食べているのかもしれない。
 全然美味しくない。味気ない。1人で食べるってこんなに虚しかったっけ。昔は好きなアニメや動画を見ながらダラダラと食べて、サイコーって。この時間が1番楽しかったんじゃなかったのか?
 冷蔵庫の奥に一本だけビールが残っている。綾瀬が来る前はストックがきれないように何本も常備していたというのに。
 俺の時間はいつの間にか、綾瀬ありきのものになっていたらしい。






「あ、せんせい」
風呂に入ろうとしていた時、ご飯を食べ終わった綾瀬が珍しく声をかけてくる。
「ちょっとだけ、話していい?」
「いーよ、なーに?」
思ったより低い声になってしまった。綾瀬の気を使った伺いにまた、モヤモヤしてしまう。
「5分で終わるから。疲れてるかもしれないけど、座って話したいな」
そんなにかしこまった内容なのだろうか。着替えを漁りながら小さくうん、と呟いた。


「へへっ先生と話すの久しぶり。…仕事忙しそうだね」
向かい合うことに緊張してしまうのは、ここしばらく顔もあまり見れていなかったから。
 そういえば、綾瀬に気まずさを覚えたのは初めてな気がする。まあ俺が勝手に避けていたから自業自得なのだけれど。
「まあね、修学旅行前だし。どうしたの?っていうかあの先輩とはどうなった?」
「それがさ…別れちゃって…」
「えっ…」
 弾んだ声にならないように注意していても、どうしても高い声になってしまう。綾瀬にバレていないだろうか。
「そういう行為、やっぱ上手くできなくて…ほんとに無理って泣いたら引かれちゃった」
「そっか…」
ああ、またご飯を一緒に食べられる。そういえばあまり2人で外食することってなかったな。今はもう、先生と生徒じゃないんだし、今度誘ってみようか。
「それでね、先生…」
何で。フラれたあとなのにそんなに嬉しそうな顔なのだろう。真っ赤な顔を下に向けて小さく息を吐いたあと、再び顔を上げて真剣な表情で言った。
「先生は…さ…ゲイってどう思う?」


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