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お花畑

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どうやら、闇の精霊殿は、全て把握しているようだ。

「しかし…光の魔力と言うのは有り難いモノだが、厄介なモノでもあるな…。幼少期から発熱で苦しみ、乗り越え切る前の“最後の審判”によっては命を落とす……。」

ある意味、残酷だな─とも思う。
光の魔力持ちが生まれると、周りは喜ぶかもしれないが、親にとっては複雑な思いがあるだろう。

「親からすれば、子を失うかもしれない恐怖はあるかもしれないけど、その“最後の審判”で光の魔力を選ばなかった者はね……確かに“死”を迎えてしまうけど、その魂は転生へと向かうのよ。そして、必ず幸せになるように、数多の精霊達が祈りを込めて転生させるの。」

ーえ……そんな重大事項?を、人間オレが知ってしまって良いんだろうか…ー

嫌な汗が背中を流れていく。

「あ、この話をするのは、ちゃんとにも許可を得ているから大丈夫だけど、これを記録に残す事はしないように。今回は、色々イレギュラーがあって、エヴィの事もあったから、殿下には話しておこうって事になっただけだから。」

「分かった。」

ーよし、取り敢えず、“全て知ったからには死を─”とは、ならないようで良かったー

「そんな感じで、久し振りにエヴィが私を呼んでくれたと思ったら、魔力が枯渇寸前だったのよ。本当に、アレには驚いたわ。それに、相変わらず親達はクズじゃない?もう、いっその事、エヴィに私の魔力を与えて魔力で繋げておこうと思ったのよ。そうすれば、呼ばれなくても側に居れるからね。エヴィと居ると、退屈しなくて良いしね。」

ー“退屈しなくて良いしね”─確かに、エヴィと居ると退屈する事は……ないな。本人には言えないがー

「で?お花畑はどうするの?もう、決定って事で良いのよね?」

「勿論。お花畑は予定通りにゲルダン国の王弟の元に嫁いでもらう。にして。」

「あら、もう準備は調っているの?」

「ウチの宰相は、舐められた分はキッチリと倍返しするタイプだからね。」

本当に、ドリューの仕事は早かった。しかも、一纏めで処理してしまっていた。やはり、ドリューは怒らせてはいけないと、改めて思った。ブレインにも、どうか見倣って欲しいところだ。

「今から、お花畑の所へ行って最後通牒をして来る。エヴィの事は……宜しく頼む。」

「ふふっ。頼まれなくても、私はエヴィの為にしか動かないわ。こちらこそ、の事、宜しくお願い致しますわ、殿下。」

“ニヤリ”と、音が聞こえそうな程の黒い微笑みを浮かべた後、闇の精霊殿は、エヴィが眠っている部屋へと入って行った。










*リンディに充てがわれている客室にて*


「王太子殿下!何故、私が部屋に閉じ込められないといけないんですか!?」

俺が、お花畑の部屋に入るなり、挨拶も何もなく、いきなりキーキーと喚きだした。それも、悪びれる事もない。

「“何故”とは?本当に分からないのか?」

「何をですか!?私は、ただ夕食会で食事をしていただけじゃないですか!」

脳内お花畑は、都合の悪い事は全て消去されるのか?

「リンディ嬢……私が、何も知らない──とでも思っているのなら……大間違いだ。その上でもう一度訊いてあげよう。何故こうなったのか、本当に分からない?」

「──っ!だって……おかしいでしょう!?光の魔力持ちの私が、王族とは言え違う国に行かされるのに、役立たずのエヴィは……殿下と仲が良いし……確かに、私の光の魔力は弱いから、殿下の婚約者にはなれないと…理解してますけど……殿下……王子が駄目なら、順番にいけば、私の婚約者として相応しいのは、やっぱりブレイン様しかいないですよね!?だから───」

「─だから、既成事実でも作ろうとして、媚薬を盛ったのか?」

「っ!?」

お花畑はヒュッと息を呑み瞠目している。

「何度もやらかす馬鹿を、放ったらかしにしていると思っていたのか?お前が、ブレインに媚薬を盛った事は、既に知っている。だから、お前をここに連れ戻したんだ。」

「……あ………」

「私は言った筈だ。今後は他者を貶めるような事はしない事。訓練は怠らず真面目に取り組む事が最低条件だと。」

「わたし……」

「ただ、今回の事はエヴィが被害を被っただけで、幸いにして私達以外には気付かれていないから、今回の事は、“ただ、エヴィが体調が悪くなったから”と言う事にできた。表向きはそれで良しだが………私個人としては、もうお前を許す気は無い。お前の選択肢は二つだ。先ず、お前は、今年度で学校は卒業してもらう事は決定事項だ。選択肢の一つ目は、以前話していた他国の王族と婚姻すること。二つ目は、この国で私が選んだ者と婚姻することだ。」

「他国の王族の方とで決まっているわ!国内の者となんて………ではないですよね!?」

「それで、良いのだな?」

「ええ、それで良いわ。こんな国……もう私は知らないわ!後で、光の力を求められても……私は知らないからね?」

ー本当に、お花畑の馬鹿は扱い易くて笑えるー

俺が、を組む筈が無いと分かっているのに、他国の王族と言うのは信じている。いや、本当に王族なのだが──。兎に角、言質は取った。

「それでは、かの国の王族と話を進めておこう。分かっているとは思うが……最低条件は必ず守るように。」

守らなくとも、エヴィのお陰で失う事はないだろうが、伝える気は無いし、教えてやる義理もない。せいぜい、その最低条件を守っておとなしくしてくれ─と思いながら、俺はその部屋を出た。









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