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33.ライオネル王子の苦悩

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 王宮に戻ったライオネル王子は、宰相の元を訪れた。

「修道院長の弱点ですか? それはやはり修道院を統括する大修道院長か、枢機卿ではありませんか?
権力志向の強い者は皆上の者に弱いですから」

「急ぎ修道院長の動向を調べてくれ。
それからサレルノに人を送って、アイヴィ殿を助けてくれそうな実力者がいないか探してくれ。
アイヴィ殿の命が危ない。
私は大修道院長か枢機卿への伝手を探す」


 ライオネル王子の調査は遅々として進まなかった。王家と教会の不仲は長く続いており、全くと言っていいほど何も見つからない。

 カリタス修道士から届いた手紙を読み許可状を送ったものの、それ以外に為す術が思い付かない。


 そんな時、ジュリア王女の一言で事態が動き出した。

「大学の神学部に聞いてみられたら?」


 ライオネルは神学部のオーガスタ教授の元に駆けつけた。

「枢機卿への伝手でございますか? また随分と難しい事を仰る。
伝手を見つけたとしても、枢機卿のスケジュールは遠い先まで決まっておりますゆえ面談できるまでにはかなりの時間がかかりましょう。
大修道院長にしても同じ事でございます」

「人の命がかかっているのです。どうしても直ぐに見つけなければ」


「ふむ・・王子自らがおいでになられると言う事は、よほど大切な方とお見受けいたしますが?」

「王家にとってかけがえのない人物とお考えください」

 王子は今までの経緯と、アイヴィの経歴をオーガスタ教授に話した。

「・・オリッシモ枢機卿とサレルノのアンドリュー・ソーントン教授は親戚だった筈。
ソーントン教授からの要請があればもしかすると」

「ありがとうございます」


 ライオネル王子はその足でサレルノ医学校へと旅立った。



「王子、アイヴィ殿の指導教官の一覧表です」

 先にサレルノで諜報活動をしていた騎士から資料を受け取った。


「どの教授もアイヴィ殿のことを真面目で優秀な学生だったと。
証明の必要があるならいつでも助力すると仰っておられました」

 ライオネル王子は説明を聞きながら、名前を確認していった。


「これだ! アンドリュー・ソーントン教授。彼とは会ったか?」

「はい、確かアイヴィ殿とは今でも交流があると仰っていたと記憶しております」



 ライオネル王子はアンドリュー教授に会った途端、挨拶もそこそこに状況を話し始めた。

「確かにオリッシモ枢機卿は私の叔父に当たります。
連絡がつくかどうかも分かりませんし、連絡がついても協力を得るには時間がかかるかもしれません。
最大限の努力はしますが、他の方法を探すのはやめないで下さい」

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