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32.将来の展望と縄の先を持つオリバー
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「全てが終わる頃に情勢が落ち着いていたらレミリアス王国に移住するのも面白いかもしれんな」
「そのような令嬢が先駆者としておられる国なら面白そうね。リリスティーナはどうかしら?」
「移住は兎も角、その方とお話ししてみたいわ。とても興味深いお話とか聞けそうだもの」
「だったら私は仕事の合間にレミリアスとその令嬢の情報を集めます」
「私はレミリアスに知り合いがいる人を探してみるかな。ウォルデン侯爵家の知り合いに絞ってもいいかもしれん」
「新し物好きのお友達にお話を聞いてみますわ。ウォルデン侯爵家の発明品絡みで何かわかるかも」
「うっ、わたくしのする事がなさそうだわ」
「姉上お得意の勉強が残ってるよ。女傑と話すなら知識がなくちゃ鼻も引っ掛けてもらえないよ」
「そうね、時間のある限り図書館に通うわ」
両親の古くからの友人の伝手でウォルデン侯爵家に話を通してもらったリリスティーナは、教会に婚姻無効の申し立てをすると同時にウォルデン侯爵家に手紙を出した。それほど日を置かず届いた返事には⋯⋯。
『当家のタウンハウスに滞在していただくこともできますし、貸家を望まれるならば使用人をこちらで準備することも可能です。
いつでもお気軽にお声がけくださいませ。お会いできる日を楽しみにお待ちしております。
追伸、オリバー様の首に縄をつけていただけますと助かります』
「うーん、どう言う意味かしら? 連れて来てって仰ってるのはわかるんだけど『無理矢理』ってことよね」
「オリバー様にお聞きするしかないかも。エアリアス、それとなく聞いてみてくれませんか?」
「えっ、無理! あの方めんどくさいんですもの。リリスティーナの方が適任だと思うわ」
「じゃあエアリアスが失敗したらわたくし達が声をかけてみるわね」
「えーっ、初手は変更なしなの?」
「勿論わたくし達も近くにおりますわ」
((こんな面白そうな事、見逃せませんもの))
そして王家主催のパーティーの後にはじめて開かれたとある侯爵家の夜会では、にこにこと嬉しそうにエアリアスに声をかけるオリバーと皺を寄せないように眉間に力を入れているエアリアスの姿があった。
「こんばんは、今日もとてもお美しいです」
「ごきげんよう、素敵なパーティーですわね」
オリバーが満面の笑みでエアリアスを滔々と讃える度にエアリアスの持つ扇子がみしりみしりと音を立てている。
(エアリアスの容姿を褒めるのは作戦ミスですわ)
(空気を読むのは苦手のようですわね)
エアリアスの扇子を救い出すためにリリスティーナとコレットが声をかけた。
「こんばんは、ご一緒しても宜しくて?」
「勿論です。素晴らしい御三方にお会いできて光栄です。
エアリアス様の美しさは当然ですが御二方「エアリアスは美しいだけですの?」」
「は? エアリアス様は容姿も心もとても美しくていらっしゃいます。ご自身の意見をしっかりとお持ちになっておられるにも関わらず他を認める懐の深いとこともあり、人を傷つけない言葉選び「もう、わかりましたから!」」
真っ赤な顔を扇子で隠し話を遮ったエアリアスに気付かず、先程まで陶然とした顔で話し続けていたオリバーはキョトンとした顔で首を傾げた。
「あの、まだお伝えしたいことが沢山あるのですが」
先程まで勢いよくブンブン振っていた尻尾がだらんと元気なく垂れ下がったように見えた。
(可愛らしいペットのよう。だけどエアリアスったら思ったより⋯⋯)
(結構お似合いかも。このくらい推しが強くなくちゃエアリアスの鉄壁のガードは崩せないわね)
「オリバー様、わたくし達が近々旅行に出かける事ご存じですかしら?」
「はい。その噂を聞いたので行き先を教えていただいて出来れば私もご一緒させていただければと思ってお声をおかけしました」
(あら、縄は必要なさそう)
(ご自身でご準備しておられるわね)
「わたくしとエアリアスはレミリアス王国に参りますの」
「げっ!」
「ウォルデン侯爵家のルーナ様をお訪ねする予定でおります」
「がっ! そ、それはまた⋯⋯とんでもないところへ」
「あら、お誘いしようと思っておりましたのに残念ですわ。何か問題でも?」
「い、いえ、その。レミリアスには、兄がその、兄がおりまして」
「まあ、それではあちらの国のことにはお詳しくていらっしゃるのかしら? ゆっくり滞在しようと思っておりますからお詳しい方が側にいてくださるととても安心ですけれど問題がおありなら無理強いはできませんわね」
そっぽを向いたままのエアリアスを無視してリリスティーナ達がオリバーを追い込んでいく。オリバーはレミリアスに行きたくない気持ちとエアリアスのそばにいたい気持ちの間で揺れ動きオロオロと目を泳がせていた。
「レミリアスよりナーガルザリアの方がまだマシなのではないかと」
「ええ、いつかナーガルザリア王国へもいってみたいと思っておりますわ。でも今回はもうお約束してしまいましたから。エアリアス、あちらで少し休憩しませんこと?」
「ええ、是非」
オリバーと別れ歩き出したリリスティーナ達の後ろ姿を見送っていたオリバーが頭をガシガシとかき狼狽えていた。
「あの、エアリアス様!」
パタパタと走る音が聞こえた後オリバーが声をかけてきた。
「やっぱり私もレミリアスにご一緒させていただけませんか?」
「それではあちらで一緒に休憩なさいますか? その時に色々お話を聞かせていただけたら」
リリスティーナとコレットが仕掛けた網をエアリアスが引き上げた。
(あんなに慌てる問題って何かしら⋯)
「そのような令嬢が先駆者としておられる国なら面白そうね。リリスティーナはどうかしら?」
「移住は兎も角、その方とお話ししてみたいわ。とても興味深いお話とか聞けそうだもの」
「だったら私は仕事の合間にレミリアスとその令嬢の情報を集めます」
「私はレミリアスに知り合いがいる人を探してみるかな。ウォルデン侯爵家の知り合いに絞ってもいいかもしれん」
「新し物好きのお友達にお話を聞いてみますわ。ウォルデン侯爵家の発明品絡みで何かわかるかも」
「うっ、わたくしのする事がなさそうだわ」
「姉上お得意の勉強が残ってるよ。女傑と話すなら知識がなくちゃ鼻も引っ掛けてもらえないよ」
「そうね、時間のある限り図書館に通うわ」
両親の古くからの友人の伝手でウォルデン侯爵家に話を通してもらったリリスティーナは、教会に婚姻無効の申し立てをすると同時にウォルデン侯爵家に手紙を出した。それほど日を置かず届いた返事には⋯⋯。
『当家のタウンハウスに滞在していただくこともできますし、貸家を望まれるならば使用人をこちらで準備することも可能です。
いつでもお気軽にお声がけくださいませ。お会いできる日を楽しみにお待ちしております。
追伸、オリバー様の首に縄をつけていただけますと助かります』
「うーん、どう言う意味かしら? 連れて来てって仰ってるのはわかるんだけど『無理矢理』ってことよね」
「オリバー様にお聞きするしかないかも。エアリアス、それとなく聞いてみてくれませんか?」
「えっ、無理! あの方めんどくさいんですもの。リリスティーナの方が適任だと思うわ」
「じゃあエアリアスが失敗したらわたくし達が声をかけてみるわね」
「えーっ、初手は変更なしなの?」
「勿論わたくし達も近くにおりますわ」
((こんな面白そうな事、見逃せませんもの))
そして王家主催のパーティーの後にはじめて開かれたとある侯爵家の夜会では、にこにこと嬉しそうにエアリアスに声をかけるオリバーと皺を寄せないように眉間に力を入れているエアリアスの姿があった。
「こんばんは、今日もとてもお美しいです」
「ごきげんよう、素敵なパーティーですわね」
オリバーが満面の笑みでエアリアスを滔々と讃える度にエアリアスの持つ扇子がみしりみしりと音を立てている。
(エアリアスの容姿を褒めるのは作戦ミスですわ)
(空気を読むのは苦手のようですわね)
エアリアスの扇子を救い出すためにリリスティーナとコレットが声をかけた。
「こんばんは、ご一緒しても宜しくて?」
「勿論です。素晴らしい御三方にお会いできて光栄です。
エアリアス様の美しさは当然ですが御二方「エアリアスは美しいだけですの?」」
「は? エアリアス様は容姿も心もとても美しくていらっしゃいます。ご自身の意見をしっかりとお持ちになっておられるにも関わらず他を認める懐の深いとこともあり、人を傷つけない言葉選び「もう、わかりましたから!」」
真っ赤な顔を扇子で隠し話を遮ったエアリアスに気付かず、先程まで陶然とした顔で話し続けていたオリバーはキョトンとした顔で首を傾げた。
「あの、まだお伝えしたいことが沢山あるのですが」
先程まで勢いよくブンブン振っていた尻尾がだらんと元気なく垂れ下がったように見えた。
(可愛らしいペットのよう。だけどエアリアスったら思ったより⋯⋯)
(結構お似合いかも。このくらい推しが強くなくちゃエアリアスの鉄壁のガードは崩せないわね)
「オリバー様、わたくし達が近々旅行に出かける事ご存じですかしら?」
「はい。その噂を聞いたので行き先を教えていただいて出来れば私もご一緒させていただければと思ってお声をおかけしました」
(あら、縄は必要なさそう)
(ご自身でご準備しておられるわね)
「わたくしとエアリアスはレミリアス王国に参りますの」
「げっ!」
「ウォルデン侯爵家のルーナ様をお訪ねする予定でおります」
「がっ! そ、それはまた⋯⋯とんでもないところへ」
「あら、お誘いしようと思っておりましたのに残念ですわ。何か問題でも?」
「い、いえ、その。レミリアスには、兄がその、兄がおりまして」
「まあ、それではあちらの国のことにはお詳しくていらっしゃるのかしら? ゆっくり滞在しようと思っておりますからお詳しい方が側にいてくださるととても安心ですけれど問題がおありなら無理強いはできませんわね」
そっぽを向いたままのエアリアスを無視してリリスティーナ達がオリバーを追い込んでいく。オリバーはレミリアスに行きたくない気持ちとエアリアスのそばにいたい気持ちの間で揺れ動きオロオロと目を泳がせていた。
「レミリアスよりナーガルザリアの方がまだマシなのではないかと」
「ええ、いつかナーガルザリア王国へもいってみたいと思っておりますわ。でも今回はもうお約束してしまいましたから。エアリアス、あちらで少し休憩しませんこと?」
「ええ、是非」
オリバーと別れ歩き出したリリスティーナ達の後ろ姿を見送っていたオリバーが頭をガシガシとかき狼狽えていた。
「あの、エアリアス様!」
パタパタと走る音が聞こえた後オリバーが声をかけてきた。
「やっぱり私もレミリアスにご一緒させていただけませんか?」
「それではあちらで一緒に休憩なさいますか? その時に色々お話を聞かせていただけたら」
リリスティーナとコレットが仕掛けた網をエアリアスが引き上げた。
(あんなに慌てる問題って何かしら⋯)
応援ありがとうございます!
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