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21.キング・オブ・クズ決定戦
「お、おう。えーっとだな、まぁいいか⋯⋯車軸にちょい傷をつけといたんだが、それだけじゃ失敗する可能性があるからよお。御者のブレーキにも細工しといたんだ」
「ん? ごめんなさい、よくわからないわ」
「直ぐ折れるほど車軸に傷をつけたら奴が乗る前に馬車がいかれちまう可能性もあるからよ。御者のブレーキも半分亀裂を入れといたんだ。
奴の住んでた安アパートへいく途中にはちょっとした坂があるんで、そこでスピードが上がってブレーキをきつく引いたら⋯⋯『ポキッ』ってな」
ゲラゲラ笑うステファンにワインを注ぐメリッサの手が震えテーブルクロスに染みを作った。
「凄い⋯⋯それをメイルーンって人が自分でやったの?」
目を瞑ってうつらうつら船を漕ぎかけたステファンの手にグラスを持たせると片目を開けて訝しげな顔をしたステファンがぐいっとワインを飲み干した。
「えーっと、ああそうだ。高貴な血を引くお坊っちゃまにはなぁ、代わりに手を汚したがる狂信者が山盛り⋯⋯あー、アン時のガキはセー、セオ? セオドアつったかなぁ。そうだアイツも逃げやがったんだよ」
「でも、よく御者やその子が了承したわねぇ」
「神の為って言やぁセオドアはナーンでもやったしぃ~。御者にはなぁ⋯⋯車軸の亀裂しか知らせねえまんま大学の近くで⋯⋯待機させたんだよぉ。んでぇ、奴が一人で出てくるのを待って⋯⋯乗せたら地獄の坂へまっしぐら~⋯⋯。ドカーンだ! ひーっひっひ⋯⋯せーっかく上手く行ったってのによぉ、御者の奴⋯⋯が報告もしねえで逃げやがったもんだから~、結果が分からずじまい。
あれ以来『賭け』も⋯⋯⋯⋯しょぼい⋯⋯もんばっかになって⋯⋯」
ステファンの手からグラスが滑りテーブルの上に転がり落ちた。
「まあ、酔っ払ってるみたい。少し部屋で休んだら?」
「んー、へ? そうすっかなぁ。起きたら⋯⋯金を⋯⋯」
フラフラと立ち上がったステファンがテーブルにぶつかって手をついた後、大きなゲップをして食堂を出て行った。
ステファンの後ろ姿を見送っていたメリッサが椅子に座り込んで両手で顔を覆った。
「最低のクソ野郎! アンタ達なんて地獄に堕ちればいいんだわ」
ステファンに渡すお金をライルに預けながら商会に行くと告げるとライルが酷く険しい顔をした。
「あんな男に金を恵んでやるのですか? 直ぐに捕まえてしまえばいいのに」
「一人巣穴から引っ張り出さなきゃいけないから今はまだ⋯⋯これは情報料」
真っ青な顔のメリッサが商会に着くとルーカスが椅子から慌てて立ち上がった。
「主犯はメイルーンで実行犯はセオドアって言う少年。御者はセオドアが車軸に傷をつけたことを知っていたけどブレーキにまで細工されてるのは知らなかった」
黙って話を聞いていたルーカスはメリッサを抱きしめてからソファに座らせた。
「アパートへ行く途中に坂がある事まで計算に入れた計画だったの。セオドアはメイルーンを盲信してて神の為だって言えばどんな指示にでも従ってたって」
「セオドアか⋯⋯(よくある名前だし、まさかと思うが)」
「事件の後いなくなったんだって」
ルーカスの肩に顔を埋めたままメリッサが話を終えた。
「そうか⋯⋯隣の部屋で少し休むか?」
「今は一人になりたくない⋯⋯一人になったら何をしでかすか自信がないもん」
「奴はどうしてる?」
「ベロンベロンに酔って部屋で寝てる⋯⋯起きたら渡すようにってライルに少しお金を預けてきた」
「よく我慢したな、偉かったぞ」
「ん」
小さく震えるメリッサの肩を抱きしめていたルーカスがうとうとしはじめたメリッサをいっそう抱きしめた。
(ステファンが口にしたセオドアがハリーの弟なら線がつながったかもしれん ⋯⋯領地にセオドアを隠し、こっそり御者を探している⋯⋯メイルーンの指示か共謀の可能性もあるが、ワッツの独断なら今度の『賭け』で動くかもしれん)
ぐっすりと眠ったメリッサをソファに横たえて毛布をかけ、ドアの外に『開けるな、間抜けが来たら教えてくれ』と張り紙をしたルーカスは黙々と仕事を片付けていた。
夕暮れが近付きルーカスがランプをつけていると小さなノックの音がして間抜けがそっと顔を覗かせた。
「おじさん?」
人差し指を口の前に立てたルーカスが隣の部屋を目で示すと小さく頷いたケニスがドアの隙間から滑り込んできた。
足を忍ばせながら隣の部屋へ行きかけたケニスはソファの膨らみを見つけて思わず足を止めた。
「おじ⋯⋯(もご)」
ケニスの口を押さえて隣の部屋に力ずくで引き摺り込んだルーカスは小さく溜息をついてソファに座り込んだ。
「ここんとこ眠れてなかったみたいだが、もうそろそろ起きるだろう」
メリッサから聞いた話をルーカスが伝えると眉間に皺を寄せたケニスが握り拳を膝に叩きつけた。
「なら俺の方の話はをするのは明日にした方が⋯⋯」
「ダメダメ! もう時間がなくなって来てるから、急がなくちゃ」
「メリッサ! もう大丈夫なのか!?」
ドアのところから唐突に聞こえてきたメリッサの声でケニスが飛び上がった。
「えー、お昼寝してただけだよ? すっきり爽快でお腹すいちゃったから食事しながら情報交換といきましょう、一人も逃さず罪を暴いてやるわ」
「ん? ごめんなさい、よくわからないわ」
「直ぐ折れるほど車軸に傷をつけたら奴が乗る前に馬車がいかれちまう可能性もあるからよ。御者のブレーキも半分亀裂を入れといたんだ。
奴の住んでた安アパートへいく途中にはちょっとした坂があるんで、そこでスピードが上がってブレーキをきつく引いたら⋯⋯『ポキッ』ってな」
ゲラゲラ笑うステファンにワインを注ぐメリッサの手が震えテーブルクロスに染みを作った。
「凄い⋯⋯それをメイルーンって人が自分でやったの?」
目を瞑ってうつらうつら船を漕ぎかけたステファンの手にグラスを持たせると片目を開けて訝しげな顔をしたステファンがぐいっとワインを飲み干した。
「えーっと、ああそうだ。高貴な血を引くお坊っちゃまにはなぁ、代わりに手を汚したがる狂信者が山盛り⋯⋯あー、アン時のガキはセー、セオ? セオドアつったかなぁ。そうだアイツも逃げやがったんだよ」
「でも、よく御者やその子が了承したわねぇ」
「神の為って言やぁセオドアはナーンでもやったしぃ~。御者にはなぁ⋯⋯車軸の亀裂しか知らせねえまんま大学の近くで⋯⋯待機させたんだよぉ。んでぇ、奴が一人で出てくるのを待って⋯⋯乗せたら地獄の坂へまっしぐら~⋯⋯。ドカーンだ! ひーっひっひ⋯⋯せーっかく上手く行ったってのによぉ、御者の奴⋯⋯が報告もしねえで逃げやがったもんだから~、結果が分からずじまい。
あれ以来『賭け』も⋯⋯⋯⋯しょぼい⋯⋯もんばっかになって⋯⋯」
ステファンの手からグラスが滑りテーブルの上に転がり落ちた。
「まあ、酔っ払ってるみたい。少し部屋で休んだら?」
「んー、へ? そうすっかなぁ。起きたら⋯⋯金を⋯⋯」
フラフラと立ち上がったステファンがテーブルにぶつかって手をついた後、大きなゲップをして食堂を出て行った。
ステファンの後ろ姿を見送っていたメリッサが椅子に座り込んで両手で顔を覆った。
「最低のクソ野郎! アンタ達なんて地獄に堕ちればいいんだわ」
ステファンに渡すお金をライルに預けながら商会に行くと告げるとライルが酷く険しい顔をした。
「あんな男に金を恵んでやるのですか? 直ぐに捕まえてしまえばいいのに」
「一人巣穴から引っ張り出さなきゃいけないから今はまだ⋯⋯これは情報料」
真っ青な顔のメリッサが商会に着くとルーカスが椅子から慌てて立ち上がった。
「主犯はメイルーンで実行犯はセオドアって言う少年。御者はセオドアが車軸に傷をつけたことを知っていたけどブレーキにまで細工されてるのは知らなかった」
黙って話を聞いていたルーカスはメリッサを抱きしめてからソファに座らせた。
「アパートへ行く途中に坂がある事まで計算に入れた計画だったの。セオドアはメイルーンを盲信してて神の為だって言えばどんな指示にでも従ってたって」
「セオドアか⋯⋯(よくある名前だし、まさかと思うが)」
「事件の後いなくなったんだって」
ルーカスの肩に顔を埋めたままメリッサが話を終えた。
「そうか⋯⋯隣の部屋で少し休むか?」
「今は一人になりたくない⋯⋯一人になったら何をしでかすか自信がないもん」
「奴はどうしてる?」
「ベロンベロンに酔って部屋で寝てる⋯⋯起きたら渡すようにってライルに少しお金を預けてきた」
「よく我慢したな、偉かったぞ」
「ん」
小さく震えるメリッサの肩を抱きしめていたルーカスがうとうとしはじめたメリッサをいっそう抱きしめた。
(ステファンが口にしたセオドアがハリーの弟なら線がつながったかもしれん ⋯⋯領地にセオドアを隠し、こっそり御者を探している⋯⋯メイルーンの指示か共謀の可能性もあるが、ワッツの独断なら今度の『賭け』で動くかもしれん)
ぐっすりと眠ったメリッサをソファに横たえて毛布をかけ、ドアの外に『開けるな、間抜けが来たら教えてくれ』と張り紙をしたルーカスは黙々と仕事を片付けていた。
夕暮れが近付きルーカスがランプをつけていると小さなノックの音がして間抜けがそっと顔を覗かせた。
「おじさん?」
人差し指を口の前に立てたルーカスが隣の部屋を目で示すと小さく頷いたケニスがドアの隙間から滑り込んできた。
足を忍ばせながら隣の部屋へ行きかけたケニスはソファの膨らみを見つけて思わず足を止めた。
「おじ⋯⋯(もご)」
ケニスの口を押さえて隣の部屋に力ずくで引き摺り込んだルーカスは小さく溜息をついてソファに座り込んだ。
「ここんとこ眠れてなかったみたいだが、もうそろそろ起きるだろう」
メリッサから聞いた話をルーカスが伝えると眉間に皺を寄せたケニスが握り拳を膝に叩きつけた。
「なら俺の方の話はをするのは明日にした方が⋯⋯」
「ダメダメ! もう時間がなくなって来てるから、急がなくちゃ」
「メリッサ! もう大丈夫なのか!?」
ドアのところから唐突に聞こえてきたメリッサの声でケニスが飛び上がった。
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