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第六章 夢か現か幻か

07.残念なお顔でも人権は平等ですよ?

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「何故強要なんてされたんですか? 単なる上司と部下ですし、理由もなく強要なんて出来ませんから。何をネタに脅されたんですか?」

「へ?」

「ドライブレコーダーに記録されていた内容が全く分からないのですが、懲戒解雇されるに相応しい内容だったのですよね? 樋下支店長・倉野支店長・藪沢支店長という3人の支店長が『高野さんは宵待実里に脅された被害者』だと認定したのですから、どのような経緯で被害者になったのかご存知ですよね? まさか『脅された』と高野さんから聞いたから被害者だと思っただけなんて仰いませんよね?
どなたでも構いませんので、どんな内容で私が高野さんを脅したのか教えて下さい」

(肝心なところは詳細に、分かるように確認しながら進まなくちゃね~)

 支店長ズは顔を見合わせて『いや、その』と呟いて、高野の様子を伺うばかりで話にならない。

「た、高野⋯⋯君。この際だからハッキリ言ってやったらどうかな。我々は高野君のプライバシーを尊重して、その辺りのことは追求しなかったんだが⋯⋯我々は誰にも話さないと約束しよう」

「ここであった話は外には漏れないから安心してくれたまえ」

「こういうタチの悪い女はな、高野君が言わないと思って偉そうな態度をしてるんだ。この次には『脅してない』と言い出すぞ!」

(脅してねえし~、高野みたいな超最低野郎なんか興味ねえし~。高野と次に付き合う奴は『瑞稀のお古』と付き合うって事だもん。ガクブル、キモ~い。鳥肌立ちすぎて羽が生えそうだよ。あ、高野って『松井のお古』でもあるのか)

 実里が脳内で高野を罵倒していると、ヒソヒソと話し合っていた支店長ズは高野をより一層庇いつつ、高野の父親である専務に恩を売る作戦に出た。

「あー、その。脅しの内容だが、それをここで明確にする理由はないと思うんだが、お二方はどうかな?」

「よほどの理由がない限り、高野君が宵待のような残念女に手を出すはずがないからなあ」

「宵待が何らかの悪質な方法で高野君を脅した。それで十分でしょう」

 高野の態度は誰が見ても完全にギルティだと分かるはずだが、支店長ズはなんとしてでも高野を守りたいらしい。

(全部の罪を私におっ被せて強引に終わらせようとしてるのは見え見えだよ。父親がこの会社の専務だからって媚びまくるオッサンってや~ね~。どこの世界も力なき者が権力で踏み躙られる⋯⋯最低じゃん)

「正直に言って、ドライブレコーダーに記録されている内容についてはあまりお聞きしたくなかったのですが、詳しい話を聞かせていただけますか? ここまで来てもお話いただけないのであれば、自主退職の強制または不当解雇をされそうだと労基に訴えるつもりでおります。
その時には⋯⋯脅された理由は知らないが、脅されでもしなければこんな魅力や能力に欠けた女性と特別な関係になるはずがないと思ったから、詳細を知らないまま解雇しようとしたと仰って下さいね」



 流石にマズいと思ったのだろうか、支店長ズが漸く重い口を開いた。

「ドライブレコーダーには高野君とおま⋯⋯宵待の2人が乗っているのが映っていて、その車でラブホテルに入って行ったのが記録された。日付と時間、社用車のナンバーもハッキリ映っていたんだ」

「解雇理由はそれだけで十分だと労基が認めるのは間違いない」

「大事にしないのは宵待の為でもあると理解出来ただろ? シノゴの言わずに退職するなら、賠償金については減額出来るように話をしてやってもいい」

 ラブホテルに入って行く社用車を目撃したのがこの会社の大株主のひとりだった。

 業務時間内に社用車を使用して不埒な行動に出ている『コイツは誰だ』と、社長宛てにお怒りの電話が入りトップダウンで支店長達に連絡が来た。

 送られてきたデータを確認して社用車を割り出し、持ち出したのが高野だと判明。急ぎ帰社させた高野から話を聞いて現在に至るという。

「高野君の話だけでなく、宵待の午前中の行動についてもきちんと調べた。データに写っていたラブ⋯⋯ゴホン⋯⋯場所は、宵待の午前中の配送ルートの近く。宵待の最終配達時間から帰社時間まで全てを確認している」

 教えてやったんだから素直に会社から出ていけと言わんばかりの態度に、実里は笑いを堪えられなくなりそうだった。

(これが2回目じゃなかったら冤罪押し付けられてたんだろうなぁ。んでも、1回目は巻き込まれなかったのに、なんでだろ)

「大株主の芹澤様は非常に厳格な方で、今回の問題への対応によっては株の売却も検討すると仰っておられて。そうなれば宵待には払いきれんほどの損害賠償がいく事になる。一生をかけても払いきれんほどの借金を背負いたくなければ素直に会社を出て行くんだな」

「えーっと、高野さんはどうなるんでしょう。さっきの話では被害者ポジでしたけど」

「な! 被害者だと分かっていて高野君を巻き込むつもりか!」

「高野君を巻き込んだのは貴様だろうが!」

「お前が馬鹿げた事を始めなけりゃ高野君がこんな目に遭う事はなかったんだからな!」

 恥を知れと叫んだ樋下が実里に向けてカップに入ったコーヒーを投げつけた。

 頭から顔、胸から膝まで飛び散ったコーヒーが冷めていたのは幸いだった。

「き、貴様が悪いんだぞ!! 会社をここまで混乱させて反省の色も見せん!」

「頭からかけられたコーヒーが冷めていて助かりました。熱かったら火傷してましたね。顔面に直撃ですから大火傷してたかもです。確か⋯⋯怪我をしてたら傷害罪で、怪我がなかったら暴行罪だったはず。で、衣服とかだけなら器物破損でしたっけ? 目撃者もいますし、私はこのまま事務所を通って帰らなきゃならないので隠せませんよ?」

「う、煩い煩い煩い! 貴様が大人しくいう事を聞かないからだ! 会社の危機に貴様の戯言なんぞ聞いてられるか!」

「素直に会社から出ていかないからそんな目に遭うんだ!」




「高野さんを脅迫し、就業時間内に問題行動をおこした。その問題行動が何時から何時までとなっているのかを教えて下さい。私、間違いなくアリバイがあるんで」

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