【完結】チャンス到来! 返品不可だから義妹予定の方は最後までお世話宜しく

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5.強気でくるメアリー・トルダーン

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 学年末試験が終わり長期の休みに入る前の学園内は試験の結果にため息をつく生徒と、休み中の計画に舞い上がる生徒で明暗がはっきりと分かれていた。

 アーシェ達3人はもちろん試験結果に満足して楽しそうに休みの計画を話し合う側。

 午前中の授業が終わりカフェテラスで食事をはじめたばかりのアーシェ達の元に担任から呼び出しがきた。サマンサとアリシアには食事を続けてもらいアーシェがひとりで職員室に行くと困惑した顔の担任とキャサリン親衛隊が待っていた。

「サリスト先生がお呼びだと聞いて参りましたが何かありましたでしょうか?」

「それがちょっと困ったことになっていてね⋯⋯うーん、なんと言うか」

 歯切れの悪い担任が居心地悪そうに目を逸らした横で剣呑な目つきで睨みつけていた親衛隊のひとりが声を荒げた。

「誰にも知られてないと思ってそんな態度をしておられるのでしょうが、全て知っておりましてよ!」

(メアリー・トルダーンね⋯⋯侯爵家令嬢でこの中で一番高い爵位⋯⋯親衛隊の会長かしら)

「何があったのか教えていただかなくてはわかりませんわ」

 ため息を飲み込んだアーシェが『冷静に、冷静に』と心の中で呪文を唱えながら担任に向き合った。

「サリスト先生、状況をご存知ならお教えいただけますか?」

「ローゼンタールの荷物をだね⋯⋯えー、あの確認させてもら⋯⋯」

「キャサリン様のブレスレットを返してくださるかしら? デイビッド様からの大切なプレゼントを奪うなんて見下げ果てた根性をしておられるのね!」

「ブレスレットと言われても⋯⋯何を仰ってるのか全く分かりません。私が奪った⋯⋯盗んだとケレイブ様が仰っておられるのですか?」

 担任の話では2時間目がはじまる前にキャサリンを校舎の裏に呼び出したアーシェがブレスレットを無理やり奪い取ったと言う嫌疑がかかっていると言う。

「ローゼンタール様のお鞄には鍵がかかっておりますでしょう? さっさとここで開けて下さらないかしら!?」

 目の前のカウンターに放り投げられたのは傷がついたアーシェの鞄で、蓋の横の辺りも切れてかなりひどい状態になっていた。

「随分と傷だらけになってますけど、無理やり開けようとなさいましたの?」

「学園に鍵付きの鞄で来ている方がおかしいでしょ?」

「中に見られたくないものがあるからよねぇ」

 親衛隊のあちこちからボソボソと非難の声が上がり職員室中の教師が黙り込んでアーシェ達を見つめた。

「勝手に中を確認しようとしたら鍵がかかっていたからこんなにボロボロにしてしまわれたんですか?」

「だから、鍵をかける方がおかしいと申しておりますのよ! この期に及んで誤魔化し切れるなどと思わないことね、さっさと開けなさい!」

 何人もの教師が凝視しているのを確認したアーシェはポケットから出した鍵で解錠し、荷物を全てカウンターに並べた。

「ご希望のお品はありましたかしら?」

「ど、どう言うこと!? どこへ⋯⋯別の場所に隠したのね、なんて悪質なんでしょう」

「では身体検査をしていただこうかしら? 私が持っていないことを証明しなくては犯罪者扱いは終わらなそうですわ⋯⋯えーっと、女性の先生でどなたか協力していただけますか?」

 小さく頷いた女教師と共に隣にある応接室に向かったアーシェは制服を脱いで下着姿になり確認をしてもらった。




「サリスト先生、ローゼンタールは何も持っていませんでしたわ」

「嘘よ! どこに隠したのか仰いなさい!」

「ケレイブ様がブレスレットを奪われたのは2時間目の直前だと仰っておいででしたけど、その時間は医務室におりましたわ。1時間目が終わって教室に帰る途中で誰かに突き飛ばされ、足首を少し捻ってしまいましたので念の為医務室に参りましたの。
医務室の先生もずっとおられましたしアリシア・ブラン様とサマンサ・テルミンス様もずっとそばにいてくださいましたから確認してくださいますかしら?」

「そんな馬鹿な⋯⋯嘘をついても誤魔化せないわ!」

「そう言えばその方が落とし物をされていったのをクラスメイトのランダル様が気付かれて職員室に届けると言っておられましたけど何か届いてませんかしら?」

 担任が慌てて振り返ると事務員のひとりが小さく手を上げた。

「ランダル様からでしたら2時間目の直前にブレスレットが落ちていたと届けに来られました。落とし主はブロンドだったことしかわからなかったからと仰られたのでこちらで保管しております」

 親衛隊の後ろの方で顔を引き攣らせたのは男爵令嬢のマーシャ・レングストン。

「⋯⋯ローゼンタール様が持っておられたのを落としたんだわ。そうよ! 誰かがぶつかった時落ちた⋯⋯それをランダル様が勘違⋯⋯」

「ケレイブ様が2時間目の直前に呼び出され誰かにブレスレットを奪われたとしても私はその場に行けなかったと納得していただけましたかしら?」

 アーシェから目を逸らしたのは低位貴族の令嬢達で、相変わらず睨みつけてきたり『絶対におかしいわ』などと呟いているのは高位貴族の令嬢達。

「それにしても不思議ですわね。職員室に届いているのが問題のブレスレットなら私に後ろからぶつかってきて謝罪もなくいなくなられた方が私の近くで落として行ったみたいに感じてしまいますの。私がケレイブ様から奪ったことにしたい方でもおられたのかと疑ってしまいますわね」

 アーシェと目があったマーシャ・レングストンは真っ青になって後ずさった。

(レングストン様ならブロンドで身長も近い気はするけど⋯⋯取り敢えず、疑わしきは罰せずだよね)

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