【完結】チャンス到来! 返品不可だから義妹予定の方は最後までお世話宜しく

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6.細かいざまぁも忘れずに

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「ローゼンタール、時間をとってすまなかったが何か勘違いでもあったんだろう。職員室に届いているブレスレットをケレイブに確認して貰えば問題は解決だ。さあ、昼休憩がなくなってしまうから解散しなさい」

 早口で話をまとめた事なかれ主義の担任の顔には『良い加減にしてくれ』と書いてあり、今にもその場から逃げ出しそうにソワソワと貧乏ゆすりをはじめた。

「キャサリン様が脅されて大切なブレスレットを盗まれたと言うのに学園は知らん顔をなさるおつもりですの!? 犯人は間違いなくローゼンタール様ですわ! 本人でないなら誰かにやらせたのかも⋯⋯ちゃんと調べてくださいませ!」

 しつこく食い下がるメアリー・トルダーンの顔は焦りと苛立ちで真っ赤になっていた。

(だよね~、このまま終わったら伯爵家令嬢に因縁をつけた極悪令嬢チームのリーダーになっちゃうもんね~。もちろん、なってもらうよ? だって私はやってないからね)

「トルダーン様とその他の皆様が証拠もなく私を犯罪者扱いされたことや、私物を漁るために私の鞄を傷だらけにされたことについてローゼンタール伯爵家から正式に抗議させていただきますわ。
それに⋯⋯私に背後からぶつかり逃げ出した方には謝罪と慰謝料の請求をさせていただく予定でおります」

 真っ青になって口をパクパクさせる担任やキャサリン親衛隊の前で堂々と鞄に荷物を詰めたアーシェは小さく会釈してカフェテラスのアリシアやサマンサの元に戻った。

(いや~、鍵付きの鞄に変えておいて正解だったなぁ)

 私物が盗まれたり汚されたりしはじめてから鍵付きの鞄に変えたアーシェだったが、まさか冤罪をかけられるとは思ってもいなかった。

(ここまでやるなんて一体何がしたかったのかな~。私ってばキャサリン親衛隊なんて目じゃないくらい強力な応援団なんだけどなぁ⋯⋯2人の結婚式にはお店を丸ごと買い占めるくらい大量のお花を贈ってあげたいって心の底から思ってるのに、伝えるチャンスがないのが辛い)

 堂々と目の前に現れてふたりの仲を口にしてくれれば満面の笑みでお祝いが言えるのにと思っているアーシェだが、デイビッド達はコソコソと陰で悪口を言ってはローゼンタールの資産で散財しようとするばかり。

(デイビッドは昔から人の話を聞かないし思い込みも激しいから、こっちから話に行ったら何を言い出すかわかんないしなぁ)




「中間試験より成績が上がったからご褒美にレイクウォールに旅行に連れて行ってもらえることになったの!」

 冷え切った昼食を急いで食べているアーシェの前で、昼食を食べ終わり果実水を手にしたアリシアが嬉しそうに話しはじめた。

「ええ、良いなぁ⋯⋯私は現状維持だったからご褒美は髪留めひとつだけなの、せめてネックレスとかが良かったなぁ。ご褒美が髪留めってなんだか子供扱いされてる気がするもの」

「現状維持って⋯⋯サマンサは学年で5番以内に入ってるんだからそれ以上なんて厳しすぎじゃない?」

「まあ、今回こそアーシェに勝つって自分から宣言しちゃってたから仕方ないの~」

 まだ食事を食べ終われていないアーシェをチラッと見たサマンサがそっとデザートの皿を差し出した。

「サマンサの永遠の野望が再燃したのね。じゃあ、一緒にレイクウォールに行かない? お母様がサマンサとアーシェを誘ってもいいって言って下さったの!」

「うちは無理かなあ。例の問題を先に片付けないとさっきみたいな事が何度もあったら危険すぎるもの」

「食事が終わるのを待とうと思って黙ってたんだけど、何があったの?」

 職員室での話を聞いたアリシアとサマンサがバンっと机を叩いて立ち上がった。

「ここまで酷いことをするなんて人として許せないわ!」

「私もよ! 犯人を探しましょう。あの時周りにいた人達に聞けば何か見てるかも」

(マーシャ・レングスが怪しいなんて言ったら飛び出していきそう⋯⋯うん、沈黙は金だね)



 その日の夜父親の帰りを待ちアーシェが報告するとバキリと不穏な音が部屋に響いた。

(え、まさかと思うけど⋯⋯お母様の扇子が真っ二つに?)

「ケイン、ここまでされてもあの馬鹿達の帰りを待つつもりですの?」

 リリベルが笑顔でケインを威圧しているのを初めて目撃したアーシェの背がいつも以上にピンと伸びた。

(普段穏やかな人が怒ると怖いってホントなんだ⋯⋯き、気をつけよう)

「明日の朝一番でそいつらには抗議の手紙を届けるが、すぐにちゃんとした謝罪等がなければ司法に訴える。マーシャ・レングスについては別途調査が必要だな。それに、別件で父上達を呼び戻してからライルとデイビッドをまとめて締め上げよう。
あと数日で学園は休みに入るがアーシェはそれまで休みなさい。理由は理不尽な冤罪をかけられ心を傷つけられたと学園に抗議してやる!」

「当然ですわ! 大切な娘の身体検査だなんて許してはおけません。キャサリンのお馬鹿な仲間達の言葉を鵜呑みにしてなんの調査もせずアーシェを疑った担任も許してはおけませんわ! 教職など続けられなくしてやります」

 リリベルの厳しい尋問で今までにあった嫌がらせの数々を白状させられたアーシェは這々の体で部屋に逃げ帰った。

「アーシェ様、大丈夫ですか?」

 疲れ果ててソファに座り込んだアーシェを心配した侍女のミーニャがカモミールティーを淹れてくれた。

「大丈夫⋯⋯じゃないかも。眠れる獅子が目覚めたって言うか、魔王降臨の瞬間を目撃したと言うか」

「奥様はアーシェ様をとても大切に思っておられますから」

「うん、それはいつも感じてる」

 女だてらにローゼンタール伯爵家を継ぐと決められているアーシェは幼い頃から厳しい教育を受けてきたが、両親からの愛情を疑ったことは一度もない。

「頑張ればちゃんと褒めてくださるしズルをすればガッツリと叱られてきたのは将来私が苦労しないためだって分かってる。風邪をひいて熱を出せば朝まで看病してくれて、転んで怪我をした時は治るまでずっとそばにいてくれたもん」



 翌日から学園を休むことになったアーシェの元に予想通りデイビッドが怒鳴り込んできたのはそれから2日後の事だった。

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