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5.多分この子供達は
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メイドに後を頼み居間を出て階段に向かうと大きな泣き声と金切り声が聞こえてきました。子供達の大合唱に驚いて物が壊れる音が聞こえたので礼儀作法は無視して階段を駆け上がり2階の客間に飛び込みました。
床に大の字になって泣き喚く赤ちゃんは真っ赤な顔で手足を振り回しており、メイドが近付くことができないようです。
グレッグが投げたのか花瓶が粉々になりテーブルの上の小物も飛び散っています。
「煩くて支度ができないからさぁ、アレをどっかに連れてってちょうだい。その後この部屋の片付けをしといて」
ドレッサーに向かって座るビビアンは癇癪を起こしている子供を無視してわたくしに命令を出しながら屋敷のメイドに髪を結わせています。
しかも我が子の事を『アレ』呼ばわり!!
「一体何があったのですか?」
「痛い! アンタ今髪を引っかけたでしょう!! もう一回やったらクビにしてやるからね」
「申し訳ありません」
ビビアン様の近くにはメイドが4人いてビクビクしながら世話をしています。先ずは床で泣き叫んでいる赤ちゃん⋯⋯名前はチェなんとかだった気がします⋯⋯を抱き上げました。暴れてあちこち叩かれましたがその程度の事は孤児院の慰問で慣れています。
のけぞって暴れる赤ちゃんの背を軽く叩きながらソファの隅に座り泣き声が落ち着くまで待つ事にしました。
グレッグは足を開いて立ち尽くしたままわたくしの事をガン見しています。
「アンタ子守り上手じゃん。それなら乳母に雇ったげでも良いかも~」
とんでもない台詞を吐きながらせっせと化粧をしていたビビアン様は宝石箱からネックレスを取り出してドレスに当てて鏡を覗き込んでいました。
このような状況はよくある事なのかビビアン様のご機嫌な鼻歌が聞こえてきましたがグレッグは仁王立ちしたまま固まっています。
暫くすると赤ちゃんはヒックヒックとしゃっくりをしながらうとうとしはじめたのでグレッグの方を向いて声をかけました。
「何があったのか教えてくれるかしら?」
「⋯⋯」
手に持っていた何かが足元に飛んできました。
何がしたいのか・何があったのか教えてもらいたいのですがなんと声を掛ければ良いのか悩んでしまいます。母親が近くにいるのですからわたくしの出番ではない気がしますもの。
グレッグは黙り込んでわたくしを睨みつけていますが、チラチラとビビアン様を見ている彼の目が怯えているように見えるのが気に掛かります。
「ビビ、準備できた?」
ノックもせずドアを開けたステファン様がズカズカと入ってきた後、部屋を見回して『チッ!』と舌打ちしました。
「なんだこれ。きったねえ部屋だな」
見ないふりをしながらグレッグの様子を伺うと真っ青な顔で今にも失禁しそうなほどブルブルと震えています。
「帰ってくるまでに片付けといてくれるって言ってたから、ほっとけばいーじゃん。それよりもさぁ、アタシ超お腹すいた~。ご飯ご飯」
「そうだな。長風呂でスッキリしたし、ビビもピカピカのプルプルだな。
リリアン、飯が終わるまでにここ片付けといて」
ビビアン様を腕にぶら下げたステファン様が我が子達に目もくれず部屋を出て行きパタンとドアが閉まると、目に見えるほどホッとした様子でグレッグが息を吐き出しました。
玄関先ではステファン様の足にしがみついていたので親子関係は順調なのかと思っていましたがどうもそうではないようです。
わたくしの名前⋯⋯リリスティアですからね。訂正する機会はあるのでしょうか?
この状況では食事に参加することは出来そうにありませんから、ターニャにこの後の情報収集を頼みましょう。
チラッと目で合図すると小さく頷いたターニャが部屋をそっと出て行きました。
マーベル一家のやり取りを聞くよりも子供達の方が優先順位は高いでしょう。わたくしの予想通りならこの子達は間違いなく⋯⋯。
親指を咥えてうとうとしはじめた赤ちゃんの様子を確認して凍りついたグレッグを手招きしました。
警戒心MAXのグレッグは思い切り針を尖らせた針鼠のようでしたが赤ちゃんをあやしながら待っていると少しずつ近付いて来てくれました。
「この子の名前教えてくれるかしら?」
「⋯⋯」
「あなたの名前はグレッグだったと思うんだけど、この子の名前を忘れちゃったの」
「⋯⋯ェイス」
「ん?」
「チェイス」
「グレッグとチェイスね。わたくしの名前はリリスティアって言うの。グレッグに覚えてもらえたら嬉しいわ」
「⋯⋯」
グレッグの警戒心が少し薄れた気がしたので少し身を乗りだして秘密の提案をしてみることにしました。
床に大の字になって泣き喚く赤ちゃんは真っ赤な顔で手足を振り回しており、メイドが近付くことができないようです。
グレッグが投げたのか花瓶が粉々になりテーブルの上の小物も飛び散っています。
「煩くて支度ができないからさぁ、アレをどっかに連れてってちょうだい。その後この部屋の片付けをしといて」
ドレッサーに向かって座るビビアンは癇癪を起こしている子供を無視してわたくしに命令を出しながら屋敷のメイドに髪を結わせています。
しかも我が子の事を『アレ』呼ばわり!!
「一体何があったのですか?」
「痛い! アンタ今髪を引っかけたでしょう!! もう一回やったらクビにしてやるからね」
「申し訳ありません」
ビビアン様の近くにはメイドが4人いてビクビクしながら世話をしています。先ずは床で泣き叫んでいる赤ちゃん⋯⋯名前はチェなんとかだった気がします⋯⋯を抱き上げました。暴れてあちこち叩かれましたがその程度の事は孤児院の慰問で慣れています。
のけぞって暴れる赤ちゃんの背を軽く叩きながらソファの隅に座り泣き声が落ち着くまで待つ事にしました。
グレッグは足を開いて立ち尽くしたままわたくしの事をガン見しています。
「アンタ子守り上手じゃん。それなら乳母に雇ったげでも良いかも~」
とんでもない台詞を吐きながらせっせと化粧をしていたビビアン様は宝石箱からネックレスを取り出してドレスに当てて鏡を覗き込んでいました。
このような状況はよくある事なのかビビアン様のご機嫌な鼻歌が聞こえてきましたがグレッグは仁王立ちしたまま固まっています。
暫くすると赤ちゃんはヒックヒックとしゃっくりをしながらうとうとしはじめたのでグレッグの方を向いて声をかけました。
「何があったのか教えてくれるかしら?」
「⋯⋯」
手に持っていた何かが足元に飛んできました。
何がしたいのか・何があったのか教えてもらいたいのですがなんと声を掛ければ良いのか悩んでしまいます。母親が近くにいるのですからわたくしの出番ではない気がしますもの。
グレッグは黙り込んでわたくしを睨みつけていますが、チラチラとビビアン様を見ている彼の目が怯えているように見えるのが気に掛かります。
「ビビ、準備できた?」
ノックもせずドアを開けたステファン様がズカズカと入ってきた後、部屋を見回して『チッ!』と舌打ちしました。
「なんだこれ。きったねえ部屋だな」
見ないふりをしながらグレッグの様子を伺うと真っ青な顔で今にも失禁しそうなほどブルブルと震えています。
「帰ってくるまでに片付けといてくれるって言ってたから、ほっとけばいーじゃん。それよりもさぁ、アタシ超お腹すいた~。ご飯ご飯」
「そうだな。長風呂でスッキリしたし、ビビもピカピカのプルプルだな。
リリアン、飯が終わるまでにここ片付けといて」
ビビアン様を腕にぶら下げたステファン様が我が子達に目もくれず部屋を出て行きパタンとドアが閉まると、目に見えるほどホッとした様子でグレッグが息を吐き出しました。
玄関先ではステファン様の足にしがみついていたので親子関係は順調なのかと思っていましたがどうもそうではないようです。
わたくしの名前⋯⋯リリスティアですからね。訂正する機会はあるのでしょうか?
この状況では食事に参加することは出来そうにありませんから、ターニャにこの後の情報収集を頼みましょう。
チラッと目で合図すると小さく頷いたターニャが部屋をそっと出て行きました。
マーベル一家のやり取りを聞くよりも子供達の方が優先順位は高いでしょう。わたくしの予想通りならこの子達は間違いなく⋯⋯。
親指を咥えてうとうとしはじめた赤ちゃんの様子を確認して凍りついたグレッグを手招きしました。
警戒心MAXのグレッグは思い切り針を尖らせた針鼠のようでしたが赤ちゃんをあやしながら待っていると少しずつ近付いて来てくれました。
「この子の名前教えてくれるかしら?」
「⋯⋯」
「あなたの名前はグレッグだったと思うんだけど、この子の名前を忘れちゃったの」
「⋯⋯ェイス」
「ん?」
「チェイス」
「グレッグとチェイスね。わたくしの名前はリリスティアって言うの。グレッグに覚えてもらえたら嬉しいわ」
「⋯⋯」
グレッグの警戒心が少し薄れた気がしたので少し身を乗りだして秘密の提案をしてみることにしました。
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