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39.拗ねてます
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「リリスティア様は子供達と一緒かその前のどちらかに伯爵家を出るのは可能ですか?」
「後からであれば⋯⋯昔から影が薄いのが自慢ですからマーベル一家が慌てている間なら裏口から出られると思います。
それよりも、子供達をお連れいただく際ターニャを同行させていただけませんでしょうか。知らない大人達だけだとグレッグがパニックになってしまう可能性がありますがターニャがいれば宥める事ができます。
チェイスもターニャに懐いていますから」
「それではリリスティア様が敵地で一人になってしまう」
「使用人達がおりますから大丈夫です。伯爵夫妻やステファン様から手をあげられたことはございませんし、対応策を練るのに忙しくてわたくしの事など気付かないと思います」
「だと良いのですか⋯⋯」
子供達を緊急避難させる理由にわたくしが関わっているとは知られていないので大丈夫でしょう。フォレスト公爵様とお会いしてこのように打ち合わせをしている事もバレていない自信がありますし。
「このような急な話でもラングローズ子爵は子供達を子爵家に避難させて下さいますか?」
「わたくしが突然人を連れて帰るのには家人全員が慣れておりますから問題ありませんわ。今日中に連絡を入れておきます」
見知らぬ人を何人も連れ帰った経験が役に立つとは思いませんでした。
大人から子供まで年齢も性別も様々でしたから、子爵家には全年齢でどちらの性別でも可能な準備がいつの間にか出来上がっておりましたの。
グレッグの着替えは間違いなく大丈夫だと思いますが、流石にチェイスのような赤ちゃんのサイズはないかも⋯⋯。あ、あります。以前赤ちゃんを連れたご婦人を連れて帰った事がありましたから大丈夫ですね。
呆れた顔をするだけで叱られなくなったのは何人目だったか⋯⋯まあ、2桁もの人を連れて帰ったのなら覚えていなくても仕方ないですね。
「私もこの後お父上にご挨拶に伺ってお願いしておきます。明日は午前中にマーベル伯爵家を急襲しますから、リリスティア様は知らないふりでお願いします」
「はい、子供達と一緒にお待ちしております」
この問題が落ち着いたら何かお礼しなくては。10日間子供達と遊んでいただけでなんの解決策も思いつかず悶々としていただけのわたくしと違い、全ての問題を片付ける為に動いて下さっているフォレスト公爵様に感謝の念が堪えません。
わたくしの周りの方は本当に良い方が多く、いつまでもそれに甘えてばかり⋯⋯22歳にもなってこんなことではいけませんね。子爵家に戻った後は人に迷惑をかけないしっかりと自立した人間になるよう心を入れ替えようと思います。
公爵様と別れマーベル伯爵家に戻るとグレッグが飛びついて⋯⋯来ません。部屋の隅で三角座りして顔を膝に埋めています。
拗ねてます。『寂しかった』と猛アピールしているのが少し面倒くさいと同時に可愛いくて堪りません。
笑顔や素直な態度は警戒心を持っている時や相手の機嫌を損ねたくなくてご機嫌をとっているだけの事もあるのでよく観察をする必要があると教わりました。
拗ねたり怒ったりするのは我儘だけでなく相手を試している時もあるそうですし、無意識にそれを受け入れてくれると感じている相手にしかしないそうですからちょっと嬉しくもあります。
グレッグが心を開きはじめているしるしですから⋯⋯全部シスターからの受け売りです。
ハンナの側で遊んでいたチェイスまでグレッグの横に並んで座り込むと、チラッと横目でチェイスを見たグレッグが肘で押し除けようとしています。
コロンと転んだのが楽しかったのか声を上げて笑ったチェイスがグレッグの隣に座り直すと再び肘が⋯⋯。
楽しそうなので放っておきましょう。
泣き虫で少しマイナス思考に走りやすいグレッグと、お兄ちゃんが大好きで空気の読めなさそうなチェイスは最高のコンビですもの。
「何か聞いておくことはあるかしら?」
わたくしが出かけていた間に問題がなかったかを少し曖昧な言い方で問いかけました。
「いえ、今日のおやつがチェイス様の大好きなパウンドケーキでしたので、グレッグ様のおやつを狙って⋯⋯攻防戦が楽しそうでした」
「どっちが勝ったのか聞かなくても予想がついたかも」
「はい、明日のチェイス様のおやつは半分グレッグ様にあげる約束になっています」
あれ? わたくしがいなくて寂しかったのではなくて、おやつ争奪戦に負けて拗ねてる?
料理長の作るパウンドケーキには勝てませんね。
「後からであれば⋯⋯昔から影が薄いのが自慢ですからマーベル一家が慌てている間なら裏口から出られると思います。
それよりも、子供達をお連れいただく際ターニャを同行させていただけませんでしょうか。知らない大人達だけだとグレッグがパニックになってしまう可能性がありますがターニャがいれば宥める事ができます。
チェイスもターニャに懐いていますから」
「それではリリスティア様が敵地で一人になってしまう」
「使用人達がおりますから大丈夫です。伯爵夫妻やステファン様から手をあげられたことはございませんし、対応策を練るのに忙しくてわたくしの事など気付かないと思います」
「だと良いのですか⋯⋯」
子供達を緊急避難させる理由にわたくしが関わっているとは知られていないので大丈夫でしょう。フォレスト公爵様とお会いしてこのように打ち合わせをしている事もバレていない自信がありますし。
「このような急な話でもラングローズ子爵は子供達を子爵家に避難させて下さいますか?」
「わたくしが突然人を連れて帰るのには家人全員が慣れておりますから問題ありませんわ。今日中に連絡を入れておきます」
見知らぬ人を何人も連れ帰った経験が役に立つとは思いませんでした。
大人から子供まで年齢も性別も様々でしたから、子爵家には全年齢でどちらの性別でも可能な準備がいつの間にか出来上がっておりましたの。
グレッグの着替えは間違いなく大丈夫だと思いますが、流石にチェイスのような赤ちゃんのサイズはないかも⋯⋯。あ、あります。以前赤ちゃんを連れたご婦人を連れて帰った事がありましたから大丈夫ですね。
呆れた顔をするだけで叱られなくなったのは何人目だったか⋯⋯まあ、2桁もの人を連れて帰ったのなら覚えていなくても仕方ないですね。
「私もこの後お父上にご挨拶に伺ってお願いしておきます。明日は午前中にマーベル伯爵家を急襲しますから、リリスティア様は知らないふりでお願いします」
「はい、子供達と一緒にお待ちしております」
この問題が落ち着いたら何かお礼しなくては。10日間子供達と遊んでいただけでなんの解決策も思いつかず悶々としていただけのわたくしと違い、全ての問題を片付ける為に動いて下さっているフォレスト公爵様に感謝の念が堪えません。
わたくしの周りの方は本当に良い方が多く、いつまでもそれに甘えてばかり⋯⋯22歳にもなってこんなことではいけませんね。子爵家に戻った後は人に迷惑をかけないしっかりと自立した人間になるよう心を入れ替えようと思います。
公爵様と別れマーベル伯爵家に戻るとグレッグが飛びついて⋯⋯来ません。部屋の隅で三角座りして顔を膝に埋めています。
拗ねてます。『寂しかった』と猛アピールしているのが少し面倒くさいと同時に可愛いくて堪りません。
笑顔や素直な態度は警戒心を持っている時や相手の機嫌を損ねたくなくてご機嫌をとっているだけの事もあるのでよく観察をする必要があると教わりました。
拗ねたり怒ったりするのは我儘だけでなく相手を試している時もあるそうですし、無意識にそれを受け入れてくれると感じている相手にしかしないそうですからちょっと嬉しくもあります。
グレッグが心を開きはじめているしるしですから⋯⋯全部シスターからの受け売りです。
ハンナの側で遊んでいたチェイスまでグレッグの横に並んで座り込むと、チラッと横目でチェイスを見たグレッグが肘で押し除けようとしています。
コロンと転んだのが楽しかったのか声を上げて笑ったチェイスがグレッグの隣に座り直すと再び肘が⋯⋯。
楽しそうなので放っておきましょう。
泣き虫で少しマイナス思考に走りやすいグレッグと、お兄ちゃんが大好きで空気の読めなさそうなチェイスは最高のコンビですもの。
「何か聞いておくことはあるかしら?」
わたくしが出かけていた間に問題がなかったかを少し曖昧な言い方で問いかけました。
「いえ、今日のおやつがチェイス様の大好きなパウンドケーキでしたので、グレッグ様のおやつを狙って⋯⋯攻防戦が楽しそうでした」
「どっちが勝ったのか聞かなくても予想がついたかも」
「はい、明日のチェイス様のおやつは半分グレッグ様にあげる約束になっています」
あれ? わたくしがいなくて寂しかったのではなくて、おやつ争奪戦に負けて拗ねてる?
料理長の作るパウンドケーキには勝てませんね。
応援ありがとうございます!
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