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85.一を聞いて十を知る? 経験値の違いですね
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「え、ノア様?」
セルゲイ爺ちゃんと一緒に花の植え替えをしていたところに汗をかき息を切らしたノア様が走ってこられました。
「ティ、ティア⋯⋯はぁはぁ⋯⋯申し訳ないんだが、応接室に⋯⋯き、きて欲しい。ラングローズ卿が呼んでおられる⋯⋯はぁ⋯⋯」
今までにはなかった事態です。
グレッグやチェイスに対する思い入れほどではありませんが、他の子達の時もやはりわたくしは感情が先に立ち視野が狭くなっている気がしましたので、打ち合わせの全てをお父様任せにさせていただいてきましたから。
「すぐに参ります」
応接室までの短い道のりでノア様は説明をはじめられましたがキッパリとお断りいたしました。お友達の悪口は言いにくいでしょうしお父様への文句も言えないはずです。
話の中に忖度や遠慮があれば話を誤解してしまう可能性があると説明したところで応接室に着いてしまいました。
「ティア、申し訳ない。俺が奴らともっとちゃんと話しておけば」
「取り敢えず中に参りましょう」
今はノア様とお話しする時間はありません。お話を聞くのが最優先ですから。
「リリス、こちらはキャンベル辺境伯ご夫妻だ」
「ようこそお越しくださいました。リリスティアと申します」
前回練習したお陰でちゃんとしたカーテシーができたと思います⋯⋯思いますが、睨まれてます。軽蔑? 嫌悪?
「挨拶はいらん! ノアの顔を立てて待っていただけだからな。で、由緒ある公爵家当主に丁稚をさせてまで何がしたいんだ!?」
「不敬を承知でノア殿の言葉を何度も遮りながらでしたが自由にお話しいただいたお陰で、忌憚ない辺境伯様のお気持ちをひと通り伺わせて頂いたと思っております。
不調に終わりました原因の一部にリリスティアも関係しておるようですので参加させることに致しました」
お父様⋯⋯その笑顔は最大級で怒っておられますね。ほんの数時間でお父様をここまで怒らせるなんて特殊能力持ちかもですわ。
「お手間をおかけして申し訳ありませんが少しお話を伺わせていただければ幸いです」
何故かテーブルが粉々ですしカップなども一緒に飛んでいったみたいですが⋯⋯お話し優先ですね。
「話は済んだ、お前達は俺が迎えを寄越したらチェイスを馬車に乗せろ。謝礼は倍にしてやるから、これ以上ガタガタいうな。わかったな!」
何となくですがお話の概要が掴めた気が致します。
一度お会いしただけで既にチェイスを連れて行くつもりで、迎えは代理に任せるつもりだということ。チェイスだけを連れて行くつもりで当家は謝礼目当てで子供の世話をするような輩だと思っている事。
お父様がわたくしを呼ばれたという事は遠慮する必要はありませんね。
「お話は分かりました。他のお子様の時も銅貨一枚いただいた事はございませんので謝礼は結構でございます。
チェイスはお渡しできかねますので迎えは不要でございますし、今回の当家の判断にご不満がございましたら裁判所でお会いいたしましょう。
当家の使用人は優秀ですから恐らく馬車の準備はできていると思います。お見送りは必要でしょうか?」
「後から来て何も知らんくせに! わけのわからんことを言うな!」
「ギル、真面に話せ! お前の考えは間違ってる。きちんと話し合ってから出直させてもらうんだ」
「は! 女に誑かされて軟弱になったか!? 友よりも女狐とは呆れた奴だな」
「ギル! 頼むから真面目に話を聞け!」
「ご友人だと伺っておりましたのに⋯⋯ノア様が女狐などに誑かされる方がどうかさえお分かりにならない? ああ、残念な頭をお持ちの方なのですね。これは失礼致しました」
ここ最近で悪女の配役をいただくのは二回目です。わたくしは壁の花から変身したようです。女狐は初めてでしたかしら。
「ここへいらしてからの辺境伯様のお話は存じ上げませんので、わたくしの理解が違っておりましたらお教えくださいませ。
辺境伯様は当家にご不満をお持ちでいらっしゃいます。それは友を誑かすわたくしの存在が大きいのでしょう。そのような女のいる家など子供にとって良くない環境に違いないと決めつけておられる。恐らくは金目当て、その他にも金銭に代わる何かを狙っているはずだと警戒しておられる。
たった一度の顔合わせでチェイスを連れて行くと決められたのは、甥に間違いないと確信されたから。
幼い子供などしばらく泣かしておけば過去にあったことなどすぐに忘れてしまうはずだから、異父兄と離れ離れにしても心配はいらない。虐待されていた事も同じようにすぐ忘れてしまうと決めつけておられる。
当家のような悪辣な家に置いていては過去の恐怖を忘れるどころか悪い影響が追加されてしまうから、強引にでも事を進めてやる。
ノア様のお言葉を無視し続けておられますから、全てが終わればノア様の頭が冷えて冷静になると確信しておられますね。
グレッグへの配慮がカケラも感じられないことから考えて、犯罪者の息子で平民などとの関係はお断りだ。
取り敢えず分かりましたのはこの程度でございますが、間違いなどありませんでしたでしょうか?」
「⋯⋯ふん、どうせ陰で聞いていたかノアから聞いたのだろう。知ったふうな口を聞きやがって、子爵家風情が随分と偉そうだな」
「貴族としての爵位は低くとも人としてはキャンベル辺境伯様よりは高位のようですわ。少なくとも当家にはそれまで顔を合わせた事もない方を蔑み貶めるような言動をする者はおりませんので。
それから前もってお話を聞いていたわけではございません。低レベルの方の考える事など大差ありませんの。言ってみれば経験値の違いですわ」
「不敬罪で切り捨ててやる! そうすればノアの目も覚めるしな」
辺境伯が腰の剣に手をかけニヤリと陰湿な笑みを浮かべられました。
セルゲイ爺ちゃんと一緒に花の植え替えをしていたところに汗をかき息を切らしたノア様が走ってこられました。
「ティ、ティア⋯⋯はぁはぁ⋯⋯申し訳ないんだが、応接室に⋯⋯き、きて欲しい。ラングローズ卿が呼んでおられる⋯⋯はぁ⋯⋯」
今までにはなかった事態です。
グレッグやチェイスに対する思い入れほどではありませんが、他の子達の時もやはりわたくしは感情が先に立ち視野が狭くなっている気がしましたので、打ち合わせの全てをお父様任せにさせていただいてきましたから。
「すぐに参ります」
応接室までの短い道のりでノア様は説明をはじめられましたがキッパリとお断りいたしました。お友達の悪口は言いにくいでしょうしお父様への文句も言えないはずです。
話の中に忖度や遠慮があれば話を誤解してしまう可能性があると説明したところで応接室に着いてしまいました。
「ティア、申し訳ない。俺が奴らともっとちゃんと話しておけば」
「取り敢えず中に参りましょう」
今はノア様とお話しする時間はありません。お話を聞くのが最優先ですから。
「リリス、こちらはキャンベル辺境伯ご夫妻だ」
「ようこそお越しくださいました。リリスティアと申します」
前回練習したお陰でちゃんとしたカーテシーができたと思います⋯⋯思いますが、睨まれてます。軽蔑? 嫌悪?
「挨拶はいらん! ノアの顔を立てて待っていただけだからな。で、由緒ある公爵家当主に丁稚をさせてまで何がしたいんだ!?」
「不敬を承知でノア殿の言葉を何度も遮りながらでしたが自由にお話しいただいたお陰で、忌憚ない辺境伯様のお気持ちをひと通り伺わせて頂いたと思っております。
不調に終わりました原因の一部にリリスティアも関係しておるようですので参加させることに致しました」
お父様⋯⋯その笑顔は最大級で怒っておられますね。ほんの数時間でお父様をここまで怒らせるなんて特殊能力持ちかもですわ。
「お手間をおかけして申し訳ありませんが少しお話を伺わせていただければ幸いです」
何故かテーブルが粉々ですしカップなども一緒に飛んでいったみたいですが⋯⋯お話し優先ですね。
「話は済んだ、お前達は俺が迎えを寄越したらチェイスを馬車に乗せろ。謝礼は倍にしてやるから、これ以上ガタガタいうな。わかったな!」
何となくですがお話の概要が掴めた気が致します。
一度お会いしただけで既にチェイスを連れて行くつもりで、迎えは代理に任せるつもりだということ。チェイスだけを連れて行くつもりで当家は謝礼目当てで子供の世話をするような輩だと思っている事。
お父様がわたくしを呼ばれたという事は遠慮する必要はありませんね。
「お話は分かりました。他のお子様の時も銅貨一枚いただいた事はございませんので謝礼は結構でございます。
チェイスはお渡しできかねますので迎えは不要でございますし、今回の当家の判断にご不満がございましたら裁判所でお会いいたしましょう。
当家の使用人は優秀ですから恐らく馬車の準備はできていると思います。お見送りは必要でしょうか?」
「後から来て何も知らんくせに! わけのわからんことを言うな!」
「ギル、真面に話せ! お前の考えは間違ってる。きちんと話し合ってから出直させてもらうんだ」
「は! 女に誑かされて軟弱になったか!? 友よりも女狐とは呆れた奴だな」
「ギル! 頼むから真面目に話を聞け!」
「ご友人だと伺っておりましたのに⋯⋯ノア様が女狐などに誑かされる方がどうかさえお分かりにならない? ああ、残念な頭をお持ちの方なのですね。これは失礼致しました」
ここ最近で悪女の配役をいただくのは二回目です。わたくしは壁の花から変身したようです。女狐は初めてでしたかしら。
「ここへいらしてからの辺境伯様のお話は存じ上げませんので、わたくしの理解が違っておりましたらお教えくださいませ。
辺境伯様は当家にご不満をお持ちでいらっしゃいます。それは友を誑かすわたくしの存在が大きいのでしょう。そのような女のいる家など子供にとって良くない環境に違いないと決めつけておられる。恐らくは金目当て、その他にも金銭に代わる何かを狙っているはずだと警戒しておられる。
たった一度の顔合わせでチェイスを連れて行くと決められたのは、甥に間違いないと確信されたから。
幼い子供などしばらく泣かしておけば過去にあったことなどすぐに忘れてしまうはずだから、異父兄と離れ離れにしても心配はいらない。虐待されていた事も同じようにすぐ忘れてしまうと決めつけておられる。
当家のような悪辣な家に置いていては過去の恐怖を忘れるどころか悪い影響が追加されてしまうから、強引にでも事を進めてやる。
ノア様のお言葉を無視し続けておられますから、全てが終わればノア様の頭が冷えて冷静になると確信しておられますね。
グレッグへの配慮がカケラも感じられないことから考えて、犯罪者の息子で平民などとの関係はお断りだ。
取り敢えず分かりましたのはこの程度でございますが、間違いなどありませんでしたでしょうか?」
「⋯⋯ふん、どうせ陰で聞いていたかノアから聞いたのだろう。知ったふうな口を聞きやがって、子爵家風情が随分と偉そうだな」
「貴族としての爵位は低くとも人としてはキャンベル辺境伯様よりは高位のようですわ。少なくとも当家にはそれまで顔を合わせた事もない方を蔑み貶めるような言動をする者はおりませんので。
それから前もってお話を聞いていたわけではございません。低レベルの方の考える事など大差ありませんの。言ってみれば経験値の違いですわ」
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