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88.アリサ様、危機一髪ですわ!
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「随分分かったような口を利くじゃねえか。亭主に浮気されて離婚した女の恨みは怖えな」
「片手で足りるほどしか会った事もない方がどこで何をしようと気になりませんわ。今のお話は浮気男に苦労したと言う女性からの受け売りですの」
知ったかぶりをしてしまいました。わたくし自身はまだそのような強い思いを誰かに抱いたことがありませんけれど、その方達の怒りや悲しみは理解できると思いましたの。
「虫だの頭が軽いだの随分な言い方をしてくれたじゃねえか」
「はい、結構適切な表現をチョイスできたと自信を持っておりますわ」
ついにっこりと笑顔になってしまいましたら辺境伯のお顔が魔王のようになってしまわれました。ご本人に自覚がおありでないので仕方ないですわね。
「ノア、帰るぞ! こんな女の戯言なんか聞いてられねえ」
「いや、俺はこれほど的確な表現を聞いたことがないし、最後までティアの話を聞きたいと思ってる。
ジャスパーがクズだったのは間違いない事実だが、ティアに言われるまでお前達の言動に問題があったと気付いてなかった俺にも責任がある」
「はあ? ノア、とうとうイかれちまったか?」
「辺境伯様は何故不貞をなさいませんの? 陰に隠れてされてるかもしれませんけど⋯⋯」
「するわけねえだろうがよ! 俺はアリサと結婚して、何の不満もねえからな。可哀想なジャスパーとは違げえんだ」
「まあ、大変ですわ。『アリサ様、危機一髪!』です。辺境伯から不貞の可能性を示唆されるなんて、これからの生活の中で不満を持たれないように最新の注意をして暮らさなくてはなりませんのね!
不満があると理由づけできた時は浮気すると宣言されてしまいましたもの。
なんておいたわしい」
「ば、バカ言え! 俺がそんなことするわけねえだろうが!」
「いえ、すると思いますわ⋯⋯断言できるかもですわね。だってクズジャスパーが浮気しまくっていたのを容認していたんですもの。それが正しい⋯⋯やっていい事だと思っていた倫理観のうっすーい方ですからねえ、確実にやらかすと思います。
うーん、薄くてもないよりはマシかしら? でもまあ、全くない可能性の方が大きそうですし、それ以上に浮気容認派にしか見えませんしね」
「んなわけあるか! 大の男が浮気しねえように一日中見張れって言うのかよ! 何度言っても聞かねえんだから仕方なかったんだよ!」
「そんな面倒な事をする必要なんてありませんでしたわ。浮気は間違っていると思い注意しても聞かないクズジャスパーの行動を本当に嘆いておられたなら『去勢』してしまえば良かったんですわ。
ジャスパーのようなクズならすぐに別の遊びを思いつくのでしょうけれど、取り敢えず浮気はできなくなりますし庶子が増える心配もありませんでしょう?
無力な女相手に剣を抜こうとするほど短絡的な思考の持ち主ですのに⋯⋯その程度の知恵もお持ちでなかったか容認しておられたとしか思えませんわ。むしろ応援しておられた気もしておりますの。
例えば『しょうがねえなぁ、男には気晴らししたい時もあるよな』とか『いい女を見りゃその気になっても仕方ねえ』とか『バレないようにやれよ』とか『浮気は甲斐性だって言う奴もいるしな』とか。
全部エールを送る言葉ですわ」
おや、辺境伯の顔が青ざめてきましたわ。どれもこれも身に覚えがあると言った感じでしょうか。
以前幼い子を抱えて我が家に滞在された女性の知識は凄いですね。その方は散々浮気をされた上に夫と愛人に家を追い出されたと仰っておられましたから、経験談には事欠きませんの。
「で、でも男としてそれだけは⋯⋯なあ」
辺境伯がノア様に救いを求められましたが、ノア様は声を殺して笑っておられます。
「何を仰いますやら! 会ったばかりの女を殺すのと弟の股間を涼しくするのを選ぶなら、後者の方が断然面倒がありませんわ。辺境伯の大きな身体に無駄についている筋肉だって切断面積が狭い方が楽だと言うはずですもの。
多分⋯⋯いいえ、肉屋で聞けば間違いなく『豚一頭をシメるよりちっせえ足一本落とす方が楽に決まってらあ』って言うはずですわ。
人を斬り殺せば事情聴取から裁判までありますけれど、一部分が欠損するだけなら医者を呼べば済みますからお手軽でしょう?
もっと早く知っていればとても腕の良い医者をご紹介致しましたのに残念でなりませんわ」
「ブ、ブハッ! ご、ごめん。いや、マジでその通り⋯⋯あの時思い付かなかった俺も虫並みだな。他家の事に口出しするのは良くないなんて言い訳してた俺も反省しなきゃならん」
どこに笑いのポイントがあったのか分かりませんが、わたくしの横でお父様もお腹を抱えて笑っておられますし。
「はぁ、なんか⋯⋯」
「片手で足りるほどしか会った事もない方がどこで何をしようと気になりませんわ。今のお話は浮気男に苦労したと言う女性からの受け売りですの」
知ったかぶりをしてしまいました。わたくし自身はまだそのような強い思いを誰かに抱いたことがありませんけれど、その方達の怒りや悲しみは理解できると思いましたの。
「虫だの頭が軽いだの随分な言い方をしてくれたじゃねえか」
「はい、結構適切な表現をチョイスできたと自信を持っておりますわ」
ついにっこりと笑顔になってしまいましたら辺境伯のお顔が魔王のようになってしまわれました。ご本人に自覚がおありでないので仕方ないですわね。
「ノア、帰るぞ! こんな女の戯言なんか聞いてられねえ」
「いや、俺はこれほど的確な表現を聞いたことがないし、最後までティアの話を聞きたいと思ってる。
ジャスパーがクズだったのは間違いない事実だが、ティアに言われるまでお前達の言動に問題があったと気付いてなかった俺にも責任がある」
「はあ? ノア、とうとうイかれちまったか?」
「辺境伯様は何故不貞をなさいませんの? 陰に隠れてされてるかもしれませんけど⋯⋯」
「するわけねえだろうがよ! 俺はアリサと結婚して、何の不満もねえからな。可哀想なジャスパーとは違げえんだ」
「まあ、大変ですわ。『アリサ様、危機一髪!』です。辺境伯から不貞の可能性を示唆されるなんて、これからの生活の中で不満を持たれないように最新の注意をして暮らさなくてはなりませんのね!
不満があると理由づけできた時は浮気すると宣言されてしまいましたもの。
なんておいたわしい」
「ば、バカ言え! 俺がそんなことするわけねえだろうが!」
「いえ、すると思いますわ⋯⋯断言できるかもですわね。だってクズジャスパーが浮気しまくっていたのを容認していたんですもの。それが正しい⋯⋯やっていい事だと思っていた倫理観のうっすーい方ですからねえ、確実にやらかすと思います。
うーん、薄くてもないよりはマシかしら? でもまあ、全くない可能性の方が大きそうですし、それ以上に浮気容認派にしか見えませんしね」
「んなわけあるか! 大の男が浮気しねえように一日中見張れって言うのかよ! 何度言っても聞かねえんだから仕方なかったんだよ!」
「そんな面倒な事をする必要なんてありませんでしたわ。浮気は間違っていると思い注意しても聞かないクズジャスパーの行動を本当に嘆いておられたなら『去勢』してしまえば良かったんですわ。
ジャスパーのようなクズならすぐに別の遊びを思いつくのでしょうけれど、取り敢えず浮気はできなくなりますし庶子が増える心配もありませんでしょう?
無力な女相手に剣を抜こうとするほど短絡的な思考の持ち主ですのに⋯⋯その程度の知恵もお持ちでなかったか容認しておられたとしか思えませんわ。むしろ応援しておられた気もしておりますの。
例えば『しょうがねえなぁ、男には気晴らししたい時もあるよな』とか『いい女を見りゃその気になっても仕方ねえ』とか『バレないようにやれよ』とか『浮気は甲斐性だって言う奴もいるしな』とか。
全部エールを送る言葉ですわ」
おや、辺境伯の顔が青ざめてきましたわ。どれもこれも身に覚えがあると言った感じでしょうか。
以前幼い子を抱えて我が家に滞在された女性の知識は凄いですね。その方は散々浮気をされた上に夫と愛人に家を追い出されたと仰っておられましたから、経験談には事欠きませんの。
「で、でも男としてそれだけは⋯⋯なあ」
辺境伯がノア様に救いを求められましたが、ノア様は声を殺して笑っておられます。
「何を仰いますやら! 会ったばかりの女を殺すのと弟の股間を涼しくするのを選ぶなら、後者の方が断然面倒がありませんわ。辺境伯の大きな身体に無駄についている筋肉だって切断面積が狭い方が楽だと言うはずですもの。
多分⋯⋯いいえ、肉屋で聞けば間違いなく『豚一頭をシメるよりちっせえ足一本落とす方が楽に決まってらあ』って言うはずですわ。
人を斬り殺せば事情聴取から裁判までありますけれど、一部分が欠損するだけなら医者を呼べば済みますからお手軽でしょう?
もっと早く知っていればとても腕の良い医者をご紹介致しましたのに残念でなりませんわ」
「ブ、ブハッ! ご、ごめん。いや、マジでその通り⋯⋯あの時思い付かなかった俺も虫並みだな。他家の事に口出しするのは良くないなんて言い訳してた俺も反省しなきゃならん」
どこに笑いのポイントがあったのか分かりませんが、わたくしの横でお父様もお腹を抱えて笑っておられますし。
「はぁ、なんか⋯⋯」
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