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94.パーティーのはじまり

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 今日はグレッグの4歳の誕生日です。プレゼントを用意し料理とケーキにお花も飾って準備はバッチリですが⋯⋯。

 今朝トーマス司教様が突撃して来られ『ふっふ、パーチーは今日じゃろ?』とドヤ顔をされ、そのまま居座⋯⋯参加しておられるのです。一体どうやって知ったのか怖くて聞けません。

 ブルス助祭はもちろん大きな身体でトーマス司教様の斜め後ろに立っておられます。ふと気付きましたがこのサイズは辺境伯様と同じくらいでしょうか。

「お? 気付いたようじゃのお、流石ワシのリリスじゃわ! チェイスがうちで調教中の熊に怯えさせられてグレッグを悲しませたじゃろ?
アレはデカいだけの大バカじゃから、頭のいいグレッグと運動神経の発達したチェイスならすぐに手玉にとれる。今日はその練習も兼ねとるからブルスを存分に使い倒してやってくれ」

 調教中の熊は辺境伯様ですね。わたくしの視線に気付いたトーマス司教様がブルス助祭を指差しながら教えて下さいました。確かに大きくても調教済みなら⋯⋯いえ、慣れてしまえばそれほど気にならないかもしれません。

「今日はブルスも『熊の代わりなら自分が適任』じゃと張り切っとるしの」



 そんなイレギュラーがありましたが、お昼より少し前にグレッグとチェイスに声をかけてパーティー会場へ連れてきました。ドアを開けるとグレッグ達の顔見知りが並んでいます。

「お誕生日おめでとう」

 グレッグは『お誕生日』を知らないようでキョトンと首を傾げました。

 チェイスは不思議そうな顔をしているグレッグと周りの人を見比べて首を傾げ、少し不安そうにグレッグににじり寄りました。

「にぃ⋯⋯」

 ひとり遊びが大好きな冒険家のチェイスはあの衝撃の『熊との遭遇辺境伯との顔合わせ』以来些細な事で動揺し、グレッグかわたくしのどちらかがそばにいないと指しゃぶりをするようになりました。

 ひとり旅に出たり隠蔽魔法を使うチェイスをグレッグが『ピピピ』で見つける日はもう少し先のようです。



「今日はね、グレッグが生まれたのをお祝いする日なの」

「おく、うまりたの? なんで?」

「なんで⋯⋯多分ここにいるみんなに会うためと、これから先いろんな人に会うためだと思うな。あと、お誕生日は生まれてくれてありがとうと伝える日なんだ」

 お父様がいつもの倍くらいの時間をかけてゆっくりと説明しました。とても大事な事ですからグレッグがしっかりと理解できるように⋯⋯。

「あいあと? おくがうまりて、あいあとうの? なんで?」

「グレッグが生まれたから、わたくし達はグレッグに会えた。それがとても嬉しいの。だから、ありがとう」

「⋯⋯うまりたの、うれちい? あえたのうれちい? あいあとの?」

「そうだぞお、ワシは初めてグレッグとチェイスに会うた時天使が来たのかと思うたでなぁ」

「おくもチェチュもてんち? てんちってなに?」

「もの凄~く素敵で可愛い存在じゃな」

「かあいいはチェチュね、おくはかっくいいよ?」

「おお、チェイスは可愛くてグレッグは可愛いしかっこいいじゃな」

 少しの時間目をぱちぱちしながら全員を見回していたグレッグが満面の笑みを浮かべました。

「おくもうれちい、リィもじいちゃもターニャもハンナもメイチャも、ちゅちもん。
こなーちもちゅきしね。
のあたまとおじたまもちょびっとはちゅきかもし⋯⋯おちげひげのじいちゃはかっくいいし、おっちいおじたんは、ちょっとこあい」

 ブルス助祭が膝から崩れ落ち、コナー氏に負けたノア様とお父様は肩を落としました。



 全員からプレゼントを貰い挙動不審のグレッグは半泣き状態でわたくしの陰に隠れています。我が家に来てからもほとんど新しいものは買っておりませんし、包装されたプレゼントなど見たこともないようです。

 我が家を巣立った後どのような環境に進むかわからない子供達ですから、着るものや使うものの大半は古着や部屋に置かれた歴代の子供達が使っていたものがほとんどです。

 ビビアンさんとの暮らしでもプレゼントを貰ったことはなさそうな気がしますし。

「開けてみる?」

「⋯⋯あける? なんで?」

「何が入ってるか気にならない?」

「⋯⋯なる」

 グレッグの手を引いてプレゼントの山の前に向かいました。

「どれから開けてみたい?」

 しゃがみ込んだグレッグが手前にあった小さな包みを指差したので手に乗せましたが、困惑したように眉根を寄せたまま身動きしません。

「リィ、あけるのあかんない、おくわかんないかな、おちえてくたたい」

 グレッグは小さな手でプレゼントをわたくしに差し出しました。

 隣にしゃがんだチェイスはまるで敵を発見したかのようにプレゼントを睨んでいます。何かが飛び出してきたらすぐさま戦いをはじめるつもりでしょうか。



 ゆっくりと開け方を説明し中から出てきた帽子を見たグレッグが目を見開きました。

「ちゅごい! ぼうちがでてちた! なんで?」

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