98 / 99
98.新たな獲物を見つけたグレッグ
しおりを挟む
グレッグがトーマス司教様と特別養子縁組を終えた翌年の春。
今も二人はラングローズ子爵家に住み、屋敷の全員に笑顔と幸せを運んでいます。
グレッグは少しずつ貴族としての勉強が増えていますが、予想以上の飲み込みの早さに家庭教師達を驚かせています。言葉はかなりはっきりしてきましたし、時々手紙や自作の押し花をプレゼントしてくれたりもします。
チェイスのご自慢はセルゲイ爺ちゃんに作ってもらった庭の隅の秘密基地です。グレッグが勉強している間にお気に入りのおもちゃや宝物の木の実や発掘した球根などを持ち込んで、グレッグの勉強が終わるのを待って招待するのが日課です。
「にぃ! ちてぇ」
「チェイチュ、きょうはなにをあちゅめたの?」
「ふふっ、あ~ちょ」
「ないしょなの? にぃ、たのちみだなぁ」
辺境伯夫妻は定期的に会いにきますが子供達は近寄る許可をまだ出していません。
「久しぶりだなぁ、また大きくなったな」
「今日はクッキーを持ってきたのよ? 一緒に食べな⋯⋯」
「や~の! にぃ、あ~ち!」
「チェイチュがやだっていってましゅから、だからさよならでしゅ」
「くぅま、ちら!」
ペコリと頭を下げていたグレッグをチェイスが無理矢理引きずって逃げ出しました。
「にぃ! てぇの」
「うん! わかった、せえのだかなね」
「「あんかんべー」」
二人がきゃはきゃはと笑い声をあげて逃げていくとその日は終了です。
「初めに失敗しただけでこんなにかかるとは思わんかった」
「当然だろ? 恐怖の中で二人で頑張って生きてきたんだぞ。お前らの腹の中くらいあの子達はお見通しなんだって」
「だな、大事なにいちゃんをハブにして誘拐しようとした悪者だもんな。チェイスが最後に言ってた『くうま、ちら』ってのはなんて言ってたんだ?」
「熊は嫌い⋯⋯お前はまだ人間扱いされてないって事だな」
「はぁ、あん時お前の話を聞いて、リリスティア様のお言葉をちゃんと拝聴させていただいてりゃあな」
トーマス司教様の指示で辺境伯夫妻がわたくしに敬語を使われるのが非常に落ち着きません。
「いやいや、まだ諦めねえからな。熊なら同じ動物じゃねえか、虫に比べりゃあ格段の進歩だぜ」
他に類を見ないほどポジティブすぎる思考をお持ちの辺境伯様相手なら、いつかチェイス達の心が溶ける日も来るかもしれませんね。
「本日はリリスティア様にお願いがあり参上致しました。
お時間の都合がよろしければではありますが、今度当家に遊びにいらしていただく事は可能でしょうか? 子育ての極意などお聞かせいただければ幸いと考えておりますし、辺境伯領の春は中々の美しさでもあります」
「自然に囲まれた森に野生の小動物なども戻ってきておりまして、リリスティア様に喜んでいただけるのではないかと思っておりますの」
ロイド王太子殿下に平気でタメ口を利かれる辺境伯様と社交界の中心に君臨するお一人と言われている夫人からのこの扱い⋯⋯そろそろトーマス司教様に抗議してもいいですよね?
「リィ、(エグッ、エグッ)リィ、いっちゃやだぁ!」
「リィ、や~のぉ(ビエーン)」
「リィがしゅきだからぁ、ずっといっちょにいてぇぇぇ。うわ~ん!」
絶賛ガン泣きの二人はターニャとメイサに羽交締めにされてハンナに顔を拭かれています。
「ほら、今日はいつも以上にかっこいいグレッグ様とチェイス様にならなくちゃ」
「泣いてたらお顔が腫れてノア様に負けちゃいますよ?」
「ぼ、ぼくはノアたまにはまて⋯⋯まてないも~ん!」
「のあた、ちらもぉ!」
「グレッグとチェイスは私の分も泣いてくれてるのかな?」
「俺の分も入ってそうですよ?」
「お兄様! お帰りなさい」
「ギリギリになってごめんね~」
慰謝料などの支払いの為売却されたはずの元ソラリス領でしたが実際は国が買い上げていたそうで、紆余曲折の末『人身売買』と言う重罪を摘発した功績により⋯⋯と言うこじつけで当家に押し付けられ(?)てしまいました。
立地や土壌などに恵まれた土地でしたが長年放置されていた為問題が山積みで、兄のアレックスは東奔西走の毎日でしたから仕方ありません。
「初めまして、俺はリリスのお兄ちゃんのアレックスだよ」
わたくしのドレスの陰から二つの顔がひょっこりと覗きました。
「おにいたんなの?」
「にぃの」
「そうだよぉ! いや~、噂に聞いていたより可愛いなあ」
「ぼくはかっくいいだから、かわいいのはチェイチュなから」
「うん、かっこいいお兄ちゃん同士よろしくな!」
「⋯⋯どーしってなあに?」
今日の獲物を見つけたグレッグの目がキラリと光りました。
今も二人はラングローズ子爵家に住み、屋敷の全員に笑顔と幸せを運んでいます。
グレッグは少しずつ貴族としての勉強が増えていますが、予想以上の飲み込みの早さに家庭教師達を驚かせています。言葉はかなりはっきりしてきましたし、時々手紙や自作の押し花をプレゼントしてくれたりもします。
チェイスのご自慢はセルゲイ爺ちゃんに作ってもらった庭の隅の秘密基地です。グレッグが勉強している間にお気に入りのおもちゃや宝物の木の実や発掘した球根などを持ち込んで、グレッグの勉強が終わるのを待って招待するのが日課です。
「にぃ! ちてぇ」
「チェイチュ、きょうはなにをあちゅめたの?」
「ふふっ、あ~ちょ」
「ないしょなの? にぃ、たのちみだなぁ」
辺境伯夫妻は定期的に会いにきますが子供達は近寄る許可をまだ出していません。
「久しぶりだなぁ、また大きくなったな」
「今日はクッキーを持ってきたのよ? 一緒に食べな⋯⋯」
「や~の! にぃ、あ~ち!」
「チェイチュがやだっていってましゅから、だからさよならでしゅ」
「くぅま、ちら!」
ペコリと頭を下げていたグレッグをチェイスが無理矢理引きずって逃げ出しました。
「にぃ! てぇの」
「うん! わかった、せえのだかなね」
「「あんかんべー」」
二人がきゃはきゃはと笑い声をあげて逃げていくとその日は終了です。
「初めに失敗しただけでこんなにかかるとは思わんかった」
「当然だろ? 恐怖の中で二人で頑張って生きてきたんだぞ。お前らの腹の中くらいあの子達はお見通しなんだって」
「だな、大事なにいちゃんをハブにして誘拐しようとした悪者だもんな。チェイスが最後に言ってた『くうま、ちら』ってのはなんて言ってたんだ?」
「熊は嫌い⋯⋯お前はまだ人間扱いされてないって事だな」
「はぁ、あん時お前の話を聞いて、リリスティア様のお言葉をちゃんと拝聴させていただいてりゃあな」
トーマス司教様の指示で辺境伯夫妻がわたくしに敬語を使われるのが非常に落ち着きません。
「いやいや、まだ諦めねえからな。熊なら同じ動物じゃねえか、虫に比べりゃあ格段の進歩だぜ」
他に類を見ないほどポジティブすぎる思考をお持ちの辺境伯様相手なら、いつかチェイス達の心が溶ける日も来るかもしれませんね。
「本日はリリスティア様にお願いがあり参上致しました。
お時間の都合がよろしければではありますが、今度当家に遊びにいらしていただく事は可能でしょうか? 子育ての極意などお聞かせいただければ幸いと考えておりますし、辺境伯領の春は中々の美しさでもあります」
「自然に囲まれた森に野生の小動物なども戻ってきておりまして、リリスティア様に喜んでいただけるのではないかと思っておりますの」
ロイド王太子殿下に平気でタメ口を利かれる辺境伯様と社交界の中心に君臨するお一人と言われている夫人からのこの扱い⋯⋯そろそろトーマス司教様に抗議してもいいですよね?
「リィ、(エグッ、エグッ)リィ、いっちゃやだぁ!」
「リィ、や~のぉ(ビエーン)」
「リィがしゅきだからぁ、ずっといっちょにいてぇぇぇ。うわ~ん!」
絶賛ガン泣きの二人はターニャとメイサに羽交締めにされてハンナに顔を拭かれています。
「ほら、今日はいつも以上にかっこいいグレッグ様とチェイス様にならなくちゃ」
「泣いてたらお顔が腫れてノア様に負けちゃいますよ?」
「ぼ、ぼくはノアたまにはまて⋯⋯まてないも~ん!」
「のあた、ちらもぉ!」
「グレッグとチェイスは私の分も泣いてくれてるのかな?」
「俺の分も入ってそうですよ?」
「お兄様! お帰りなさい」
「ギリギリになってごめんね~」
慰謝料などの支払いの為売却されたはずの元ソラリス領でしたが実際は国が買い上げていたそうで、紆余曲折の末『人身売買』と言う重罪を摘発した功績により⋯⋯と言うこじつけで当家に押し付けられ(?)てしまいました。
立地や土壌などに恵まれた土地でしたが長年放置されていた為問題が山積みで、兄のアレックスは東奔西走の毎日でしたから仕方ありません。
「初めまして、俺はリリスのお兄ちゃんのアレックスだよ」
わたくしのドレスの陰から二つの顔がひょっこりと覗きました。
「おにいたんなの?」
「にぃの」
「そうだよぉ! いや~、噂に聞いていたより可愛いなあ」
「ぼくはかっくいいだから、かわいいのはチェイチュなから」
「うん、かっこいいお兄ちゃん同士よろしくな!」
「⋯⋯どーしってなあに?」
今日の獲物を見つけたグレッグの目がキラリと光りました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,744
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる