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一回目 (過去)
140.呼び出し
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「王宮に参内せよ⋯⋯だとさ。しかも5日後だ。明日の朝ここを出たとして馬車だと間に合わん」
ナザエル枢機卿に代わりに読んでもらったローザリアは突然の呼び出しに驚きはしたもののチャンスかもしれないと思った。今まで王宮からは何の連絡もなく呼び出された理由はわからないが、リリアーナ達の様子を知る事ができる。
それを聞いてみれば何かできる事があるかもしれない。
(起こったことは変えられないけど、せめてこれから先被害が出ないようにできないかしら)
「何を考えてるのか、気に入らん」
パサリとテーブルに投げ出された書簡をナスタリア神父が取り上げ読み直した。
「ギャンター内務大臣の印ですね。字もサインも間違いないでしょう。
考えられるのはルートの大幅変更か水源地まで手を出している事について聞きたいのか。そのくらいしか思いつきません」
内務大臣は王宮の官僚の中でも最も真面な人物。ルベル伯爵の件を丸投げできたのも対応するのが内務大臣だとわかっていたからだった。
内務大臣は王家の横暴に内心辟易しながらも公平な態度を貫いている。今回の支援チームが極端に戦力の差がある事についても事前に連絡してきた。
「内務大臣の呼び出しであれば帰らざるを得ないでしょう。余程のことがあったとしか思えません」
「陛下は今外遊中だよな。その隙を狙って相談したいって事か?」
既に真夜中を過ぎているので明日準備出来次第出発する事になった。
部屋に戻るとシスター・タニアが待っていてあれこれと世話を焼いてくれた。
「明日忙しくなるからもう部屋に戻って身体を休めてね」
「ありがとうございます。ローザリア様のお世話係として参加させていただき感謝しています」
「こちらこそ、シスター・タニアがいてくれて心強いです」
「では、お休みなさいませ」
部屋の明かりを落としシスター・タニアが退出した。
ローザリアは優しいシスター・タニアの言葉を思い出しながら布団に潜り込んだ。久しぶりに夢にエリサが出てきてマーガレットの花を一輪持ってきてくれた。
全員で移動する必要はないだろうとローザリア達は少数で王都へ向かう事にした。
メンバーはナザエル枢機卿・ナスタリア神父・シスタータニア・ニール・ジャスパー。ローザリアを含めて6人。
ローザリアは誰かの馬に乗せてもらい全員が騎馬で王都へ向かう。
「疲れたら早めに言ってください。期日に間に合っても無理をして体調を崩していては話になりませんから」
一番体力のあるナザエル枢機卿の前に乗せられたローザリアは想像以上の馬の高さに驚いた。念の為全員が深くローブを被り街を走り抜ける。
期限ギリギリで王都についた時は皆疲労困憊していた。
一旦教会に行って埃を落とし着替えを済ませた。シスター・タニアとジャスパーは教会で待機する事になった。
「フィードは私がお預かりします。子狼を王宮に連れて行けば騒ぎになりかねませんから」
シスター・タニアもジャスパーもフィードをとても可愛がっている。ナザエル枢機卿やナスタリア神父から見ても何らかの力を持っているようには見えないらしく、全員から只々可愛いペットの扱いをされている。
「フィード、行ってくるね。終わったらすぐ帰ってくるから良い子にしててね」
フィードが籠から抜け出そうとして『きゅう、きゅう』と鳴いている。
「初めて離れるから、寂しいのも仕方ねえよな。お前が犬の子なら連れてたかもしれんが、わかる奴には子狼だってバレるからな」
頭を撫でられたフィードが鳴く声に見送られて王宮に向かった。
王宮に着いてすぐ別れたばかりのシスター・タニアが聖王国からナスタリア神父宛に届いた親書を届ける為に追いかけてきた。
ローザリアはナザエル枢機卿とニールの3人で先に内務大臣の部屋へ向かう事になったが、ナザエル枢機卿の迫力に気圧されたのか案内する従者が緊張している。
パタパタと急足でやってきた従者が案内に耳打ちすると、案内は小さく頷いて突然進む方向を変えた。
「道が違わねえか? そっちに行ったら大広間だろうが」
「リリアーナ様の連れの方が多く、急遽こちらで打ち合わせする事になりまして。申し訳ございません。ナスタリア神父様には連絡済みでございます」
開かれたドアの先には大勢の高位貴族と大臣が並んでいた。
(すごい人数⋯⋯なにかあったのかしら?)
ローザリアとナザエル枢機卿が並んで部屋に入りニールが後に続いた。
「ローザリア・トーマック公爵令嬢、貴殿の活躍について報告を受けています。どうぞ前へお進み下さい」
静まりかえった広間の中に宰相の声が響いた。
ローザリアが広間の中央迄進み出た時、ナザエル枢機卿とニールの足元に魔法陣が展開された。
ナザエル枢機卿に代わりに読んでもらったローザリアは突然の呼び出しに驚きはしたもののチャンスかもしれないと思った。今まで王宮からは何の連絡もなく呼び出された理由はわからないが、リリアーナ達の様子を知る事ができる。
それを聞いてみれば何かできる事があるかもしれない。
(起こったことは変えられないけど、せめてこれから先被害が出ないようにできないかしら)
「何を考えてるのか、気に入らん」
パサリとテーブルに投げ出された書簡をナスタリア神父が取り上げ読み直した。
「ギャンター内務大臣の印ですね。字もサインも間違いないでしょう。
考えられるのはルートの大幅変更か水源地まで手を出している事について聞きたいのか。そのくらいしか思いつきません」
内務大臣は王宮の官僚の中でも最も真面な人物。ルベル伯爵の件を丸投げできたのも対応するのが内務大臣だとわかっていたからだった。
内務大臣は王家の横暴に内心辟易しながらも公平な態度を貫いている。今回の支援チームが極端に戦力の差がある事についても事前に連絡してきた。
「内務大臣の呼び出しであれば帰らざるを得ないでしょう。余程のことがあったとしか思えません」
「陛下は今外遊中だよな。その隙を狙って相談したいって事か?」
既に真夜中を過ぎているので明日準備出来次第出発する事になった。
部屋に戻るとシスター・タニアが待っていてあれこれと世話を焼いてくれた。
「明日忙しくなるからもう部屋に戻って身体を休めてね」
「ありがとうございます。ローザリア様のお世話係として参加させていただき感謝しています」
「こちらこそ、シスター・タニアがいてくれて心強いです」
「では、お休みなさいませ」
部屋の明かりを落としシスター・タニアが退出した。
ローザリアは優しいシスター・タニアの言葉を思い出しながら布団に潜り込んだ。久しぶりに夢にエリサが出てきてマーガレットの花を一輪持ってきてくれた。
全員で移動する必要はないだろうとローザリア達は少数で王都へ向かう事にした。
メンバーはナザエル枢機卿・ナスタリア神父・シスタータニア・ニール・ジャスパー。ローザリアを含めて6人。
ローザリアは誰かの馬に乗せてもらい全員が騎馬で王都へ向かう。
「疲れたら早めに言ってください。期日に間に合っても無理をして体調を崩していては話になりませんから」
一番体力のあるナザエル枢機卿の前に乗せられたローザリアは想像以上の馬の高さに驚いた。念の為全員が深くローブを被り街を走り抜ける。
期限ギリギリで王都についた時は皆疲労困憊していた。
一旦教会に行って埃を落とし着替えを済ませた。シスター・タニアとジャスパーは教会で待機する事になった。
「フィードは私がお預かりします。子狼を王宮に連れて行けば騒ぎになりかねませんから」
シスター・タニアもジャスパーもフィードをとても可愛がっている。ナザエル枢機卿やナスタリア神父から見ても何らかの力を持っているようには見えないらしく、全員から只々可愛いペットの扱いをされている。
「フィード、行ってくるね。終わったらすぐ帰ってくるから良い子にしててね」
フィードが籠から抜け出そうとして『きゅう、きゅう』と鳴いている。
「初めて離れるから、寂しいのも仕方ねえよな。お前が犬の子なら連れてたかもしれんが、わかる奴には子狼だってバレるからな」
頭を撫でられたフィードが鳴く声に見送られて王宮に向かった。
王宮に着いてすぐ別れたばかりのシスター・タニアが聖王国からナスタリア神父宛に届いた親書を届ける為に追いかけてきた。
ローザリアはナザエル枢機卿とニールの3人で先に内務大臣の部屋へ向かう事になったが、ナザエル枢機卿の迫力に気圧されたのか案内する従者が緊張している。
パタパタと急足でやってきた従者が案内に耳打ちすると、案内は小さく頷いて突然進む方向を変えた。
「道が違わねえか? そっちに行ったら大広間だろうが」
「リリアーナ様の連れの方が多く、急遽こちらで打ち合わせする事になりまして。申し訳ございません。ナスタリア神父様には連絡済みでございます」
開かれたドアの先には大勢の高位貴族と大臣が並んでいた。
(すごい人数⋯⋯なにかあったのかしら?)
ローザリアとナザエル枢機卿が並んで部屋に入りニールが後に続いた。
「ローザリア・トーマック公爵令嬢、貴殿の活躍について報告を受けています。どうぞ前へお進み下さい」
静まりかえった広間の中に宰相の声が響いた。
ローザリアが広間の中央迄進み出た時、ナザエル枢機卿とニールの足元に魔法陣が展開された。
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