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ループ
148.封印できるものとできないもの
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【この国は終わる。彼等は精霊の加護の上に胡座をかいていた者達だ。自分達は精霊を使役できると信じ、その恩恵に寄りかかりながら感謝も努力もせず生きてきた。俺達が彼等を助けることはない。
そして、私欲でジンを呼び出した愚かな者はその悪意に飲み込まれるだろう】
「子供達を見つける約束を精霊としていたんです。それと、石碑を見つけようと思ってました」
【ローザリアならできるけど無理はしなくていい。精霊は分かっているから】
国がジンに飲み込まれてしまったら子供や石碑を見つけても意味がないからだろうか。
「場所がわからない石碑はあと二つで合っていますか?」
【うん、合ってる。見つけるのはそんなに大変じゃないと思う】
「ありがとうございました。考えてみます」
【ゆっくり考えるといい、時間はまだあるから。それから、ローザリアの能力は元通りだよ。アイテムボックスを無くしてしまうと俺からのプレゼントもアレもなくなってしまうからさ、頑張って残しておいたからね。
ローザリアが何を選んだとしても⋯⋯今度は後悔しないんだよ】
「はい」
【さてと、ちょっと真面目に話そうかな】
【精霊王、頑張れ~】
居住まいを正した精霊王の顔つきが変わった。
【エリサ、其方の想いがローザリアの心を生かし再びの生を得る礎となりえた。強く優しき其方に精霊達からの感謝と光の精霊の加護を与えよう】
「ありがとうございます」
呆然としていたエリサが頭を下げポタポタと涙が落ちていった。
【ナザエル、ナスタリア、ニール。武・知・護、それぞれの運命を持つ者達よ。今世の其方達には選択肢が与えられている。己の信念により己が道を選ぶが良い。
正しき心に心優しき精霊達の加護を。聖霊を慈しみ讃えよ。汝らの全ては精霊王の前にある】
石碑に刻まれた古代文字の文言の一部だと気付いた時には精霊王の姿が薄く消えはじめていた。
【あ! 愛し子を連れてきてくれたお礼に、君達の加護を少し強くしといたげたよー。
それと武器も昔通りだから、ローザリア説明よろ~】
威厳をかき消す呑気でとんでもない発言が聞こえたのを最後に精霊王の姿が消えた。
「えーっとだな、帰ったら神託の儀をやり直すか」
「だね、おじさんがこれ以上強くなるのはちょっと怖いけど」
「で~、武器って何の事かなぁ?」
ニールの質問でナザエル神父達の目がローザリアに集中した。
「わ、忘れてました。えっと、取り敢えずここを出た方が良くないですか?」
ナザエル神父から『時間稼ぎだな』と言われつつ広場に向かって足を進めた。
(そうだった。あの長櫃ってあのままアイテムボックスへ入ってるんだよね。ナザエル神父達の武器ってどう⋯⋯ああ、変わってる)
前を向いて歩くナザエル神父達は気付いていないようだが、それぞれが持っている武器が煌びやかなオーラに包まれていた。
ナザエル神父達が大声で叫ぶまでにあと二分。
予想通り大騒ぎをはじめたナザエル神父とニールが模擬戦をはじめ、ナスタリア助祭が溜息をつきながらローザリアの隣に腰掛けた。
「スピアが凄い事になってる」
「国宝級だ、神話級だ⋯⋯って叫ぶかも」
遠い目をしたローザリアがアイテムボックスの中の長櫃を思い出し溜息をついた。
「おい、これはヤバい。国宝級だ、いやもう神話級だぞ。なんだ? なんで笑ってる」
ゲラゲラと笑っていたナスタリア助祭だがローザリアから長櫃の説明を聞いた途端真顔になった。
「アイテムボックスを無理やり残すほどの精霊王のプレゼントとかアレってなんだ?」
「精霊王に頂いたのはダガーです。ほら、神託の間で精霊王の像が持ってるのと同じやつです。あとアレって言うのは前回、えーっと、知り合いから貰った杖です」
ローザリアのダガーに絶句していたナスタリア助祭が杖を見た時妙な顔をした。
「これって⋯⋯いや、気のせいだ。多分似たようなのをどこかの店で見たことがあるんだ」
(やっぱりナスタリア神父の記憶があるのかも)
最後の時、ローザリアが伝えたいと思った言葉は永遠に口にしないだろう。
あの時のナスタリア神父は8年間ずっと後悔していたと言っていた。好意を寄せられている気がした事もあったが同情や責任感がそう見えただけ。
(あの時のナスタリア神父と目の前のナスタリア助祭は別人だから⋯⋯あの頃の気持ちは封印だね)
相変わらず眉を顰めて杖を訝しげに見ているナスタリア助祭の横顔を見ながらローザリアは心に決めた。
そして、私欲でジンを呼び出した愚かな者はその悪意に飲み込まれるだろう】
「子供達を見つける約束を精霊としていたんです。それと、石碑を見つけようと思ってました」
【ローザリアならできるけど無理はしなくていい。精霊は分かっているから】
国がジンに飲み込まれてしまったら子供や石碑を見つけても意味がないからだろうか。
「場所がわからない石碑はあと二つで合っていますか?」
【うん、合ってる。見つけるのはそんなに大変じゃないと思う】
「ありがとうございました。考えてみます」
【ゆっくり考えるといい、時間はまだあるから。それから、ローザリアの能力は元通りだよ。アイテムボックスを無くしてしまうと俺からのプレゼントもアレもなくなってしまうからさ、頑張って残しておいたからね。
ローザリアが何を選んだとしても⋯⋯今度は後悔しないんだよ】
「はい」
【さてと、ちょっと真面目に話そうかな】
【精霊王、頑張れ~】
居住まいを正した精霊王の顔つきが変わった。
【エリサ、其方の想いがローザリアの心を生かし再びの生を得る礎となりえた。強く優しき其方に精霊達からの感謝と光の精霊の加護を与えよう】
「ありがとうございます」
呆然としていたエリサが頭を下げポタポタと涙が落ちていった。
【ナザエル、ナスタリア、ニール。武・知・護、それぞれの運命を持つ者達よ。今世の其方達には選択肢が与えられている。己の信念により己が道を選ぶが良い。
正しき心に心優しき精霊達の加護を。聖霊を慈しみ讃えよ。汝らの全ては精霊王の前にある】
石碑に刻まれた古代文字の文言の一部だと気付いた時には精霊王の姿が薄く消えはじめていた。
【あ! 愛し子を連れてきてくれたお礼に、君達の加護を少し強くしといたげたよー。
それと武器も昔通りだから、ローザリア説明よろ~】
威厳をかき消す呑気でとんでもない発言が聞こえたのを最後に精霊王の姿が消えた。
「えーっとだな、帰ったら神託の儀をやり直すか」
「だね、おじさんがこれ以上強くなるのはちょっと怖いけど」
「で~、武器って何の事かなぁ?」
ニールの質問でナザエル神父達の目がローザリアに集中した。
「わ、忘れてました。えっと、取り敢えずここを出た方が良くないですか?」
ナザエル神父から『時間稼ぎだな』と言われつつ広場に向かって足を進めた。
(そうだった。あの長櫃ってあのままアイテムボックスへ入ってるんだよね。ナザエル神父達の武器ってどう⋯⋯ああ、変わってる)
前を向いて歩くナザエル神父達は気付いていないようだが、それぞれが持っている武器が煌びやかなオーラに包まれていた。
ナザエル神父達が大声で叫ぶまでにあと二分。
予想通り大騒ぎをはじめたナザエル神父とニールが模擬戦をはじめ、ナスタリア助祭が溜息をつきながらローザリアの隣に腰掛けた。
「スピアが凄い事になってる」
「国宝級だ、神話級だ⋯⋯って叫ぶかも」
遠い目をしたローザリアがアイテムボックスの中の長櫃を思い出し溜息をついた。
「おい、これはヤバい。国宝級だ、いやもう神話級だぞ。なんだ? なんで笑ってる」
ゲラゲラと笑っていたナスタリア助祭だがローザリアから長櫃の説明を聞いた途端真顔になった。
「アイテムボックスを無理やり残すほどの精霊王のプレゼントとかアレってなんだ?」
「精霊王に頂いたのはダガーです。ほら、神託の間で精霊王の像が持ってるのと同じやつです。あとアレって言うのは前回、えーっと、知り合いから貰った杖です」
ローザリアのダガーに絶句していたナスタリア助祭が杖を見た時妙な顔をした。
「これって⋯⋯いや、気のせいだ。多分似たようなのをどこかの店で見たことがあるんだ」
(やっぱりナスタリア神父の記憶があるのかも)
最後の時、ローザリアが伝えたいと思った言葉は永遠に口にしないだろう。
あの時のナスタリア神父は8年間ずっと後悔していたと言っていた。好意を寄せられている気がした事もあったが同情や責任感がそう見えただけ。
(あの時のナスタリア神父と目の前のナスタリア助祭は別人だから⋯⋯あの頃の気持ちは封印だね)
相変わらず眉を顰めて杖を訝しげに見ているナスタリア助祭の横顔を見ながらローザリアは心に決めた。
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