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22.孤高の鷹
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俺を襲ったのは、孤高の鷹とかいう盗賊団の一員だった。
一応幹部の末席に名を連ねていると本人は言ってるが、よくもまあ喋る喋る。
普通任務にしくじって捕らえられた暗殺者ってのは何も話さず自害するのがスタンダードだと思っていたが、実際現実こんなもんか。
孤高の鷹とか大層な名を名乗ってるが、やってることはただの殺しとコソ泥だし。ていうか群れてるから孤高でもないだろ。ネーミングセンス死んでんのか。
残念な暗殺者ではあるけど、包み隠さず内情をゲロってくれるのは、こちらとしては都合がいい。
おかげで、拷問とか尋問とか面倒な手間をかけずに、犯罪者集団の情報を得ることができた。
というか、こいつ聞きもしないのに自分の盗賊団のことばかりか、他の対抗組織の情報も、己の知る限りぶちまけてくるんだが、大丈夫なのか……???
命狙われた俺が心配することじゃないけど、裏社会には戻れんだろうなこいつ。そもそも解放されて命があるかどうか。
まあ、それはコイツの人生だ。精々幸運を祈るとして、俺たちは得た情報を元に対策会議を行った。
どうやら孤高の鷹は数年前に結成された盗賊団で、主な仕事はスリや泥棒。それも、FからDクラスぐらいまでの駆け出しをメインターゲットにしているクズどもだった。
街の住民から盗みを働くと、すぐに衛兵が動き出して自分たちの身が危うくなる。だが、冒険者なら流れのものが殆どだし、被害届を出されることも少ないと気付いた。
しかもそういうのは大体宿暮らしだから、普通の住居に侵入するよりずっと難易度が低い。
冒険者ギルドで登録に来た、いかにも経験の浅そうなやつを見つけては後を付けて、財布をスったり荷物を盗んだりしていたらしい。
「ゆるっっっっっせん!!!!!!!!!!!!!!!!」
ここまで聞いただけで死刑確定だ。
冒険者なら全員そう言うと思う。絶対だ。
冒険者っていうのは、駆け出しが一番きつくてつらい。実力はないし、依頼料は安いし、装備も弱いし、怪我も多い。そこ耐え忍びながらコツコツと努力を積み重ねて成長して、ようやっと食えるようになっていくんだ。
その一番大変な思いをしている奴らから盗みを働こうなんて、絶対に許せない。貴族の屋敷から宝石を盗むのとはわけが違う。
そして、街を渡り歩いてそんな卑劣な仕事を繰り返していたら、ある時その街を仕切っていた裏の人間に目を付けられ、シマを荒らした落とし前をつけろと迫られた。
そこは暗殺も請け負う盗賊団で、逆らえば皆殺しになるのは間違いない。代わりに仕事をいくつか引き受けることで、手打ちにしてもらえると提案され、一も二もなく飛びついた。
殺しをするのは初めてな上、指示されたターゲットもCランクや衛兵のお偉いさんなどそこそこの実力者だったため怖気づいたが、やらなければ確実に死が待っている。
不意を衝くより他にないと、宿で寝ているときや酒場で飲んで帰る時、屋台に並んでいたり、子供と遊んでいる時などなるべくオフモードになっている瞬間を狙って、遠くから射ったりナイフで刺したりすることにしたら、意外とあっさり成功した。
そのことで味を占め、それ以来簡単な殺しも受けるようになったという。ねえほんと、殺していい?こいつ。なんでか国家転覆を狙う巨悪とかよりよっぽど腹が立つんだが………!!!!
俺を狙ったのは、例の治安維持部隊が活動を始めてからというもの、全く仕事にならなくなってしまったから。
この街は未攻略ダンジョンに釣られたカモがどんどん入ってくる理想の狩場だったのに、何だか街の空気は良くなるし、取り締まりは厳しくなるしで、仕事のしづらい環境になってしまった。
そうなると目障りなのは俺の存在である。元々は無法者だったやつらがお行儀よく取り締まりなんぞを頑張ったりしているのは、あの顔のきれいなリーダーの歓心を買いたいがため。
ならば、俺さえいなくなってしまえばすぐに散り散りになり、元の街に戻るだろうと考えたわけだ。
俺はいかにも戦闘能力はなさそうだし、見た目の良さでリーダーに祭り上げられた客寄せパンダだと思っていたらしい。それで、ナメきってパトロール中の俺の不意を突こうとしてきたわけか。
「潰そう」
「潰しましょう」
ついでに聞きもしないのにゲロった他の組織も潰す。これは決定事項だ。
かくして、俺はソーニャと信頼できるギルド人員や冒険者などを集めて、街のお掃除に乗り出した。
シーフギルドも巻き込んで、根こそぎ小悪党どもを一掃である。
シーフギルド長のおっさんは一筋縄ではいかなそうなダンディだったんだが、白百合パワーでお願いしたら普通に協力してくれた。いざとなったら竜王妃の権力使おうと思ってたけど、チョロすぎて戸惑うよ。
さて、意外にも困ったのはその後だった。
何せ、1日2日で100人を超える犯罪者どもを捕えてしまったものだから、牢屋がキャパオーバーになってしまったのだ。
おまけに、自分たちで苦労して捕まえたわけではないせいか、あろうことか一部の衛兵は賄賂を受け取って軽犯罪者を何のお咎めもなしに放逐してしまったというから、開いた口がふさがらない。
なんということだ……!!!まさか冒険者の急増だけでなく、そもそもネモの犯罪取り締まり組織自体が腐ってたなんて……!!!
一応幹部の末席に名を連ねていると本人は言ってるが、よくもまあ喋る喋る。
普通任務にしくじって捕らえられた暗殺者ってのは何も話さず自害するのがスタンダードだと思っていたが、実際現実こんなもんか。
孤高の鷹とか大層な名を名乗ってるが、やってることはただの殺しとコソ泥だし。ていうか群れてるから孤高でもないだろ。ネーミングセンス死んでんのか。
残念な暗殺者ではあるけど、包み隠さず内情をゲロってくれるのは、こちらとしては都合がいい。
おかげで、拷問とか尋問とか面倒な手間をかけずに、犯罪者集団の情報を得ることができた。
というか、こいつ聞きもしないのに自分の盗賊団のことばかりか、他の対抗組織の情報も、己の知る限りぶちまけてくるんだが、大丈夫なのか……???
命狙われた俺が心配することじゃないけど、裏社会には戻れんだろうなこいつ。そもそも解放されて命があるかどうか。
まあ、それはコイツの人生だ。精々幸運を祈るとして、俺たちは得た情報を元に対策会議を行った。
どうやら孤高の鷹は数年前に結成された盗賊団で、主な仕事はスリや泥棒。それも、FからDクラスぐらいまでの駆け出しをメインターゲットにしているクズどもだった。
街の住民から盗みを働くと、すぐに衛兵が動き出して自分たちの身が危うくなる。だが、冒険者なら流れのものが殆どだし、被害届を出されることも少ないと気付いた。
しかもそういうのは大体宿暮らしだから、普通の住居に侵入するよりずっと難易度が低い。
冒険者ギルドで登録に来た、いかにも経験の浅そうなやつを見つけては後を付けて、財布をスったり荷物を盗んだりしていたらしい。
「ゆるっっっっっせん!!!!!!!!!!!!!!!!」
ここまで聞いただけで死刑確定だ。
冒険者なら全員そう言うと思う。絶対だ。
冒険者っていうのは、駆け出しが一番きつくてつらい。実力はないし、依頼料は安いし、装備も弱いし、怪我も多い。そこ耐え忍びながらコツコツと努力を積み重ねて成長して、ようやっと食えるようになっていくんだ。
その一番大変な思いをしている奴らから盗みを働こうなんて、絶対に許せない。貴族の屋敷から宝石を盗むのとはわけが違う。
そして、街を渡り歩いてそんな卑劣な仕事を繰り返していたら、ある時その街を仕切っていた裏の人間に目を付けられ、シマを荒らした落とし前をつけろと迫られた。
そこは暗殺も請け負う盗賊団で、逆らえば皆殺しになるのは間違いない。代わりに仕事をいくつか引き受けることで、手打ちにしてもらえると提案され、一も二もなく飛びついた。
殺しをするのは初めてな上、指示されたターゲットもCランクや衛兵のお偉いさんなどそこそこの実力者だったため怖気づいたが、やらなければ確実に死が待っている。
不意を衝くより他にないと、宿で寝ているときや酒場で飲んで帰る時、屋台に並んでいたり、子供と遊んでいる時などなるべくオフモードになっている瞬間を狙って、遠くから射ったりナイフで刺したりすることにしたら、意外とあっさり成功した。
そのことで味を占め、それ以来簡単な殺しも受けるようになったという。ねえほんと、殺していい?こいつ。なんでか国家転覆を狙う巨悪とかよりよっぽど腹が立つんだが………!!!!
俺を狙ったのは、例の治安維持部隊が活動を始めてからというもの、全く仕事にならなくなってしまったから。
この街は未攻略ダンジョンに釣られたカモがどんどん入ってくる理想の狩場だったのに、何だか街の空気は良くなるし、取り締まりは厳しくなるしで、仕事のしづらい環境になってしまった。
そうなると目障りなのは俺の存在である。元々は無法者だったやつらがお行儀よく取り締まりなんぞを頑張ったりしているのは、あの顔のきれいなリーダーの歓心を買いたいがため。
ならば、俺さえいなくなってしまえばすぐに散り散りになり、元の街に戻るだろうと考えたわけだ。
俺はいかにも戦闘能力はなさそうだし、見た目の良さでリーダーに祭り上げられた客寄せパンダだと思っていたらしい。それで、ナメきってパトロール中の俺の不意を突こうとしてきたわけか。
「潰そう」
「潰しましょう」
ついでに聞きもしないのにゲロった他の組織も潰す。これは決定事項だ。
かくして、俺はソーニャと信頼できるギルド人員や冒険者などを集めて、街のお掃除に乗り出した。
シーフギルドも巻き込んで、根こそぎ小悪党どもを一掃である。
シーフギルド長のおっさんは一筋縄ではいかなそうなダンディだったんだが、白百合パワーでお願いしたら普通に協力してくれた。いざとなったら竜王妃の権力使おうと思ってたけど、チョロすぎて戸惑うよ。
さて、意外にも困ったのはその後だった。
何せ、1日2日で100人を超える犯罪者どもを捕えてしまったものだから、牢屋がキャパオーバーになってしまったのだ。
おまけに、自分たちで苦労して捕まえたわけではないせいか、あろうことか一部の衛兵は賄賂を受け取って軽犯罪者を何のお咎めもなしに放逐してしまったというから、開いた口がふさがらない。
なんということだ……!!!まさか冒険者の急増だけでなく、そもそもネモの犯罪取り締まり組織自体が腐ってたなんて……!!!
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