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2.旅立ちます

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 いつからアドナのことが好きだったかなんて、正直わからない。

 家同士の付き合いもあれば、歳も近いことから、学園生活中は、私は自然とアドナのことを気にかけていたし、それが当たり前だった。

 でも逆にアドナも、私に気にかけてもらうのは当たり前のことで、それこそ母親が子どもを気にかけているようにしか思っていなかったのかもしれない。

 誰よりもアドナのことをわかっているつもりだったけど、アドナはきっと私の中にあった気持ちにすら気づいていなかったということだろう。

 自分が婚約者である気持ちから、これから先も当たり前のようにアドナのそばで過ごすと思っていた。

 それが一瞬にして崩れていってしまって、私はこれからどうしていいかわからない。

 しかも、相手がマリアだなんて……。

 最近会えていなかったとはいえ、マリアは学園時代最も心を許していた仲だ。
 何だかもう、全てに裏切られたような心地だ。

 自然と頬を伝った涙が静かに地面に落ちた。


 どうすればいいかわからないまま、私は一人お屋敷に戻ると、自分の部屋に閉じこもった。

 アドナは、一番に私を自分の結婚式に呼ぶと言ってくれたが、とてもじゃないけれど、私はアドナとマリアの結婚を祝福できる状態じゃない。


 アドナもマリアも失って、両親は私が居るはずもない相手と結婚を考えていると思われている。

 もう、ここに私の居場所なんてないのかもしれない。

 全てが嫌になった私は、国境付近の村の調査という名目で一人旅に出ることにした。

 旅と言っても、この国の端の方に父が所有する領地があるため、そこに寝泊まりして、私自身の仕事をこなそうというものだ。

 この家にいたって、新しい相手との結婚の話をいつ私が出すのかという空気が出てるし、外を歩けば嫌でもアドナとマリアの話題を耳にしてしまうかもしれない。間が悪ければ、二人と鉢合わせる可能性だってあるかもしれない。

 そんなのごめんだった。
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