京助さんと夏生

神谷レイン

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エピローグ

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 ――――それからの京助と夏生は二度と離れることなく、京助の書いた物語のように幸せに暮らした。
 
 春の日も、夏の日も、秋の日も、冬の日も。楽しい時も悲しい時も。
 幾度もくる季節を二人で過ごし、支え、笑い合う日々を送った。

 だが老いは彼らにも忍び寄り、あの告白から数十年後。
 共に皺が重なる頃、先に京助が、そして見送った夏生もしばらくして静かに息を引き取ることとなった。

 しかし。それから数年後の事だった。ある恋愛小説が発表された。


 ――――それは”春野秋雪”の名で。




 ◇◇




 ――――2XXX年。

 有名作家の遺作が見つかり、世の中に出版された。
 それはその作家の二作目となる恋愛小説だった。

 有名作家の数少ない二作目の恋愛小説。しかも遺作という事で、世間で大きな話題を呼んだ。けれど人々の関心を一番引き寄せたのは、この小説を持っていたのがその作家と暮らしていた同性の、しかも年の離れたパートナーで。彼だけの為に書かれた物語だったことだ。

 それを証明する様に、小説の表紙には作家本人の直筆の一文が書かれていたという。

『俺がいなくなっても寂しくないよう、夏生へ贈る』

 その一文と共に小説の内容は、彼との他愛のない日々が物語として綴られていた。
 そこには恋愛小説にありがちな三角関係や主人公に不幸が訪れるなどとという刺激的な展開はなかったが、二人の間にある確かな愛と微笑ましくも仲睦まじい日々は幸せに満ち溢れ、あたたかなストーリーは大きな反響を呼んだ。それはベストセラーになるほどに。

 そして題名のなかった物語は、こう名付けられた。
 二人の物語の通りに。








 ――――――『京助さんと夏生』と。











 おわり






***************

読者の皆様、本日までお付き合い頂き、ありがとうございました。
「京助さんと夏生」いかがだったでしょうか?
大人な京助と大人になろうとする夏生の物語を、楽しんで読んで頂けたなら嬉しいです。
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