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サミュエルの焦燥
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自分の色恋事については、物心ついた頃からすべて諦めていた。
王太子という立場上、好き勝手に恋愛相手を選ぶ訳にはいかないというのもある。それでも、婚姻とは別にして自分が愛した相手をそばに置くことはできるだろう。
だが、そういうことではない。
自分はこの国の王太子である。私が一言『お前が好きだ、愛している』とでも言えばこの国の人間ならば、すべての者が膝を折り自分の気持ちなど関係なく、私の愛に応えるだろう。
そんな愛に価値があるのか。そう思い冷めた気持ちでいたのだ。
その日の舞踏会でエスコートする相手はジョゼフィーヌだった。お茶会や今までの舞踏会で、何度か彼女とは会ったことがあった。
私の中でのジョゼフィーヌの位置付けは、婚約者になるべくいつも私に媚を売る令嬢の一人だという認識だ。
彼女の父親であるアルシェ侯爵は自身の領地で難しいと言われていた農耕を成功させ、さらに領地内に鉱山を見つけると、鉱物を流通させるために商人に対する税を低くすることなどで、かなりの富を得ていた。
しかもそれを独り占めすることなく、領民にもしっかり還元するため信頼を寄せられており、ユニ国に対しても金銭的援助を惜しみなくする侯爵だった。
そんな侯爵は国政にも口出しができる立場にあり、当然その娘であるジョゼフィーヌに対しても私がある程度は気を遣わねばならない相手であるのは当然のことだった。
政治的なことを考えても、ジョゼフィーヌと婚約するのも悪くない。だから私はジョゼフィーヌに優しく接することにしていた。
「王太子殿下、今日はエスコートしてくださってとても光栄ですわ。私は今日のことを一生忘れません」
彼女は瞳を輝かせ、私をうっとりと見上げるとそう言った。
君がこうして私と一緒に歩けるのは、君の努力ではなく卿のお陰なのだけれどね。
私はそう思いながら笑顔を返した。
そんな時だった、オドラン男爵令嬢が私たちの前に現れカーテシーをすると、私に媚びることなくその場を去っていった。
婚約候補である令嬢がそのような態度を私に取ることは今までなかった。礼儀知らずなのか、それとも本当に私に興味がないのか。
不思議に思ってオドラン男爵令嬢を注視していたが、その時ジョゼフィーヌの様子がおかしくなったのに気づいた。
先程まであれほど楽しそうにしていたのに、今までに見たことのないような難しい表情で、何事か考え事をしているようだった。
ご機嫌を損ねるようなエスコートをしてしまっただろうか?
私はジョゼフィーヌと数日後に一緒に出かける約束をしている。その話でもして機嫌を取ろうとしたが、それは見事に遮られた。
しかも挙げ句にそんなものはどうでもよいという態度を取られ、最終的にはやんわりと出掛ける約束すら断られてしまった。
一体なにがあったのか。
困惑しているとジョゼフィーヌは言った。
「私らしくないのではなく、今日やっと私は本来の自分を取り戻したんです、これが本来の私なんですわ」
それだけ言うと、体調が悪いと見え透いた嘘をついて、アレルにエスコートされて帰ってしまった。
私は今日の舞踏会での彼女の行動を思い出しながら、言われたことの真意を探るためにあれやこれやと考えた。
今日のエスコートは完璧だったはずだ。
だとすると過去になにかやってしまったのかもしれない。私は以前会った時のことまで遡って考えてみた。
思い出されるジョゼフィーヌは、いつも私以外は視界に入らないとばかりに、私だけを見つめ微笑んでいたことだけだ。
だが先程のジョゼフィーヌは、私のことなどどうでも良いといった感じで、挙げ句には今までに見たことのないようなスッキリした顔をし、なにか吹っ切れた様子を見せた。
今日のエスコート中になにかがあったとしか考えられない。
もう一度今日のエスコート中のことを思い出す。そして一つだけいつもと違うことがあったことに気づく。
アレルと微笑みあっていたではないか。
しかも、あの女にだらしなく令嬢がいる場所には絶対に顔を出すアレルが、ジョゼフィーヌをエスコートすると残ることなく帰ってしまった。
もしかして、二人は私の知らないところで親睦を深めていたのだろうか?
私はそう考えると、なぜか落ち着かない気持ちになったが、ジョゼフィーヌの気持ちを知りもしもアレルとジョゼフィーヌはそういう仲なのならそれを応援するべきだろうと思った。
そうやって自分を納得させて、ジョゼフィーヌと話をすることにした。
オドラン男爵令嬢については、最初の印象は勘違いだったようで、その後向こうからのわざとらしい接触が増えたので最初のあれは、ただの無知が招いたことだったようだ。
私は他の令嬢よりもアピールが強いオドラン男爵令嬢を鬱陶しく思い、避けることにしたが行く先々に現れる彼女には本当に辟易したものだった。
それに比べジョゼフィーヌは接点がまったくなかった。こちらから堂々と誘うことも考えたが、断られたばかりなのに、また誘うなどそんな無粋なことはできない。
そんなことをしているうちに、デュケール家が正式にアルシェ侯爵家に縁談の話を持ちかけたことを知った。
しかも、ジョゼフィーヌはそれを断らなかったそうだ。今までの私の知るジョゼフィーヌなら、私に意思表示をするように断っているに違いなかった。
私はなぜか焦燥感を覚えた。この気持ちがなんなのかわからないまま、ジョゼフィーヌがアレルと結ばれるのは嫌だった。
とにかくジョゼフィーヌと会って話をしてみよう。
そう思った私は、執事に相談することにした。そこでジョゼフィーヌが最近いつも出掛けている場所があると聞いて待ち伏せすることにした。
しばらく待っていると、侍女をお供に楽しそうな彼女がやって来た。
乙女草の咲き乱れる場所に、簡素なドレスでほとんど化粧もせずに佇む彼女がとても美しく見えた。
そっと近づき声をかける。すると、ジョゼフィーヌは一瞬だけ嫌そうな顔をしたが、すぐに笑顔になると私の相手をした。
一人になりたかったのかもしれない。
そう思いながらも、私は帰るつもりはなかった。仲良く並んで座ると、まず、先日の舞踏会で不思議に思ったことを尋ねた。
すると、ジョゼフィーヌは笑顔で『役割をしっかりこなしていれば、それ以外については自由』だと言った。
それを聞いた私は、金槌で頭を打たれた気分だった。
そんなふうに考えたことはなく、自分の人生なのに今までなんの努力もせずに色々諦めていた。
そして、ジョゼフィーヌは続けて『自身の信じる相手を選んでほしい』『それが我が儘だと言われても、それがどうしたと言うんですか?』と話した。
この台詞には暗に自分も自由に好きな相手を選ぶから、貴方もそうしてね。
そういうメッセージが込められていると思った。
なにか吹っ切れたのではない。ジョゼフィーヌはなにかがあって私を、王妃の座を完全に諦めてしまったということなのだろう。
そう言われた私の方は今になって彼女の魅力に気づき、彼女を愛し始めたというのに。
ジョゼフィーヌ本人はアレルを愛しているのだろう。
だが、ここで諦めるつもりはなかった。彼女はこうも言っていたからだ。
『それが我が儘だと言われても、それがどうしたと言うんですか? 国王が幸せでないと国民も幸せになれませんわ』
と。
考えてみればジョゼフィーヌに対して今までとても失礼な態度をしていたのではないかと思う。
どうせこうしてほしいのだろう?
こうすれば喜ぶのだろう?
そんなふうに相手にしていたせいで、本当に大切な相手になってからはどうすればよいかわからなくなった。
その後ジョゼフィーヌにはことごとく避けられることになる。ほとんど社交の場に顔を出さなくなってしまったのだ。
本当にままならないこの状況に、初めて相手に振り回され心をかき乱される気持ちを味わうことになった。
私は悩み、色々考えて彼女が喜ぶようにプレゼントを贈ることにした。
ジョゼフィーヌに似合うドレスや宝飾品を選ぶとそれを着た彼女を想像する。こうして、初めて女性にプレゼントを贈る楽しさを知った。
ジョゼフィーヌにプレゼントを贈ると、改めて散歩に誘った。
今までは世の令息たちが令嬢と結ばれるために気を遣い、かしずく様子を見て馬鹿馬鹿しいと思っていた。
あんな無様なこと、到底考えられないことだ。
そんな風に思っていたのだ。だが、今なら思う。自分が本当に愛している相手になら、かしずくぐらいどうということはないだろうと。
こうしてやっと散歩の約束を取り付けると、私はいつになく朝から浮かれていた。
今日の散歩でジョゼフィーヌに気に入ってもらわなければならない。
そう思った時、ジョゼフィーヌも今まで私と会う時はそんな気持ちでいてくれていたのかもしれないと、この時になってやっと気づいた。
私はそんな気持ちをことごとく裏切ってきたわけだし、嫌われたとしても仕方のないことかもしれなかった。
待ち合わせ場所に現れたジョゼフィーヌは、私の贈ったドレスを着て来てくれて、それだけでとても嬉しかった。
ジョゼフィーヌはいつも大人びたドレスを着ているが、こういった可愛らしいドレスもきっと似合うはずだと思っていたのだが、それは間違っていなかった。
それにしても、こんなことで、こんなにも幸せな気持ちになれるとは予想外のことだったし、それを教えてくれるジョゼフィーヌを更に愛おしいと感じた。
私は自分の気持ちを素直に伝えようとお世辞抜きに話をするが、ジョゼフィーヌは形式的なものだと思っている様子で流されてしまった。
今まで気がついていなかったが、本当にジョゼフィーヌは美しくも可愛らしい。
しっかり教養を身に付けているが、最近のジョゼフィーヌはそれを鼻にかけることなく控えめで、褒めると恥じらう。
それに他の令嬢とはまったく違い、ジョゼフィーヌは褒めてもそれを本気にしない。高慢で愛されて当然と思い込む他の貴族令嬢とまったく違う彼女に、どんどん惹かれていくのが自分でもわかった。
そしていつも何かしら考えている様子で、憂いを含んだその瞳は私の庇護欲を掻き立てた。
私はこの時、手に入れたなら全力でジョゼフィーヌを愛すると心に決めた。そして、優しく微笑む彼女を眩しく思いながら歩いていると、思わぬ邪魔が入った。
向こうからオドラン男爵令嬢が歩いてきたのだ。
心底うんざりしながらも、令嬢を邪険に扱えばジョゼフィーヌに失望されるかもしれないと思い、オドラン男爵令嬢に普通に話しかける。
ところがなぜかジョゼフィーヌの方が誤解して遠慮し始めた。
私がそれに気づき止める間もなく、ジョゼフィーヌは私の腕を離し素早くその場を去っていってしまった。
ショックで呆気に取られ、直ぐにでも彼女を追いかけようとしたが、オドラン男爵令嬢に足止めをくらう。
オドラン男爵令嬢は私の腕に手を絡める。
「びっくりしましたわ。私てっきりお二人が仲良くデートされているのだと思ってしまいました」
私の腕に胸の肉を押し付けると、少し上目遣いでそう言った。私はその媚びた表情に怒りを覚えながらなんとか冷静に答える。
「勘違いではない。君は私とジョゼフィーヌの逢瀬を邪魔した」
それを聞いたオドラン男爵令嬢は、信じられないものを見るような眼差しで私を見上げる。
「えっ? それでもここに残り私とお話しされているということは、そういうことですわよね?」
そう言われて私は慌てた。そうだ、早くジョゼフィーヌを追いかけなければ。
オドラン男爵令嬢を振り払うと、直ちにジョゼフィーヌを追いかけようとした。だが、オドラン男爵令嬢は腕をつかんで放さない。
「追いかけなくても、きっと大丈夫ですわ。礼儀だと思ってやっていることが、逆に相手を傷つけてしまうこともありましてよ?」
貴様は誰に向かってものを言っている?!
そう叫びそうになるのをこらえる。オドラン男爵令嬢は話が通じない。変なことを言えば自分に良いように解釈し話が拗れる。
いつかしっかり公の場で処分せねばならないだろう。そう思いながら、今はジョゼフィーヌを追いかけることに集中するために、無言で思い切りオドラン男爵令嬢の腕を振り払いジョゼフィーヌを追いかけた。
彼女の逃げ足は早く、もう屋敷に戻ってしまったようだったので私は屋敷まで追いかけなくてはならなかった。
普段ならそんな自分を情けなく思うのかも知れないが、この時はジョゼフィーヌのためにそこまでする自分をも愛せるような気がした。
屋敷でゆっくりしている彼女を捕まえると、着飾らない彼女の素の美しさに心うばわれた。
やはり彼女が欲しい。私は我慢できずに彼女に軽くキスをした。考えのしっかりしている淑女ならば、キスをされれば私以外に嫁ぐなど考えられないはずである。
これで彼女は私のものだ。気持ちも伝わっただろう。
だが、恥ずかしがり屋のジョゼフィーヌはその後私と会ってくれなくなった。
病気で体調が優れないからと言っているがそうではなく、私と会うのが嫌なのかもしれなかった。
そんな時、デュケール家のお茶会にジョゼフィーヌが参加すると聞いた。それを知った私はアレルがジョゼフィーヌを狙って具体的に行動するつもりなのだと思った。
ジョゼフィーヌが素晴らしい女性だと気づいたのは私だけではなかった。よりによってアレルもそれに気づいているのだ。
それに、ジョゼフィーヌも薄情な私を切り捨てアレルを愛し始めているように見えた。それでも、私はジョゼフィーヌをアレルに渡すつもりはなかった。
彼女は私のものだ。
私は慌てて、二人の邪魔をするために無理矢理お茶会に参加した。
デュケール家に着くと、すぐに令嬢たちに囲まれる。これではジョゼフィーヌと話ができないが、だからといって挨拶を無視するわけにもいかなかった。
挨拶をしている間もジョゼフィーヌを探す。と、角の方でアレルとなにか楽しげに話しているジョゼフィーヌを見つけた。
気に入らない。
アレルと楽しそうにしていることも、私のプレゼントしたドレスを着ていないこともすべてが気に入らない。
そうして二人を見ていると、あろうことかアレルがジョゼフィーヌの手を握った。
それ以上は見ていられず、私を囲む令嬢や令息をかき分けまっすぐに二人の場所へ向かうと二人の間に入った。
私のドレスを着ていないということは、もしかしたらアレルからのプレゼントのドレスを着ているのかもしれないと思ったが、そうではなかったようで安心した。
両方からドレスを贈られ、困った挙げ句の判断だったのだろう。それにしても、アレルがここまでジョゼフィーヌに本気になっているとは思いもしなかった。
相手が他の誰でもないデュケール公爵家とあれば、どうにか理由をつけてジョゼフィーヌを奪われかねない。
ならばいっそのこと先日のキスのことをこの場で話し、ジョゼフィーヌはすでに私のものだと言ってしまおうかとも思ったが、それはジョゼフィーヌに阻止された。
そして、そのまま話を有耶無耶にされると私たちは令嬢や令息たちに囲まれてしまい、恥ずかしがり屋のジョゼフィーヌはどこかへ隠れてしまった。
やっと令嬢や令息たちから解放されたころ、帰ろうとしているジョゼフィーヌを見つけ後を追う。すると、オドラン男爵令嬢につかまってしまったようだった。
隠れて見ていると、オドラン男爵令嬢はジョゼフィーヌに詰め寄り、邪魔だと言い放っていた。なんと醜いことだろうか。
話を聞いていると、ジョゼフィーヌはこう言った。
『誤解ですわ。王太子殿下はオドラン男爵令嬢との仲を周囲に知られないよう私をカモフラージュに使っているだけですわ』
それを聞いて私は頭を抱えた。あれだけ気持ちを伝えているのに、ジョゼフィーヌには伝わっていなかったようだ。
どうしたものかと考えていると、オドラン男爵令嬢が調子に乗ってジョゼフィーヌを侮辱し始めた。
なんだあの男爵令嬢は。
怒りに震える私と対照的に、ジョゼフィーヌは屈辱的なことを言われているにも関わらず、言い訳することもなく言われるがままに耐えている。
流石だと感心した。今までそういった教育を受けてきたから当たり前のことと言えば確かにそうだが、それにしても、だ。ジョゼフィーヌは他の令嬢と違ってとても我慢強かった。
今二人の仲裁に入ることもできたろう。だが、今ではない。私はそう思い、その場にとどまった。
今後彼女の婚約者となれば、彼女に我慢させることなく堂々と彼女を守ることもできるだろう。目立つことを嫌がるジョゼフィーヌのためにも、そうなるまでの我慢だと思った。
とは言っても、私のジョゼフィーヌをあれだけ侮辱したのだから、オドラン男爵令嬢についてはただで済ませるつもりもなかった。
私はこのお茶会のあと、色々と手段を選んでいられないことを悟った。
父にはなんと言われるかわからないが、ジョゼフィーヌと婚約することを伝えた。だが、予想に反して冷めた態度の私のことを今までずっと心配していたと話してくれた。
そして誰かを愛することによって、成長することもあると。そしてあっさりとジョゼフィーヌとの早めの婚約が許された。特に母は大喜びだった。
昔からジョゼフィーヌのような娘がほしかったのだと話してくれた。
私は現在の状況を鑑みて、来月にも婚約者の発表することにした。
三ヶ月早めて婚約者を発表すると言ったとき、社交界は上を下への大騒ぎとなったがそれでも舞踏会の準備は割りとスムースに進んだ。
準備期間中はまったくジョゼフィーヌに会えなかったが、それも後少しの我慢だと自分に言い聞かせた。
婚約発表の舞踏会でも、もしかしたらジョゼフィーヌはアレルがプレゼントしたドレスを着てくるかも知れないと私は不安に思っていた。
当日、恐る恐る会場内を覗いてジョゼフィーヌを探すと壁際で俯いている彼女を見つけた。
そして、ゆっくり着ているドレスを確認する。そのドレスは間違いなく私のプレゼントしたドレスだった。
私は胸を撫で下ろすと、とても気分が高揚した。生まれてこのかた、不安になったり気分が高揚したりとこんなに落ち着きのない気持ちを味わったことはなかった。
これから大切な発表をしなければならない。
私はなんとかそんな自分を落ち着かせると、執事に合図し会場へと足を踏み出した。
私が挨拶しているあいだジョゼフィーヌは俯き、誰とも目を合わせようとしなかった。それでも私はすでに彼女を手に入れると心に誓っていた。
婚約者を発表する時になり、ゆっくりジョゼフィーヌに近づくと彼女はどこかへ立ち去ろうとした。
まだ私に気づいていないようだったので、その退路を塞ぐ。すると、信じられないものを見るような目で私を見上げた。
私はその瞳を見つめ、ジョゼフィーヌをこれから一生逃がさないと心に誓っていた。
王太子という立場上、好き勝手に恋愛相手を選ぶ訳にはいかないというのもある。それでも、婚姻とは別にして自分が愛した相手をそばに置くことはできるだろう。
だが、そういうことではない。
自分はこの国の王太子である。私が一言『お前が好きだ、愛している』とでも言えばこの国の人間ならば、すべての者が膝を折り自分の気持ちなど関係なく、私の愛に応えるだろう。
そんな愛に価値があるのか。そう思い冷めた気持ちでいたのだ。
その日の舞踏会でエスコートする相手はジョゼフィーヌだった。お茶会や今までの舞踏会で、何度か彼女とは会ったことがあった。
私の中でのジョゼフィーヌの位置付けは、婚約者になるべくいつも私に媚を売る令嬢の一人だという認識だ。
彼女の父親であるアルシェ侯爵は自身の領地で難しいと言われていた農耕を成功させ、さらに領地内に鉱山を見つけると、鉱物を流通させるために商人に対する税を低くすることなどで、かなりの富を得ていた。
しかもそれを独り占めすることなく、領民にもしっかり還元するため信頼を寄せられており、ユニ国に対しても金銭的援助を惜しみなくする侯爵だった。
そんな侯爵は国政にも口出しができる立場にあり、当然その娘であるジョゼフィーヌに対しても私がある程度は気を遣わねばならない相手であるのは当然のことだった。
政治的なことを考えても、ジョゼフィーヌと婚約するのも悪くない。だから私はジョゼフィーヌに優しく接することにしていた。
「王太子殿下、今日はエスコートしてくださってとても光栄ですわ。私は今日のことを一生忘れません」
彼女は瞳を輝かせ、私をうっとりと見上げるとそう言った。
君がこうして私と一緒に歩けるのは、君の努力ではなく卿のお陰なのだけれどね。
私はそう思いながら笑顔を返した。
そんな時だった、オドラン男爵令嬢が私たちの前に現れカーテシーをすると、私に媚びることなくその場を去っていった。
婚約候補である令嬢がそのような態度を私に取ることは今までなかった。礼儀知らずなのか、それとも本当に私に興味がないのか。
不思議に思ってオドラン男爵令嬢を注視していたが、その時ジョゼフィーヌの様子がおかしくなったのに気づいた。
先程まであれほど楽しそうにしていたのに、今までに見たことのないような難しい表情で、何事か考え事をしているようだった。
ご機嫌を損ねるようなエスコートをしてしまっただろうか?
私はジョゼフィーヌと数日後に一緒に出かける約束をしている。その話でもして機嫌を取ろうとしたが、それは見事に遮られた。
しかも挙げ句にそんなものはどうでもよいという態度を取られ、最終的にはやんわりと出掛ける約束すら断られてしまった。
一体なにがあったのか。
困惑しているとジョゼフィーヌは言った。
「私らしくないのではなく、今日やっと私は本来の自分を取り戻したんです、これが本来の私なんですわ」
それだけ言うと、体調が悪いと見え透いた嘘をついて、アレルにエスコートされて帰ってしまった。
私は今日の舞踏会での彼女の行動を思い出しながら、言われたことの真意を探るためにあれやこれやと考えた。
今日のエスコートは完璧だったはずだ。
だとすると過去になにかやってしまったのかもしれない。私は以前会った時のことまで遡って考えてみた。
思い出されるジョゼフィーヌは、いつも私以外は視界に入らないとばかりに、私だけを見つめ微笑んでいたことだけだ。
だが先程のジョゼフィーヌは、私のことなどどうでも良いといった感じで、挙げ句には今までに見たことのないようなスッキリした顔をし、なにか吹っ切れた様子を見せた。
今日のエスコート中になにかがあったとしか考えられない。
もう一度今日のエスコート中のことを思い出す。そして一つだけいつもと違うことがあったことに気づく。
アレルと微笑みあっていたではないか。
しかも、あの女にだらしなく令嬢がいる場所には絶対に顔を出すアレルが、ジョゼフィーヌをエスコートすると残ることなく帰ってしまった。
もしかして、二人は私の知らないところで親睦を深めていたのだろうか?
私はそう考えると、なぜか落ち着かない気持ちになったが、ジョゼフィーヌの気持ちを知りもしもアレルとジョゼフィーヌはそういう仲なのならそれを応援するべきだろうと思った。
そうやって自分を納得させて、ジョゼフィーヌと話をすることにした。
オドラン男爵令嬢については、最初の印象は勘違いだったようで、その後向こうからのわざとらしい接触が増えたので最初のあれは、ただの無知が招いたことだったようだ。
私は他の令嬢よりもアピールが強いオドラン男爵令嬢を鬱陶しく思い、避けることにしたが行く先々に現れる彼女には本当に辟易したものだった。
それに比べジョゼフィーヌは接点がまったくなかった。こちらから堂々と誘うことも考えたが、断られたばかりなのに、また誘うなどそんな無粋なことはできない。
そんなことをしているうちに、デュケール家が正式にアルシェ侯爵家に縁談の話を持ちかけたことを知った。
しかも、ジョゼフィーヌはそれを断らなかったそうだ。今までの私の知るジョゼフィーヌなら、私に意思表示をするように断っているに違いなかった。
私はなぜか焦燥感を覚えた。この気持ちがなんなのかわからないまま、ジョゼフィーヌがアレルと結ばれるのは嫌だった。
とにかくジョゼフィーヌと会って話をしてみよう。
そう思った私は、執事に相談することにした。そこでジョゼフィーヌが最近いつも出掛けている場所があると聞いて待ち伏せすることにした。
しばらく待っていると、侍女をお供に楽しそうな彼女がやって来た。
乙女草の咲き乱れる場所に、簡素なドレスでほとんど化粧もせずに佇む彼女がとても美しく見えた。
そっと近づき声をかける。すると、ジョゼフィーヌは一瞬だけ嫌そうな顔をしたが、すぐに笑顔になると私の相手をした。
一人になりたかったのかもしれない。
そう思いながらも、私は帰るつもりはなかった。仲良く並んで座ると、まず、先日の舞踏会で不思議に思ったことを尋ねた。
すると、ジョゼフィーヌは笑顔で『役割をしっかりこなしていれば、それ以外については自由』だと言った。
それを聞いた私は、金槌で頭を打たれた気分だった。
そんなふうに考えたことはなく、自分の人生なのに今までなんの努力もせずに色々諦めていた。
そして、ジョゼフィーヌは続けて『自身の信じる相手を選んでほしい』『それが我が儘だと言われても、それがどうしたと言うんですか?』と話した。
この台詞には暗に自分も自由に好きな相手を選ぶから、貴方もそうしてね。
そういうメッセージが込められていると思った。
なにか吹っ切れたのではない。ジョゼフィーヌはなにかがあって私を、王妃の座を完全に諦めてしまったということなのだろう。
そう言われた私の方は今になって彼女の魅力に気づき、彼女を愛し始めたというのに。
ジョゼフィーヌ本人はアレルを愛しているのだろう。
だが、ここで諦めるつもりはなかった。彼女はこうも言っていたからだ。
『それが我が儘だと言われても、それがどうしたと言うんですか? 国王が幸せでないと国民も幸せになれませんわ』
と。
考えてみればジョゼフィーヌに対して今までとても失礼な態度をしていたのではないかと思う。
どうせこうしてほしいのだろう?
こうすれば喜ぶのだろう?
そんなふうに相手にしていたせいで、本当に大切な相手になってからはどうすればよいかわからなくなった。
その後ジョゼフィーヌにはことごとく避けられることになる。ほとんど社交の場に顔を出さなくなってしまったのだ。
本当にままならないこの状況に、初めて相手に振り回され心をかき乱される気持ちを味わうことになった。
私は悩み、色々考えて彼女が喜ぶようにプレゼントを贈ることにした。
ジョゼフィーヌに似合うドレスや宝飾品を選ぶとそれを着た彼女を想像する。こうして、初めて女性にプレゼントを贈る楽しさを知った。
ジョゼフィーヌにプレゼントを贈ると、改めて散歩に誘った。
今までは世の令息たちが令嬢と結ばれるために気を遣い、かしずく様子を見て馬鹿馬鹿しいと思っていた。
あんな無様なこと、到底考えられないことだ。
そんな風に思っていたのだ。だが、今なら思う。自分が本当に愛している相手になら、かしずくぐらいどうということはないだろうと。
こうしてやっと散歩の約束を取り付けると、私はいつになく朝から浮かれていた。
今日の散歩でジョゼフィーヌに気に入ってもらわなければならない。
そう思った時、ジョゼフィーヌも今まで私と会う時はそんな気持ちでいてくれていたのかもしれないと、この時になってやっと気づいた。
私はそんな気持ちをことごとく裏切ってきたわけだし、嫌われたとしても仕方のないことかもしれなかった。
待ち合わせ場所に現れたジョゼフィーヌは、私の贈ったドレスを着て来てくれて、それだけでとても嬉しかった。
ジョゼフィーヌはいつも大人びたドレスを着ているが、こういった可愛らしいドレスもきっと似合うはずだと思っていたのだが、それは間違っていなかった。
それにしても、こんなことで、こんなにも幸せな気持ちになれるとは予想外のことだったし、それを教えてくれるジョゼフィーヌを更に愛おしいと感じた。
私は自分の気持ちを素直に伝えようとお世辞抜きに話をするが、ジョゼフィーヌは形式的なものだと思っている様子で流されてしまった。
今まで気がついていなかったが、本当にジョゼフィーヌは美しくも可愛らしい。
しっかり教養を身に付けているが、最近のジョゼフィーヌはそれを鼻にかけることなく控えめで、褒めると恥じらう。
それに他の令嬢とはまったく違い、ジョゼフィーヌは褒めてもそれを本気にしない。高慢で愛されて当然と思い込む他の貴族令嬢とまったく違う彼女に、どんどん惹かれていくのが自分でもわかった。
そしていつも何かしら考えている様子で、憂いを含んだその瞳は私の庇護欲を掻き立てた。
私はこの時、手に入れたなら全力でジョゼフィーヌを愛すると心に決めた。そして、優しく微笑む彼女を眩しく思いながら歩いていると、思わぬ邪魔が入った。
向こうからオドラン男爵令嬢が歩いてきたのだ。
心底うんざりしながらも、令嬢を邪険に扱えばジョゼフィーヌに失望されるかもしれないと思い、オドラン男爵令嬢に普通に話しかける。
ところがなぜかジョゼフィーヌの方が誤解して遠慮し始めた。
私がそれに気づき止める間もなく、ジョゼフィーヌは私の腕を離し素早くその場を去っていってしまった。
ショックで呆気に取られ、直ぐにでも彼女を追いかけようとしたが、オドラン男爵令嬢に足止めをくらう。
オドラン男爵令嬢は私の腕に手を絡める。
「びっくりしましたわ。私てっきりお二人が仲良くデートされているのだと思ってしまいました」
私の腕に胸の肉を押し付けると、少し上目遣いでそう言った。私はその媚びた表情に怒りを覚えながらなんとか冷静に答える。
「勘違いではない。君は私とジョゼフィーヌの逢瀬を邪魔した」
それを聞いたオドラン男爵令嬢は、信じられないものを見るような眼差しで私を見上げる。
「えっ? それでもここに残り私とお話しされているということは、そういうことですわよね?」
そう言われて私は慌てた。そうだ、早くジョゼフィーヌを追いかけなければ。
オドラン男爵令嬢を振り払うと、直ちにジョゼフィーヌを追いかけようとした。だが、オドラン男爵令嬢は腕をつかんで放さない。
「追いかけなくても、きっと大丈夫ですわ。礼儀だと思ってやっていることが、逆に相手を傷つけてしまうこともありましてよ?」
貴様は誰に向かってものを言っている?!
そう叫びそうになるのをこらえる。オドラン男爵令嬢は話が通じない。変なことを言えば自分に良いように解釈し話が拗れる。
いつかしっかり公の場で処分せねばならないだろう。そう思いながら、今はジョゼフィーヌを追いかけることに集中するために、無言で思い切りオドラン男爵令嬢の腕を振り払いジョゼフィーヌを追いかけた。
彼女の逃げ足は早く、もう屋敷に戻ってしまったようだったので私は屋敷まで追いかけなくてはならなかった。
普段ならそんな自分を情けなく思うのかも知れないが、この時はジョゼフィーヌのためにそこまでする自分をも愛せるような気がした。
屋敷でゆっくりしている彼女を捕まえると、着飾らない彼女の素の美しさに心うばわれた。
やはり彼女が欲しい。私は我慢できずに彼女に軽くキスをした。考えのしっかりしている淑女ならば、キスをされれば私以外に嫁ぐなど考えられないはずである。
これで彼女は私のものだ。気持ちも伝わっただろう。
だが、恥ずかしがり屋のジョゼフィーヌはその後私と会ってくれなくなった。
病気で体調が優れないからと言っているがそうではなく、私と会うのが嫌なのかもしれなかった。
そんな時、デュケール家のお茶会にジョゼフィーヌが参加すると聞いた。それを知った私はアレルがジョゼフィーヌを狙って具体的に行動するつもりなのだと思った。
ジョゼフィーヌが素晴らしい女性だと気づいたのは私だけではなかった。よりによってアレルもそれに気づいているのだ。
それに、ジョゼフィーヌも薄情な私を切り捨てアレルを愛し始めているように見えた。それでも、私はジョゼフィーヌをアレルに渡すつもりはなかった。
彼女は私のものだ。
私は慌てて、二人の邪魔をするために無理矢理お茶会に参加した。
デュケール家に着くと、すぐに令嬢たちに囲まれる。これではジョゼフィーヌと話ができないが、だからといって挨拶を無視するわけにもいかなかった。
挨拶をしている間もジョゼフィーヌを探す。と、角の方でアレルとなにか楽しげに話しているジョゼフィーヌを見つけた。
気に入らない。
アレルと楽しそうにしていることも、私のプレゼントしたドレスを着ていないこともすべてが気に入らない。
そうして二人を見ていると、あろうことかアレルがジョゼフィーヌの手を握った。
それ以上は見ていられず、私を囲む令嬢や令息をかき分けまっすぐに二人の場所へ向かうと二人の間に入った。
私のドレスを着ていないということは、もしかしたらアレルからのプレゼントのドレスを着ているのかもしれないと思ったが、そうではなかったようで安心した。
両方からドレスを贈られ、困った挙げ句の判断だったのだろう。それにしても、アレルがここまでジョゼフィーヌに本気になっているとは思いもしなかった。
相手が他の誰でもないデュケール公爵家とあれば、どうにか理由をつけてジョゼフィーヌを奪われかねない。
ならばいっそのこと先日のキスのことをこの場で話し、ジョゼフィーヌはすでに私のものだと言ってしまおうかとも思ったが、それはジョゼフィーヌに阻止された。
そして、そのまま話を有耶無耶にされると私たちは令嬢や令息たちに囲まれてしまい、恥ずかしがり屋のジョゼフィーヌはどこかへ隠れてしまった。
やっと令嬢や令息たちから解放されたころ、帰ろうとしているジョゼフィーヌを見つけ後を追う。すると、オドラン男爵令嬢につかまってしまったようだった。
隠れて見ていると、オドラン男爵令嬢はジョゼフィーヌに詰め寄り、邪魔だと言い放っていた。なんと醜いことだろうか。
話を聞いていると、ジョゼフィーヌはこう言った。
『誤解ですわ。王太子殿下はオドラン男爵令嬢との仲を周囲に知られないよう私をカモフラージュに使っているだけですわ』
それを聞いて私は頭を抱えた。あれだけ気持ちを伝えているのに、ジョゼフィーヌには伝わっていなかったようだ。
どうしたものかと考えていると、オドラン男爵令嬢が調子に乗ってジョゼフィーヌを侮辱し始めた。
なんだあの男爵令嬢は。
怒りに震える私と対照的に、ジョゼフィーヌは屈辱的なことを言われているにも関わらず、言い訳することもなく言われるがままに耐えている。
流石だと感心した。今までそういった教育を受けてきたから当たり前のことと言えば確かにそうだが、それにしても、だ。ジョゼフィーヌは他の令嬢と違ってとても我慢強かった。
今二人の仲裁に入ることもできたろう。だが、今ではない。私はそう思い、その場にとどまった。
今後彼女の婚約者となれば、彼女に我慢させることなく堂々と彼女を守ることもできるだろう。目立つことを嫌がるジョゼフィーヌのためにも、そうなるまでの我慢だと思った。
とは言っても、私のジョゼフィーヌをあれだけ侮辱したのだから、オドラン男爵令嬢についてはただで済ませるつもりもなかった。
私はこのお茶会のあと、色々と手段を選んでいられないことを悟った。
父にはなんと言われるかわからないが、ジョゼフィーヌと婚約することを伝えた。だが、予想に反して冷めた態度の私のことを今までずっと心配していたと話してくれた。
そして誰かを愛することによって、成長することもあると。そしてあっさりとジョゼフィーヌとの早めの婚約が許された。特に母は大喜びだった。
昔からジョゼフィーヌのような娘がほしかったのだと話してくれた。
私は現在の状況を鑑みて、来月にも婚約者の発表することにした。
三ヶ月早めて婚約者を発表すると言ったとき、社交界は上を下への大騒ぎとなったがそれでも舞踏会の準備は割りとスムースに進んだ。
準備期間中はまったくジョゼフィーヌに会えなかったが、それも後少しの我慢だと自分に言い聞かせた。
婚約発表の舞踏会でも、もしかしたらジョゼフィーヌはアレルがプレゼントしたドレスを着てくるかも知れないと私は不安に思っていた。
当日、恐る恐る会場内を覗いてジョゼフィーヌを探すと壁際で俯いている彼女を見つけた。
そして、ゆっくり着ているドレスを確認する。そのドレスは間違いなく私のプレゼントしたドレスだった。
私は胸を撫で下ろすと、とても気分が高揚した。生まれてこのかた、不安になったり気分が高揚したりとこんなに落ち着きのない気持ちを味わったことはなかった。
これから大切な発表をしなければならない。
私はなんとかそんな自分を落ち着かせると、執事に合図し会場へと足を踏み出した。
私が挨拶しているあいだジョゼフィーヌは俯き、誰とも目を合わせようとしなかった。それでも私はすでに彼女を手に入れると心に誓っていた。
婚約者を発表する時になり、ゆっくりジョゼフィーヌに近づくと彼女はどこかへ立ち去ろうとした。
まだ私に気づいていないようだったので、その退路を塞ぐ。すると、信じられないものを見るような目で私を見上げた。
私はその瞳を見つめ、ジョゼフィーヌをこれから一生逃がさないと心に誓っていた。
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