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自宅前まで芦谷先生に送ってもらい、お礼を言って車を降りると、家に入りシャワーを浴び食卓についた。
食卓で、父、勝に瑛子は
「お父さん、明日の朝ごはん早めにお願い」
と言った。家を早めに出るためだった。早めに出れば、神成緑と鉢合わせにならないと思ったからだった。
神成緑には、最寄りの駅が知られてしまっている。用心することに越したことはない。
すると瑛子の母親の冴子も
「パパ、私も明日は早めにお願い。明日は早朝会議があるのよ」
と言った。勝は
「なんだ、我が家の女性陣はみんな忙しいな。それはかまわないが、そうそう瑛子、明日は弁当がいるか? いるならママの分と一緒に作るから、自分の弁当箱を台所に出しておきなさい」
と言った。瑛子は勝に生返事をすると、神成緑が昼休みに会えると言っていたのを思いだした。そして明日のお昼ご飯で接触してこないか少し不安になった。
次の日、勝に弁当を渡されると、想定よりも一時間は早い時間に家を出る。早く着いて予習でもするか。どうせ家だと絶対勉強しないし。と、思いながら、駅まで歩く。改札をくぐり、ホームに出ると
「おはよう、君のことだからこんなことじゃないかと思った」
と声をかけられる。声のする方を見ると、神成緑が立っていた。瑛子が驚いていると神成緑は
「君は早く家を出るのでは? と思っていたから、待ってて良かった」
と、爽やかに微笑むと
「驚かせてごめん。でも君と話がしたくて。なんとなく君が避けてるのはわかったし、強引だったことも認める。だけど、もう少し俺のことを知ってから避けてくれてもいいと思うんだ」
と言った。瑛子はなるほど、確かに。と思った。それでも強引が過ぎると思うが。だが、これから先、ずっと避け続けることはできないだろう。そう悟ったので
「では、お願いがあるんです」
と妥協案を出すことにした。神成緑は頷き
「内容にもよるけど」
と、言った。瑛子は頷き
「一緒に通学するのはかまいません。でも学校で神成君と親しくしていると、神成君は人気者なので、私の学生生活に色々と支障がでかねません。なので、校外でだけ仲良くさせていただきたいのです」
と言った。特にヒロイン。彼女からの風当たりが強い。昨日の彼女は、瘴気を放っていたり、変な忠告をしてきたりした。
それに、今はモブの私と一緒にいても、これからヒロインとの接点ができ、彼女と仲良くなったら、神成緑は私と一緒にいる機会が減るだろう。そうなった時に、周囲からひそひそされるのも避けたい。神成緑はよくも悪くも目立つのだ。すると神成緑は
「わかった、もしも俺と君の仲をやっかむ奴がいたら、そいつらから君を守れば問題ないよね」
と、言った。瑛子はいや、だからそうじゃない、なんでそうなるんだってばよ? 日本語がお留守です。と思いながら、学校内では関わりをもたないようにして欲しい、とハッキリ言おうとしたところで、電車がきてしまった。話を中断し、電車に乗り込む。
車内が混雑しているので、かなり神成緑と密着することになった。
「瑛子、危ないから俺につかまっていいよ」
と神成緑に言われ、最初は遠慮していたが、逆に電車が動く度に神成緑に身体が押し付けられてしまうため、諦めて神成緑のシャツを掴み
「よろしくお願いします」
と呟いた。神成緑は
「うん、不本意そうだね。次の駅までの我慢」
と微笑んで言った。神成緑と、距離を取ろうと思っているのに、なんでこうなっちゃったんだろう。もうお家に帰りたい。と、思いながら数分間、身体を神成緑に預ける形になった。
星春駅に着くと、ホームに出て足早に改札に向かいながら瑛子は
「本当にごめんなさい、失礼しました」
と、心から謝った。あんなに身体を密着させては、神成緑はさぞ不快であっただろう。神成緑は
「なんで? そんなことないよ」
と、恥ずかしそうに言って目を反らせた。神成緑は、お世辞をさらりと言う人間だ。口ではなんと言おうと、どんな反応をしてようと、本心はわからない。
そもそも、こんなに私に近付いてきているのにも、何かしら目的があるのだろう。と、瑛子はこの時考えた。それだと昨日からの、神成緑の謎の行動理由に納得がいった。
改札を出てしばらく行ったところで、神成緑が
「スマホ、今なら持ってるよね」
といい、その場で連絡先の交換をした。神成緑は
「今朝、君を捕まえるの大変だったから、これで明日からは大丈夫だね」
と、微笑んだ。瑛子は、確かに、なんの約束もなく待たれるよりはましかも。と思いながら高校へ向かった。
校門の前に着くと、瑛子は
「では、また帰りに会いましょう」
と言ったが、神成緑は
「いや、俺、瑛子のこと守るって言ったよね。心配しなくて大丈夫だから、行こう」
と、歩き出した。瑛子は完全に開き直ることにした。
「わかりました、しっかり守ってね」
と言って微笑むと、神成緑の隣に並んで歩き始めた。神成緑は
「え? あ、うん」
と、少し戸惑った様子になった。瑛子は可愛いな、と思った。下駄箱で上履きに履き替え、廊下を歩きだしたところで神成緑が
「ところで瑛子はなんで敬語なの?」
と瑛子に訊いた。正直なところ、敬語だと自然と距離がとれるし、ボロも出にくいからなのだが
「前からなので、敬語の方が話しやすいんです」
と、瑛子は答えた。神成緑は
「ふーん。てっきり、他人と距離をとるためなんだと思ってた」
と言った。瑛子は本当にこの子鋭いわ、と思いつつもそれを顔に出さず
「他人行儀に聞こえちゃいますかね? 気を付けますね」
と笑顔を返した。教室の前に着くと
「じゃあ、あとで」
と、神成緑と別れ教室に入り自分の席に着いた。せっかくなので予習をしておこうと、教科書を取り出していると
「おはよう」
と声をかけられる。見ると催馬楽学だった。瑛子も笑顔で挨拶を返すと、催馬楽学が
「昨日は帰るのが遅かったのか?」
と、訊いてきた。瑛子は頷き
「先生に質問してたら、遅くなっちゃったんです」
と答えた。催馬楽学は
「勉強することも大切かもしれないけれど、遅くなると危ないから、気を付けないと」
と言った。基本この子心配症なんだわ、と瑛子は思いながら
「気にかけてくれて、ありがとうございます」
と、頭を下げた。その後少しだけ予習をすると、チャイムが鳴り授業が始まった。
授業内容は、初日だと言うこともあり、各教科の先生に自己紹介をさせられ、本格的な授業といった感じではなく、あっという間にお昼になった。
昼休みになると、神成緑が
「瑛子、昼飯行こう」
と誘いにきた。瑛子が頷くと、催馬楽学が
「僕も一緒にいいだろうか?」
と言ってきた。瑛子は別にかまわなかったが、神成緑に一応確認を取る。神成緑は
「別にかまわないよ」
と言った。その時、視線を感じそちらを見ると例のごとく、ヒロインが黒いオーラをまとって睨んでいた。瑛子は
「ご飯食べるなら大勢が良いよね。丹家さんもどお?」
と、誘ってみた。すると、丹家栞菜は
「えっ? いいんですか? でも~なんか悪い気がしますぅ」
と言った。催馬楽学が間髪入れずに
「そうだな、君は遠慮してほしい」
と言って、瑛子の方を見ると
「じゃあ、行こう」
と言った。ヒロインは神成緑の方を見て、助けを求めるような顔をしたが
「悪いけど、そう言うことだから」
と言った。瑛子は、二人ともなんでこんなにヒロインに冷たいんだろう? と、思いつつ教室を後にした。神成緑が
「瑛子は目立つの嫌なんだよね? 静かな場所を知ってるから、そこに行こう」
と言った。そこは使用していない机や物が置いてある教室で、倉庫のような場所だったが、ご飯を食べるスペースは十分にあった。神成緑は
「代表者挨拶を考える時に、このスペースを提供されたんだけど、勉強する時にも使っていいって許可はあるから大丈夫」
と言った。流石頭が良いと特だよね。と、思いながら座った。
食卓で、父、勝に瑛子は
「お父さん、明日の朝ごはん早めにお願い」
と言った。家を早めに出るためだった。早めに出れば、神成緑と鉢合わせにならないと思ったからだった。
神成緑には、最寄りの駅が知られてしまっている。用心することに越したことはない。
すると瑛子の母親の冴子も
「パパ、私も明日は早めにお願い。明日は早朝会議があるのよ」
と言った。勝は
「なんだ、我が家の女性陣はみんな忙しいな。それはかまわないが、そうそう瑛子、明日は弁当がいるか? いるならママの分と一緒に作るから、自分の弁当箱を台所に出しておきなさい」
と言った。瑛子は勝に生返事をすると、神成緑が昼休みに会えると言っていたのを思いだした。そして明日のお昼ご飯で接触してこないか少し不安になった。
次の日、勝に弁当を渡されると、想定よりも一時間は早い時間に家を出る。早く着いて予習でもするか。どうせ家だと絶対勉強しないし。と、思いながら、駅まで歩く。改札をくぐり、ホームに出ると
「おはよう、君のことだからこんなことじゃないかと思った」
と声をかけられる。声のする方を見ると、神成緑が立っていた。瑛子が驚いていると神成緑は
「君は早く家を出るのでは? と思っていたから、待ってて良かった」
と、爽やかに微笑むと
「驚かせてごめん。でも君と話がしたくて。なんとなく君が避けてるのはわかったし、強引だったことも認める。だけど、もう少し俺のことを知ってから避けてくれてもいいと思うんだ」
と言った。瑛子はなるほど、確かに。と思った。それでも強引が過ぎると思うが。だが、これから先、ずっと避け続けることはできないだろう。そう悟ったので
「では、お願いがあるんです」
と妥協案を出すことにした。神成緑は頷き
「内容にもよるけど」
と、言った。瑛子は頷き
「一緒に通学するのはかまいません。でも学校で神成君と親しくしていると、神成君は人気者なので、私の学生生活に色々と支障がでかねません。なので、校外でだけ仲良くさせていただきたいのです」
と言った。特にヒロイン。彼女からの風当たりが強い。昨日の彼女は、瘴気を放っていたり、変な忠告をしてきたりした。
それに、今はモブの私と一緒にいても、これからヒロインとの接点ができ、彼女と仲良くなったら、神成緑は私と一緒にいる機会が減るだろう。そうなった時に、周囲からひそひそされるのも避けたい。神成緑はよくも悪くも目立つのだ。すると神成緑は
「わかった、もしも俺と君の仲をやっかむ奴がいたら、そいつらから君を守れば問題ないよね」
と、言った。瑛子はいや、だからそうじゃない、なんでそうなるんだってばよ? 日本語がお留守です。と思いながら、学校内では関わりをもたないようにして欲しい、とハッキリ言おうとしたところで、電車がきてしまった。話を中断し、電車に乗り込む。
車内が混雑しているので、かなり神成緑と密着することになった。
「瑛子、危ないから俺につかまっていいよ」
と神成緑に言われ、最初は遠慮していたが、逆に電車が動く度に神成緑に身体が押し付けられてしまうため、諦めて神成緑のシャツを掴み
「よろしくお願いします」
と呟いた。神成緑は
「うん、不本意そうだね。次の駅までの我慢」
と微笑んで言った。神成緑と、距離を取ろうと思っているのに、なんでこうなっちゃったんだろう。もうお家に帰りたい。と、思いながら数分間、身体を神成緑に預ける形になった。
星春駅に着くと、ホームに出て足早に改札に向かいながら瑛子は
「本当にごめんなさい、失礼しました」
と、心から謝った。あんなに身体を密着させては、神成緑はさぞ不快であっただろう。神成緑は
「なんで? そんなことないよ」
と、恥ずかしそうに言って目を反らせた。神成緑は、お世辞をさらりと言う人間だ。口ではなんと言おうと、どんな反応をしてようと、本心はわからない。
そもそも、こんなに私に近付いてきているのにも、何かしら目的があるのだろう。と、瑛子はこの時考えた。それだと昨日からの、神成緑の謎の行動理由に納得がいった。
改札を出てしばらく行ったところで、神成緑が
「スマホ、今なら持ってるよね」
といい、その場で連絡先の交換をした。神成緑は
「今朝、君を捕まえるの大変だったから、これで明日からは大丈夫だね」
と、微笑んだ。瑛子は、確かに、なんの約束もなく待たれるよりはましかも。と思いながら高校へ向かった。
校門の前に着くと、瑛子は
「では、また帰りに会いましょう」
と言ったが、神成緑は
「いや、俺、瑛子のこと守るって言ったよね。心配しなくて大丈夫だから、行こう」
と、歩き出した。瑛子は完全に開き直ることにした。
「わかりました、しっかり守ってね」
と言って微笑むと、神成緑の隣に並んで歩き始めた。神成緑は
「え? あ、うん」
と、少し戸惑った様子になった。瑛子は可愛いな、と思った。下駄箱で上履きに履き替え、廊下を歩きだしたところで神成緑が
「ところで瑛子はなんで敬語なの?」
と瑛子に訊いた。正直なところ、敬語だと自然と距離がとれるし、ボロも出にくいからなのだが
「前からなので、敬語の方が話しやすいんです」
と、瑛子は答えた。神成緑は
「ふーん。てっきり、他人と距離をとるためなんだと思ってた」
と言った。瑛子は本当にこの子鋭いわ、と思いつつもそれを顔に出さず
「他人行儀に聞こえちゃいますかね? 気を付けますね」
と笑顔を返した。教室の前に着くと
「じゃあ、あとで」
と、神成緑と別れ教室に入り自分の席に着いた。せっかくなので予習をしておこうと、教科書を取り出していると
「おはよう」
と声をかけられる。見ると催馬楽学だった。瑛子も笑顔で挨拶を返すと、催馬楽学が
「昨日は帰るのが遅かったのか?」
と、訊いてきた。瑛子は頷き
「先生に質問してたら、遅くなっちゃったんです」
と答えた。催馬楽学は
「勉強することも大切かもしれないけれど、遅くなると危ないから、気を付けないと」
と言った。基本この子心配症なんだわ、と瑛子は思いながら
「気にかけてくれて、ありがとうございます」
と、頭を下げた。その後少しだけ予習をすると、チャイムが鳴り授業が始まった。
授業内容は、初日だと言うこともあり、各教科の先生に自己紹介をさせられ、本格的な授業といった感じではなく、あっという間にお昼になった。
昼休みになると、神成緑が
「瑛子、昼飯行こう」
と誘いにきた。瑛子が頷くと、催馬楽学が
「僕も一緒にいいだろうか?」
と言ってきた。瑛子は別にかまわなかったが、神成緑に一応確認を取る。神成緑は
「別にかまわないよ」
と言った。その時、視線を感じそちらを見ると例のごとく、ヒロインが黒いオーラをまとって睨んでいた。瑛子は
「ご飯食べるなら大勢が良いよね。丹家さんもどお?」
と、誘ってみた。すると、丹家栞菜は
「えっ? いいんですか? でも~なんか悪い気がしますぅ」
と言った。催馬楽学が間髪入れずに
「そうだな、君は遠慮してほしい」
と言って、瑛子の方を見ると
「じゃあ、行こう」
と言った。ヒロインは神成緑の方を見て、助けを求めるような顔をしたが
「悪いけど、そう言うことだから」
と言った。瑛子は、二人ともなんでこんなにヒロインに冷たいんだろう? と、思いつつ教室を後にした。神成緑が
「瑛子は目立つの嫌なんだよね? 静かな場所を知ってるから、そこに行こう」
と言った。そこは使用していない机や物が置いてある教室で、倉庫のような場所だったが、ご飯を食べるスペースは十分にあった。神成緑は
「代表者挨拶を考える時に、このスペースを提供されたんだけど、勉強する時にも使っていいって許可はあるから大丈夫」
と言った。流石頭が良いと特だよね。と、思いながら座った。
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