27 / 27
卒業式のあとに
しおりを挟む
卒業式の日、家に帰り自室で高校生活の三年間を思い出してまったりしていた。すると、家のインターホンが鳴った。瑛子は回覧板かな? と、思っていると、下から勝が
「瑛子! お前の彼氏来てるぞー!」
と叫んだ。瑛子は
「お父さん、その言い方やめて! 恥ずかしい!」
と言いながら慌てて室内着から着替えて、玄関に向かうと勝は
「今日卒業式だったんだから、いいじゃないか」
と笑った。玄関には芦谷先生が立っており、苦笑いをしていた。瑛子は
「先生、父がすみません」
と言うと、芦谷先生は
「いや、照れ臭いが、堂々とそう呼ばれるのは嫌じゃない」
と言った。瑛子は顔を赤くして
「あ、あの、先生がそれでいいなら……」
と消え入りそうな声で言った。勝は
「そう言うことで、これからは瑛子の彼氏って呼びます!」
と嬉しそうに微笑んだ。瑛子はハッとして
「それより、先生は今日はどうしたんですか?」
と芦谷先生に訊くと、芦谷先生は
「少し時間があるか?」
と瑛子に訊いた。瑛子が頷くと勝が
「じゃあ瑛子を宜しくお願いします」
と頭を下げた。芦谷先生は
「お父さん、今日は瑛子さんを少しお借りします」
と言った。瑛子はそんな勝と芦谷先生の顔を交互に見た。そして、なんか知らないうちに先生とお父さんて仲良しになった? と少し困惑していると、そんな瑛子に芦谷先生は手を差しのべ
「さぁ、行こう」
と言った。瑛子は
「あっ、は、はい」
と慌ててその手を取った。そしててを引かれるままに、外に停めてある芦谷先生の車に乗った。瑛子は
「先生、どこに行くんですか?」
と訊くと、芦谷先生は
「少しドライブをしよう」
と言った。瑛子は卒業式だったので、そのお祝いなのかな? と思いつつ
「先生となら、私はどこでも楽しいです。そういえば今日は私の卒業式でしたし、先生も私も色々なことから解放されたので、我慢しないで好きなところに行けるし、好きなことできますね」
と言って笑った。芦谷先生は微笑むと
「そうだな、もう我慢しなくてもいいんだな」
と、微笑んだ。瑛子はしばらく車窓を見ながら、芦谷先生と付き合っていてもデートもままならず、近場は学校の生徒がいる恐れもあって、人気のない場所をドライブするしかなかったのを思い出していた。
今日はどこに行くのだろう? と思っていると、とあるビルの駐車場に入った。芦谷先生はそこに車を駐車すると、
「ちょっと待て」
と言い、車を降りて助手席側にまわって来ると、助手席のドアを開け手を差しのべ
「さぁ、行こう」
と瑛子に笑顔を向けた。瑛子は戸惑いながらもその手を取り車を降りた。そのまま手を繋ぎ、芦谷先生に連れていかれるまま歩いた。そしてはたと思いつき
「先生、もしかしてご飯食べに行きますか?」
と訊いた。芦谷先生は
「上手くいけば、そうだな」
と頷いた。瑛子は、上手くいけば? ってなんだろう? と思いつつ
「すみません。父に夕食いらないって言ってないので、電話させてください」
と言うと、芦谷先生は瑛子を見て微笑み
「大丈夫だ、お父さんには言ってある」
と言った。いつの間に、お父さんにそんなことを話してたんだ。流石先生、そう言う根回し早いなぁ。てか、やっぱりどこかでディナーなんだ。なんか、ちょっと嬉しいな。と思いながら芦谷先生について行った。
エレベーターに乗り、芦谷先生は最上階のボタンを押した。瑛子は自分の服装は大丈夫だろうか? と若干心配になった。
エレベーターを出ると、芦谷先生は係の人に名前を告げる。そしてお店の奥に案内される。係の人が
「こちらです、どうぞお入り下さい」
と二枚扉の部屋の前で言うので、もしかして個室予約してくれたの? と、驚きながら部屋に入る。するとそこはレストランではなく、小さな教会だった。周囲はガラス張りになっており、天空の教会と言った感じだった。瑛子は驚いて
「先生?」
と言うと、芦谷先生は微笑みながら、教会の一番奥まで瑛子の手を引いて歩いて行き、振り向くと
「瑛子、お前は今日、高校を卒業した。もう私の生徒ではないし、私もお前の先生ではない」
と言った。瑛子は無言で頷く。芦谷先生は困ったように微笑むと
「お前が在学中から、ずっとお前を私に縛り付けることばかり考えてた。これを言うのは、大学卒業まで待とうかとも思ったが、これ以上は待てない」
と言うと、スッと跪き背広の胸ポケットからリングケースを出すと、開いて見せて
「瑛子、結婚して欲しい。これから一生かけて側にいてお前を守りたい」
と言った。感動で涙をこぼしながら、震える手でリングケースを受けとると
「はい」
と言った。芦谷先生は立ち上がると瑛子を強く抱き締め
「ありがとう」
と言い、少し体を離すと
「お前はまだ、大学がある。だから結婚は急いでいない。だがその指には婚約指輪をはめておいて欲しい」
と手を取り婚約指輪をはめた。瑛子は無言で頷き
「護さん、ありがとうございます」
と言うと、芦谷先生は一瞬目を見開いて驚き
「うん、護さんか。名前で呼ばれると嬉しいものだな」
と照れ笑いをした。そして手を引いてそこに用意してある席に瑛子を座らせ
「特別な夜を楽しもう」
と微笑むと、振り向きウェイターに目で合図をした。そして、料理が運ばれて瑛子はそこで最高のディナーを楽しんだ。食事が終わると、芦谷先生は
「ここより夜景が良く見える部屋があるらしい。そこに行こう」
と、言った。瑛子は、もう頭が沸騰しそう、こんなに幸せで良いのだろうか? と、思いながら
「夜景、見たいです!」
と言うと、芦谷先生は手を引いて隣の部屋に続く扉を開け
「こっちだ、入って」
といった。瑛子がその部屋に入ると、そこは一面ガラス張りの部屋で、証明が落としてあり夜景が一望できた。部屋の片隅にはロウソクだけが灯り、優しい光を放っている。その部屋に入り窓際に行くとぐるりと見渡し
「凄い、素敵ですね!」
と芦谷先生を振り返る。すると直ぐ後ろに芦谷先生が立っていた。驚いていると、芦谷先生はそのまま瑛子に近づきながら窓際に瑛子を追い詰めた。そして瑛子を囲うように両手の肘を窓につくと、鼻先に顔を近づけて
「瑛子、お前は私のものだ。もう逃がしてやれない」
と言った。瑛子はどきどきしながらも、逃げるわけなんてないと思い、逃げませんと言おうとして口を開く。その言葉を発する前に、芦谷先生に口をふさがれた。瑛子は芦谷先生のシャツをギュッとつかむ。芦谷先生は少し唇を離すと、瑛子の瞳をじっと見つめ、角度を変えて更に深く貪るようにキスをした。瑛子はしばらく芦谷先生のされるがままに、口腔内を貪られていた。やっと解放されると、顔を赤くしてうつむきながら
「ファーストキスでした」
と呟くように言った。芦谷先生は微笑み瑛子の頬を撫でなから
「そうか、これからはお前の初めてを全部、私がもらっていいか?」
と訊いた。無言で頷くと芦谷先生は
「ありがとう」
と瑛子の頭にキスをした。
こうして瑛子はこの日、忘れられない特別な夜を過ごした。
完
「瑛子! お前の彼氏来てるぞー!」
と叫んだ。瑛子は
「お父さん、その言い方やめて! 恥ずかしい!」
と言いながら慌てて室内着から着替えて、玄関に向かうと勝は
「今日卒業式だったんだから、いいじゃないか」
と笑った。玄関には芦谷先生が立っており、苦笑いをしていた。瑛子は
「先生、父がすみません」
と言うと、芦谷先生は
「いや、照れ臭いが、堂々とそう呼ばれるのは嫌じゃない」
と言った。瑛子は顔を赤くして
「あ、あの、先生がそれでいいなら……」
と消え入りそうな声で言った。勝は
「そう言うことで、これからは瑛子の彼氏って呼びます!」
と嬉しそうに微笑んだ。瑛子はハッとして
「それより、先生は今日はどうしたんですか?」
と芦谷先生に訊くと、芦谷先生は
「少し時間があるか?」
と瑛子に訊いた。瑛子が頷くと勝が
「じゃあ瑛子を宜しくお願いします」
と頭を下げた。芦谷先生は
「お父さん、今日は瑛子さんを少しお借りします」
と言った。瑛子はそんな勝と芦谷先生の顔を交互に見た。そして、なんか知らないうちに先生とお父さんて仲良しになった? と少し困惑していると、そんな瑛子に芦谷先生は手を差しのべ
「さぁ、行こう」
と言った。瑛子は
「あっ、は、はい」
と慌ててその手を取った。そしててを引かれるままに、外に停めてある芦谷先生の車に乗った。瑛子は
「先生、どこに行くんですか?」
と訊くと、芦谷先生は
「少しドライブをしよう」
と言った。瑛子は卒業式だったので、そのお祝いなのかな? と思いつつ
「先生となら、私はどこでも楽しいです。そういえば今日は私の卒業式でしたし、先生も私も色々なことから解放されたので、我慢しないで好きなところに行けるし、好きなことできますね」
と言って笑った。芦谷先生は微笑むと
「そうだな、もう我慢しなくてもいいんだな」
と、微笑んだ。瑛子はしばらく車窓を見ながら、芦谷先生と付き合っていてもデートもままならず、近場は学校の生徒がいる恐れもあって、人気のない場所をドライブするしかなかったのを思い出していた。
今日はどこに行くのだろう? と思っていると、とあるビルの駐車場に入った。芦谷先生はそこに車を駐車すると、
「ちょっと待て」
と言い、車を降りて助手席側にまわって来ると、助手席のドアを開け手を差しのべ
「さぁ、行こう」
と瑛子に笑顔を向けた。瑛子は戸惑いながらもその手を取り車を降りた。そのまま手を繋ぎ、芦谷先生に連れていかれるまま歩いた。そしてはたと思いつき
「先生、もしかしてご飯食べに行きますか?」
と訊いた。芦谷先生は
「上手くいけば、そうだな」
と頷いた。瑛子は、上手くいけば? ってなんだろう? と思いつつ
「すみません。父に夕食いらないって言ってないので、電話させてください」
と言うと、芦谷先生は瑛子を見て微笑み
「大丈夫だ、お父さんには言ってある」
と言った。いつの間に、お父さんにそんなことを話してたんだ。流石先生、そう言う根回し早いなぁ。てか、やっぱりどこかでディナーなんだ。なんか、ちょっと嬉しいな。と思いながら芦谷先生について行った。
エレベーターに乗り、芦谷先生は最上階のボタンを押した。瑛子は自分の服装は大丈夫だろうか? と若干心配になった。
エレベーターを出ると、芦谷先生は係の人に名前を告げる。そしてお店の奥に案内される。係の人が
「こちらです、どうぞお入り下さい」
と二枚扉の部屋の前で言うので、もしかして個室予約してくれたの? と、驚きながら部屋に入る。するとそこはレストランではなく、小さな教会だった。周囲はガラス張りになっており、天空の教会と言った感じだった。瑛子は驚いて
「先生?」
と言うと、芦谷先生は微笑みながら、教会の一番奥まで瑛子の手を引いて歩いて行き、振り向くと
「瑛子、お前は今日、高校を卒業した。もう私の生徒ではないし、私もお前の先生ではない」
と言った。瑛子は無言で頷く。芦谷先生は困ったように微笑むと
「お前が在学中から、ずっとお前を私に縛り付けることばかり考えてた。これを言うのは、大学卒業まで待とうかとも思ったが、これ以上は待てない」
と言うと、スッと跪き背広の胸ポケットからリングケースを出すと、開いて見せて
「瑛子、結婚して欲しい。これから一生かけて側にいてお前を守りたい」
と言った。感動で涙をこぼしながら、震える手でリングケースを受けとると
「はい」
と言った。芦谷先生は立ち上がると瑛子を強く抱き締め
「ありがとう」
と言い、少し体を離すと
「お前はまだ、大学がある。だから結婚は急いでいない。だがその指には婚約指輪をはめておいて欲しい」
と手を取り婚約指輪をはめた。瑛子は無言で頷き
「護さん、ありがとうございます」
と言うと、芦谷先生は一瞬目を見開いて驚き
「うん、護さんか。名前で呼ばれると嬉しいものだな」
と照れ笑いをした。そして手を引いてそこに用意してある席に瑛子を座らせ
「特別な夜を楽しもう」
と微笑むと、振り向きウェイターに目で合図をした。そして、料理が運ばれて瑛子はそこで最高のディナーを楽しんだ。食事が終わると、芦谷先生は
「ここより夜景が良く見える部屋があるらしい。そこに行こう」
と、言った。瑛子は、もう頭が沸騰しそう、こんなに幸せで良いのだろうか? と、思いながら
「夜景、見たいです!」
と言うと、芦谷先生は手を引いて隣の部屋に続く扉を開け
「こっちだ、入って」
といった。瑛子がその部屋に入ると、そこは一面ガラス張りの部屋で、証明が落としてあり夜景が一望できた。部屋の片隅にはロウソクだけが灯り、優しい光を放っている。その部屋に入り窓際に行くとぐるりと見渡し
「凄い、素敵ですね!」
と芦谷先生を振り返る。すると直ぐ後ろに芦谷先生が立っていた。驚いていると、芦谷先生はそのまま瑛子に近づきながら窓際に瑛子を追い詰めた。そして瑛子を囲うように両手の肘を窓につくと、鼻先に顔を近づけて
「瑛子、お前は私のものだ。もう逃がしてやれない」
と言った。瑛子はどきどきしながらも、逃げるわけなんてないと思い、逃げませんと言おうとして口を開く。その言葉を発する前に、芦谷先生に口をふさがれた。瑛子は芦谷先生のシャツをギュッとつかむ。芦谷先生は少し唇を離すと、瑛子の瞳をじっと見つめ、角度を変えて更に深く貪るようにキスをした。瑛子はしばらく芦谷先生のされるがままに、口腔内を貪られていた。やっと解放されると、顔を赤くしてうつむきながら
「ファーストキスでした」
と呟くように言った。芦谷先生は微笑み瑛子の頬を撫でなから
「そうか、これからはお前の初めてを全部、私がもらっていいか?」
と訊いた。無言で頷くと芦谷先生は
「ありがとう」
と瑛子の頭にキスをした。
こうして瑛子はこの日、忘れられない特別な夜を過ごした。
完
応援ありがとうございます!
32
お気に入りに追加
562
この作品は感想を受け付けておりません。
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる