その日の空は蒼かった

龍槍 椀 

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果てしない道程

薬師リーナ

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 第一成人のお祝いの宴の夜。 



 神様と精霊様にお祈りを捧げたの。



 こんな私でも、祝ってくれる人たちがいる。 だから、この嬉しい気持ちを感謝に変えて、祝ってくれた人たち、領の人達、ううん、この国だけじゃなく、私を必要としてくれるすべての人達の役に立ちたいと、願ったの。

 満天の星空と、大きな月が出ていたわ。




「闇」の精霊、ノクターナル様の優しき息吹を感じたの……




 次の日からは、やる気満々だったの。 いつもの朝だけど作るお薬も、ポーションも、一生懸命作ったのよ。 ルーケルさんの操る馬車に乗って、往診に向かう間は、おばば様から頂いた魔方陣の解析をしてた。 込み入った重層魔方陣だから、とても難しいの。

 馬車に揺られながら、その魔方陣を解析していると、彼女が…… シュトカーナが手伝ってくれた。 折り合いをつけたのかしら? 心の中では、いろんな思いが渦巻いていると思うのだけど、これを完成させると、もしかしたらパエシア樹人族が蘇るかもしれないからかもしれない。

 彼らの聖地において、失われた彼らが、もう一度この世に帰って来る事が、出来るかもしれない…… そんな思いを抱いているんだと思うの。



 直接は聞かない。



 だって、それは、シュトカーナの大事な想い。 私に話すべき事なんかじゃ、ないんだものね。 でも、いつか、お話してくれたらいいな。 そうね、森の種ができた時にでも…… だから、わたしも頑張んなくちゃ!



^^^^^^



 往診は、色々な所を回ったわ。 港町ブルーザは勿論のこと、領都グレイスムーア、各町々、ペナンレースの街も行ったわ。 遠くはハンナさんのお姉さまが嫁がれた、デギンズ伯爵領とか、南方辺境領侯の領都、城塞都市セトロ=アレンティアにも足を延ばしたこともあったの。


 求められるのならば、何処にだって行くわ。 だって、私は「浜のおばば様」の弟子なんだもの。


 難しい症状も、おばば様の薫陶のおかげで、どうにか治癒できるようになってたし、何しろ病に苦しむ人たちを見て、見捨てることなんかできないんですもの。 


 寿命は…… 仕方ないの。 


 もう、その人の「生きていく気力」が、無くては、いくら効く薬を処方しても、それは一時のもの。 少しだけ時間を延ばすだけ。 でも、その方達のご家族とか、親密な関係の人達が、納得できる時間ならば、その時間を作り出すことは、必要なことだと思ったから。

 各地の教会に併設されている孤児院には積極的に回ったの。 だって、あそこには、幸薄い子供たちがいるんだもの。 王国の未来を担う子供たち。 ほんのわずかなお薬がなくて、命を落としてしまう危機に常にされされている子供たち。 手から零れ落ちるように、命の火を揺らすそんな子供たちに、手を差し伸べなるのは、精霊様とのお約束の一つだもの。

 だから、各地の教会に着いたら、まず保管庫に行って薬品類の確認と、在庫の数を見るの。 王都の教会だったら、ふんだんに有る回復薬やポーションなんかも、辺境の地の教会にはそれこそ、僅かしか持っていなかった。 寄進される喜捨は、日々の糧に変えられてしまう。 熱病も風邪もすべて体力勝負になってしまうの。

 だから、私は精霊様のお約束だからと理由を話し、各地の教会にお薬とポーションを喜捨している。 結構な量なんだよ? その量のお薬やポーションを作るのに、往診に回る際には森とかへ行って、薬草採取をしてたの。 

 まぁ、辺鄙なところに有る森だから、魔獣や魔物も出ることは出るのよ。 ルーケルさんに物凄くお世話になったわ。 私もできる限りの手段で、対応したの。 ほら、ブギットさんとイグバール様から頂いた魔法の杖があるでしょ。 あれ…… とっても使い勝手がいいのよ。

 貰ってすぐに、いろいろな初期魔法を符呪したの。



「火」属性の 【火球ファイアーボール】とか、

「水」属性の 【水球ウオーターボール】とか、

「土」と「木」属性の 【障壁ウオール】とか。


 そんな感じのモノね。 初級魔法だから、出来る人は出来るの。 魔法の杖に符呪したから、魔方陣を綴らなくても簡易詠唱だけで、魔法が発動できるから、とっさの場合にとても役にたったわ。 おかげで、薬草の採取の際も、困ったことなかったもの。




「リーナは、冒険者にでもなるつもりかい? こいつ等、狩るのは、冒険者ギルドでも結構高位の奴らだよ。 全く、お転婆なんだから」




 そう言ってね、ルーケルさん、屠った魔物を見ながら困った顔をされていたの。 で、でも、襲ってくるんだもの…… 山刀では対応できないじゃない! こ、怖いんだよ? ホントだよ? 眉毛が自然と下がっちゃうんだよ……




「リーナはまた、大量のお薬を教会に寄進するんだろ? そのための採取なんだろ? ……まぁ、精霊様がお守りくださるかもな。 リーナを気持ちを汲んで下さればね。 でも! 無茶は禁物だ! 俺がダメだといったら、オトナシク下がりなさい!」

「……はい、ルーケル様。 ありがとう……」




 なんて会話は何度もあった。 夢中で採取してて、ゴブリンの集団に見つかったこともあった。 ルーケルさんが蹴散らしてくれたけど、後で大目玉貰ったわ。 まぁ、わたしも矢継ぎ早に、いろんな魔法ぶっ放したんだけどね…… 




「そんな魔法を多用して、魔力が無くなって倒れたらどうするんだ!! 頼むから、云うことを聞いてくれないか? ほんとにもう!!」




 ってね。 魔力が枯渇なんて、ありえないわ…… 体内循環と純化は毎朝の必須なのよ? 出来るだけ多くの魔力を使わないと、ほんとに危ないんだから…… わたしの身体は……

 初級魔法の連発ぐらいでは目減りした感じしないもの…… でも、心配してくれてありがとうございます。 とても、とても、嬉しいわ。 困った顔をしながらも、微笑んでルーケルさんを見詰めて、感謝を捧げるの。 ごめんなさいね、こんなんで……

 往診に出ると、いつも心配して付いてきてくれるルーケルさん。 一緒に居てくれて、ありがとう!

 そうやって、三か月の日々が流れ云ったの…… 




 *******************************




 そして、その日が訪れたの……

 往診から帰った時、「百花繚乱」の前での騒ぎ。

 王国本領からの使者たち……


 前とは違って…………





 「 聖堂騎士団 」の連中が、やってきたんだ。





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