ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 4th episode

6

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 新宿、歌舞伎町。ホストクラブ“Hestia”は、夜の町の中ではそれほど目立つ店でもなく、写真で外装を見たことがなければなかなか気付かないような店だった。
 向いのArtemisとの差は、Hestiaは店をひとつ構えている点かもしれない。Artemisは、ホストクラブや飲み屋が何店舗か入っているビルの中にあるが、Hestiaは流石金の出所がデカいだけあって、ちゃんと店を構えている。

 よくよく見渡してみればそうした店は結構少ない。そう言う面では人目につきやすい店ではあった。
 飲食店ビルの2、3階。取り敢えず2階に行くと、店内はどちらかと言うと落ち着いた雰囲気だった。

「いらっしゃいませ」

 出てきた店のボーイは、丁寧に腰を折ってお辞儀をする。明るい茶髪の、少しなよっとした印象の青年だった。ちょっと顔が幼い。まだ10代なのだろうか。

「すみません、18時から面接で来ました。須和間すわまと申します」
「…あ、はい!ただいま店主をお呼びします…はい!」

 なんだか心ここに有らず感で凄く凝視されたが大丈夫だろうかあの子。熱でもあるのだろうか。なんかそんな感じだったけど。だが、走っていく姿を見ると元気そうだ。若いってすごい。

 少ししてから40代くらいの、髪が長めな、少し背の高い男が現れた。白いスーツをおしゃれな感じに着崩した、なんというかその世代特有の大人の色気を醸し出した擦れた目をしたその男は、擦れていながらどこか活気というかギラギラしていた。

 さすがは10位以内の売上を誇ったホストクラブの経営者だ。というか男の俺が見ても普通に男前だ。イケメン、ではなく男前。

 さっきのボーイが連れてきたのだが、その男、なんとなくボーイの腰に手を然り気無く置いているのが目につく。

えっ。あれ?

「面接の子だよね?」
「あ、あぁ、はい。
 申し遅れました…。すみません、須和間です」
「どうも、浅井あさいです」

あぁ、なるほど。
ベンジー似なんだ。納得。ジージャン着てグレッチ弾いてそうだわ。

「ま、どうぞこっちへ」

 促され、ついていく。ボーイの子が笑顔で小さく手を振っていた。
 「あぁ、店内見てみる?」と言われたので「あぁ、はい、是非」と返事をすると、
ざっくり2階の店内を一回り見せられた。

 ホストクラブと言うよりはバーのような雰囲気の店内。客層も、派手な感じではなく、いや、派手と言えば派手だがなんと言うか社長婦人とかが多そうな感じだ。いや、これはあくまで見た目でしかないけど。

 見ているとホスト達も、騒ぐ感じと言うよりは、話し相手と言うか、わきまえているというか。

「なんか、イメージ違う?」
「いや、まぁ、はい」

 そのまま3階のバックヤードに行き、その中にある小さい、パソコンとデスクだけがある個室みたいなところに案内される。

「ちょっと狭いけど、まぁ座って」
「はい、失礼します」

 俺は取り敢えず、その辺にあったパイプ椅子に座り、浅井と向かい合わせになる。
 浅井はデスクの引き出しから履歴書を取り出し、眺めた。

須和間すわま彗星すいせいくん。え、凄いね名前。書きにくくない?」

ネーミングセンスなっ!

「…書きにくいです」
「俺さ、こーゆー名前実はすっごい好きなんだよね。でもさ、こーゆーの今なんだっけ…」
「キラキラネームですか?」

 高田の野郎。殺す。
しかしどうやら、この世代にはウケるらしい。

「そうそれ。
 でもいいな彗星。俺これ好きだよ。ただ須和間彗星は書きにくいね」
「ははっ…お経みたいですよね」

本名もじっただけじゃねぇか。センスねぇし。あとで文句の電話を入れよう。

「君いいね。俺わりと気に入った。てか好みだわ」
「そうですか。それは光栄です」
「うちね、コンセプトはバー寄りなんだ。
 普通のホストクラブのイメージってなんかさ、うるさいじゃない?俺自分でも酒のむからさ、言うけど、自分が女で高い店来て、しかもまぁホストクラブって観点で来てあんだけうるさかったらちょっと内心嫌な気がするのよ。それで、バー寄りのところってか静かな、クオリティが高いところがあってもいいかなと思って始めたのよね、ここ」
「なるほど」

全然話が頭に入ってこねぇけど。

「だから、もし普通のホストクラブを求めるなら違うところ紹介するからそこに行って欲しいけど…。
俺は君にはここにいて欲しいかも。年齢も22だし、十代の子よりは落ちついてるよね、てか22?落ち着いてるねぇ…」

 浅井が怪訝な表情。自分も面食らった。
 高田マジ勘弁しろよ。
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