消えていく君のカケラと、進まない僕の時間

碧月あめり

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オールキャスト

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「今日みんなに集まってもらったのは、映画のストーリーと配役を決めたかったからなんだよね」

 スマホでデザリングしてタブレットをインターネットに繋ぐと、大晴がその画面をわたし達のほうに向ける。

「なんかさー、ネットで探したら、おれ達にもできそうな舞台用の台本とかいろいろあって……。そのなかで、おれがいいなって思ったやつがこれなんだけど。こういうのどう思う?」

 大晴が見せてきたのは、わたし達みたいな学生が文化祭で映画を作ったりするのに使えるような脚本とどこかの映画部が撮影した簡単なプロモーション動画。

 ストーリーの内容は、事故に遭って記憶を失くしたヒロインが、同じ事故で亡くなり幽霊になってしまった恋人と一ヶ月の期限付きで恋をするというもの。

 ラストでヒロインは、忘れてしまった恋人のことを思い出すのだけど、幽霊の彼はヒロインを残して消えてしまう。

 人気イケメン俳優と美人女優の共演で映画上映されそうな、感動系のせつないラブストーリーだ。

「いいけど……。大晴はほんとうにこの話を撮りたいの?」

 台本とプロモーション動画を見せられたあと、一番にそんな感想を口にしたのはわたしだった。

 正直な気持ちを言うと、この話はあまり大晴っぽくない。

 明るくて楽しいことが好きな大晴が選ぶのは、青春系だとしても、もっとコメディーっぽい要素があるものだと思ってた。

「いい話だけど……、あんまり兄貴っぽくはないよな」

 隣でタブレットを覗いていた涼晴も、わたしと同じ意見らしい。

「わたしはいいと思うよ。このプロモーション動画みたいにエモい画が撮れるのかなっていうのは気になるけど」

 わたしにほとんど無理やり連れてこられたあやめが、そう言って苦笑いする。

 わたしと涼晴とあやめ、三人の意見を聞いたあと、大晴がタブレットでもう一度プロモーション動画を再生し始めた。


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