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オールキャスト
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「で、配役なんだけど……」
撮影方法や撮影場所について考えてきたことをひととおり説明したあと、大晴がちらっとわたしのほうを見る。
「配役も大晴が決めるの?」
「そりゃそうだろ。おれ、監督兼カメラマンだから」
そんな大晴の言葉に、わたしは少しだけ嫌な予感がした。まさか、大晴の考えてきてる配役って……。
「事故で記憶を失くしたヒロイン役が陽咲で、幽霊の恋人役が蒼月な。藤澤さんはヒロインの友達役で、涼晴はヒロインの恋人の弟役をやってほしい」
大晴のキャスティングに、わたしは正直すごくとまどった。
みんなで映画を撮るのはいい。大晴が持ってきた台本にだって文句はない。だけど……。わたし自身が映画に出るということにまでは深く考えが及んでいなかった。
でも、そうか……。こんな少人数で映画を作るのだから、出演者だって限られてくる。
だとしても、ヒロインをやるのはちょっと荷が重い。しかも、蒼月と恋人役なんて……。
ただでさえ、わたしと蒼月との関係はイマイチだし。あたりまえだけど、演技だってしたことない。そんなふたりで恋人役を演じたって、ぎくしゃくするに決まってる。
蒼月はこのキャスティングをどう思ってるのだろう。こっそりと確かめると、蒼月は完全な無表情で大晴の話を聞いていた。
蒼月の性格からして、主役なんて断りそうなのに。黙って大晴のことを見ている蒼月は何を考えているのかまるでわからない。
「ちなみに、それぞれの役柄の名前なんだけど、台本では特に決められてなく、台本を使う人が自由に決められるようになってる。だから、みんなそれぞれの役を自分の名前のままでやってもらおうかなって思ってるから」
蒼月やみんなの様子をうかがっていると、大晴がにこにこしながらそう言った。
「え、ちょっと待って。本名をそのまま使うの?」
「そのつもり。そのほうが、ややこしくないだろ」
にこっと笑う大晴に、「いや、ややこしいよ!」と思わず突っ込む。
「なんで?」
「なんで、って……」
さらっと流し読みした台本では、ヒロインと幽霊になった恋人がお互いに「好き」という言葉を伝え合うシーンがあった。それを、わたしと蒼月が実名で演じるのはなんというか……。想像するだけで恥ずかしい。
撮影方法や撮影場所について考えてきたことをひととおり説明したあと、大晴がちらっとわたしのほうを見る。
「配役も大晴が決めるの?」
「そりゃそうだろ。おれ、監督兼カメラマンだから」
そんな大晴の言葉に、わたしは少しだけ嫌な予感がした。まさか、大晴の考えてきてる配役って……。
「事故で記憶を失くしたヒロイン役が陽咲で、幽霊の恋人役が蒼月な。藤澤さんはヒロインの友達役で、涼晴はヒロインの恋人の弟役をやってほしい」
大晴のキャスティングに、わたしは正直すごくとまどった。
みんなで映画を撮るのはいい。大晴が持ってきた台本にだって文句はない。だけど……。わたし自身が映画に出るということにまでは深く考えが及んでいなかった。
でも、そうか……。こんな少人数で映画を作るのだから、出演者だって限られてくる。
だとしても、ヒロインをやるのはちょっと荷が重い。しかも、蒼月と恋人役なんて……。
ただでさえ、わたしと蒼月との関係はイマイチだし。あたりまえだけど、演技だってしたことない。そんなふたりで恋人役を演じたって、ぎくしゃくするに決まってる。
蒼月はこのキャスティングをどう思ってるのだろう。こっそりと確かめると、蒼月は完全な無表情で大晴の話を聞いていた。
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「ちなみに、それぞれの役柄の名前なんだけど、台本では特に決められてなく、台本を使う人が自由に決められるようになってる。だから、みんなそれぞれの役を自分の名前のままでやってもらおうかなって思ってるから」
蒼月やみんなの様子をうかがっていると、大晴がにこにこしながらそう言った。
「え、ちょっと待って。本名をそのまま使うの?」
「そのつもり。そのほうが、ややこしくないだろ」
にこっと笑う大晴に、「いや、ややこしいよ!」と思わず突っ込む。
「なんで?」
「なんで、って……」
さらっと流し読みした台本では、ヒロインと幽霊になった恋人がお互いに「好き」という言葉を伝え合うシーンがあった。それを、わたしと蒼月が実名で演じるのはなんというか……。想像するだけで恥ずかしい。
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