季節はずれの桜の下で

碧月あめり

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3.逃げ出したい気持ち

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 バンッ――。

 校外学習の次の日。いつものように席に座ると、目の前で急に大きな音がした。

 机の上には、わたしよりもひとまわりくらい大きな手。その手が、思いきり机を叩きつけたのだ。

 びっくりして顔をあげると、大和くんが怖い顔でわたしを見下ろしている。

 超絶不機嫌そうな大和くんににらみつけられて、わたしはおもわず震え上がった。

 な、なに……?

 おそろしさに心臓がドコドコ鳴って、身体が硬直してしまう。膝の上で小さく震える手をぎゅっと握りしめた、そのとき。

「なんで来なかったんだよ。昨日の校外学習。休んだ理由、風邪じゃないよな?」

 大和くんが低い声で尋ねてきた。

 なんでバレてるんだろう。先生から聞いたのかな……。

 気まずくて目をそらすと、大和くんが「はあーっ」と深いため息を吐く。

「心桜がひとりで困んないように、せっかくおれが同じ班になってやったのに」

 大和くんは苦手だし、わたしをにらむ不機嫌な顔も怖い。だけど……。

 大和くんの上から目線な物言いに、わたしは少しムカッとする。

 同じ班になってやった? わたしが困らないように?

 わたしは、大和くんと同じ班だったから。だから、校外学習に行かなかったんだ。

 わたしの本音を大和くんに直接言うことはできない。だけど、自分が正しいって勝手に勘違いしている大和くんにモヤモヤした。

「鎌倉観光、すげー楽しかったよ。心桜も来ればよかったのに。参加しなかった心桜のために、いろいろ写真撮ってきたから、あとで見せてやるよ」

 無言でうつむくわたしに、大和くんがいろいろ言ってくる。

 どこがよかったとか、何がおいしかったとか。ごちゃごちゃうるさい。わたしは、そんなのどうでもいいのに。

「あとさ、心桜――」

 ひとりでたくさんしゃべったあと、大和くんが急に少しおとなしくなる。ちらっと見ると、大和くんはブレザーのポケットに手を入れて、なんだかそわそわし始めた。

 まだ、なにか言いたいことがあるのかな。でも、わたしはもうたくさん……。

 これ以上、大和くんの声を聞きたくないし、顔も見たくない。

 わたしがスッと立ち上がると、大和くんがちょっと驚いたようにまばたきをした。

「心桜……?」

 わたしの行動を不審げに見てくる大和くん。そんな彼から、ふいっと顔をそらすと席を離れた。

「あ、おい。どこ行くんだよ。もうすぐHR始まるぞ」

 教室を出て行こうとするわたしに、大和くんが声をかけてくる。わたしはその声を無視して、振り返らなかった。

 大和くんも、教室を出て行くわたしを追いかけてきたりはしない。
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