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2. 桜の木の下の出会い
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しおりを挟むどうしようかな。迷っていたら、男子たちの集団がサッカーボールを持って校庭に出てきた。
何人の生徒たちが桜の木の前を通過して行って、ドキッとしたけど、今のところ、安全のために作られた柵の内側に入り込んでいるわたしたちを気にする人は誰もいない。
でも……。
「……、柵の中に入ってることがバレたら、怒られるかな?」
かなり前のことだけど、安全柵の中にふざけてボールを蹴り込んだ生徒がいて。学校主任の先生が、全生徒に注意したことがあった。
桜の木が倒れて、生徒が大怪我するような事故が起きてはいけないからだ。
心配して立ちあがろうとするわたしをよそに、彼が「大丈夫、大丈夫」とのんきに笑う。
そんなこと言って……。
もし先生に見つかって怒られるようなことがあったら、わたしがなにか言いわけを考えないと……。
そう思ったら緊張して、急に胸がドキドキしてきた。
教室でクラスメートたちから注目されているときみたいに、肩に力が入って、本を持つ手がカタカタと震える。
きゅっと奥歯をかんでうつむくと、男の子がわたしの顔を横から覗きこむようにしてほほえみかけてきた。
距離が近い……。
ちょっとドキドキしていると、彼がメガネの奥の目をいたずらっぽく細める。
「心配しないで大丈夫。今のところまだ、きみにしか見つかってないんだ」
わたしにしか見つかってないってどういう意味?
彼がなにを言っているのか、よくわからない。
だけど彼の言うとおり、桜の木の下にわたしたちのことを注意しにくるおとなは誰もいなかった。
「ほらね、言ったでしょ」
昼休みが終わって校庭から人がいなくなると、男の子がブックカバーのついたコミック本を持って立ち上がった。それから、桜の回りを囲む柵を、来たときとは反対に、外側に向かってひょいっと飛び越える。
その瞬間、ざわりと風が吹いて、桜の木枝が揺れた。
わたしと男の子のあいだで、桜の花びらがひらひらと舞う。
散っていく桜の花びらを見ていたら、なぜだかわからないけれど、彼がそのままどこかに消えてしまうような気がした。
「もう、行くの?」
おもわず制服の背中に声をかけると、彼がゆっくりとふり返る。
「行くよ」
「あ、明日もまた来る?」
食い気味にたずねたら、彼がふっと笑った。
「たぶんね。明日来たら、また見つけてくれる?」
変な聞き方をするなと思いつつ、わたしは大きく首をたてに振った。
「……見つける!」
「ありがとう。じゃあね」
手を振って行ってしまおうとする彼。その背中を、わたしはまた呼び止めてしまう。
なぜか、理由もわからないけど、そうしないといけないような気がした。
「ま、待って。あなたの名前は?」
「桜介」
「桜介、先輩」
教えてもらった名前を小さく復唱すると、彼がふっと目を細めた。
「桜介でいいよ」
「桜介、くん……」
「うん。きみは?」
「こ、心桜……。夏目 心桜」
「心桜ちゃん……。また会えるといいね」
わたしの名前を呼んでふわっと笑うと、桜介くんは手を振って歩いて行った。
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