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2. 桜の木の下の出会い
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しおりを挟むわたしが笑うのをやめて真顔になると、
「今度はなに?」
と、彼が不審そうに見てきた。
「……いえ、なにも」
わたしが人前で話すのは苦手ってことを、初対面の彼に教える必要はない。余計なことを言って、気をつかわれるのもいやだし。
わたしは首を横に振った。
「それより、授業に出なくていいんですか? 三年生、ですよね?」
ハルちゃんが言ってたけど、三年生になったら、遅刻をしたり授業をサボる人が減るらしい。高校受験のために、内申点ってやつを少しでも稼がなきゃいけないからだ。
部活も引退して、修学旅行も終わって、そろそろ本格的に受験勉強に身を入れる三年生が多い時期。こんなところでのんびりしていていいのかな。
「心配してくれてありがとう。でも、おれはもう授業とかべつに気にしなくていいんだ。それに、ここは、ずっと昔からおれのお気に入りの場所だから」
心配するわたしに、彼がにこっと笑いかけてくる。
気にしなくていいてことは……。推薦とかで、もう進路が決まってるのかな。
彼が大丈夫と言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
疑問に思いつつ、頷く。
彼の言うとおり、ここは静かで落ち着けるから読書にはもってこいだし。
今は、季節を間違えて狂い咲いた桜も綺麗だ。
「きみも、好きなだけゆっくりしてから行けばいいよ」
「……ありがとうございます」
「おれに敬語とかいらないよ。お互いサボりに来てるのに、気を遣って疲れちゃったら意味ないでしょ」
わたしがうなずくと、彼が嬉しそうにふっと笑う。
それから特に話すことがなくなったのか、彼が手に持っていたマンガに視線を落とした。
彼がマンガを読み始めたので、わたしも小説を開いて読書モードに入る。
桜の木の下に座って、何度目かになるチャイムを聞き流したとき、少しお腹が空いてきた。
スマホを出して時間を確かめると、ちょうど四時間目が終わって昼休みに入るところだった。
すっかりくつろいじゃったな。お昼、どうしよう……。
本にしおりを挟んで閉じる。それから、隣を見ると、男の子のほうは、チャイムなど特に気にする様子もなくマンガのページをめくっていた。
「あ、の……。まだここにいる?」
おずおずとたずねると、彼が視線をあげた。
「あー、うん。きみはもう行く?」
「ぜったいに行かなきゃいけないってわけでもないけど……。お腹すかない? お昼ごはんは?」
「お昼ごはんか。きみはどうするの?」
「わたしは、お弁当持ってきてて……」
「そうなんだ。だったら、食べなよ」
「ここで?」
「うん。きみがよければ。もうちょっとマンガ読むから、おれのことは気にしないでいいよ」
彼はそんなふうに言うけど、ひとりで外でお弁当を広げるのもなんだか気が引ける。
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