季節はずれの桜の下で

碧月あめり

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4.居心地の良い場所

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「もしかして、心桜、なんか困ってる?」

 大和くんは、ときどき妙にするどい。

 わたしが微妙に視線をそらすと、大和くんはわたしから離れて、二つ隣のハルちゃんのクラスに走っていった。

「ハルー! ちょい、来て。心桜がなにかあったっぽい」

 大和くんが大きな声で呼ぶと、ハルちゃんが教室から出てきてくれた。

「心桜、どうしたの?」

 頼んでもないのに、大和くんはおせっかいだ。でも、どうすればいいかわからず困っていたから、ハルちゃんが来てくれてほっとする。

 わたしは制服のポケットからスマホを取り出すと、メモを開いて急いで文字を打った。

《体育着がなくなった。貸してくれる?》

 それを見たハルちゃんが眉を寄せた。

「貸すのは全然いいよ。でも……、上履きもなくなって、体育着もなくなったの?」

 同じ日に上履きも体育着もなくなるなんて――。

 ハルちゃんも、なにかおかしいと思ったみたい。

「もしまたなにかなくなることがあったら、すぐに教えて」

 ハルちゃんはそう言って、体育着を貸してくれる。おかげで、わたしは無事に体育の授業に出れそうだ。

 ハルちゃんを呼んでくれた大和くんにも、感謝しないといけない。大和くんは苦手だけど、彼が気付いてくれなかったら、わたしはあのまま途方に暮れていた。

 友達と廊下を歩いていた大和くんを追いかけて、トントンッと背中を叩く。

「ああ、心桜?」

 振り返った大和くんにペコリと頭を下げると、わたしは着替えのために更衣室へと急いだ。

 わたしが体育館横の更衣室で着替えて外に出ると、その横の女子トイレからみさとちゃんと綾香ちゃんが出てきた。
 
 クスクス笑いながらトイレから出てきたふたりは、わたしに気付くと「え?」と、少し驚いたような顔をする。

 だけどすぐに、わたしから目をそらして、ふたりで女子更衣室のほうに歩いて行った。

「体育、出るんじゃん」
「村沢さんに体育着借りたんだね」

 去っていくふたりの話が少し聞こえてきて、心臓がドクンと音をたてる。

 まさか……。

 悪い予感に駆られて女子トイレに飛び込んだわたしは、洗面台のそばのゴミ箱の中に放り込まれた体育着を見つけた。

 震える手でそれを拾うと、やっぱり……。わたしのものだった。

 体育着をとって捨てたのは、きっと、みさとちゃん達。上履きを隠したのも――?

 胸がざわざわして、身体が震える。

 今まで、話せないことで、クラスメート達から心ないことを言われることはあったけど、こんなふうにあからさまな嫌がらせをされたことはなかった。

 それなのに、どうしてみさとちゃん達は急にこんなこと……。

 トイレから出たわたしは、捨てられていた体育着を持ってしばらく茫然としていた。

 これ、どうしよう……。

 トイレのゴミ箱に捨てられていた体育着は、汚れてしまって少し臭い。

 とりあえず、更衣室に置いてくる……?

 でも、更衣室にはさっき入れ違いで入っていったみさとちゃん達がいる。
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