季節はずれの桜の下で

碧月あめり

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8.めぐり合わせと伝えたい想い

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「うちの学校、来年の春に創立五十周年なんだって。それで、全校生から『想いを伝える』ってテーマの作文を集めて、記念の文集を作るらしい。今日、国語の授業のときにうちのクラスでも作文書かされた」

 何を言われても大丈夫なように身構えていたわたしに、大和くんはそんな話をし始めた。

 いきなり、なんの話……?

 困惑していると、大和くんがわたしに白い封筒を差し出してきた。

「作文のテーマを言われたときに、おれが何か伝えたいって思った相手は心桜だった。授業中に一気に書いて、そのまま提出しようかと思ったんだけど……。提出用は別の内容で書き直した。やっぱり、これは心桜だけに読んでほしいと思って」

 わたしが封筒を見つめてぽかんとしていると、大和くんがズボンのポケットがら何かを取り出す。そうして、封筒といっしょに、それを強引にわたしの手に押し付けてきた。

「それ、ずっと渡しそびれてた校外学習のお土産……」

 大和くんに渡されたのは、小さな鈴がついたピンク色のお守りだ。

「あいつのこと……。心桜が友達だって言ってんのに、取り憑かれてるとかお祓いしろとか、嫌なこと言って悪かった……」

 ぼそっと謝ってきた大和くんにびっくりして顔をあげる。
 大和くんに初めて謝られた……、かも。

 じっと見つめると、大和くんがふいっと顔をそらす。

「そんな目で見んな……!」

 怒った声でいう大和くんは、たぶんちょっと照れている。


「そんなキツい言い方したら、また心桜に怖がられるよ~」

 ハルちゃんが呆れ顔でそう言われて、大和くんがハッとしたように口を押さえる。

 それからわたしが怯えていないのを確認すると、大和くんが真っ直ぐにわたしを見つめて言った。

「心桜、明日は学校来いよ。あいつはもういないかもしれないけど……、おれは心桜のこと待ってるから。教室で」

 いつもより真面目な大和くんの言葉に、いつになくドキッとする。

 無言のままなんの反応もできずにいると、大和くんが「じゃあな」と手を振って行ってしまった。

「ひとつだけ、大和のウラ話していい?」

 大和くんが帰ったあと、ハルちゃんがふふっと笑う。

「ん?」と首をかしげたわたしに、ハルちゃんがナイショ話するみたいに口元に手をあてた。

「いつも自信満々で、自分が世界の中心みたいな大和がさ、今日は朝からすっごい落ち込んでた。心桜に言われたことが、だいぶメンタルにきてたっぽい」

 そう、なんだ……。

 たしかに、あの大和くんが桜介くんのことで謝ってくるぐらいだもんね。わたしは、まだ少しびっくりしてる。

「伝え方はともかく……、大和も大和なりに心桜のこと気にかけてたんだと思う。だから、できたら手紙も読んであげなよ」

 ハルちゃんに言われて封筒に視線を落とすと、わたしは小さくうなずいた。

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