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超大規模依頼編
第二十七話 弱点さがし
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『お前……悪い癖ついてるな』
ガディは昔、師匠であるクーヴェルの元で世話になっていた頃、こう言われたことがある。
クーヴェルとの模擬的な戦闘の後に言われた。
悪い癖、というものがわからず、ガディは首を傾げる。
『どういう意味だ、師匠』
『避けすぎ』
『避けすぎって』
『大方私の動きを盗んだんだろーけどな。それ、やめな』
パタパタとクーヴェルの尻尾が上下に揺れる。
黒のしなやかな尻尾が、太陽に当たって煌めいていた。
『何でだ。エルルもやってるぞ』
『エルルはな、魔法を主に使うだろ。お前との共闘の時、相性を考えて剣にシフトチェンジすることもあるけどな……それに対して、お前は主に剣を使う。お前は魔法が大して上手くないからな』
痛いところを突かれた。
確かにガディの魔力量は異常なくらいあったし、その魔力を利用した魔法は使えるが、かなり大ぶり。はっきり言えば雑。
細やかな動きができるのは、唯一得意な水魔法くらいだった。
『お前は相手に突っ込んで行って、首を狩らなきゃならない。短剣使いなんて近接戦闘が専らだからな。そんなお前が避けてばかりじゃ、逃げ腰になる』
ふにゃあ、とクーヴェルが呑気に欠伸した。
和やかな様子とは裏腹に、開いた口から牙が所狭しと並んでいるのを見て、ガディはクーヴェルらしいなとぼんやり考えた。
『だからな、逃げるな。受け止めろ。無理だったら流す、もしくは捻り潰せ』
『無茶な……』
『無茶じゃない。とにかくその癖直せ。悪癖だぞ』
クーヴェルに注意され、ほんの少しだけガディは不機嫌になってしまった。
◆ ◆ ◆
(今となっては感謝してるぞ、師匠。おかげで丈夫に育ったもんだ。だがーー今日ばかりは、悪癖を使わせてもらう)
ガディがミヤに拳を振るわれるたびにすり抜けるため、ミヤに焦りと苛立ちが透けて見え始めた。
「ちょっこまかとっ……」
「はっ」
避けた瞬間、ガディがそのまま水で作った剣をミヤの腹部へと突き刺した。
「!?」
感触がおかしい。
人体に刺したようなはっきりとした手応えではなく、まるで空気を刺したようなもの。
「がああっ!」
「ぐぁっ」
ミヤに拳を振り落とされ、ガディの体が地面に食い込む。
避けることに徹している分、油断した隙を狙われるとダメージが大きい。
くらりと頭に眩暈が起こり、視界が赤に霞む。
どうやら額から出血したらしい。
血が目に入って痛い。
「ちょこざいな」
「お前こそ、何だよそのパワー。馬力だけはヨーク並だな」
(こいつ、本当に危険だ。当たったらかなりダメージが入る。だが……体にあっさり魔法が入りすぎる)
見た目に反したアンバランスさに、ガディは思考を巡らせる。
そして一つの解答を得た。
(試してみるか)
ガディは町の生垣に突っ込み、その生垣を利用して大木を作り、ミヤに向かって木々を伸ばす。
それをミヤは叩き落とすと、ガディに向かって走り寄ってきた。
ミヤがガディに殴りかかり、ガディは岩の盾を設置して体を横へ滑らせる。
岩の盾が砕け散ったところで、今度は木をスピードをつけてミヤへと放った。
それはミヤの体を貫いたかに思われたが。
「!!」
(融合してやがる)
ミヤの体に、木がそのまま吸い込まれた。
まるで亜空間に繋がっているようなその様を、ガディは不気味に感じてすぐさま木を引っ込める。
「らぁあ!」
ミヤの拳が、ガディの左肩に掠る。
間一髪で避けたものの、掠っただけの肩に鋭い痺れと痛みが走った。
その後もガディは回避を続けながらも、魔法を放てる限りの種類で放ち続けた。
そして突然撃つのをやめる。
「弾切れかね、ガディ!」
ミヤがそう叫ぶと、ガディは笑ってミヤを指差した。
「……お前、人間じゃないな」
「!」
「短剣を叩き割るだけの力はあったくせして、刺し心地は違和感を感じる。魔法で試してみたが、効くのはあらかた、水、土属性。んで、取り込んで回復するのは木、炎属性。その他はまずまずの効果。攻撃にシフトしている時は体が脆く、逆に防御に徹すれば体が硬い。体の材質が人間のそれじゃねえ。魔物か何かか?」
「……この短時間でそこまで気づくとは。誠に見事」
しみじみと感動したように言ってみせるも、ミヤの目つきが変わった。
余裕のない目だ。
「ただ、魔物とは失礼だな。魔物如きに例えられるなど、不愉快でしかない」
「じゃあお前ら何なんだよ」
「正体が露見するのは効率的ではない。自分で考えたまえ」
「そりゃそうか。まあ、どっちにしろ……何回か殺したら死ぬだろ」
短剣の代わりにした水の剣が再び現れ、ガディの手中に収まる。
ミヤも腰を低く落とし、構えた。
ーー先に動いたのは、ミヤのほうだった。
低い姿勢から一転し、ガディに走り寄ると、そのまま蹴りを食らわせる。
その蹴りを右に曲がることで避け、ガディは剣を叩き込もうとした。
そこでミヤの拳がガディの背に打ち込まれた。
ガディの体は吹っ飛ぶかと思われたが、その地にそのまま止まり続ける。
おかしい。ミヤほどの爆発力のあるパンチなら、いとも簡単にガディを吹き飛ばせるはずだ。
「!」
ここでミヤは、ガディの足に木の根が張り付いていることに気がついた。
地面に根付いた、強度の高い木の根だ。
「まさか」
「ちょっと考えたんだ」
ガディが攻撃されたことで血の絡まる喉を揺らして、「ふはは」と下手くそに笑った。
「こういう時、お前の体はどうなるかって」
ガディはミヤの腕を叩き斬ると、その傷口目がけて最大出力の水魔法を放った。
ジュウ! と音を立ててミヤの体は煙となる。
「くそ、不甲斐ない……」
「あばよ。今度こそ、その面見せるな」
ミヤはそのまま空中に溶けて消えていった。
ガディは昔、師匠であるクーヴェルの元で世話になっていた頃、こう言われたことがある。
クーヴェルとの模擬的な戦闘の後に言われた。
悪い癖、というものがわからず、ガディは首を傾げる。
『どういう意味だ、師匠』
『避けすぎ』
『避けすぎって』
『大方私の動きを盗んだんだろーけどな。それ、やめな』
パタパタとクーヴェルの尻尾が上下に揺れる。
黒のしなやかな尻尾が、太陽に当たって煌めいていた。
『何でだ。エルルもやってるぞ』
『エルルはな、魔法を主に使うだろ。お前との共闘の時、相性を考えて剣にシフトチェンジすることもあるけどな……それに対して、お前は主に剣を使う。お前は魔法が大して上手くないからな』
痛いところを突かれた。
確かにガディの魔力量は異常なくらいあったし、その魔力を利用した魔法は使えるが、かなり大ぶり。はっきり言えば雑。
細やかな動きができるのは、唯一得意な水魔法くらいだった。
『お前は相手に突っ込んで行って、首を狩らなきゃならない。短剣使いなんて近接戦闘が専らだからな。そんなお前が避けてばかりじゃ、逃げ腰になる』
ふにゃあ、とクーヴェルが呑気に欠伸した。
和やかな様子とは裏腹に、開いた口から牙が所狭しと並んでいるのを見て、ガディはクーヴェルらしいなとぼんやり考えた。
『だからな、逃げるな。受け止めろ。無理だったら流す、もしくは捻り潰せ』
『無茶な……』
『無茶じゃない。とにかくその癖直せ。悪癖だぞ』
クーヴェルに注意され、ほんの少しだけガディは不機嫌になってしまった。
◆ ◆ ◆
(今となっては感謝してるぞ、師匠。おかげで丈夫に育ったもんだ。だがーー今日ばかりは、悪癖を使わせてもらう)
ガディがミヤに拳を振るわれるたびにすり抜けるため、ミヤに焦りと苛立ちが透けて見え始めた。
「ちょっこまかとっ……」
「はっ」
避けた瞬間、ガディがそのまま水で作った剣をミヤの腹部へと突き刺した。
「!?」
感触がおかしい。
人体に刺したようなはっきりとした手応えではなく、まるで空気を刺したようなもの。
「がああっ!」
「ぐぁっ」
ミヤに拳を振り落とされ、ガディの体が地面に食い込む。
避けることに徹している分、油断した隙を狙われるとダメージが大きい。
くらりと頭に眩暈が起こり、視界が赤に霞む。
どうやら額から出血したらしい。
血が目に入って痛い。
「ちょこざいな」
「お前こそ、何だよそのパワー。馬力だけはヨーク並だな」
(こいつ、本当に危険だ。当たったらかなりダメージが入る。だが……体にあっさり魔法が入りすぎる)
見た目に反したアンバランスさに、ガディは思考を巡らせる。
そして一つの解答を得た。
(試してみるか)
ガディは町の生垣に突っ込み、その生垣を利用して大木を作り、ミヤに向かって木々を伸ばす。
それをミヤは叩き落とすと、ガディに向かって走り寄ってきた。
ミヤがガディに殴りかかり、ガディは岩の盾を設置して体を横へ滑らせる。
岩の盾が砕け散ったところで、今度は木をスピードをつけてミヤへと放った。
それはミヤの体を貫いたかに思われたが。
「!!」
(融合してやがる)
ミヤの体に、木がそのまま吸い込まれた。
まるで亜空間に繋がっているようなその様を、ガディは不気味に感じてすぐさま木を引っ込める。
「らぁあ!」
ミヤの拳が、ガディの左肩に掠る。
間一髪で避けたものの、掠っただけの肩に鋭い痺れと痛みが走った。
その後もガディは回避を続けながらも、魔法を放てる限りの種類で放ち続けた。
そして突然撃つのをやめる。
「弾切れかね、ガディ!」
ミヤがそう叫ぶと、ガディは笑ってミヤを指差した。
「……お前、人間じゃないな」
「!」
「短剣を叩き割るだけの力はあったくせして、刺し心地は違和感を感じる。魔法で試してみたが、効くのはあらかた、水、土属性。んで、取り込んで回復するのは木、炎属性。その他はまずまずの効果。攻撃にシフトしている時は体が脆く、逆に防御に徹すれば体が硬い。体の材質が人間のそれじゃねえ。魔物か何かか?」
「……この短時間でそこまで気づくとは。誠に見事」
しみじみと感動したように言ってみせるも、ミヤの目つきが変わった。
余裕のない目だ。
「ただ、魔物とは失礼だな。魔物如きに例えられるなど、不愉快でしかない」
「じゃあお前ら何なんだよ」
「正体が露見するのは効率的ではない。自分で考えたまえ」
「そりゃそうか。まあ、どっちにしろ……何回か殺したら死ぬだろ」
短剣の代わりにした水の剣が再び現れ、ガディの手中に収まる。
ミヤも腰を低く落とし、構えた。
ーー先に動いたのは、ミヤのほうだった。
低い姿勢から一転し、ガディに走り寄ると、そのまま蹴りを食らわせる。
その蹴りを右に曲がることで避け、ガディは剣を叩き込もうとした。
そこでミヤの拳がガディの背に打ち込まれた。
ガディの体は吹っ飛ぶかと思われたが、その地にそのまま止まり続ける。
おかしい。ミヤほどの爆発力のあるパンチなら、いとも簡単にガディを吹き飛ばせるはずだ。
「!」
ここでミヤは、ガディの足に木の根が張り付いていることに気がついた。
地面に根付いた、強度の高い木の根だ。
「まさか」
「ちょっと考えたんだ」
ガディが攻撃されたことで血の絡まる喉を揺らして、「ふはは」と下手くそに笑った。
「こういう時、お前の体はどうなるかって」
ガディはミヤの腕を叩き斬ると、その傷口目がけて最大出力の水魔法を放った。
ジュウ! と音を立ててミヤの体は煙となる。
「くそ、不甲斐ない……」
「あばよ。今度こそ、その面見せるな」
ミヤはそのまま空中に溶けて消えていった。
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