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Chapter 4
聖なる夜に初デートします ①
しおりを挟む今日は十二月二十四日、クリスマスイブの日だ。
ブシ◯ロンからサイズのお直しがあがり、婚約指輪を渡せるとの連絡があった。
イブには間に合ったけれど、わたしたちには関係ない。将吾さんは今日もお仕事だ。
わたしは下っ端の秘書だから詳しくは知らされていないが、アメリカ支社が抱えるトラブルはなんとか彼らのクリスマス休暇までにケリをつけようとがんばっているらしい。
といっても、彼にとってのクリスマスのメインは、十二月二十五日みたいだが……
彼はスウェーデン国籍の生粋のクリスチャンの母親を持ち、大学に入るまでのほとんどをアメリカなどの海外で過ごしていた。そして、KO大に内部進学したが、ニューヨーク学院から日本に戻ってきての入学である。
(ちなみに、それを知った同じ内部進学の裕太が、なぜか勝ち誇った顔をしたが、卒業後ケンブリッジで経営学修士を取得してるよと言うと、急に黙り込んだ)
だから、クリスマスの前日を最高潮にお祝いしている日本の「信者」たちの気が知れない、と言って憚らない。
今日はうちの両親もクリスマスディナーでお出かけだ。弟の裕太は案の定、昨日出かけて行ったきり帰ってこなかった。
予定がないのであれば一緒に、と両親に誘われたが、せっかくの「デート」を邪魔する気はない。
——そうだ。指輪を取りに行こう。
なんだか、京都へ行くみたいだが、都内の銀座である。一応、将吾さんにもL◯NEで伝えておこう。
【お仕事お疲れさまです。ブシ◯ロンから連絡があったので、これから取りに行きます】
——業務連絡みたいだなぁ。しかも、彼とLINEのIDを交換して以来、初めて送るんだけど……
毎日、会社で顔を合わせているから、別にL◯NEで連絡を取り合う必要もなかった。
「とりあえず……送信、っと」
わたしはスマホの画面をタップした。
将吾さんは今日、殺人的に忙しいはずだった。仕事中はPCとタブレットの二刀流で、とても私用の方のスマホには手が回らないのはよく知っている。返信なんて期待してなかった。
ところが、意外にも速攻でわたしのスマホが、♪ピンポン、と軽やかに鳴いた。
わたしはタップして、将吾さんとのトークを開いた。
【Stay. 】
——わたしは犬か。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
結局、クリスマスイブだというのに、だらだらと過ごしていたら、時刻は午後十一時を過ぎていた。お風呂も入ったし明日は仕事だし、そろそろ寝るか。
突然、スマホが鳴った。L◯NE通話でディスプレイには【富多 将吾】と出ている。
——普通、L◯NEのトークで都合を聞いてから通話するよね?それとも、なにかあったとか?
そう思いながら、画面をタップする。
「……どうしたの?」
と訊けば、
『……終わった』
憔悴した声が返ってきた。
「お疲れさま」
やっとアメリカ支社のトラブルが片付いたのだ。
『明日、行くからな』
——どこへ?
『仕事が終わったら、取りに行く』
——あ、ブシ◯ロン ね。月曜で平日だから、終業後ってことね。
「取ってきてくれるの?……あ、そうか、将吾さん、結婚指輪のサイズ測らなくちゃいけないもんね」
一瞬の沈黙のあと、
『……一緒に行くんだよ』
スマホの向こうから、地を這うような、低ぅーい声が聞こえた。
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