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卒業後
1289 星暦558年 橙の月 24日 保存(10)
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取り敢えず呪器はサンプルを幾つか入手できたので、ふらふらと街を歩きながら誰かの興味を引いた店を適当に覗き込み、最後に骨董品を扱う店へペグに案内させたところ、置いてある物は白黄色っぽい素材で作られた細工物っぽいのが多かった。
「象牙物が多いな。
全て本物ならば、中々凄い」
アレクが一つ手に取って細部を確認しながら言った。
「象の牙?
牙なのか、これ??」
片手ぐらいのサイズがある細工の箱なんてそれなりなサイズだが、これが牙??
どんだけ口が大きいんだ。
「南の方の大陸に生息しているという草食動物なんだが、腕ぐらいの長さがある牙が口から飛び出す感じに伸びている象と呼ばれる生き物の牙らしい。
まあ、大きな海生の生き物でもこのサイズの骨を得られるかもしれないが」
アレクが教えてくれた。
南の方の大陸ねぇ。
ザルガ共和国の向こうの南方諸島を超えた先に別の大陸があるという話をちらっと与太話として聞いたことがあったが、本当だったのか。
流石にアファル王国からでは遠すぎるから交易しようと考える人間はいないようだが。
東大陸ならば南に回って南方諸島沿いに東へ進み更にそこから北上してジルダスとかの香辛料を買い付けて戻って来るよりも、アファル王国から直接東に行く方が効率的だろうと商会や国が思っても不思議はないが、ザルガ共和国の更に南じゃあねぇ。
ザルガ共和国に補給で嫌がらせを受けたら命にかかわりかねないし、ザルガ共和国の商人がそこで入手したものを共和国で買う方が現実的だろう。
ゼリッタに流れているというのは、それだけここが広大な地域との交易で栄えているという事なのかな?
とは言え、さっき行った中古屋では象牙とやらは見かけなかったから、こういう高級店でしか手に入らない値段になるようだが。
「こういうのってやっぱ貴族や豪商が買うのか?
普通の石や寄席木細工の方が奇麗な気がするが」
ちょっと黄ばんだこの象牙とやらは、希少価値はあるだろうが見た目はそれ程いいとも思えないな。
しかも草食動物の牙って。
微妙に意味がないオマケじゃないか?
それともこの牙で襲ってくる肉食獣を串刺しにして反撃するのかね?
「石よりも加工しやすく、木よりも割れにくいから芸術的に綿密な細工などを刻むのに向いているんだ。
ある意味、職人の腕前と、それを注文する経済力を見せつけるのにこの上なく向いた素材と言えるかな」
アレクが説明してくれた。
なるほど~。
折角石や木で奇麗な何かを作っても、作っている最中にバキっと割れちゃったら困るし、そうでなくてもうっかり何かにぶつけたり、湿度が大きく動くと割れるのも困るよな。
加工性と丈夫さというのを兼ね持った素材と言うのは確かに重宝されそうだ。
しかも南の大陸にしか無ければ、希少性もこの上なく高くなるし。
「ここで買い付けていくか?」
小さな像だったら転移門で運ぶのにもそれほど苦にならないだろう。
「いや、シェフィート商会はこういう豪奢品はあまり扱わない方針だからね。
面白いけど必要はないな」
アレクが首を横に振った。
「うん、僕もちょっとこの彫刻は神経質すぎる感じで嫌かなぁ。
こっちの滑らかな曲線が奇麗な兎の像の方は中々可愛いけど」
シャルロが奥の方に置いてあった小さな白い兎の像を指しながら言った。
「だけど、そういう滑らかな曲線な像だったら石でも普通に出来るんじゃないか?
こっちの神経質なぐらい細かい模様こそが象牙の売りなんだろ?」
確かに俺もその兎の方が可愛いとは思うが、値段は可愛くないからなぁ。
こういうのって現物があったら、石で複製してくれってアスカに頼んだら出来るのかな?
あいつは土竜《ジャイアント・モール》なだけあって土とか石の扱いがずば抜けて上手い。
この兎の像を石でお手頃な値段で作れるならシェイラへのお土産に欲しいが、複製するためのサンプルとして買って帰るにはちょっと高い。
流石にそれを複写して何個もアスカに作って貰ってあちこちにばら撒き回るのはシェイラの不興を買いそうだし。
「だねぇ。
取り敢えず、ここの骨董品はちょっと趣味に合わないかな」
店の中を見回しながらシャルロが声を抑えて言った。
どうもこの象牙とやらがこの店の売りなのか、古い木製や石製の像や家具は殆どないんだよなぁ。
まあ、シェイラに見せるのにはありか?
ちょっと物によっては象牙に呪詛っぽい薄暗いもやが漂っていたり、血と思われる色の痕跡があったりするのが微妙なところだが。
「象牙物が多いな。
全て本物ならば、中々凄い」
アレクが一つ手に取って細部を確認しながら言った。
「象の牙?
牙なのか、これ??」
片手ぐらいのサイズがある細工の箱なんてそれなりなサイズだが、これが牙??
どんだけ口が大きいんだ。
「南の方の大陸に生息しているという草食動物なんだが、腕ぐらいの長さがある牙が口から飛び出す感じに伸びている象と呼ばれる生き物の牙らしい。
まあ、大きな海生の生き物でもこのサイズの骨を得られるかもしれないが」
アレクが教えてくれた。
南の方の大陸ねぇ。
ザルガ共和国の向こうの南方諸島を超えた先に別の大陸があるという話をちらっと与太話として聞いたことがあったが、本当だったのか。
流石にアファル王国からでは遠すぎるから交易しようと考える人間はいないようだが。
東大陸ならば南に回って南方諸島沿いに東へ進み更にそこから北上してジルダスとかの香辛料を買い付けて戻って来るよりも、アファル王国から直接東に行く方が効率的だろうと商会や国が思っても不思議はないが、ザルガ共和国の更に南じゃあねぇ。
ザルガ共和国に補給で嫌がらせを受けたら命にかかわりかねないし、ザルガ共和国の商人がそこで入手したものを共和国で買う方が現実的だろう。
ゼリッタに流れているというのは、それだけここが広大な地域との交易で栄えているという事なのかな?
とは言え、さっき行った中古屋では象牙とやらは見かけなかったから、こういう高級店でしか手に入らない値段になるようだが。
「こういうのってやっぱ貴族や豪商が買うのか?
普通の石や寄席木細工の方が奇麗な気がするが」
ちょっと黄ばんだこの象牙とやらは、希少価値はあるだろうが見た目はそれ程いいとも思えないな。
しかも草食動物の牙って。
微妙に意味がないオマケじゃないか?
それともこの牙で襲ってくる肉食獣を串刺しにして反撃するのかね?
「石よりも加工しやすく、木よりも割れにくいから芸術的に綿密な細工などを刻むのに向いているんだ。
ある意味、職人の腕前と、それを注文する経済力を見せつけるのにこの上なく向いた素材と言えるかな」
アレクが説明してくれた。
なるほど~。
折角石や木で奇麗な何かを作っても、作っている最中にバキっと割れちゃったら困るし、そうでなくてもうっかり何かにぶつけたり、湿度が大きく動くと割れるのも困るよな。
加工性と丈夫さというのを兼ね持った素材と言うのは確かに重宝されそうだ。
しかも南の大陸にしか無ければ、希少性もこの上なく高くなるし。
「ここで買い付けていくか?」
小さな像だったら転移門で運ぶのにもそれほど苦にならないだろう。
「いや、シェフィート商会はこういう豪奢品はあまり扱わない方針だからね。
面白いけど必要はないな」
アレクが首を横に振った。
「うん、僕もちょっとこの彫刻は神経質すぎる感じで嫌かなぁ。
こっちの滑らかな曲線が奇麗な兎の像の方は中々可愛いけど」
シャルロが奥の方に置いてあった小さな白い兎の像を指しながら言った。
「だけど、そういう滑らかな曲線な像だったら石でも普通に出来るんじゃないか?
こっちの神経質なぐらい細かい模様こそが象牙の売りなんだろ?」
確かに俺もその兎の方が可愛いとは思うが、値段は可愛くないからなぁ。
こういうのって現物があったら、石で複製してくれってアスカに頼んだら出来るのかな?
あいつは土竜《ジャイアント・モール》なだけあって土とか石の扱いがずば抜けて上手い。
この兎の像を石でお手頃な値段で作れるならシェイラへのお土産に欲しいが、複製するためのサンプルとして買って帰るにはちょっと高い。
流石にそれを複写して何個もアスカに作って貰ってあちこちにばら撒き回るのはシェイラの不興を買いそうだし。
「だねぇ。
取り敢えず、ここの骨董品はちょっと趣味に合わないかな」
店の中を見回しながらシャルロが声を抑えて言った。
どうもこの象牙とやらがこの店の売りなのか、古い木製や石製の像や家具は殆どないんだよなぁ。
まあ、シェイラに見せるのにはありか?
ちょっと物によっては象牙に呪詛っぽい薄暗いもやが漂っていたり、血と思われる色の痕跡があったりするのが微妙なところだが。
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