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卒業後
1301 星暦558年 橙の月 27日 保存(22)
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お茶を飲み終わり、工房の窓を開けて悪臭に備えてから昨日の晩に準備した箱を開ける。
最初の箱は、何もしていないやつ。
単に、今の気温でレバー肉と桃を一晩放置するとどうなるかの確認だ。
「あれ、意外と臭く無いね?
微妙っぽいし色が変な感じに茶ばんできてて食欲を刺激しない見た目になってるけど」
箱の中を覗き込んだシャルロが首を傾げながら言った。
「真夏ならまだしも、今だったら一晩で腐ったりカビが生えたりはしないんだな。
もっと数日放置する必要がありそうだ」
ちょっと微妙な顔をしながらアレクが言った。
綺麗好きなアレクとしては、腐りかけな肉を工房に数日間も置くのに嫌悪感を覚えるのだろう。
自分使っていない夜の間に放置して多少悪臭を放つ程度なら我慢できるが、研究開発で色々と試行錯誤の作業をしている横で箱の中で肉が腐っていると思うと嫌なんだろうなぁ。
まあ、俺も嫌だけど、俺は孤児院から逃げてすぐの頃は腐りかけた食料でも無いよりはマシと口にしたことがあるからなぁ。
もっとも、腐った肉は食べた後に腹が痛くなって死ぬかと怯えたから、あれ以来色がガッツリ変わった食材は食べないことにした。
生活費を稼ぐ為に腕を磨いたのは勿論だが、腹痛で動けなくなるよりは、屋台や店の食事をかっぱらって逃げる方が生存率は高いと言う結論に達したのだ。
売り物の食材を盗むガキは捕まれば袋叩きにされるが、捕まらなければなんとでもなるし、なんと言っても腹痛で動けなければ仕事だって出来ない。
それに俺は腹痛だけで済んだし、なんとか次の日には動けるようになったが、スラムでは変な物を食べて下痢になって結局死んだ奴らもいたのだ。自分だけは大丈夫と過信するのは愚かなことだろう。
それはさておき。
「取り敢えず、何もしなきゃちょっと色が変わる、と。
こっちのは……同じぐらい色が変わってるな?」
普通にちゃんと起動する呪器から瘴気《モヤ》が発生する魔術回路を取り除いたやつなんだが、効果が全然なしっぽい?
「こっちは色の変化が少ないみたい?」
シャルロが氷の解凍が少し遅れた呪器の改造版を覗き込みながら言った。
「こちらは……変色してるな。
と言うか、何もしては無い箱に入れたのよりも状態が悪くないか?」
完全に壊れているっぽかったのを色々弄って少なくとも起動している感じに魔力が通るようになった試作品の箱を覗き込みながらアレクが顔を顰めた。
「マジか~。
劣化を遅らせるんじゃ無くて進めるなんて、意味ね~!」
苦労したのに。
「発酵を促進するならチーズ作りや酒とかの醸造なんかに役立つかも?
まあ、醸造を急がせると味が悪くなりやすいとも聞くから、態々魔具を使うのに味の悪い急がせて作った粗悪品を製造する意味は無い気もするが」
アレクがちょっと首を傾げて提案しかけたが、途中で首を横に振って自分の言葉を否定した。
「早くしたら絶対に味が悪くなるとは限らないかもだが、俺らに食べ物の発酵を早くしつつも美味しくなんて言うのは無理だろうな。
どこかでチーズや酒を作っている工房にでも出会ったら試作品を渡して実験させてみるか?」
と言うか、実験して使える方法が分かっても、それを広く一般に広げて売るのは嫌がられそうだな。
魔具を使わなきゃいけない作り方なんて邪道だと思う職人が多そうだし、変に早いけど出費の嵩む方法なんぞ開発されたら迷惑だろう。
「じゃあ、結局氷の解凍が遅れたのだけが何故かちょっと効果がある感じ?
次は保存庫《フリッジ》よりも効果が高いかと、生き物に害がないかを確認しようか」
シャルロが提案した。
「そう言えば、瘴気《モヤ》があったらもっと効果が出るのかとか、瘴気《モヤ》がどのくらい濃かったら危険なのか、確認してみるか?」
フェンダイたちへの効果は中々画期的なレベルだったからなぁ。
あれを再現するのに、害がないレベルの微量な瘴気《モヤ》が必要って言うならちょっとぐらい瘴気が出ても良いかも?なんて思わないでもない。
『いやぁ、瘴気は体を壊すから、少量でも定期的には使わない方がいいよ~』
ヒョイっと横に清早が現れて言った。
「あ、そうなの?」
瘴気《モヤ》ってそこまで害があるのか?
フェンダイたちは別に体調に大きな問題は無かったようだが。
『俺たちにとって瘴気は許し難い相入れない力だからね。
精霊が離れるか、壊されるかになるから、手を出さない方がいいよ~』
清早が言った。
うわ、マジ?
もしかして清早の忠告を無視して瘴気を使う魔術回路を作って使っていたら、清早に見捨てられた?!?!
壊されるかって言うのは、見捨てる代わりに魔具を壊して回るつもりって事だよね?
取り敢えず。
瘴気には手を出さないでおこう。
最初の箱は、何もしていないやつ。
単に、今の気温でレバー肉と桃を一晩放置するとどうなるかの確認だ。
「あれ、意外と臭く無いね?
微妙っぽいし色が変な感じに茶ばんできてて食欲を刺激しない見た目になってるけど」
箱の中を覗き込んだシャルロが首を傾げながら言った。
「真夏ならまだしも、今だったら一晩で腐ったりカビが生えたりはしないんだな。
もっと数日放置する必要がありそうだ」
ちょっと微妙な顔をしながらアレクが言った。
綺麗好きなアレクとしては、腐りかけな肉を工房に数日間も置くのに嫌悪感を覚えるのだろう。
自分使っていない夜の間に放置して多少悪臭を放つ程度なら我慢できるが、研究開発で色々と試行錯誤の作業をしている横で箱の中で肉が腐っていると思うと嫌なんだろうなぁ。
まあ、俺も嫌だけど、俺は孤児院から逃げてすぐの頃は腐りかけた食料でも無いよりはマシと口にしたことがあるからなぁ。
もっとも、腐った肉は食べた後に腹が痛くなって死ぬかと怯えたから、あれ以来色がガッツリ変わった食材は食べないことにした。
生活費を稼ぐ為に腕を磨いたのは勿論だが、腹痛で動けなくなるよりは、屋台や店の食事をかっぱらって逃げる方が生存率は高いと言う結論に達したのだ。
売り物の食材を盗むガキは捕まれば袋叩きにされるが、捕まらなければなんとでもなるし、なんと言っても腹痛で動けなければ仕事だって出来ない。
それに俺は腹痛だけで済んだし、なんとか次の日には動けるようになったが、スラムでは変な物を食べて下痢になって結局死んだ奴らもいたのだ。自分だけは大丈夫と過信するのは愚かなことだろう。
それはさておき。
「取り敢えず、何もしなきゃちょっと色が変わる、と。
こっちのは……同じぐらい色が変わってるな?」
普通にちゃんと起動する呪器から瘴気《モヤ》が発生する魔術回路を取り除いたやつなんだが、効果が全然なしっぽい?
「こっちは色の変化が少ないみたい?」
シャルロが氷の解凍が少し遅れた呪器の改造版を覗き込みながら言った。
「こちらは……変色してるな。
と言うか、何もしては無い箱に入れたのよりも状態が悪くないか?」
完全に壊れているっぽかったのを色々弄って少なくとも起動している感じに魔力が通るようになった試作品の箱を覗き込みながらアレクが顔を顰めた。
「マジか~。
劣化を遅らせるんじゃ無くて進めるなんて、意味ね~!」
苦労したのに。
「発酵を促進するならチーズ作りや酒とかの醸造なんかに役立つかも?
まあ、醸造を急がせると味が悪くなりやすいとも聞くから、態々魔具を使うのに味の悪い急がせて作った粗悪品を製造する意味は無い気もするが」
アレクがちょっと首を傾げて提案しかけたが、途中で首を横に振って自分の言葉を否定した。
「早くしたら絶対に味が悪くなるとは限らないかもだが、俺らに食べ物の発酵を早くしつつも美味しくなんて言うのは無理だろうな。
どこかでチーズや酒を作っている工房にでも出会ったら試作品を渡して実験させてみるか?」
と言うか、実験して使える方法が分かっても、それを広く一般に広げて売るのは嫌がられそうだな。
魔具を使わなきゃいけない作り方なんて邪道だと思う職人が多そうだし、変に早いけど出費の嵩む方法なんぞ開発されたら迷惑だろう。
「じゃあ、結局氷の解凍が遅れたのだけが何故かちょっと効果がある感じ?
次は保存庫《フリッジ》よりも効果が高いかと、生き物に害がないかを確認しようか」
シャルロが提案した。
「そう言えば、瘴気《モヤ》があったらもっと効果が出るのかとか、瘴気《モヤ》がどのくらい濃かったら危険なのか、確認してみるか?」
フェンダイたちへの効果は中々画期的なレベルだったからなぁ。
あれを再現するのに、害がないレベルの微量な瘴気《モヤ》が必要って言うならちょっとぐらい瘴気が出ても良いかも?なんて思わないでもない。
『いやぁ、瘴気は体を壊すから、少量でも定期的には使わない方がいいよ~』
ヒョイっと横に清早が現れて言った。
「あ、そうなの?」
瘴気《モヤ》ってそこまで害があるのか?
フェンダイたちは別に体調に大きな問題は無かったようだが。
『俺たちにとって瘴気は許し難い相入れない力だからね。
精霊が離れるか、壊されるかになるから、手を出さない方がいいよ~』
清早が言った。
うわ、マジ?
もしかして清早の忠告を無視して瘴気を使う魔術回路を作って使っていたら、清早に見捨てられた?!?!
壊されるかって言うのは、見捨てる代わりに魔具を壊して回るつもりって事だよね?
取り敢えず。
瘴気には手を出さないでおこう。
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