シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
381 / 1,309
卒業後

379 星暦554年 藤の月 09日 旅立ち?(21)

しおりを挟む
「直径50メタ程度で少量の灌木、崖に大量の海鳥が巣を作っている、か」
航海士に発見した島の場所を割り出してもらいながら、島の様子を副長に説明したら、小さくため息をつかれた。

「海鳥の卵スープは中々美味しいのだが・・・取りに行く暇はないな。
下手に誰かが怪我をしたら人手が足りなくなるし。
水が無いとなったら他の船が寄る理由にもならないだろう。
まあ、ここら辺で船が難破した際に生存者が流れ着く可能性があるから、海図には足しておく価値があるが」
やはりあまり役に立たないらしい。
考えてみたら、次に探索に行く際には位置追跡装置に同期させた捨てても構わない魔石だけでなく、記録用魔道具も持って行くと良いかもだな。
口で説明するより、映像を見せる方が誤解が無いし簡単な気がする。

「それはともかく、ありがとう。
探索を始めた初日で島を見つけてくれるなんて、幸先が良い。
これからも頑張ってくれ」
そんなねぎらいの言葉を貰って俺たちは一旦船室に戻った。

「ちなみにさ。
清早が真水が湧く泉を創ることも可能だって言うんだ。
牛や山羊でも放牧させてそれを面倒を見て捌いて船に売りつける人間が住めるぐらいのサイズの島じゃないと真水が取れても無駄だし、そのサイズだったら泉がある可能性が高いと思うんだけど、この事ってあまり公にしない方が良いよな?」
清早が言ったことに関して、二人に相談する。

「大海の中にある小さな島で真水を湧かせるって・・・どうやって??」
アレクが思わずという風に聞き返してきた。

「真水を循環させる泉を作って、適当にそこら辺に居る水精霊を泉に留まるよう頼めば良いらしい。
まあ、その水精霊が面白がってそこに留まり続けるように、一生懸命作った物を定期的に捧げないとそのうち枯れるだろうって言っていたけど」

「あ~。
水精霊に捧げ物をしなければならないって時点で、清早なり蒼流なりに協力を求めたことがばれそうだねぇ。
まあ、僕たちの便利さが更に増えたところでそれ程問題にはならない可能性の方が高いけど、確かにあまり公にはしたくないね」
珍しくシャルロが真剣な顔で答えた。

流石に小さい頃から上級精霊に加護を与えられていただけあって、その便利さに群がってくる人間に対しては警戒するよう教え込まれているようだ。

「確かにある程度のサイズと生態系が無ければ中継地としても利用しにくいだろう。
生態系があると言うことは真水も何らかの形であるはずだから、せいぜい地下水を見つけて井戸を掘る程度で済むんじゃないか?
それだったらそこまで問題にならないと思う」
アレクが提案してきた。

確かにね。
「ちなみに、グルグルと当てもなく空滑機グライダーで飛び回らなくても、それなりの数の生き物が住んでいる島を探してくれって言うと、清早が場所を教えてくれたぜ。
だからこれからは探しに行く時も適当に場所を探しているように見せかけるように時間を潰す必要はあるが、後は位置追跡装置に同期させた魔石と映像記録用の魔道具を持って行けば良いと思う」

今後の探索についてついでに気が付いたことを伝える。
「なるほど。
そうなると、私がかなり役立たずになるなぁ」
アレクが頷きながらぼやいた。

「そんなこと無いよ。
今日も魚取りに手伝って貰ったし」
シャルロが慰めたので思い出した。

「そうだ、魚はどうだった?周りに遠慮せずに俺たちの食生活が改善出来る程度は捕れたか?」
流石に、俺たちの分だけ捕れたから俺たちだけ新鮮な魚を食べるという訳にはいかない。

少なくとも士官には行き渡るぐらい、出来れば平の船員も少しは食べられるぐらいは必要だ。
それなりの規模の船なので、そうなるとかなりの数が必要になる。

「うん、何とかね。
料理長に相談してどの位必要か聞いたんだけど、思っていたよりも多かったから引揚げるのが大変だった」
暢気に頷きながらシャルロが答えた。

「どうも料理長に一本捕られた気がするけどな。あれって絶対私達が考えていた必要最低限の数より多めに捕るよう誘導されたと思う」
アレクが何やら複雑そうな顔をして付け足した。

まあねぇ。
後から船員に礼を言われて知ったのだが、塩俺が出した3樽分の水も塩抜き以外の用途に大分流用されたようだしな。

どうも俺たち、かなり都合良く使われている気がする。

まあ、今晩の食事が美味しければ構わないが。


-------------------------------------------------------------------------


【後書き】
1メタ=約1メートルです。
そろそろちょっと良いように利用されちゃっている現実に気付いてきた3人組w
通し番号が重複している事に気がつきましたが...直すのが大変なので目を瞑ってください(汗)
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...