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卒業後
478 星暦554年 黄の月 20日 明朗会計は大切です(3)
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「それに、『毎月の生活費が払えた』程度の収入で税金が金貨10枚というのも多いね。
仕事のうちのかなりの部分は魔術院からの依頼をこなしての収入なのだろう?
だとしたらそちらは既に税金は控除された金額が払われたはずだから、その他の売上に支出を控除して差額に税率2割を掛けると考えると金貨10枚の税金なんて・・・元の売上が私達の年間収益よりも多くなりそうだ」
アレクが更に付け加えた。
うわぁ。
今まで帳簿とか納税のことは完全にアレクに任せていたけど、何か色々と複雑なんだな。
・・・俺の個人的な収入ってどうなんだろう?
別に誰にも申告していないし、当然税金も払っていないが。
イリスターナが頭を抱えた。
「何それ・・・。
一応、収入はノートに記録していたから、それを税務官に見せたら総額の2割を払えって言われたんだけど。
支出を引くなんて話、知らないわよ?」
アレクがため息をついた。
「商業ギルドに事業として登録しなかった方が良かったんじゃ無いか?
基本的に、魔術師が個人として報酬を得ている場合は魔術院の依頼だったら魔術院が納税をやってくれるから全く考える必要が無い。
それ以外の収入は年間1人当たり金貨100枚を超えたら2割の税金が掛るようになる。
事業として登録した場合は金貨100枚を超えていなくても収益に対する2割の納税義務が発生する代わりに、ちゃんと帳簿を付けて記録を残していれば費用を支出として控除できるから純利益に対しての2割だけ税金を払えば良くなるんだ。
魔術師として術を掛ける様な仕事が多いんだったら殆ど支出が無いから、事業として登録しない方が有利な事が多いんだぞ?」
お~。
そうなのか。
イリスターナがため息をついた。
「2人で事業を始めるって魔術院で言ったら、複数の人間でやるんだったら事業として登録してきっちり収入と支出の記録を取っておく方が長続きするって言われたから登録したんだけど・・・。
その商業ギルドの初心者用研修ってどうやったら受けられるの???」
アレクがマグを置いて立ち上がった。
「初心者研修より先に、まずはイリスターナ達の借入契約書と帳簿を確認しよう。
利子の支払の受け取りは貰ったのかい?」
イリスターナが頷いた。
「勿論よ。
あの野郎だったら絶対に領収書が無ければ『受け取ってない』って言って更に借金の金額を増やしそうだったもの!」
「じゃあ、まずそれを持って商業ギルドに行こう。
法定利息の上限を超えた利子を要求する借金は、よっぽど特殊な契約を商業ギルドを通して結んで居ない限り元本だけ返済すればいいことになっているんだ。
ただちゃんと商業ギルドで破棄の申請をしないと『当事者間の合意』と言うことになるから手続きをすることが必要だ。
それが終わったら取り敢えず初心者研修の申込をしておいて、その後にイリスターナ達の帳簿を確認して税金の金額を再計算して税務署に還付金を請求しないと」
アレクが上着を手に取りながら出口に向かった。
慌ててイリスターナが後を追う。
「そうなの?!
ありがとう」
2人が出て行った後に、俺とシャルロがどちらとも無く顔を合わせて緩く笑った。
「俺達もその初心者研修とやらを受けようか?」
「それが良さそうだね」
◆◆◆◆
結局、その晩帰ってきたアレクによると借金の消去だけで1日が潰れてしまったらしい。
なので明日、イリスターナ達の帳簿と納税額の確認をするそうだ。
「俺達も初心者研修を受けた方が良いかな~なんて思っているんだけど、どうやって申し込めば良いんだ?」
かなり商業ギルドの態度に機嫌を悪くしているアレクに俺が恐る恐る声を掛けた。
「・・・確かにそれは良い考えだね。
それだったらまず、明日は一緒に来てくれ。
イリスターナの帳簿と税金の再確認をしながら基本的な事を説明するつもりだから、ウィル達も話を聞いておく方が良いだろう。
しっかし・・・商業ギルドにとっては魔術師達があまり事業で成功しない方が有り難いというのは利益相反な状況だな。
事業の登録そのものを魔術院で纏めて扱って、今回のような半ば意図的と思われるような落とし穴への誘導がないようにした方が良いかもしれない」
グラスに残っていたワインを飲み干して、ふうっと深く息を吐いたアレクが答えた。
「・・・何だって商業ギルドは魔術師に成功して欲しくないんだ?」
まあ、家族に魔術師がいたら商会ギルドから監査を受けるという決まりを鑑みても、それなりに商業ギルドが魔術師という存在を警戒しているのは分かるが。
魔術師が個人で事業を始めるのは更にもっと有り難くないのか。
「商会の集まりである商業ギルドにとって、魔術師というのは個人として商会に雇われてくれるのが一番有り難いんだ。
事業主としてライバル的な存在になられたら色々面倒だから、事業を始めようとするような魔術師は失敗するように色々と仕向けているようだね。
今回の税務官の話だって、若い魔術師が独立したてでそこまで儲けていないのは容易に想像出来るはずなのに総額の2割を請求するなんて、違法行為では無いがかなり悪意がある行為だと私は思うぞ」
アレクが肩を竦めながら答えた。
「商業ギルドが税務官に鼻薬を嗅がせて態と若い魔術師が失敗するように意地悪く対応させていると言うの?」
シャルロが目を丸くして訪ねた。
「まあ、税務官だって沢山税金をふんだくれれば業績として評価されるからね。
商業ギルドはさりげなくそそのかしている程度かも知れない」
ほえ~。
怖いね!
「ちなみに、税金を払わなきゃいけないのを知らなくって後からばれたらどうなるんだ?
まだ今年の収入だから手遅れという訳じゃ無いけど、こないだの軍から受けた依頼の収入って金貨100枚を超えているんだが。
・・・と言うか、事業での収入と、俺個人の収入ってどうやって納税上は分けるんだ??」
イリスターナの話を聞いた時から気になっていたことを尋ねた。
「政府からの依頼というのは免税されているんだよ。
政府に対して何かを提供して支払を受けているのに、年末になったらそのうちの一部を返さなきゃいけないというのは非効率的だろう?
だから最初から政府からの依頼というのは免税分を考慮して民間の依頼よりも2割程度安いことが多い。
ウィルの場合は個人で受けている依頼で政府以外からの収入が金貨100枚を超えたら、申告して2割分の税金を払わないといけないね。
まあ、個人の働きというのはそうそう足が付かないから納税義務に気が付かなくってもばれない可能性は高いが・・・ばれた場合の罰金が払うべきだった税金の3倍と定められているので、それだけ儲けた場合は払った方が良いだろうね。
私が事業の納税をする際に一緒に連れて行っても良いから、必要になったら声を掛けてくれ。
まあ、初心者研修でそこら辺も説明されるはずだが」
アレクが説明してくれた。
へぇ~。
軍からの依頼って免税なのか。
・・・ちなみに、裏ギルドからの依頼だってありゃあ実質免税だよな??
裏ギルドが誰それに幾ら払ったなんて情報を政府に明かす訳はないのだから、そちらからの収入が税務官にばれるなんてことはあり得ないはずだ。
そうなると個人的にどっかの商会とかから受けた依頼程度だったら特に問題は無いな。
【後書き】
ちなみに、イリスターナが借金した時の担当者は若い感じの良い女性でした。
それでお金を借りたら、スケベジジイが『返済する代わりに妾になったらどうだ?』としゃしゃり出てきたw
仕事のうちのかなりの部分は魔術院からの依頼をこなしての収入なのだろう?
だとしたらそちらは既に税金は控除された金額が払われたはずだから、その他の売上に支出を控除して差額に税率2割を掛けると考えると金貨10枚の税金なんて・・・元の売上が私達の年間収益よりも多くなりそうだ」
アレクが更に付け加えた。
うわぁ。
今まで帳簿とか納税のことは完全にアレクに任せていたけど、何か色々と複雑なんだな。
・・・俺の個人的な収入ってどうなんだろう?
別に誰にも申告していないし、当然税金も払っていないが。
イリスターナが頭を抱えた。
「何それ・・・。
一応、収入はノートに記録していたから、それを税務官に見せたら総額の2割を払えって言われたんだけど。
支出を引くなんて話、知らないわよ?」
アレクがため息をついた。
「商業ギルドに事業として登録しなかった方が良かったんじゃ無いか?
基本的に、魔術師が個人として報酬を得ている場合は魔術院の依頼だったら魔術院が納税をやってくれるから全く考える必要が無い。
それ以外の収入は年間1人当たり金貨100枚を超えたら2割の税金が掛るようになる。
事業として登録した場合は金貨100枚を超えていなくても収益に対する2割の納税義務が発生する代わりに、ちゃんと帳簿を付けて記録を残していれば費用を支出として控除できるから純利益に対しての2割だけ税金を払えば良くなるんだ。
魔術師として術を掛ける様な仕事が多いんだったら殆ど支出が無いから、事業として登録しない方が有利な事が多いんだぞ?」
お~。
そうなのか。
イリスターナがため息をついた。
「2人で事業を始めるって魔術院で言ったら、複数の人間でやるんだったら事業として登録してきっちり収入と支出の記録を取っておく方が長続きするって言われたから登録したんだけど・・・。
その商業ギルドの初心者用研修ってどうやったら受けられるの???」
アレクがマグを置いて立ち上がった。
「初心者研修より先に、まずはイリスターナ達の借入契約書と帳簿を確認しよう。
利子の支払の受け取りは貰ったのかい?」
イリスターナが頷いた。
「勿論よ。
あの野郎だったら絶対に領収書が無ければ『受け取ってない』って言って更に借金の金額を増やしそうだったもの!」
「じゃあ、まずそれを持って商業ギルドに行こう。
法定利息の上限を超えた利子を要求する借金は、よっぽど特殊な契約を商業ギルドを通して結んで居ない限り元本だけ返済すればいいことになっているんだ。
ただちゃんと商業ギルドで破棄の申請をしないと『当事者間の合意』と言うことになるから手続きをすることが必要だ。
それが終わったら取り敢えず初心者研修の申込をしておいて、その後にイリスターナ達の帳簿を確認して税金の金額を再計算して税務署に還付金を請求しないと」
アレクが上着を手に取りながら出口に向かった。
慌ててイリスターナが後を追う。
「そうなの?!
ありがとう」
2人が出て行った後に、俺とシャルロがどちらとも無く顔を合わせて緩く笑った。
「俺達もその初心者研修とやらを受けようか?」
「それが良さそうだね」
◆◆◆◆
結局、その晩帰ってきたアレクによると借金の消去だけで1日が潰れてしまったらしい。
なので明日、イリスターナ達の帳簿と納税額の確認をするそうだ。
「俺達も初心者研修を受けた方が良いかな~なんて思っているんだけど、どうやって申し込めば良いんだ?」
かなり商業ギルドの態度に機嫌を悪くしているアレクに俺が恐る恐る声を掛けた。
「・・・確かにそれは良い考えだね。
それだったらまず、明日は一緒に来てくれ。
イリスターナの帳簿と税金の再確認をしながら基本的な事を説明するつもりだから、ウィル達も話を聞いておく方が良いだろう。
しっかし・・・商業ギルドにとっては魔術師達があまり事業で成功しない方が有り難いというのは利益相反な状況だな。
事業の登録そのものを魔術院で纏めて扱って、今回のような半ば意図的と思われるような落とし穴への誘導がないようにした方が良いかもしれない」
グラスに残っていたワインを飲み干して、ふうっと深く息を吐いたアレクが答えた。
「・・・何だって商業ギルドは魔術師に成功して欲しくないんだ?」
まあ、家族に魔術師がいたら商会ギルドから監査を受けるという決まりを鑑みても、それなりに商業ギルドが魔術師という存在を警戒しているのは分かるが。
魔術師が個人で事業を始めるのは更にもっと有り難くないのか。
「商会の集まりである商業ギルドにとって、魔術師というのは個人として商会に雇われてくれるのが一番有り難いんだ。
事業主としてライバル的な存在になられたら色々面倒だから、事業を始めようとするような魔術師は失敗するように色々と仕向けているようだね。
今回の税務官の話だって、若い魔術師が独立したてでそこまで儲けていないのは容易に想像出来るはずなのに総額の2割を請求するなんて、違法行為では無いがかなり悪意がある行為だと私は思うぞ」
アレクが肩を竦めながら答えた。
「商業ギルドが税務官に鼻薬を嗅がせて態と若い魔術師が失敗するように意地悪く対応させていると言うの?」
シャルロが目を丸くして訪ねた。
「まあ、税務官だって沢山税金をふんだくれれば業績として評価されるからね。
商業ギルドはさりげなくそそのかしている程度かも知れない」
ほえ~。
怖いね!
「ちなみに、税金を払わなきゃいけないのを知らなくって後からばれたらどうなるんだ?
まだ今年の収入だから手遅れという訳じゃ無いけど、こないだの軍から受けた依頼の収入って金貨100枚を超えているんだが。
・・・と言うか、事業での収入と、俺個人の収入ってどうやって納税上は分けるんだ??」
イリスターナの話を聞いた時から気になっていたことを尋ねた。
「政府からの依頼というのは免税されているんだよ。
政府に対して何かを提供して支払を受けているのに、年末になったらそのうちの一部を返さなきゃいけないというのは非効率的だろう?
だから最初から政府からの依頼というのは免税分を考慮して民間の依頼よりも2割程度安いことが多い。
ウィルの場合は個人で受けている依頼で政府以外からの収入が金貨100枚を超えたら、申告して2割分の税金を払わないといけないね。
まあ、個人の働きというのはそうそう足が付かないから納税義務に気が付かなくってもばれない可能性は高いが・・・ばれた場合の罰金が払うべきだった税金の3倍と定められているので、それだけ儲けた場合は払った方が良いだろうね。
私が事業の納税をする際に一緒に連れて行っても良いから、必要になったら声を掛けてくれ。
まあ、初心者研修でそこら辺も説明されるはずだが」
アレクが説明してくれた。
へぇ~。
軍からの依頼って免税なのか。
・・・ちなみに、裏ギルドからの依頼だってありゃあ実質免税だよな??
裏ギルドが誰それに幾ら払ったなんて情報を政府に明かす訳はないのだから、そちらからの収入が税務官にばれるなんてことはあり得ないはずだ。
そうなると個人的にどっかの商会とかから受けた依頼程度だったら特に問題は無いな。
【後書き】
ちなみに、イリスターナが借金した時の担当者は若い感じの良い女性でした。
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