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卒業後
487 星暦554年 橙の月 16日 明朗会計は大切です(12)
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ウドウ商会の本店の方の差し押さえが終わったので、次は会頭の邸宅へ。
国税局の役人がきびきびと動きながら次々と美術品や骨董品、銀食器の入った食器棚とかに差し押さえの札を貼らせていく。
俺とアレクはノンビリとその後に続いた。
「ちなみに、こういう差し押さえで脱税とかの証拠が見つかった場合って差し押さえの優先権はどうなるんだ?
さっきどうやら裏帳簿の一部を見つけちまったようだが、『資産の一部を国税局が没収するから魔術院の過払い金請求の一部は減額』なんてことも起きうるのか?」
気になったのでこっそりとアレクに聞いてみたところ、クスリと笑われた。
「大丈夫だよ。
国税局が緊急差し押さえに非常に協力的なのは、そういう裏帳簿とか不正の証拠を見つけられる可能性に期待してではあるんだが、以前に『国の債権の方が優先順位が高い』と主張して債務の一部減額をやっていたら差し押さえ要請者が国税局に頼むぐらいだったら債務者と直接交渉しようという流れになってしまってね。
今は差し押さえ要請者の債権が完全に保証されている。
だからまずは我々の過払い金要求の金額を全額返済した後に脱税とかの罰金を取ることになる。
ただし、あとから発生した過払い返済請求に対しては国税局より後回しになるから、アンディは今回の手続きが終了する前に請求額に抜けが無いかよ~く見直した方が良いだろうね」
おお~。
そうなのか。
だったら心置き無く国税局の役人に協力しよう。
そう思いながら歩いていたら、早速ちょっと隠された地下室への入り口が視えた。
立ち止まってちょっと心眼《サイト》を凝らしてみたところ、地下室には金庫もあるっぽい。
まあそうだよな。
普通に食料品とかの貯蔵用の地下室だったら入り口を隠す必要なんぞ無いだろう。
「こちらの地下室は調べないんですか?」
さりげなく入り口を隠していたラグを押しやり、役人の方に声を掛ける。
「おや。
私としたことが、見落としていたようだ」
振り返った役人が早速こちらに戻ってきた。
ウキウキとしている役人とは対照的に、ウドウ会頭の顔色が更に悪くなっていく。
下にはヤバい何かが隠されているんだろうなぁ。
降りてみたところ、どうやらこちらの地下室はヤバい帳簿を付ける仕事部屋だったらしい。
本棚にぎっしりと帳簿や書類が並んでいた。
お~お。
帳簿を手に取った役人の顔が笑顔満面という感じだ。
役人は早速部下に帳簿を調べるよう指示を出し、傍にあった金庫を開けさせて中の宝石や金貨に差し押さえの札を付けていた。
そしてまた上に戻り・・・会頭夫婦の寝室にあった金庫から宝石等を没収。
大体これでこの屋敷にある金目の物は抑えた感じかな?
が。
他の部屋も確認している役人をよそに、アンディが眉をひそめて考え込んでいた。
「どうした?」
「この資産リストによるともっと美術品があるはずなんだが・・・。
宝飾品にしても思っていたよりも少ない」
アンディに声を掛けたら、リストを見せられた。
資産リストのうち、差し押さえの札を貼られた物に印を付けてきてきたようだが、かなりの数の美術品や宝飾品がまだ残っているようだ。
「あ~。
ここら辺の美術品は盗品だろ?
流石に本邸には置かないだろう。
隠し部屋があるならまだしも、ここにはさっきの地下室以外には特に隠している部屋は無いみたいだからな。
こっちの愛人宅に置いてあるんじゃ無いか?」
幾つかある不動産のうち、愛人を住まわすのによく使われる地域にある比較的(大きな商会の会頭が持つにしては)こじんまりとした家を指さして指摘した。
「え??
盗品なのか???」
アンディが驚いたように声を上げた。
「なるほど。
どこかで聞いたことがある名称が多いと思ったら、盗品なのか」
納得がいった、と言う風に横に立っていたアレクが頷く。
リストでは盗品を先に纏めて列挙してある。
まあ、盗賊《シーフ》ギルドが会頭に依頼されて盗んだり、闇オークションを手配したブツなんだから確実に詳細が分かっているよなぁ。
その他の普通に正規の店から買ったらしき宝飾品などのリストも中々凄かったが。
「おお~。
素晴らしい、ちゃんと資産リストを入手してあるのか。
ちょっと見せてくれ」
いつの間にかアンディの後ろに立っていた役人が大きな笑みを浮かべながらリストを覗き込んだ。
「うひゃぁ」
アンディがちょっと情けない声をあげ、紙を渡した。
ははは。
どうやらウドウ会頭は身ぐるみ剥がれそうだな~。
脱税に対する加重税と過払い返金をした後にも少しは資産が残っていることを祈っておくよ。
【後書き】
一応、大々的に他の不動産から物を持ち出そうとたら分かるように魔術院は他の不動産にも見張りの人は派遣していますが、基本的に高い物は本店と本邸に集めてあるだろうと思っていたので特に他の場所に関しては国税局の役人とも話し合っていませんでした。
国税局の役人がきびきびと動きながら次々と美術品や骨董品、銀食器の入った食器棚とかに差し押さえの札を貼らせていく。
俺とアレクはノンビリとその後に続いた。
「ちなみに、こういう差し押さえで脱税とかの証拠が見つかった場合って差し押さえの優先権はどうなるんだ?
さっきどうやら裏帳簿の一部を見つけちまったようだが、『資産の一部を国税局が没収するから魔術院の過払い金請求の一部は減額』なんてことも起きうるのか?」
気になったのでこっそりとアレクに聞いてみたところ、クスリと笑われた。
「大丈夫だよ。
国税局が緊急差し押さえに非常に協力的なのは、そういう裏帳簿とか不正の証拠を見つけられる可能性に期待してではあるんだが、以前に『国の債権の方が優先順位が高い』と主張して債務の一部減額をやっていたら差し押さえ要請者が国税局に頼むぐらいだったら債務者と直接交渉しようという流れになってしまってね。
今は差し押さえ要請者の債権が完全に保証されている。
だからまずは我々の過払い金要求の金額を全額返済した後に脱税とかの罰金を取ることになる。
ただし、あとから発生した過払い返済請求に対しては国税局より後回しになるから、アンディは今回の手続きが終了する前に請求額に抜けが無いかよ~く見直した方が良いだろうね」
おお~。
そうなのか。
だったら心置き無く国税局の役人に協力しよう。
そう思いながら歩いていたら、早速ちょっと隠された地下室への入り口が視えた。
立ち止まってちょっと心眼《サイト》を凝らしてみたところ、地下室には金庫もあるっぽい。
まあそうだよな。
普通に食料品とかの貯蔵用の地下室だったら入り口を隠す必要なんぞ無いだろう。
「こちらの地下室は調べないんですか?」
さりげなく入り口を隠していたラグを押しやり、役人の方に声を掛ける。
「おや。
私としたことが、見落としていたようだ」
振り返った役人が早速こちらに戻ってきた。
ウキウキとしている役人とは対照的に、ウドウ会頭の顔色が更に悪くなっていく。
下にはヤバい何かが隠されているんだろうなぁ。
降りてみたところ、どうやらこちらの地下室はヤバい帳簿を付ける仕事部屋だったらしい。
本棚にぎっしりと帳簿や書類が並んでいた。
お~お。
帳簿を手に取った役人の顔が笑顔満面という感じだ。
役人は早速部下に帳簿を調べるよう指示を出し、傍にあった金庫を開けさせて中の宝石や金貨に差し押さえの札を付けていた。
そしてまた上に戻り・・・会頭夫婦の寝室にあった金庫から宝石等を没収。
大体これでこの屋敷にある金目の物は抑えた感じかな?
が。
他の部屋も確認している役人をよそに、アンディが眉をひそめて考え込んでいた。
「どうした?」
「この資産リストによるともっと美術品があるはずなんだが・・・。
宝飾品にしても思っていたよりも少ない」
アンディに声を掛けたら、リストを見せられた。
資産リストのうち、差し押さえの札を貼られた物に印を付けてきてきたようだが、かなりの数の美術品や宝飾品がまだ残っているようだ。
「あ~。
ここら辺の美術品は盗品だろ?
流石に本邸には置かないだろう。
隠し部屋があるならまだしも、ここにはさっきの地下室以外には特に隠している部屋は無いみたいだからな。
こっちの愛人宅に置いてあるんじゃ無いか?」
幾つかある不動産のうち、愛人を住まわすのによく使われる地域にある比較的(大きな商会の会頭が持つにしては)こじんまりとした家を指さして指摘した。
「え??
盗品なのか???」
アンディが驚いたように声を上げた。
「なるほど。
どこかで聞いたことがある名称が多いと思ったら、盗品なのか」
納得がいった、と言う風に横に立っていたアレクが頷く。
リストでは盗品を先に纏めて列挙してある。
まあ、盗賊《シーフ》ギルドが会頭に依頼されて盗んだり、闇オークションを手配したブツなんだから確実に詳細が分かっているよなぁ。
その他の普通に正規の店から買ったらしき宝飾品などのリストも中々凄かったが。
「おお~。
素晴らしい、ちゃんと資産リストを入手してあるのか。
ちょっと見せてくれ」
いつの間にかアンディの後ろに立っていた役人が大きな笑みを浮かべながらリストを覗き込んだ。
「うひゃぁ」
アンディがちょっと情けない声をあげ、紙を渡した。
ははは。
どうやらウドウ会頭は身ぐるみ剥がれそうだな~。
脱税に対する加重税と過払い返金をした後にも少しは資産が残っていることを祈っておくよ。
【後書き】
一応、大々的に他の不動産から物を持ち出そうとたら分かるように魔術院は他の不動産にも見張りの人は派遣していますが、基本的に高い物は本店と本邸に集めてあるだろうと思っていたので特に他の場所に関しては国税局の役人とも話し合っていませんでした。
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