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魔術学院1年目
001 星暦549年 赤の月 6日 きっかけ
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仕事でコケた。
ギルドからの依頼でアシャール魔術学院のテスト問題を暴きにいったのだが、失敗した。
しっかし。
クラスメートがテスト問題を盗んだのを知ったからと言って、学院側に問題を作り直させるために態々盗賊・ギルドに泥棒が入った形跡を作って来いと依頼するなんて、いったいどんだけ負けず嫌いなんだ。
馬鹿馬鹿しいながらも依頼は依頼。アホな依頼でも貨幣の色に違いは無いから出向いたのだが・・・。
学校と言うオープンな場所だけに、忍び込むのは簡単だった。
テスト問題が保管してあった金庫も5ミルもかからずに開いた。
最後には形跡を残さなければならないとは言え、途中で邪魔されないよう魔力の警報網はそぅっと避けて金庫の鍵を開ける。
魔力の流れから、体内の病巣、待ち伏せしている警備兵まで、何でも見通せる心眼と、魔術を変形できる魔力を持つ俺にとってどれも簡単なことだった。
金庫の中の書類を調べてテスト問題を探すことの方に時間がかかったぐらいだ。
いくら机の鍵を容易に開けられる魔術師の卵が集まる魔術学院だからって、人事査定から生徒の個人情報、はては学舎の改装工事のプランまで金庫に大切に保管するのはやりすぎじゃないかね?
大量の書類を仕分けてテスト問題を探していたら、突然扉が開き魔法騎士の制服を着た男と初老の魔術師が乱入してきた。
人の気配なんてなかったのに!
よく見たら二人とも気を完全に抑える術をかけていた。
何だってたかが魔術学院で騎士と魔術師が気配を消して見回りなんてやっているんだ!!!!
テスト問題の窃盗事件以外に、何か問題でもあるんかいな、この学校。
金庫破りや泥棒に入るのに使える程度に自分の魔力の使い方はマスターしているが、こう言った場合に戦うのに役に立つ程のことは知らない。
孤児の盗賊にタダで本格的な魔術を教えるほど奇特な魔術師はそうそういないんだよね、残念なことに。
とりあえず。
後ろの窓を突き破って逃げよう。
そう思って後ろへ飛んだら、魔術師が捕縛をかけてきた。
魔力の網を出来るだけ避け、避けきれないものを切り捨ててそのまま窓へ突進、顔を守りながら窓へ飛び込み、外へ・・・!
と頑張ったのだが。
物凄い力で左足を引きずり戻された。
右足で騎士の腕を蹴り払おうと体を捻ったものの、動きが終わる前に成人男性の全体重に押しつぶされ、床へ。
ちっ。
こうなったら、拘置所から逃げるしかない。
たかが魔術学院への窃盗でその場で切り捨てると言うことはないと期待したい。
・・・と思っていたら、魔術師に声をかけられた。
「見事なものだな。全く警報を出さずにこの金庫を開けられるとは思ってもいなかったぞ。クラスと氏名を言いなさい」
おいおい。
いくら生徒と同じ年代だとしても、盗賊と生徒を間違えちゃあいけないよ。
高い授業料を払っているご両親が怒るぞ~。
「期末テストの問題が既に盗まれているらしいですよ。だから問題を作り直させる為に盗んだ形跡を残すよう依頼されたんです」
そう答えた俺を、初老の魔術師は驚いたように見つめていた。
「依頼?」
「盗賊ギルドというところだな」
騎士が勝手に答えた。
「ほう」
一瞬考えてから、魔術師が俺の頭に触れた。
捜索系の力を体の中を通って行く。
「素晴らしい。殆ど訓練されていないのに、魔力がこうもはっきり見えているとは。明日から、ここに来い」
はぁ????
一体、どこの誰が現行犯で捕まえた盗賊に魔術を教えるって言うんだ?
「そんな金、ない」
「構わん。奨学金を受ければいい。魔術の才能は使う義務がある。
使わないにしても、訓練せずに放置するのは危険すぎる。経済力の足りない子供が放置されて魔力を暴走させることが無いように作られたのが、奨学金制度だ」
え、そうだったの?
奨学金制度があるなんて、誰も言っていなかったけど。
俺が魔力があるのはギルドの長と数人しかしらないけど、何だって誰も教えてくれなかったんだ?
魔術を使いこなせる方が、仕事の幅だって広がったと言うのに。
・・・それとも、魔術を使いこなせるようになったらギルドから足を洗うと思われたのかな?
まぁ、幾ら楽しいとは言っても、他に就業手段があるなら危険な違法行為をする必要は確かにない。
「・・・どうすればいいんです?」
「とりあえず、今晩は私のウチで眠りなさい。明日から寮の部屋をあてがおう」
現行犯で捕まえた盗賊を自分の家に招くとは。
余程お気軽なのか、それとも自分の魔術に自信があるのか。
どちらなのか知らないけど、面白いことになりそうだ・・・。
ギルドからの依頼でアシャール魔術学院のテスト問題を暴きにいったのだが、失敗した。
しっかし。
クラスメートがテスト問題を盗んだのを知ったからと言って、学院側に問題を作り直させるために態々盗賊・ギルドに泥棒が入った形跡を作って来いと依頼するなんて、いったいどんだけ負けず嫌いなんだ。
馬鹿馬鹿しいながらも依頼は依頼。アホな依頼でも貨幣の色に違いは無いから出向いたのだが・・・。
学校と言うオープンな場所だけに、忍び込むのは簡単だった。
テスト問題が保管してあった金庫も5ミルもかからずに開いた。
最後には形跡を残さなければならないとは言え、途中で邪魔されないよう魔力の警報網はそぅっと避けて金庫の鍵を開ける。
魔力の流れから、体内の病巣、待ち伏せしている警備兵まで、何でも見通せる心眼と、魔術を変形できる魔力を持つ俺にとってどれも簡単なことだった。
金庫の中の書類を調べてテスト問題を探すことの方に時間がかかったぐらいだ。
いくら机の鍵を容易に開けられる魔術師の卵が集まる魔術学院だからって、人事査定から生徒の個人情報、はては学舎の改装工事のプランまで金庫に大切に保管するのはやりすぎじゃないかね?
大量の書類を仕分けてテスト問題を探していたら、突然扉が開き魔法騎士の制服を着た男と初老の魔術師が乱入してきた。
人の気配なんてなかったのに!
よく見たら二人とも気を完全に抑える術をかけていた。
何だってたかが魔術学院で騎士と魔術師が気配を消して見回りなんてやっているんだ!!!!
テスト問題の窃盗事件以外に、何か問題でもあるんかいな、この学校。
金庫破りや泥棒に入るのに使える程度に自分の魔力の使い方はマスターしているが、こう言った場合に戦うのに役に立つ程のことは知らない。
孤児の盗賊にタダで本格的な魔術を教えるほど奇特な魔術師はそうそういないんだよね、残念なことに。
とりあえず。
後ろの窓を突き破って逃げよう。
そう思って後ろへ飛んだら、魔術師が捕縛をかけてきた。
魔力の網を出来るだけ避け、避けきれないものを切り捨ててそのまま窓へ突進、顔を守りながら窓へ飛び込み、外へ・・・!
と頑張ったのだが。
物凄い力で左足を引きずり戻された。
右足で騎士の腕を蹴り払おうと体を捻ったものの、動きが終わる前に成人男性の全体重に押しつぶされ、床へ。
ちっ。
こうなったら、拘置所から逃げるしかない。
たかが魔術学院への窃盗でその場で切り捨てると言うことはないと期待したい。
・・・と思っていたら、魔術師に声をかけられた。
「見事なものだな。全く警報を出さずにこの金庫を開けられるとは思ってもいなかったぞ。クラスと氏名を言いなさい」
おいおい。
いくら生徒と同じ年代だとしても、盗賊と生徒を間違えちゃあいけないよ。
高い授業料を払っているご両親が怒るぞ~。
「期末テストの問題が既に盗まれているらしいですよ。だから問題を作り直させる為に盗んだ形跡を残すよう依頼されたんです」
そう答えた俺を、初老の魔術師は驚いたように見つめていた。
「依頼?」
「盗賊ギルドというところだな」
騎士が勝手に答えた。
「ほう」
一瞬考えてから、魔術師が俺の頭に触れた。
捜索系の力を体の中を通って行く。
「素晴らしい。殆ど訓練されていないのに、魔力がこうもはっきり見えているとは。明日から、ここに来い」
はぁ????
一体、どこの誰が現行犯で捕まえた盗賊に魔術を教えるって言うんだ?
「そんな金、ない」
「構わん。奨学金を受ければいい。魔術の才能は使う義務がある。
使わないにしても、訓練せずに放置するのは危険すぎる。経済力の足りない子供が放置されて魔力を暴走させることが無いように作られたのが、奨学金制度だ」
え、そうだったの?
奨学金制度があるなんて、誰も言っていなかったけど。
俺が魔力があるのはギルドの長と数人しかしらないけど、何だって誰も教えてくれなかったんだ?
魔術を使いこなせる方が、仕事の幅だって広がったと言うのに。
・・・それとも、魔術を使いこなせるようになったらギルドから足を洗うと思われたのかな?
まぁ、幾ら楽しいとは言っても、他に就業手段があるなら危険な違法行為をする必要は確かにない。
「・・・どうすればいいんです?」
「とりあえず、今晩は私のウチで眠りなさい。明日から寮の部屋をあてがおう」
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