142 / 1,309
卒業後
141 星暦552年 紫の月 4日 後始末
しおりを挟む
大悪魔を祓い、事件の概要を聞いた翌朝。
学院長と俺はまた長の下へ来ていた。
長の友人が実は生きていたという報告と・・・暗殺ギルドの副長の所在を聞き出すためだ。
大悪魔がこの次元から追い出されたことでその部下である下級悪魔もついでに締め出しを食らってくれないかと密かに期待していたのだが、神殿からの伝言によると4体の下級悪魔はまだ現存とのこと。
どうやら、大悪魔が手を貸したとは言っても、正式に生贄を殺して呼び出した悪魔はそう簡単に消えてはくれないらしい。
「4人の被害者は順番に祓っていくのですか?」
長がお茶を注ぎながら尋ねてきた。
流石に長も朝早くからワインを飲むつもりは無かったらしい。
もしかしたら後で闇の神殿まで友に会いに行くのつもりなのかもしれないし。あまり酒臭いのは顰蹙だろう。
「ああ。下手に姿を隠されたりしたら困るからな。今日中に全部祓う」
一口お茶を味わってから学院長が答えた。
あの表情からすると、あまり味は気に入らなかったのかな?
まあ、長はお茶よりもワインの人だからねぇ。
徹底したお茶派の学院長が満足いくものを淹れられる方が不思議でしょ。
「なるほど。この時間に私に会いに来たということは、最初に行くのは暗殺《キル》ギルドというわけですか。首謀者が死んだのに計画していた暗殺を実行されたりしても困りますから、確かに急いだ方が良いでしょうね。
・・・下級悪魔の方は自分のボスの大悪魔が既に帰還させられたことを知っているのでしょうかね?」
学院長は肩をすくめた。
「さあな。悪魔の上下関係のリンクの強さはあまり知られていない。
感覚的に繋がっていないのだったら、敵対する勢力がいると知られる前に追い出してしまいたい。
ま、知られていた用心していたところで祓うという行動に変わりはないんだが」
「それはそうでしょうね。
暗殺ギルドの副長ですが・・・。彼は下町の娼館『黒い蝶』に昨晩泊まったとのことです。まだそこにいるでしょう」
「分かるか?」
俺の方を向いて聞いた学院長に頷いてみせる。
流石の学院長でも下町の娼館の場所までは分からないらしい。
・・・ちょっと安心したかも。
独身の学院長が何をしようと彼の自由だが、何かと暗い噂の流れる『黒い蝶』に足を運ぶような人間でないというのはいいことだ。
「では、礼を言う」
長に軽く頷いて、学院長が立ち上がった。
「いえいえ。こちらこそお礼を幾ら言っても足りないぐらいですよ。
私個人に対する貸し一つと数えておいて下さい」
長がにこやかに答えた。
・・・特級魔術師が盗賊ギルドの長に何か頼みごとをするような状況になるのは想像しにくいけど。
ま、思ったより王都には色んな陰謀があるから、情報源として盗賊ギルドの長と伝があるのはいいことだろう。
◆◆◆
「最後はラズベリー伯爵家だな」
呆然と座り込んだままの副団長の部屋から出て、学院長は深く息を吐き出して言った。
下級悪魔の祓いは思っていたよりも簡単だった。
青についていたのってキャラが凄く下っ端っぽかったから弱いと思っていたのだが、どうやらあれでも『第3の部下』と自称するだけあって極端には弱くなかったのかもしれない。
暗殺ギルドの副長とアレサナ商会の長男、第2騎士団の副団長の悪魔たちは拍子抜けするほどあっさり祓えた。
考えてみたら青の場合は尋問して情報を得る必要があったんだよな。
だからあれだけ時間がかかったのかもしれない。
他の3人の被害者は特に欲しい情報も無かったので、力技で清早の水で弱らせ、学院長の術でこの次元から追い出しを食らわせた。
はっきり言って、被害者を物理的に探し出すことの方が祓うのよりも時間がかかったぐらいだ。
ま、それでも13の刻には男性陣の被害者への対応は全て終わっていた。
残るは皇太子妃候補のケレナ・ラズバリー嬢。
考えてみたら、貴族の娘さんを問答無用で水浸しにしても大丈夫なんだろうか・・・。
ラズバリー伯爵家の王都の屋敷を訪れた俺たちは、学院長の特級魔術師のローブがモノを言ったのか、あっさり応接間に通され、ラズバリー伯爵夫人とケレナ・ラズバリーに会えることになった。
「・・・シャルロ??!!」
何故かそこにはシャルロと、悪魔に憑かれていないケレナ嬢がいたけど。
・・・あれ??
学院長と俺はまた長の下へ来ていた。
長の友人が実は生きていたという報告と・・・暗殺ギルドの副長の所在を聞き出すためだ。
大悪魔がこの次元から追い出されたことでその部下である下級悪魔もついでに締め出しを食らってくれないかと密かに期待していたのだが、神殿からの伝言によると4体の下級悪魔はまだ現存とのこと。
どうやら、大悪魔が手を貸したとは言っても、正式に生贄を殺して呼び出した悪魔はそう簡単に消えてはくれないらしい。
「4人の被害者は順番に祓っていくのですか?」
長がお茶を注ぎながら尋ねてきた。
流石に長も朝早くからワインを飲むつもりは無かったらしい。
もしかしたら後で闇の神殿まで友に会いに行くのつもりなのかもしれないし。あまり酒臭いのは顰蹙だろう。
「ああ。下手に姿を隠されたりしたら困るからな。今日中に全部祓う」
一口お茶を味わってから学院長が答えた。
あの表情からすると、あまり味は気に入らなかったのかな?
まあ、長はお茶よりもワインの人だからねぇ。
徹底したお茶派の学院長が満足いくものを淹れられる方が不思議でしょ。
「なるほど。この時間に私に会いに来たということは、最初に行くのは暗殺《キル》ギルドというわけですか。首謀者が死んだのに計画していた暗殺を実行されたりしても困りますから、確かに急いだ方が良いでしょうね。
・・・下級悪魔の方は自分のボスの大悪魔が既に帰還させられたことを知っているのでしょうかね?」
学院長は肩をすくめた。
「さあな。悪魔の上下関係のリンクの強さはあまり知られていない。
感覚的に繋がっていないのだったら、敵対する勢力がいると知られる前に追い出してしまいたい。
ま、知られていた用心していたところで祓うという行動に変わりはないんだが」
「それはそうでしょうね。
暗殺ギルドの副長ですが・・・。彼は下町の娼館『黒い蝶』に昨晩泊まったとのことです。まだそこにいるでしょう」
「分かるか?」
俺の方を向いて聞いた学院長に頷いてみせる。
流石の学院長でも下町の娼館の場所までは分からないらしい。
・・・ちょっと安心したかも。
独身の学院長が何をしようと彼の自由だが、何かと暗い噂の流れる『黒い蝶』に足を運ぶような人間でないというのはいいことだ。
「では、礼を言う」
長に軽く頷いて、学院長が立ち上がった。
「いえいえ。こちらこそお礼を幾ら言っても足りないぐらいですよ。
私個人に対する貸し一つと数えておいて下さい」
長がにこやかに答えた。
・・・特級魔術師が盗賊ギルドの長に何か頼みごとをするような状況になるのは想像しにくいけど。
ま、思ったより王都には色んな陰謀があるから、情報源として盗賊ギルドの長と伝があるのはいいことだろう。
◆◆◆
「最後はラズベリー伯爵家だな」
呆然と座り込んだままの副団長の部屋から出て、学院長は深く息を吐き出して言った。
下級悪魔の祓いは思っていたよりも簡単だった。
青についていたのってキャラが凄く下っ端っぽかったから弱いと思っていたのだが、どうやらあれでも『第3の部下』と自称するだけあって極端には弱くなかったのかもしれない。
暗殺ギルドの副長とアレサナ商会の長男、第2騎士団の副団長の悪魔たちは拍子抜けするほどあっさり祓えた。
考えてみたら青の場合は尋問して情報を得る必要があったんだよな。
だからあれだけ時間がかかったのかもしれない。
他の3人の被害者は特に欲しい情報も無かったので、力技で清早の水で弱らせ、学院長の術でこの次元から追い出しを食らわせた。
はっきり言って、被害者を物理的に探し出すことの方が祓うのよりも時間がかかったぐらいだ。
ま、それでも13の刻には男性陣の被害者への対応は全て終わっていた。
残るは皇太子妃候補のケレナ・ラズバリー嬢。
考えてみたら、貴族の娘さんを問答無用で水浸しにしても大丈夫なんだろうか・・・。
ラズバリー伯爵家の王都の屋敷を訪れた俺たちは、学院長の特級魔術師のローブがモノを言ったのか、あっさり応接間に通され、ラズバリー伯爵夫人とケレナ・ラズバリーに会えることになった。
「・・・シャルロ??!!」
何故かそこにはシャルロと、悪魔に憑かれていないケレナ嬢がいたけど。
・・・あれ??
1
あなたにおすすめの小説
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる