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卒業後
142 星暦552年 紫の月 4日 展開
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「あれ、ウィルと学院長?
ケレナが大変だったってどうして知ったの?」
シャルロが目を丸くして聞いてきた。
いやいや、俺の方こそ、質問したいんだけど。
「今回、何体かの悪魔がとあるバカによって召喚されて被害者に憑依される事件が起きた。
被害者の友人の一人がウィルの知り合いでね、彼に魔術院への連絡を頼んだから私のところに話が来たわけだ。
色々調べて悪魔に憑かれた被害者の名前が分かったから一人ずつ回って祓っているところだったのだが・・・。君はどうしてここに?ケレナ嬢の悪魔はシャルロ君が祓ったのだよね?」
俺が驚きにぼーっとしている間に学院長が答えていた。
「ケレナは僕の幼馴染なんです。
実家に姪を見に戻っていたときに、ケレナが変な感じになったって聞いたものだから何が起きたのか確認しに来たら・・・凄い嫌な感じになっていたんです。
蒼流に聞いたら『悪魔が憑いている』とのことでした。
僕には何も出来なかったんだけど、蒼流が悪魔を退治してくれたんです。
考えてみたら、学院長に頼むという手もあったんですね・・・」
シャルロが珍しく何か考え込んでいる。
「あら、池に放り込まれてでも、一刻も早くあの悪魔を追い出して欲しかったから学院長さまが来るのを待たなくて正解だったわよ」
ケレナ嬢が手に持ったホットワインを飲みながらコメントした。
池に放り込んだんかい。
まあ、風呂場や廊下で問答無用に水浸しにされても似たり寄ったりだよな。
「被害者に後遺症無く悪魔を追い出そうと思ったら、精霊の力を借りてあらかじめ悪魔の力をそぐ必要があったので、我々が来ても、ケレナ嬢がびしょ濡れになったことに変わりはありませんでした。精霊が完全に悪魔を滅することが出来るというのは知りませんでしたが」
ちょっと暗いシャルロを慰めるために口を挟む。
「そっか。良かった。
そういえば、ケレナ、これが僕の親友の一人のウィル・ダントール。ウィル、こちらが僕の幼馴染のケレナ・ラズバリーね。
ウィルはこないだ上げたティーバッグを考案した人でもあるんだよ」
シャルロがケレナ嬢を俺に紹介してきた。
ほほう、態々改めて紹介するか。
大切なようだね、この女性は。
シャルロ君にも春が訪れたのかな?
さっきからホットワインのグラスを乗っていないほうのケレナ嬢の手がずっとシャルロをつかんだままだし、あちらさんにとっても『ただの幼馴染』以上のようだ。
まあ、単なるつり橋効果かもしれないけど。
「よろしくお願いします。
ノルデ村に家を借りて男3人で住んでいるんですが、一応家政婦などもいますから暇なときにでも是非遊びに来てください。家政婦のパディン夫人の菓子作りの腕はシャルロが満足するレベルなので、お茶の時間などはお勧めですよ」
「あら。今度、遊びに行かせて貰うわ。シャルロから、使い魔の妖精王とかユニコーンとか土竜の話も聞いていて、是非一度尋ねてみたいと思っていたのよ。
ところで、今回の事件は一体なんだったのか、ご存知だったら教えてくださいな。
バアグナル家でパーティに参加していたら急に気持ちが悪くなって倒れて・・・その後はシャルロに池から引き上げられるまでずっと自分の体の中に閉じ込められていたのだけど」
さて。
どこまで説明するんだろ?
悪魔に憑かれたなんていう事実が周囲に知られたら被害者は社会的に抹殺されるに近い打撃を受ける。
だから神殿長も学院長も今回の事件に関しては厳しく緘口令をしいてきた。
だが、流石に被害者本人にも何も言わないわけにはいかないだろう。
「バアグナルの若造が、禁呪を使って偶然強力な悪魔を召喚するのに成功してしまってね。そこでその悪魔を使って今度は下級悪魔を何人かの人間に取り憑かせてこの国を乗っ取ろうとした」
学院長が簡単に説明した。
「国を乗っ取る・・・ですか。父ならやシャルロの父君ならまだしも、何故私を?それとも私を使って父も捉えるつもりだったのでしょうか」
「ケレナ嬢は・・・長期的プランというやつだったと思う。皇太子や国王本人にはそれなりにガードがついているから、未来の王妃をコントロールしようと思っていたのではないだろうか」
ふんっとケレナ嬢が鼻を鳴らした。
「迷惑な。自分で国を乗っ取る力が無いなら、さっさと諦めればいいんです。
で、その諸悪の根源のバカはどうなりましたの?処刑される前に是非一発殴らせていただきたいのですが」
殴りますか。
もしかして、護身術とかしっかり習っていたり?
シャルロとか違った意味で個性的な貴族だな。
「悪魔を追い出した際に魂を引きずり出して持っていかれたから、体はとりあえずまだ生きているがあと数日のことだろう。殴りたいなら闇の神殿の方でとりあえず拘束しているので紹介状を書くが」
学院長が答えた。
・・・それってマジ?それとも冗談?
まあ、悪魔に体を乗っ取られるなんてトラウマものだろうから、張本人の体だけでも殴ることで心の折り合いがつくならやる価値はあるだろうが。
「魂を持っていかれたって・・・どうなりますの、そういう魂は?」
これは俺も聞きたいところだな。
学院長は小さく肩をすくめてみせた。
「悪魔の召喚は禁忌なので、研究も進んでなくってね。だから彼らの次元に持っていかれた術者の魂がどうなるかは分からないが・・・喰われて直ぐに死ねたら幸運な方で、玩具として長い間弄ばれる可能性が一番高いのではないかな」
「まあ。では、長い長い間、あのバカの魂が消滅しないことを期待しておきましょう」
にっこりとケレナ嬢が笑って答えた。
ははは。
逞しいねぇ。
まあ、おっとり者のシャルロにはちょうどいい対照的な相手なのかも?
ケレナが大変だったってどうして知ったの?」
シャルロが目を丸くして聞いてきた。
いやいや、俺の方こそ、質問したいんだけど。
「今回、何体かの悪魔がとあるバカによって召喚されて被害者に憑依される事件が起きた。
被害者の友人の一人がウィルの知り合いでね、彼に魔術院への連絡を頼んだから私のところに話が来たわけだ。
色々調べて悪魔に憑かれた被害者の名前が分かったから一人ずつ回って祓っているところだったのだが・・・。君はどうしてここに?ケレナ嬢の悪魔はシャルロ君が祓ったのだよね?」
俺が驚きにぼーっとしている間に学院長が答えていた。
「ケレナは僕の幼馴染なんです。
実家に姪を見に戻っていたときに、ケレナが変な感じになったって聞いたものだから何が起きたのか確認しに来たら・・・凄い嫌な感じになっていたんです。
蒼流に聞いたら『悪魔が憑いている』とのことでした。
僕には何も出来なかったんだけど、蒼流が悪魔を退治してくれたんです。
考えてみたら、学院長に頼むという手もあったんですね・・・」
シャルロが珍しく何か考え込んでいる。
「あら、池に放り込まれてでも、一刻も早くあの悪魔を追い出して欲しかったから学院長さまが来るのを待たなくて正解だったわよ」
ケレナ嬢が手に持ったホットワインを飲みながらコメントした。
池に放り込んだんかい。
まあ、風呂場や廊下で問答無用に水浸しにされても似たり寄ったりだよな。
「被害者に後遺症無く悪魔を追い出そうと思ったら、精霊の力を借りてあらかじめ悪魔の力をそぐ必要があったので、我々が来ても、ケレナ嬢がびしょ濡れになったことに変わりはありませんでした。精霊が完全に悪魔を滅することが出来るというのは知りませんでしたが」
ちょっと暗いシャルロを慰めるために口を挟む。
「そっか。良かった。
そういえば、ケレナ、これが僕の親友の一人のウィル・ダントール。ウィル、こちらが僕の幼馴染のケレナ・ラズバリーね。
ウィルはこないだ上げたティーバッグを考案した人でもあるんだよ」
シャルロがケレナ嬢を俺に紹介してきた。
ほほう、態々改めて紹介するか。
大切なようだね、この女性は。
シャルロ君にも春が訪れたのかな?
さっきからホットワインのグラスを乗っていないほうのケレナ嬢の手がずっとシャルロをつかんだままだし、あちらさんにとっても『ただの幼馴染』以上のようだ。
まあ、単なるつり橋効果かもしれないけど。
「よろしくお願いします。
ノルデ村に家を借りて男3人で住んでいるんですが、一応家政婦などもいますから暇なときにでも是非遊びに来てください。家政婦のパディン夫人の菓子作りの腕はシャルロが満足するレベルなので、お茶の時間などはお勧めですよ」
「あら。今度、遊びに行かせて貰うわ。シャルロから、使い魔の妖精王とかユニコーンとか土竜の話も聞いていて、是非一度尋ねてみたいと思っていたのよ。
ところで、今回の事件は一体なんだったのか、ご存知だったら教えてくださいな。
バアグナル家でパーティに参加していたら急に気持ちが悪くなって倒れて・・・その後はシャルロに池から引き上げられるまでずっと自分の体の中に閉じ込められていたのだけど」
さて。
どこまで説明するんだろ?
悪魔に憑かれたなんていう事実が周囲に知られたら被害者は社会的に抹殺されるに近い打撃を受ける。
だから神殿長も学院長も今回の事件に関しては厳しく緘口令をしいてきた。
だが、流石に被害者本人にも何も言わないわけにはいかないだろう。
「バアグナルの若造が、禁呪を使って偶然強力な悪魔を召喚するのに成功してしまってね。そこでその悪魔を使って今度は下級悪魔を何人かの人間に取り憑かせてこの国を乗っ取ろうとした」
学院長が簡単に説明した。
「国を乗っ取る・・・ですか。父ならやシャルロの父君ならまだしも、何故私を?それとも私を使って父も捉えるつもりだったのでしょうか」
「ケレナ嬢は・・・長期的プランというやつだったと思う。皇太子や国王本人にはそれなりにガードがついているから、未来の王妃をコントロールしようと思っていたのではないだろうか」
ふんっとケレナ嬢が鼻を鳴らした。
「迷惑な。自分で国を乗っ取る力が無いなら、さっさと諦めればいいんです。
で、その諸悪の根源のバカはどうなりましたの?処刑される前に是非一発殴らせていただきたいのですが」
殴りますか。
もしかして、護身術とかしっかり習っていたり?
シャルロとか違った意味で個性的な貴族だな。
「悪魔を追い出した際に魂を引きずり出して持っていかれたから、体はとりあえずまだ生きているがあと数日のことだろう。殴りたいなら闇の神殿の方でとりあえず拘束しているので紹介状を書くが」
学院長が答えた。
・・・それってマジ?それとも冗談?
まあ、悪魔に体を乗っ取られるなんてトラウマものだろうから、張本人の体だけでも殴ることで心の折り合いがつくならやる価値はあるだろうが。
「魂を持っていかれたって・・・どうなりますの、そういう魂は?」
これは俺も聞きたいところだな。
学院長は小さく肩をすくめてみせた。
「悪魔の召喚は禁忌なので、研究も進んでなくってね。だから彼らの次元に持っていかれた術者の魂がどうなるかは分からないが・・・喰われて直ぐに死ねたら幸運な方で、玩具として長い間弄ばれる可能性が一番高いのではないかな」
「まあ。では、長い長い間、あのバカの魂が消滅しないことを期待しておきましょう」
にっこりとケレナ嬢が笑って答えた。
ははは。
逞しいねぇ。
まあ、おっとり者のシャルロにはちょうどいい対照的な相手なのかも?
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