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卒業後
507 星暦555年 藤の月 10日 俺はオマケです。(6)
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『ここだ』
アスカに示された場所は・・・洞窟と言うよりは窪みだった。
確かに言われてみたら心眼《サイト》には窪みの奥にごく僅かに残っている固定化らしき術が視える。
「・・・古すぎて何も残ってないな。
どうも元々あった入り口が後退して『洞窟』が『窪み』に劣化したみたいだし」
心眼《サイト》でくぼみを丁寧に見て回ったが特に何も見つからない。
諦めてシェイラに振り返った。
「でも、ここがオーバスタ神殿文明時代に使われていた洞窟なのは確かなの?」
興味深げに周りを見回しながらシェイラが尋ねる。
「おう。
固定化の術はあの遺跡の中の天井とかに使われているのとほぼ同じ型だから、同じ系列の魔術師が掛けたんだと思うぜ」
何のために洞窟に固定化の術を掛けたのかは知らんが。
「分かったわ。
次の洞窟も見せて」
シェイラがにこやかにお願いしてきた。
次は井戸の方が最寄りの洞窟よりも近いんだが・・・この分だったら先に洞窟を見て回った方が早そうだな。
井戸は掘り返さなきゃいけないし、掘り返した所で井戸があるだけだろうから、あまり面白くない可能性が高い気がする。
シェイラにとってはとても興味深いかも知れないが、2人でのデートなんだ。
俺が面白そうと思う物を先に回っても良いだろう。
『次はこちらだな』
アスカがのっそりと森の奥に進んで行った。
森の中で乗っていると頭を枝にぶつけたりしかねないのでアスカに乗るのは止めているが・・・アスカの背中に寝転がる形ででも良いから運んで貰えば良かったかも。
枯れ葉とかの裏に何か怪しい虫が居るかも・・・とか思うと、歩くのも憂鬱なんだが・・・。
次に来た洞窟はかなり奥が深く、そこそこ歩いて行った奥の方にはちょっとした椅子やテーブルとして使われたと思われる石があった。
入り口の傍に別室っぽいスペースもあったから、あそこを厩として使って奥の方でお茶でも飲んで休んでいたのかね?
長年の間それなりの頻度で動物の巣として使われたのか、色々と羽根や小骨や枝などが散乱していてイマイチ分かりにくかったが。
固定化の術で壁や天井が崩落しないようにしても、後から入ってくる動物が色々物を置いていくのは防げないもんなぁ。
「これって掃除したらもっと見応えのある遺跡になるの?」
洞窟の中をじっくりと見て回っているシェイラに尋ねる。
「う~ん、私はこの文明の専門じゃあ無いから微妙な所だけど・・・ハラファとかにとってはそれなりにオーバスタ神殿文明の周辺的な情報源として興味深いんじゃないかしら?
明日にでも、一応ここのことを教えてあげましょう」
と答え、シェイラは立ち上がって出口の方へ向い始めた。
「さあ、次の洞窟を見に行きましょう!
それが終わったらちょっと開けた場所でも見つけて、ピクニックにしても良いわね」
大した物は見つかっていない気がするのだが、どうやらシェイラ的には面白い発見があったのか足取りが軽い。
次に来た洞窟は入り口が土砂崩れか何かで過去に閉鎖されてしまったのか、単なる崖の一部という感じだった。
ハラファたちが働いている遺跡からそれなりの距離があるが、一応中に視える固定化の術は先程の洞窟と同じようだ。
・・・街の入っている洞窟が狭くて周辺に倉庫的な洞窟を追加で作るというのなら分かるが、何だってこんな風に離れて転々と洞窟を使っていたんだ?
入り口の崩落がかなり前の事だとしたら、中身がそれなりに遺跡が使われていた頃の形跡が残っているかも知れないな。
・・・そうであることを期待しよう。
折角の休息日に出歩いているのだ。もう少し面白い物を見つけたい。
「アスカ、入り口を塞いじゃっている土砂を外に押し出してくれるか?
出来るだけ元の洞窟に影響を与えない形で頼む」
土いじりはアスカに頼むに限る。
と言うことで、魔力を提供してお願いした。
『ふむ。
中々大きな洞窟のようだな。
どうやら中が使われている状況で崩落したようだ』
アスカが崖に近づきながらコメントした。
中が使用中に崩落したって・・・どういうことだ?
と言うか、何だってこの洞窟の入り口は崩落したんだ?
流石に地下に住むのが好きな連中らしく、オーバスタ神殿文化の固定化の術は超一流と言っても良い強度を誇っていたようだが。
今でもそれなりに効果が残っているのだ。
現役時代だったらそれこそ攻撃用の術を集中的にぶつけでもしないことには崩落なんぞしなくないか?
そんなことを考えながら眺めていたら、アスカが崖に近づいてちょちょいと足で引っ掻いた。
土砂が自分から持ち上がって外に積み上がっていく感じに動く。
流石土竜《ジャイアント・モール》。
土の扱いに関しては理解を超える効率の良さだ。
「光よ」
中に入ろうと待っているシェイラの為に照明の術を起動しながらシェイラの腕を掴んだ。
「ちなみに、この洞窟はどうも使用中に崩落したんじゃ無いかとアスカが言っているんで、中に白骨死体がある可能性が高いと思うんだが・・・大丈夫?」
------------------------------------------------------------------
・・・考古学者って白骨死体に出くわすこと多いんですかね?
アスカに示された場所は・・・洞窟と言うよりは窪みだった。
確かに言われてみたら心眼《サイト》には窪みの奥にごく僅かに残っている固定化らしき術が視える。
「・・・古すぎて何も残ってないな。
どうも元々あった入り口が後退して『洞窟』が『窪み』に劣化したみたいだし」
心眼《サイト》でくぼみを丁寧に見て回ったが特に何も見つからない。
諦めてシェイラに振り返った。
「でも、ここがオーバスタ神殿文明時代に使われていた洞窟なのは確かなの?」
興味深げに周りを見回しながらシェイラが尋ねる。
「おう。
固定化の術はあの遺跡の中の天井とかに使われているのとほぼ同じ型だから、同じ系列の魔術師が掛けたんだと思うぜ」
何のために洞窟に固定化の術を掛けたのかは知らんが。
「分かったわ。
次の洞窟も見せて」
シェイラがにこやかにお願いしてきた。
次は井戸の方が最寄りの洞窟よりも近いんだが・・・この分だったら先に洞窟を見て回った方が早そうだな。
井戸は掘り返さなきゃいけないし、掘り返した所で井戸があるだけだろうから、あまり面白くない可能性が高い気がする。
シェイラにとってはとても興味深いかも知れないが、2人でのデートなんだ。
俺が面白そうと思う物を先に回っても良いだろう。
『次はこちらだな』
アスカがのっそりと森の奥に進んで行った。
森の中で乗っていると頭を枝にぶつけたりしかねないのでアスカに乗るのは止めているが・・・アスカの背中に寝転がる形ででも良いから運んで貰えば良かったかも。
枯れ葉とかの裏に何か怪しい虫が居るかも・・・とか思うと、歩くのも憂鬱なんだが・・・。
次に来た洞窟はかなり奥が深く、そこそこ歩いて行った奥の方にはちょっとした椅子やテーブルとして使われたと思われる石があった。
入り口の傍に別室っぽいスペースもあったから、あそこを厩として使って奥の方でお茶でも飲んで休んでいたのかね?
長年の間それなりの頻度で動物の巣として使われたのか、色々と羽根や小骨や枝などが散乱していてイマイチ分かりにくかったが。
固定化の術で壁や天井が崩落しないようにしても、後から入ってくる動物が色々物を置いていくのは防げないもんなぁ。
「これって掃除したらもっと見応えのある遺跡になるの?」
洞窟の中をじっくりと見て回っているシェイラに尋ねる。
「う~ん、私はこの文明の専門じゃあ無いから微妙な所だけど・・・ハラファとかにとってはそれなりにオーバスタ神殿文明の周辺的な情報源として興味深いんじゃないかしら?
明日にでも、一応ここのことを教えてあげましょう」
と答え、シェイラは立ち上がって出口の方へ向い始めた。
「さあ、次の洞窟を見に行きましょう!
それが終わったらちょっと開けた場所でも見つけて、ピクニックにしても良いわね」
大した物は見つかっていない気がするのだが、どうやらシェイラ的には面白い発見があったのか足取りが軽い。
次に来た洞窟は入り口が土砂崩れか何かで過去に閉鎖されてしまったのか、単なる崖の一部という感じだった。
ハラファたちが働いている遺跡からそれなりの距離があるが、一応中に視える固定化の術は先程の洞窟と同じようだ。
・・・街の入っている洞窟が狭くて周辺に倉庫的な洞窟を追加で作るというのなら分かるが、何だってこんな風に離れて転々と洞窟を使っていたんだ?
入り口の崩落がかなり前の事だとしたら、中身がそれなりに遺跡が使われていた頃の形跡が残っているかも知れないな。
・・・そうであることを期待しよう。
折角の休息日に出歩いているのだ。もう少し面白い物を見つけたい。
「アスカ、入り口を塞いじゃっている土砂を外に押し出してくれるか?
出来るだけ元の洞窟に影響を与えない形で頼む」
土いじりはアスカに頼むに限る。
と言うことで、魔力を提供してお願いした。
『ふむ。
中々大きな洞窟のようだな。
どうやら中が使われている状況で崩落したようだ』
アスカが崖に近づきながらコメントした。
中が使用中に崩落したって・・・どういうことだ?
と言うか、何だってこの洞窟の入り口は崩落したんだ?
流石に地下に住むのが好きな連中らしく、オーバスタ神殿文化の固定化の術は超一流と言っても良い強度を誇っていたようだが。
今でもそれなりに効果が残っているのだ。
現役時代だったらそれこそ攻撃用の術を集中的にぶつけでもしないことには崩落なんぞしなくないか?
そんなことを考えながら眺めていたら、アスカが崖に近づいてちょちょいと足で引っ掻いた。
土砂が自分から持ち上がって外に積み上がっていく感じに動く。
流石土竜《ジャイアント・モール》。
土の扱いに関しては理解を超える効率の良さだ。
「光よ」
中に入ろうと待っているシェイラの為に照明の術を起動しながらシェイラの腕を掴んだ。
「ちなみに、この洞窟はどうも使用中に崩落したんじゃ無いかとアスカが言っているんで、中に白骨死体がある可能性が高いと思うんだが・・・大丈夫?」
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・・・考古学者って白骨死体に出くわすこと多いんですかね?
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