シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

266 星暦553年 翠の月 4日 祭りの後(12)

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「家族に聞いたところ、初めの頃は合法か否か一々確認している余裕も無かったので扱った商品が実は盗品だったということもあっただろうけど、これからはそう言ったことにも気をつけていくので私が魔術師になっても大丈夫だそうですわ」

魔術院に来て、パラティア・サリエルに捕まった俺は得意げにサリエル商会のこれからと彼女の将来設計について聞かされていた。

確認している余裕が無かった?
噂じゃあそんなそんな灰色な活動だけじゃなくって、バリバリに真っ黒な行為も意図的に命じてやらせていたという話もあったらしいけどな。

まあ、裏社会に近い下町出身の商会の、食うか食われるかの熾烈な争いの中での何かの報復合戦の流れなのかも知れないが。

どちらにせよ、シェフィート商会が監査をしても良いと言い切ったのだ。これからは灰色でも白に近い商売をやっていくんだろう。

「へぇぇ。ちなみに、抜き打ちで時々俺も協力することになっているから。
裏帳簿とかも見つけられると考えて、脱税もやらない方が良いって親父さんに伝えておくと後で感謝されるかもしれないぞ」

パルティアは一瞬俺の言葉に眉をひそめたが、小さく肩を竦めて俺の発言を流して続けた。
「あと、男性に媚びているように見えるとの件ですが。
兄に確認したら確かにそのように見られても不思議はない言動だったと言われました。
私が知る中で、母が一番美しく優雅なのでそれを見習っていたつもりなのですが、残念ながらまだ私には難し過ぎたようですわね。
ウィル様の言い方は少々失礼だったとも思いますが、私の至らない部分を指摘していただき、ありがとうございました。
これからは母だけでなく、周りの女性皆を観察して自分なりの言動を構築いくつもりです」

あの媚びた言動が意図した物では無かったとは。
その見習っていた母親っていうのは一体どんな女なんだ??

だがまあそれはともかく。
俺が魔力を見いだしたせいで娘っ子が死ぬことにならなくて良かった。

セビウス氏の話では、父親は娘を溺愛しているし、兄はサリエル商会を灰色でも白に近い商売で成功させようと主張していて、昔ながらのやり方に戻りがちな父親と衝突することが多いとのことだった。
だからもしかしたらとは思っていたが・・・。

流石、セビウス氏だ。
読みがドンピシャだな。

母親に関しては、『賭博で破産した実家を美貌で救った妖艶な美女』としか言っていなかったが。

今度、覗きに行ってみようかな?
ちょっと好奇心が疼く。

「そうか。何もかも上手くいって良かったな。
ちなみに、俺からの助言としては・・・その口調ももう少し普通の一般的な物にしたらどうだ?
貴族や大商人相手に話す分にはそれでいいだろうが、一般的な普通の人間はそんな言葉使いをされると違和感を感じて、良い方なり悪い方なりに誤解する可能性が高いぜ。
貴族出身の魔術師というのならまだしも、あんたは世間一般からみたら商会出身の魔術師になるんだ。
下手をすると、母親の貴族の血を鼻に掛けていると思われかねない」
とは言っても、魔術院や魔術学院で見た、自分に正直すぎる女性陣を真似ろとは言いたくない気もするが。

来年から、ちょくちょく魔術学院に顔を出すか。
アルヌの事もあるし。

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