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卒業後
269 星暦553年 翠の月 11日 記録用魔道具(3)
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「スポンサー?
僕たちは休養日に都合が合うときは美味しいスイーツ屋を探しに王都を一緒に探索してたからな~。
月に2回ぐらい会ってたかも?」
根気よく魔道具の記録時間を一瞬にする変更を探りながら工房で作業をしている二人にスポンサーについて聞いたら、シャルロがまず答えた。
甘い物好き仲間だったのか。
「誰だったんだ?魔術師なんだよな?」
「立場が同じような人の方が気軽に相談しやすいだろうってことで、父上がケルヒーニ伯爵のところの次男のタルボグ・ケルヒーニにスポンサーを頼んだんだ。
まあ、僕は小さいときから蒼流がいたからね。早くから魔術師になるだろうと見なされていて、タルボグが学生だったころから色々話を聞いていたんだ。
タルボグも甘い物が好きだったから、相談のためと言うよりも美味しいスイーツを提供する場所を試食しまくるために会っていたって感じかな?」
ははは。
確かに、あんな精霊に加護を貰っていれば子供の頃から魔術師になると分かるよな。周囲だってそれなりに前もってお膳立てするか。
相手が甘い物好きだったのはシャルロとの相性を考えてそこまで調べたんかね?
ぽやぽやシャルロの親父さんとしては中々やり手なんじゃん、オレファーニ侯爵。
「私は流石にそこまで用意周到ではなかったな。
神殿学校で魔力があると指摘されてから魔術学院に行くことが決まったので、魔術院で適当に年が近くて商会出身の魔術師を教えて貰い、兄が下調べをした結果カザベーア商会のナーバンに頼んだ。
一応、月に一度程度は会って話をすることが推奨されていたから最初の頃は月に一度会っていたが、暫くして慣れてきてからは半年に一度会って昼食でも一緒に食べた程度だな」
ふうむ。
どちらも、自分達で頼んでるんだ。
孤児だったアルヌはまだしも、なんでパルティアのまで頼まれもしないのに俺がスポンサーに指名されちゃったんだろ?
第一、パルティアの場合は女のスポンサーの方が良いんじゃないかね?
「ちなみにさ、スポンサーって一人なのが普通なの?
相談する相手だったら複数いた方がいい場合もありそうだけど。
パルティアのスポンサーになってもさぁ、彼女自身は裏社会とも関係が無かったお嬢様育ちみたいだし、俺がスポンサーになるよりもどっかの商会出身の女性の魔術師にスポンサーになって貰う方が良かったんじゃないかと思うんだが」
アレクが試作した魔術回路に魔力を通してみる。
何も起きなかった。
どうやら、必要な部分をぶった切ってしまっていたらしい。
特に気にした様子もなく、どの部分の回路を変更したかを記載して横に×を書き込み、次の魔術回路を試作するための改良を始めながらアレクは肩を竦めた。
「確かにそうだが、サリエル商会の娘のスポンサーなんてまともな人間だったら断るぞ。あそこの悪評は我々の業界では広く知れ渡っているから、頼まれてちょっと背景を調べたら手を出すことを躊躇うだろう。
度合いが違うとは言え、スポンサー制度というのは昔の徒弟制度の名残のような受け止め方をされることが多くて、スポンサーした若手が問題を起こしたらスポンサーにも悪評が付くことがあるからな。
かといって、自発的にやりたがるような魔術師がいたとしたら、人格的に問題がありそうだし」
うへぇ。
弟子の不祥事は師匠の責任だって?
あの二人が何かやったら俺が責められるのかよ。
まあ、『悪評』程度だったら別に気にはしないが。
俺の試作品も完成したので魔力を通してみた。
一瞬、記録されたような感じだったが直ぐに映像が消えてしまって確認出来ない。
「しまった。
記録と再生が同じ時間分起動するんじゃ駄目だった。
記録は一瞬だけど、再生はループでずっと続くようにしないと」
シャルロが手を叩いた。
「そういえばそうだったね。
取り敢えず、魔術回路を幾つか繋げて1つの再生が終わったらまた次のが始まるようにして、少なくとも映像を確認出来るだけ長引かせたのを作ってくれる?」
単純に魔術回路を繋いで時間を稼ぐだけでは長時間の再生が非現実的になるので、どうにかしてループさせる仕組みを考える必要がある。が、取り敢えず瞬間記録の確認用には再生用の魔術回路を10回ぐらい繋げばいいか。
「了解。
ちなみにアレク、誰か商会出身の女性魔術師でパルティアの相談に乗れるような人、知らない?
表だってのスポンサーは俺のままで良いからさ、偏見無しにあの娘っ子を見れて、どういう仕草をする方が周りの女性から嫌われないかとかちゃちゃっと助言してくれる人が必要なんだけど」
アレクが驚きに目を見開いて俺のことを見た。
「随分と親切だな。
お前がそこまで能動的に手を差し出すなんて・・・気に入ったのか?」
「まさか。
最初に会ったときは鳥肌が立ちそうなぐらい不快だったけど、実はそこまでは悪くはなかったかなという程度さ。
だけど、あれが名目上でも俺の弟子扱いで、あいつが落ちこぼれたら俺の評判に支障が生じるんだったら、出来れば魔術学院に入る前に周りから嫌われそうなあの仕草だけでも何とかしておかないと総スカンを食らいそうだからな。
家族に魔術師がいるっていうならまだしも、そうでないのに周りの生徒から忌避されたりしたら、どれだけ頑張っても無事卒業なんて出来ないだろう」
俺だったら静かに周りをこっそり観察して何とかするが、お嬢様っぽいあの娘っ子にはそんな芸当は無理だろう。
問題が起きてから助けるのは色々大変だからな。
事態がこじれる前にちょっと方向修正しておく方が後々楽そうだ。
僕たちは休養日に都合が合うときは美味しいスイーツ屋を探しに王都を一緒に探索してたからな~。
月に2回ぐらい会ってたかも?」
根気よく魔道具の記録時間を一瞬にする変更を探りながら工房で作業をしている二人にスポンサーについて聞いたら、シャルロがまず答えた。
甘い物好き仲間だったのか。
「誰だったんだ?魔術師なんだよな?」
「立場が同じような人の方が気軽に相談しやすいだろうってことで、父上がケルヒーニ伯爵のところの次男のタルボグ・ケルヒーニにスポンサーを頼んだんだ。
まあ、僕は小さいときから蒼流がいたからね。早くから魔術師になるだろうと見なされていて、タルボグが学生だったころから色々話を聞いていたんだ。
タルボグも甘い物が好きだったから、相談のためと言うよりも美味しいスイーツを提供する場所を試食しまくるために会っていたって感じかな?」
ははは。
確かに、あんな精霊に加護を貰っていれば子供の頃から魔術師になると分かるよな。周囲だってそれなりに前もってお膳立てするか。
相手が甘い物好きだったのはシャルロとの相性を考えてそこまで調べたんかね?
ぽやぽやシャルロの親父さんとしては中々やり手なんじゃん、オレファーニ侯爵。
「私は流石にそこまで用意周到ではなかったな。
神殿学校で魔力があると指摘されてから魔術学院に行くことが決まったので、魔術院で適当に年が近くて商会出身の魔術師を教えて貰い、兄が下調べをした結果カザベーア商会のナーバンに頼んだ。
一応、月に一度程度は会って話をすることが推奨されていたから最初の頃は月に一度会っていたが、暫くして慣れてきてからは半年に一度会って昼食でも一緒に食べた程度だな」
ふうむ。
どちらも、自分達で頼んでるんだ。
孤児だったアルヌはまだしも、なんでパルティアのまで頼まれもしないのに俺がスポンサーに指名されちゃったんだろ?
第一、パルティアの場合は女のスポンサーの方が良いんじゃないかね?
「ちなみにさ、スポンサーって一人なのが普通なの?
相談する相手だったら複数いた方がいい場合もありそうだけど。
パルティアのスポンサーになってもさぁ、彼女自身は裏社会とも関係が無かったお嬢様育ちみたいだし、俺がスポンサーになるよりもどっかの商会出身の女性の魔術師にスポンサーになって貰う方が良かったんじゃないかと思うんだが」
アレクが試作した魔術回路に魔力を通してみる。
何も起きなかった。
どうやら、必要な部分をぶった切ってしまっていたらしい。
特に気にした様子もなく、どの部分の回路を変更したかを記載して横に×を書き込み、次の魔術回路を試作するための改良を始めながらアレクは肩を竦めた。
「確かにそうだが、サリエル商会の娘のスポンサーなんてまともな人間だったら断るぞ。あそこの悪評は我々の業界では広く知れ渡っているから、頼まれてちょっと背景を調べたら手を出すことを躊躇うだろう。
度合いが違うとは言え、スポンサー制度というのは昔の徒弟制度の名残のような受け止め方をされることが多くて、スポンサーした若手が問題を起こしたらスポンサーにも悪評が付くことがあるからな。
かといって、自発的にやりたがるような魔術師がいたとしたら、人格的に問題がありそうだし」
うへぇ。
弟子の不祥事は師匠の責任だって?
あの二人が何かやったら俺が責められるのかよ。
まあ、『悪評』程度だったら別に気にはしないが。
俺の試作品も完成したので魔力を通してみた。
一瞬、記録されたような感じだったが直ぐに映像が消えてしまって確認出来ない。
「しまった。
記録と再生が同じ時間分起動するんじゃ駄目だった。
記録は一瞬だけど、再生はループでずっと続くようにしないと」
シャルロが手を叩いた。
「そういえばそうだったね。
取り敢えず、魔術回路を幾つか繋げて1つの再生が終わったらまた次のが始まるようにして、少なくとも映像を確認出来るだけ長引かせたのを作ってくれる?」
単純に魔術回路を繋いで時間を稼ぐだけでは長時間の再生が非現実的になるので、どうにかしてループさせる仕組みを考える必要がある。が、取り敢えず瞬間記録の確認用には再生用の魔術回路を10回ぐらい繋げばいいか。
「了解。
ちなみにアレク、誰か商会出身の女性魔術師でパルティアの相談に乗れるような人、知らない?
表だってのスポンサーは俺のままで良いからさ、偏見無しにあの娘っ子を見れて、どういう仕草をする方が周りの女性から嫌われないかとかちゃちゃっと助言してくれる人が必要なんだけど」
アレクが驚きに目を見開いて俺のことを見た。
「随分と親切だな。
お前がそこまで能動的に手を差し出すなんて・・・気に入ったのか?」
「まさか。
最初に会ったときは鳥肌が立ちそうなぐらい不快だったけど、実はそこまでは悪くはなかったかなという程度さ。
だけど、あれが名目上でも俺の弟子扱いで、あいつが落ちこぼれたら俺の評判に支障が生じるんだったら、出来れば魔術学院に入る前に周りから嫌われそうなあの仕草だけでも何とかしておかないと総スカンを食らいそうだからな。
家族に魔術師がいるっていうならまだしも、そうでないのに周りの生徒から忌避されたりしたら、どれだけ頑張っても無事卒業なんて出来ないだろう」
俺だったら静かに周りをこっそり観察して何とかするが、お嬢様っぽいあの娘っ子にはそんな芸当は無理だろう。
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